メダロット5? すすたけ村の転生者   作:ザマーメダロット

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結局後半だけでも長くなってしまいました。

サブタイトルにもルビや傍点を振りたいんですが、確かその機能はないんですよね。残念。


10.お使いサバイバルロボトル

「ただいまー」

 

帰宅してリビングに入ると、母はテーブルに座ってこちらを向いていた。帰りを待っていた風に見える。これまた事情は知っているのでなぜなのかもわかるが……

 

「コイシマル……メダロッチ、届けて来なかったの?」

 

オレの腕を見て複雑な表情で言う。

 

「セレクト隊は留守で夜まで戻ってこないとかなんとかって。また明日行くよ」

 

わけを聞くと、母はほっとしたようだった。

 

「なるほどね。ちょうどいいわ、ちょっとお使いに行ってきてくれない?」

 

「いいよ。何買う?」

 

「あのね、お昼にすすたけ村ニュースを見ていたら、村長さんが新しいルールを発表したの。"ロボトルに勝たないと、村で物を買うことができない"って」

 

詳しく話を聞くと、他に客がいる場合、精算するには他の客とロボトルをして勝つ必要があり、負けたら並び直しということらしい。

 

「ちょうどいいってそういうことか……」

 

メダロットのことを何も知らない母は当然メダロッチすら持っていない。ロボトルなんてできないので、コイシマルが買い物に行かされるという寸法である。

 

「冷蔵庫の中もタイミング悪く空っぽでおかずになるものがないのよ……サバと、お味噌汁に入れるお豆腐もお願い。これお金ね」

 

千円札を手渡された。原作通りに進めばサバはタダになるんだが、どうしようか。

 

「サバと豆腐ね。行ってきます」

 

わかってはいたがしんどい。やっぱり自転車が欲しい……

 

 

……

 

 

再びバスに揺られてすすたけ村中心部へやって来た。帰りのバスが来る時間を考えると、家に着く頃には夜になりそうだ。

 

村長の世紀末ルールが敷かれた今、店という店に人が詰めかけている。オイルショックとか衛生用品不足とかとは違って無能が引き起こした人災というのが頭の痛いところだ。

駅前広場にあるコンビニを見れば、列が外まではみ出していて、人垣で内装も見えないという惨憺たるありさまだ。怪我人が出てないといいが。

 

さて、商店街まで走ろうかと思ったが、流石にそこそこ疲れているので普通に歩いて入った。商店街の中も人が多いが、さっきのコンビニのようにごった返しているというわけではなく、普通に歩いて通れる。あちこちでロボトルが行われているが、既に祭りの後という雰囲気になりつつある。真っ先にターゲットになったから()()()のも早かったのか?

 

サブターゲットの豆腐屋はどうかなと思って遠目に見てみると、"最後のお豆腐はわたしのものよ!"と宣言している女性がいた。原作通り間に合わなかったようだ。下手に関わって時間を食うとサバが危ないので、ここは放っておこう。

 

「お豆腐最後みたいだけど、いいの?」

 

メダロッチから、豆腐を取りに行かないのを不思議がって言うルートの声がする。

 

「横取りしに行って揉めてる間にサバがなくなる方がまずいし」

 

「そんなにどこでも売り切れになるものなの?」

 

「"売り切れが怖いから買い溜めなきゃ"ってみんなが思うと、実際に売り切れになっちゃうんだよ」

 

「普段どおり必要な分だけ買っていれば、普段どおりに買えるのにね」

 

オレの言葉に続けて、ベーデンがため息まじりに付け足して言い、さらに続ける。

 

「とんでもないところに引っ越してきちゃったんじゃないか?」

 

「ここまでパニックになってるってことはこれが初めてなんだろうし、村長の方も何かあったんじゃないかな」

 

まあ実際はこれからオレの手でどうにかするんだが。

 

「何があったらこんなルールを作るのか、理解に苦しむけれど」

 

「そこはオレもそう」

 

雑談していると魚屋にもすぐ着いた。この"うおてる"は4年2組のヒョウモン アサヒの家で、アサヒの父親が店主だ。名前は忘れた。

その店の前から、ついさっき購買権を勝ち取ったであろうおばさんとがっくりした様子のサラリーマンが離れ(目当てのものが品切れになったのだろうか)、次に並んでいたガタイのいい男が一歩前に出た。背も高く肩幅も広く、なんというか顔が四角い。強面だが目つきはむしろ弱気そうに見え、猫背。全体的にフランケンシュタインの怪物って感じの印象を受けるが、一方で服装はスーツに蝶ネクタイだ。サイズあるのかな。

 

「おう!村長さん家の執事さんじゃねえか」

 

「お、お魚、3匹……」

 

