メダロット5? すすたけ村の転生者 作:ザマーメダロット
2020/03/26 プレスとブレイクを間違えて描写していたので戦闘シーン修正
翌朝。
ぐっすり眠ると昨日の疲れもすっかり取れていて、前世との差をしみじみと実感する。
自室で出かける支度をしてから一階に降りると母の気配はなく、リビングのテーブルに書き置きがあった。母の字だ。
ルートに読み上げるように促されたので、声に出して読む。
「"コイシマルへ ママは今からパパに着替えを持っていきます 冷ぞうこにおにぎりが入っています たべてください あと、となり町のメダロデパートでトマトの種を買ってきてください"だって」
実のところ書き置きにはまだ続きがあったが、読み上げないままゴミ箱に捨てた。父が持ってきたメダルが使えないというわけではないが、手持ちに入れたいメダルでもない。
「コイシマルのパパは何してるの?」
「古生物学者。昔の動物や植物について調べる仕事だよ」
ルートの質問に、オレより先にベーデンが答える。
「へーっ、面白そう」
「元々お父さんの恐竜好きがきっかけで始めた仕事だから、ほとんど恐竜の研究ばっかりやってるけどね」
補足しつつ書き置きの下にあった五百円玉(トマトの種代)を財布に入れて冷蔵庫を開けると、確かに三角おにぎりが3つ入っていた。1つは昼飯にしよう。前世で詳細不明だった茶碗蒸しシェイクもしっかりある。この家庭のこいつはだし巻き卵のかなり甘めな具合の味付けで、冷めていても結構うまい。
一人テーブルに着いて食事を済ませ、鞄におにぎり1つ入れて家を出た。
……
停留所へ向かう途中、日曜日だというのに、神社の前にヤマトが立ってきょろきょろしていた。
「おはよう」
「おはよう、コイシマルくん」
「何してんの?」
「ベニを探してるんだ。これから歯医者に行かなきゃいけないのに、どこに行ったんだろう?」
日曜の朝っぱらから遠くに行ったということはないだろう。という認識が共通しているのか、ヤマトにも焦る様子は特にない。
「手伝うよ」
「ありがとう。じゃあ、ぼくはもう一度家の中を探すよ」
「ああ、お前ん家広いもんな……なら、オレは境内のこっち側見てみる」
一般家庭では人を家の中で探すなんてことまずないが、こいつは住居だけでもデカい。流石は神社の子。
「うん、頼むよ」
言うとすぐに小走りで奥へ向かっていった。その姿を見送りながら、オレはゆっくり歩いて進む。
どこにいるかも知っていることだし。
……
「えーん、えーん……」
ちょっとぶりに例の御神木の近くまでやってくると、木の上からかすかにベニの泣き声が聞こえた。
「上か」
「ベニが一人で登ったとは思えないけど」
「何にせよ危なそうだな」
状況を不審に思うベーデンに適当に返しつつ、木の中へ入る。
内壁のツタを登って外に出てみれば、踏み鳴らされた枝の道の半ばで、上に向かってはしごがかけられていた。
「コイシマル、前はあんなのなかったよ!」
「あの上だろうけど……大丈夫かなこれ」
近づいてよく観察すると、はしごは工事で屋根に上がるのに使うような、アルミ製で伸縮するタイプ。高さは……3メートルくらいか?今立ってる場所が既に結構な高所だから怖い。下側を踏んで支えて使えば安全だが……と思ったが、下側はビスを打ち込んで固定する器具がついている。これなら一人で上り下りしても大丈夫か。
慎重にはしごを上る。やはり怖いが、正しい使い方をすれば不穏な揺れ方をすることもなく、無事上り切れた。
「大丈夫?」
「ありがとう、ベーデン。でもこれだとベニちゃんの帰る時が心配だな」
