メ ン タ ル ヘ ル ス 秒 読 み ド ク タ ー   作:pilot

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第11話

頑なだな。

 

結局のところ、ロドスというものは良くも悪くも全体主義だ。

誰一人として、なすべき目標に本物の「賛同」を持っているのだろうか?

 

中途半端と理想はとても近い位置にある。

ロドスは、一体どちらであろうか?

我が盟友は、どこか変わってしまった。

それが本当は変えられたのか、それとも自ら変わったのか、ただの事故なのか。

 

とにかく穏便には済まないだろう。

倒れた。

ただそれだけの事実だが、しかし事実はそれ以上の何かを含む時がある。

今回はそうであろうと、私は感じたのだ。

 

ノイルホーンが現れてから、しばらくたった。

私はすでに食事のすべての行程を終わらせ、今日割り当てられた作業をこなさなければならない。

 

シージは優秀で、頭の回転も早く、そして情けも持ち合わせているが、脆い。

そこにつけこんでやろうかと画策すれば、ノイルホーンの助け船により未遂に終わってしまった。

なかなか無口な奴だと思っていたが、実際のところ饒舌で、機転が効くではないか。

 

食堂から退出し、靴の音を響かせ、いつもの通りの道を行く。

イェラグとは比較にならないほどの最新の機材、設備は、私の目ですら驚いたが、今になっては慣れたものだ。

 

見慣れた貿易窓口につけば、マッターホルンが先に待機していた。

 

「お前はどうだ。何か情報は得れたか?」

 

私はロドス専属のオペレーターが何か重大な情報を我々外部の人間に隠していると推察している。

 

私と接点を持つ人間にも、徹底した情報統制が入っていることだろう。

 

マッターホルンは、私の問いに申し訳なさそうに首を振ると、「何も、得ることが出来ずじまいでした。」とだけ返した。

クーリエにも聞いておこうと考えたが、おそらく彼もいい線までいけども真実は知り得ないだろう。

 

はて、私にはここにいる人間で他に信頼できる者がいたか。

 

エンシアは駄目だ。

きっと知り得てないだろうし、そもそも私は彼女をあまり怪しげな話題に巻き込みたくはない。

 

......いかんな、郷には入れば郷に従え、そう普段からのたまっているというのに現実はかなり厳しいものだ。

 

なんらかの弱味、ともすれば脆弱性であることは承知しているのだが、盟友の危機だからこそ私は気がかりなのだ。

それがどれほどロドスに対して大きな問題だとしても、個人同士の関係性にそこまで制限をかけるのは間違っているだろうし、私は許さない。

 

私は必ずや盟友を助けなければならない。

このような、何とも知れぬ不確定な事件で盟友を困らせるわけにはいかない。

 

仕事を片付けている間も、私の頭脳は常にそのことを考えていた。

考えざるをえなかったのだ。

 

どれくらいの間、外部との交渉、駆け引き、契約取得に勤しんだ頃だろうか。

 

長い、長い作業の割り振り、規定分丁度を終わらせた時だ。

 

足音が聞こえる。

規則正しく、すこしばかり神経質な印象を受けるそれは、程度の大小あれど自由な人間の多いロドスでは少ない傾向にある。

このような歩き方をする者は、私の知る限りでは___

 

「シルバーアッシュ、入るぞ。」

 

そうだ。

何時でも一番に戦場に飛び出る、血気盛んな奴だというのに、表面上は冷ややかな人間。

 

ここへ突然現れたのは、ペンギン急便に所属するテキサスだった。

 

テキサスは頭の天から足の先まで、真面目且つ仕事人間の()()()()()()()が、その実自らの欲求に忠実で、内なる信念のためならどんなことでもしでかしてしまう熱情が見えかくれしている。

 

そんな者が、しかもロドスの外部から来たペンギン急便という組織の人間が、同じく今現在締め出されているようなものの私の所へ来たのだ。

しかも、私とマッターホルンというシフトを把握しているのだろう。

つまりは、()()()()()()()ということだ。

 

「ここに来た理由はなんとなくわかったぞ、テキサス。

我が盟友、君にも分かりやすく言えばドクターのことについてだな?」

 

「話が早くて助かるな。そうだ、そういうことだ。お前もどうせ仲間外れなんだろう?」

 

随分な言い様だが、今回に限ってはそれが事実だ。

 

マッターホルンが微妙な表情を浮かべている。

 

昨日から続くロドス民たちの、内での不審な動き。

私たちと盟友との接点を絶つ。

ああそうだとも、全くもって先は見えない。

テキサスの言う通り、我々のみが蚊帳の外だ。

 

だが、暴いてやろうではないか。

 

「ああ。君と私は、仲間外れ仲間と言ったところだな。」

 

何、ロドスはありとあらゆる組織の垣根を越えて人員を集めているグローバルな企業だ。

そこだ、そこがつけこめる点だ。

 

ケルシーか、あるいは他の人間の差し金かもれんが、行き過ぎた焦燥はむしろ事を悪くすると言うことを教えてやろう。

 

そう、仲間外れ仲間は沢山いる。

レユニオンやロドスのように、避けられたものはいつか避けられたもの同士で徒党を組む。

 

それを利用してやるのだ。

現に、既にテキサスはこちらを頼って来ているではないか。

 

「言えてるな。話が早いのに甘えて、一つ頼みがある。

ペンギン急便と、カランド貿易。その二つの勢力で協力し、ドクターの身に起きた事を知りたい。」

 

「良いだろう。」

 

即決だ。

向こうから良い話が転がり込んでくる。

 

迷う理由は何一つない。

全てのロドス民に、我が手腕を示してやろう。

 

盟友。必ずや、私はお前の助けになる。

 

 

 

 

 

 


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