メ ン タ ル ヘ ル ス 秒 読 み ド ク タ ー 作:pilot
私は、ロドスを疑いはしない。
黒い部分が見えかくれしても、以前の私がここにいたのだ。
そしてなにより、アーミヤがここのリーダーなのだ。
ロドスを疑うということは、私を救った彼女を疑うことと同義である。
だが、疑いはしないものの、時にもどかしい思いをすることがある。
何気ない会話。
オペレーターの装備品をグレードアップ、つまりは昇進するための鉱石素材を発掘する指揮を一通り執り終わり、何時ものように机に向かっていた時だった。
私も大して饒舌ではなく、レッドもそれは一緒で、遅々とした会話であったがそのなだらかなコミュニケーションが私は好きだった。
いつ頃だったか。
そのうち、家族という概念が話題に上った。
プロファイルでは彼女の家族関係は不明瞭、レッド本人もそれとなく流れで言っていた。
「家族?レッドに家族はない。」
ただ一言、いないという事実を。
「ドクターは、家族が欲しいのか?」
欲しいのか?
私は私にそれを問いただしたが、答えなど出るはずもない。
何故ならば、私は家族を知らない。
レッドと同じで、私も何もかも失くしてるからだ。
「わからない。君は?」
だから私も聞き返した。
「いたら、楽しそう。」
そうだな。
そうだよな。
居たはずなんだけどな。
もどかしい点の内の一つとは、私の家族の顔すら開示してくれないということだ。
他オペレーターのプロファイルはあれど、私自身を示すものは何処にもない。
それがどうにも、恐ろしくて仕方がないのだ。
だが今日は、いくらかマシな日になる筈だ。
今日は休日!!!
ヒャッホー!!!
でも理性分は働いた!!!
機密情報輸送したあとに出掛けるのなんか背徳的だなぁ!!!
ロドス最高です!!!
「ドクター、楽しそう。」
楽しいに決まってるだろ!!!
普段私たちが守る平和の中で過ごせるんだ、ここまで達成感と充実感を得られることはない!!!
行き先は龍門!
レッドもはにかんだような笑顔を浮かべてる!嬉しい!
折角出掛けるんだ、皆にもお土産を買っていこう!
普段いつも私のようなものの指揮に命を預けてくれてるんだ、お礼をしなければいけない。
龍門!
やはり活気に溢れている。
美しく、素晴らしい。
ウェイ長官は賢い人間だったな。
だからこそここまでの都市を築き上げられたのだろう。
「家族......あれ......?」
レッドと何故こちらへ来たかと言えば、それは我々に足りないもののサンプリングのためだ。
私は家族がわからない。
レッドも家族がわからない。
だが活気ある都市には、そのサンプルがゴロゴロ転がっている。
巨体な土地を占める自然豊かな、しかし管理の行き届いた公園。そこに我々は訪れた。
そこで遊ぶ子連れの家族。
子供は元気でいいぞ。
カップルもいる。
あれも言わば家族だろう
老夫婦が寛いでいる。
あ、孫も居た。良く懐いてる。
犬の散歩をしてる奴もいるな。
レッドも目を輝かせて、普段血にまみれてでも守ろうとした風景を目に焼き付けている。
そういえば彼女は認知能力がとても高いんだったな。
それぞれの幸せな姿を穴が開くほど見つめている。
「家族......レッドも欲しい......」
突然ぽつりと呟くレッド。
その顔は、直前までの嬉しそうな顔から少し悲しそうな、羨望の混じった顔に変わりつつあった。
レッドはときたま後悔しているような素振りを見せる。
自分が普通から外れた存在であることを、少し引け目に感じるのか。
私はその気持ちが良くわかる。
「ロドスの皆は、君と家族にでも、なんでもなってくれるよ。皆優しいからね。」
安っぽい励ましだが、本心だ。
良くわかるからこそ、浮かぶ言葉は少ない。
「ケルシーも......ドクターも?」
ああ、もちろん。
「もちろん、そうだよ。ケルシー先生は厳しいが、本当はとても他人の事を考える人だ。もちろん、こんなぼやけた人間でいいのなら、私も君の味方になるよ。」
「ロドス、皆優しくて、レッド幸せ。」
「私もそう思うよ。皆、優しい。すこしすぎるくらいに。」