執事はたどたどしく指を3本立てて注文するが、3匹と言われて店主は顔をしかめる。

 

「困ったな、もうサバが1匹しか残ってねえよ」

 

「ちょっと待って下さい」

 

執事の横から話しかけると、店主は今度はオレを見て、おや、というような表情を浮かべた。

 

「なんでえ、坊主。見かけねえ顔だな」

 

「そのサバを買いたいのでロボトルさせて下さい」

 

「ようし、いいだろ。ロボトルして買った方に、このサバを売ってやるよ」

 

「そういうわけで、よろしくお願いします」

 

執事の方に向き直り、軽く頭を下げる。

 

「うう……ロボトル、やる。メダロット転送」

 

「メダロット転送」

 

メダロッチの音声入力により、執事のそばにメダロットが転送される。

 

リーダー機、男・戦車・ブルドーザー型メダロットのグランドーザー一式。ボディも黄色くモチーフがわかりやすい。パーツはいずれも設置行動「ファーストエイド」で、トラップを設置する。そいつには、触れた味方メダロットに対し、装甲が0になったパーツを応急修理する効果がある(機能停止したメダロットには効果がない)。重機と言われればパワーや頑丈さをイメージするだけに意外性があって面白い機体だ。

 

後は男・二脚・ゴブリン型メダロットのボロゴブリン。武具を身に着けたゴブリンがモチーフだが、剣は刃こぼれ、盾には矢が刺さっていて、兜には穴が開いているというデザイン。それがなぜかはいろいろ想像できる。パーツは右腕の剣が殴る行動ソード、頭は撃つ行動ガトリング、左腕の盾が守る行動援護だ。リーダーが装甲の高い戦車型だから攻撃に専念してくるだろうが。

 

それが2体。つまり……合計3体だ。

対するオレは2体、ジャングルギボン一式のベーデン(リーダー)とクロトジル一式のルートの2体のみ。

 

「おいおい」

 

と声に出しているのは店主。執事の方は、オレがメダロットを2体しか持っていない……つまり勝てそうであることについて、笑みを浮かべるのではなく、よかった、と安心する様子だった。

 

当たり前だが、ロボトルにおいて数の優位は非常に大きい。普通なら負けるし、同数なら余裕を持って勝てる程度に格上の場合でも手数の差を埋めきれず苦戦を強いられる。

だが、大会でもないロボトルで数の差が出てくることはそうない。遊戯や競技としてのロボトルなら相手に数を合わせないと成立しないからだ。ならなぜ今こうなっているかというと、これが利害の絡んだ、勝つことだけが目的のロボトルだからだ。

 

しかし原作ではちゃんとこちらと同数になるので、内心オレはびっくりした。と同時に、ベーデンを鍛えておいて本当に良かった、とも思った。頼み込むなり"フェアじゃない"と騒ぐなりして2対2に持ち込んでもいいがそんな手間も要らなくなったし、なにより……数が多い分ルートの経験値になる。

 

「大丈夫です、行けます。そうだろベーデン」

 

「もちろん」

 

ベーデンはオレの言葉に迷いなく応える。ルートは数の差にやや戸惑っているようで、相手チームをキョロキョロと見たり、指差してこっちを見たりしている。その視線の意味は"こんなのアリ?"といったところだろうか。

 

「パーツの取り合い、しない」

 

「ありがとうございます。形式上は遊びのロボトルで」

 

互いに距離を開けて向き合い、構える。

 

「ようし、準備はいいな?それじゃ、ロボトルファイト!」

 

店主がレフェリー代わりに試合開始の合図を出した。

 

「ベーデン、2番機に右腕。ルート、横槍は入らないから3番機から目を離すなよ。攻撃は右腕で」

 

「ジロウ、サブロウ、リーダーに攻撃!」

 

先程までもじもじしていた執事だが、ロボトルで指示を出す声は力強い。"うがーっ"とか言いそうな剣幕で、体にも力が入って腕をぶんぶん振っている。

 

「ギハッ」「ギィギギッ」

 

敵味方各機がほぼ同時に動き出す。その中で一番動きが速いのは、当然ベーデンだ。

コンビニで売られている安物のパーツ、男・二脚・テナガザル型のジャングルギボン一式。その名の通り長い前腕をしっかり体の前に構えて、2番機のボロゴブリンに突っ込んでいく。リーダー集中攻撃の指示を受けた2体のボロゴブリンもまた、ベーデンに向かって剣を振り上げて突っ込んでくる。なんだあの声。

リーダー機は指示を受けていないが、頭頂部から薬のカプセルの角張ったような、こぶし大のものを発射している。放物線を描いて飛んでいったそれは落ちて転がった後、カプセルの上下端が赤く点灯した。これは、味方機が効果範囲内に入ったかを感知するためのセンサーが起動したことを示している。まあつまり、一番回復力の高い頭パーツを弾切れまで使うのがいつもの初手ということだろう。