そしてまた下とは別にいくつもある大木のような枝の上を歩き始めたが、進めば別なはしごがかけられているのが見えてくる。それもいくつも。イトはどこに金と手間を使ってるんだ……
……
信じられないことに木の一本がちょっとしたダンジョンだ。はしごを数回上り下りしつつ進み、視界の上側の枝葉の中から謎の巨大な鳥の巣(木の枝でできている)が覗いたところで、またベニの声が聞こえてくる。急いでさらにはしごを上って鳥の巣の
「えーん、返してよー!ベニのメダロッチ返してー!」」
内部の広さは学校の教室くらいか。太い木の枝でできた籠だが、より細い枝が詰まっている。一番奥には、これまた謎の巨大な、高さ1メートルほどの卵がいくつか置かれている。巨大な怪鳥はいないが、ベニと、オバケメダロットが3体。以前は4体いたが、これ以降は3体セットだ。
ベニは自身を取り囲むメダロットたちに向かって泣き叫んでいるが、そいつらは泣き止ませるでもなく尋問をしていた。
「先に、おれたちのメダロッチを返すだぞ~。メダルも、ティンペットも、パーツも、返すだぞ~」
「そうよ!お前のせいで、マスターに怒られたのよん。最近口も利いてくれないのよん」
「ベニのせいじゃないです!ベニは取ってないですぅ!」」
怒りを程よく抑え、すーっと息を吸う。
「おはようございまああーーす!」」
そして放った。オバケメダロットたちはびくりと驚く(ベニも驚いたのは、ちょっと悪いことをした)。そのまま
「お、お前は、あの時のこぞうに違いないだぞ~」
近づくオレを腕で指して、オバケメダロットの一体が言う。
「"寄ってたかって小さい子を苛めろ"ってマスターに命令されたとでも言うのか?恥知らずども」
「ボウゾウ!こいつのメダロッチを見てよん」
「あーっ!それはおれたちのメダロッチ!!」
「バカを言え、こいつはこれからセレクト隊に届けるんだ」
「それは困るのよ~ん」
ベニを囲んでいたオバケメダロットたちが、今度はオレを囲もうとする。メダロットにはメダロット三原則があるが、怪我をさせない範囲なら、人間から持ち物を奪うことも可能だ。
「メダロット転送!」
クロトジル一式のルート、ジャングルギボン一式から右腕だけチェネッツに差し替えたベーデンがオレを守るようにして現れる。
「リベンジの機会をやるよ。真剣ロボトルだ」
「さっきから偉そうにしてるくせに、数の違いもわからないのかだぞ~?」
「これでもハンデが足りないくらいだよ」
「ボウゾウ、こいつが調子に乗ってるうちに合意しちゃうのよん」」
「合意と見てよろしいですね!?」
唐突かつ自然に、ここにいないはずの若い男の声が頭上から響く。そして以前と同じように、ロボトル協会公認レフェリー・カバシラが鳥の巣に降り立った。
「コイシマル、大丈夫?」
「全く問題ない。あ、ベニちゃん、そっちの卵の方でじっとしてて」
「わ、わかりました」
ずっと泣いていて疲れたのか、体が固まっていたのか、ベニはおぼつかない足取りで鳥の巣の端へ歩いていった。
誰も異議を唱えないのを確認し、カバシラがもう一度口を開く。
「ではこれより、コイシマルチームとボウゾウチームのロボトルを開始いたします」
こちらのリーダー機はルート、あちらのリーダー機はボウゾウと呼ばれた個体。あちらの構成はチェネッツ純正が3体。特に差はない。手の内も読める。
「ロボトルー……ファイッ!!」
カバシラが腕を高く上げて溜め、振り下ろして合図を出した。
「ルート、2番機に注目!ベーデンは3番機をマーク!」
そして同時に両チームスタート。