 

「先手!」

 

「ギゲッ」

 

2番機のジロウが間合いまで近づけたぞと斬りつけようとすると、それよりも早くベーデンの右ラリアットが頭部に命中し吹き飛ばす。

 

「ギイ」

 

続けて3番機のサブロウが剣を振るが、ベーデンは攻撃後の姿勢からでも容易く回避。剣が完全に振り抜かれた辺りで、ジロウが地面にぶつかって転がり、メダルが排出されるピーンという音がした。

 

「ジロウ!?」

 

「へえっ!?」

 

執事と店主が揃って驚く。まあ、メダロット2体しか持ってないならロボトルの経験が浅いだろうと踏んで当然だし、そんなメダロッターのメダロットが安物のパーツで頭部を一撃必殺するとは思わないだろう。

オレが得心していると、先の二人につられてかルートまでジロウの方を見て硬直している。これはいけないので、注意を呼びかける。

 

「呆けるなルート、3番機を撃て!チャンスだぞ!」

 

「え、あーっ、ごめん!!」

 

思い出した指示を守ってか、きちんとこちらを振り返ったりはせず、サブロウの方へ向き直りながらこちらへ謝罪しながら撃ち始める。タイミングが遅く盾で防がれ、クリーンヒットとはならない。

 

まあ、既に勝ちが決まっている。執事チームが攻撃をボロゴブリン2体に任せる構成な以上、1体が機能停止した今は逆にベーデン、ルート、サブロウで2対1ということになる。本来は多少の損害を受けてもリーダーのファーストエイドでパーツの機能を復活させるという流れだっただろうが、一気に機能停止になるとそれは成り立たない。ここからサブロウがファーストエイドを拾いつつ粘ったとしても、こちらがパーツを破壊するペースがファーストエイドでの復活ペースを上回る。ないとは思うが万が一リーダー機がメダフォースを溜め始めると何かあるかもしれないが、そうなってもベーデンがどうにかできる。

 

「次!」

 

こちらの指示を待たずに、サブロウと互いに格闘レンジであるベーデンが(ルートの射線を空けて)サブロウに向かって右腕でパンチを繰り出す。サブロウはこれもどうにか盾で受けるが、ルートの射撃と合わせて盾の装甲が0に。さらに、左腕がだらんと垂れ下がる。

 

ジャングルギボンの両腕の機能は"ウェーブ"。触れた際に振動を伝え、パーツやティンペットが持つ自己診断機能を狂わせて運動能力を下げる"束縛"の症状を付与する格闘攻撃。人間でいうと、殴られた場所だけ神経が麻痺するようなものだ。そしてその効果は攻撃の威力に比例する。

サンダーやフリーズの停止症状に比べると止まらない分しょぼいように見えるが、こちらは長続きするのが強み。ベーデンのパンチの威力が高い分、もうこのロボトル中、サブロウは左腕を満足に動かせないだろう。まあ、左腕パーツ自体破壊したのであまり関係ないが……

 

「コイシマル、オイラは!?」

 

「そのまま右腕でどんどん撃て!ベーデンがマークしてるから心配いらない」

 

「わかった!」

 

一旦反撃を諦めた様子で、サブロウが一番近くに設置されたファーストエイドに向かって走り出す。ルートの射撃が当たったり外れたりしているが、この後の結果にはあまり関係ない。

 

「ベーデン、左で行っていいぞ!」

 

「了解」

 

完全に背を向けて逃げているサブロウに対し、あっさり追いついたベーデンが、長い左腕をしならせて振り上げ、振り下ろして前腕を背中に叩きつける。サブロウは地面にうつ伏せに叩きつけられた後右に転がり、機能停止。ダメージがどう入ったかは……確認しなくてもいいか。

 

「どうです、まだ続けますか?」

 

「…………降参」

 

やや遠くにいる執事に向かって声をかけると、届いているとは言いがたい声量で返ってきた。執事は肩を落として、明らかにがっかりした様子である。

 

「ようし、このロボトル、坊主の勝ち!」

 

「……タロウ、戻れ」

 

「ベーデン、ルート、お疲れ。ありがとな」

 

互いにメダロットをストレージに戻す。

 

「坊主が勝ったからあんたにサバは売れねえが、駅前のコンビニの方に行きゃまだ何かあるかもよ」

 

店主が気の毒そうに言い、執事は辛そうに俯いて、その場を立ち去ろうとした。

 

「執事さん、ちょっと待ってください」

 

呼び止めつつ鞄から青い箱を取り出し、差し出す。

 

「村長さんのお使いができなかったから怒られるのかもしれませんけど、あんまり気を落とさないでください。村長の言う通りロボトルして負けたんですから、しょうがないですよ」

 

「……ありがとう」

 

大きくごつごつした、メダロッチが小さく見える手でクッキーの箱を受取ると、口元を緩めて礼を言い、執事は今度こそ立ち去った。

 

「ベニちゃんに貰ったクッキーでしょ?あげちゃってよかったの?」

 

「オレが食べるより有効に使ったからいいの」

 

「えー」

 

「ルートもその内わかるよ」

 

改めてサバを買おうと店主の方を見ると、感心したようにオレを見ていた。

 

「坊主、若えのにえらいじゃねえか。うちのバカ息子とえれえ違いだ」

 

「ありがとうございます」

 

「母ちゃんの使いかい?」

 

「そうです、親は両方メダロット持ってないどころか何も知らないくらいで」

 

「へえーっ、今どき珍しい人もいるもんだな。ほらよ、サバだ」

 

店主がパックに入ったサバを更にビニール袋に入れ、こちらに手渡す。

 

「いくらですか?」

 

「いらねえよ。売れ残りの品だ、坊主にくれてやるよ」

 

「取り合いになったものは売れ残りとは言わないんじゃないですか?」

 

「いいっていいって、黙って取っときな」

 

「それなら、いただきます。ありがとうございます」

 

礼はきちんと頭を下げて言っておく。

 

「おう、もう暗くなるから、坊主も早く帰れよ」

 

店主は店の奥(家の表部分が店になってるから、つまり家)の方へ去っていった。

……さて、バスを待つか。

 

 

……

 

 

「ただいまー、豆腐なかったからサバだけ買ってきた」

 

玄関から家の中に向かって声をかけ、リビングに入ると、母が自室から出てきた。

 

「おかえりなさい。なかったならしょうがないわね」

 

「サバもタダでくれたから千円そのまま残った」

 

サバと千円札を手渡し、流し台で手を洗う。

 

「あら、どうして?」

 

「知らない。お使いえらいねみたいなことは言ってたけど」

 

「そう。折角だし、そのままお小遣いにしていいわよ」

 

母はサバのパックを開けた後、手を拭き終わったのを見て千円札を差し出してきた。

 

「いいの?ありがとう」

 

「さあ、ご飯にしましょう」

 

焼きサバと具なし味噌汁か。まあ、カレーと味噌汁は具なしでもうまいからな。

……今頃タマヤス家では晩飯が塩握りに決定してる頃かね。

 

味噌汁の温め直しとサバを焼くだけなので、すぐにできた。

揃って食卓につき、いただきますを言って食べ始める。

 

「でもどうしようかしらね」

 

「何が?」

 

「メダロッチを返したら買い物ができなくなるでしょう?」

 

「余分に買っちゃったって人がティンペットをくれたから、一応なんとかなるよ」

 

「そうなの?よかったわね、コイシマル」

 

ティンペットを貰えてさぞ嬉しいだろうと思っているということだろうか。

 

「うん。まあ、でも明日には取り消してると思うよ、このルール」

 

「どうしてそう思うの?」

 

「一日だけでもパニックになるようなこと続けてられないだろうし、村長がやめようと思わなくても村の人達が黙ってないでしょ」

 

「なるほど。コイシマルは賢いわね」

 

純粋に賢い子供として褒められるのがむず痒い。

それはともかく、いつもより余計に動いて腹が減ったのもあり、すぐに食い終わった。

 

「ごちそうさまでした」

 

 

……

 

 

夜。明かりを消した部屋、布団の中で、明日の重要事項を反芻する。

 

ルートを譲ってもらうために、タクシー運転手のシゲオの口添えが必要だが、肥溜めイベントをスキップしたためまだ会っていない。その分をカバーしなければならない。それに成功したら、今度はメダロット研究所の研究員シゲユキとの交渉だ。ルートを失うことだけはなんとしても避けなければならない。

 

後は……出くわす確証がないが、バスから湧いてくるオバケメダロットを処理する必要がある。

やり方次第でせいどう関係の目撃者に与える印象が変わってくるだろうが、どうしようか……

 




※アンケート設置予定

「タロウ」「ジロウ」「サブロウ」は漫画版の執事のメダロットたちの名前で、謎の奇声もそのままです。暴走してるわけでもないのになんなんでしょうねあの声。
あと漫画だとオメダ1体VS執事チーム3体なんですよね。アンフェアにも程があるんですが、あっちの執事はやなやつっぽくなっててアンフェアさに説得力があります。嬉しくない説得力。

せいどう学院前でのオバケメダロット戦は……

  • 全力で戦う
  • 手を抜く
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