敵は3機が同時に右腕を上げて射撃を開始……しようとするが、こちらが早い。ベーデンが3番機の至近距離まで走り寄り、同じチェネッツの右腕から発砲。発射された青いエネルギー弾が3番機に直撃。青い重力フィールドの中でオバケが無防備に中を舞い、白い布をはためかせた後、放り出されて右腕から落ちる。受け身も取れぬ状態で落下の衝撃をもろに受けた右腕パーツは装甲が0になった。
遅れてボウゾウとインフィスが充填を終え射撃、ライフルに比べると遅い弾速のプレスが横並びに2発発射された。
「ルート、右腕で弾の方を狙ってみろ。ベーデンはそのまま追撃」
「やってみる!」
「了解」
ルートが右腕をまっすぐ前に伸ばして構え、ライフルを発射。当たらなかった弾丸が鳥の巣の壁にぶつかる音が数回し、その間もプレス弾は近づくが、ここでやっと1発が空中で爆ぜた。その重力フィールド発生に反応してもう1発が誘爆。青いフィールド2つが何もないところに現れて、そして消える。
「やった!うわっ、と、と」
それなりに近づいてきていただけあり、範囲内だったルートは引き寄せられてよろけるが、ダメージは微々たるものだ。この攻防をよそに、鈍くも大きい音とメダル排出音がベーデンの方から響いた。
「これで2対2。ベーデン、その位置からはプレスが見えたら迎撃で援護してくれ」
「な、何があったんだぞ~!?」
「ルート、よそ見してるやつは撃っていいからな」
「はーい!」
今度は左腕を構え、景気よくガトリングを発射。ボウゾウの脚部にダメージ。
「うわわあ~」
「ちょっと、攻撃止めちゃダメでしょ!」
インフィスがルートに向かって頭部からガトリング発射。ルートはそれを左腕で受ける。そこそこのダメージ。
「いい判断だ!ミサイルで反撃!」
「行けっ!」
「げ、迎撃!」
ボウゾウが頭部のガトリングでミサイル迎撃を試みるが、失敗。もう一度脚部にダメージを受ける。
「こうなったら集中攻撃よん!」
「わかっただぞ~!」
ボウゾウがルートに向き直る。インフィスとガトリングの集中砲火か?
「ベーデン、2番の脚部」
「だと思ってた」
じっと待機していたベーデンが飛び出してインフィスの背後へ。その勢いを乗せた左腕を腰の辺りに叩きつけ、走り抜ける。
「ぎゃあっ!」
と声を上げつつインフィスは地面に転がされ、脚部パーツは装甲が0になった。
「ルート、左腕で2番追撃!ベーデンは待機で」
「えーい!」
転がされたままガトリングを浴び、全身にダメージが蓄積していく。
「や、やめろだぞ~!!」
ボウゾウが頭からガトリングを発射しようと構える。
「ベーデン押せ!」
構えたところを横から押され、宙に浮いたままくるりと横向きになり、あらぬ方向へ弾がばらまかれる。そしてその方向はインフィスが倒れている方向でもあった。無防備状態で味方の追撃を受け、インフィスの頭パーツが破壊。機能停止した。
「ああ!こんなつもりじゃなかったのに、だぞ~!」
「今回も降参は許さないからな。ルート、撃て!」
「オッケー!」
……
1対1。ルートはボウゾウの放つプレスの重力フィールドに引っ張られたりガトリングを浴びたりしながら、自らもまたボウゾウにライフルとガトリングを浴びせかける。発砲音と着弾音が繰り返す。
「このこのー!」
「うわあーっ!」
「まだまだー!」
「ひいーっ!」
やがてボウゾウは機能停止した。
「勝者、コイシマル!」
「やったー!」
バンザイをするルートと、勝てて当然という様子で一息つくベーデンだった。
……
カバシラはメダルを再装着して、またどこへともなく去っていった。
オレの手にはボウゾウの脚部パーツがあり、オレの前には脚部だけティンペットを晒しているボウゾウと、他2体がいる。
「お、覚えてろだぞ~」
ボウゾウは他2体に引っ張られる形で、御神木から飛び去っていった。