メダロット5? すすたけ村の転生者 作:ザマーメダロット
そしてミチオの一人称も"おれ"と"オレ"が混じっていました。ここでは"おれ"に統一します。
話は進んでないのにそれなりに文字数を食っている。シゲユキ戦は次回です。
こんなことになるならもうちょっと近い出来事のアンケートにすればよかった。せいどう学院前オバケ戦まで遠い。
オバケメダロットがいなくなった後、鳥の巣の中を探すとメダロッチが一つ見つかった。
福引券やパーツは見当たらなかった。御神木の最初の宝箱もそうだが、無造作にアイテムの入った箱が転がっていることはないらしいというのがゲームとの大きな相違点だ。はしご地帯にも女型ティンペットの入った箱はなく、このままシゲユキ戦に挑むことになる。この場合2対3になるんだろうか?
「これ、ベニちゃんのメダロッチで合ってる?」
「はいです!」
差し出して訊くと、ベニは満面の笑みで答えたのでそのまま渡す。
さっきまで泣いていたのが嘘みたいに元気になったが、目元には涙の跡が残っているのが目につき、オレは中腰になって左手でベニの肩を持ち、右手に自分のハンカチを持って跡を軽くこすった。
「よし、きれいになった」
「ありがとうございます♪」
「ところで、ベニちゃん自分でここまで来たの?」
「ううん。さっきのオバケたちに運ばれました」
前世からの疑問をぶつけてみると、そこそこ納得のいく答えが返ってきた。風船を取りにいけなかったのに自分の力で木の上に隠れたとすると矛盾している、という件だ。
しかしそうなると、オバケメダロットたちはベニがメダロッチを持っていると思って木の上に連れ込み、囲んで尋問していたということか。マスターに比べればコミカルな連中だと思っていたのだが、もう少し警戒した方がよさそうだ。
「じゃあ自力では降りられないか……ベーデン、任せていいか?」
「お安い御用」
「メダロット転送」
脚部パーツをチェネッツのもの(つまり浮遊タイプ)に変更し、ベーデンを転送する。
「ベニちゃん、しっかり掴まって、目をつぶっていて。なるべく怖くないように」
ベニはオレの指示に黙って頷いて目を閉じた。それからベーデンはベニを丁寧に抱きかかえ、ゆっくりと上昇して鳥の巣の外へ出てから、下降して見えなくなった。
「コイシマルはどうするの?」
「ここまでの道を自力で戻るしかないな」
……
慎重にはしごを上り下りして無事に地上まで降り、御神木の外へ出ると、ヤマトとベニが揃って待っていた。兄妹揃って泣いたりはしていない辺り、ベニと一緒に降りたベーデンがうまく説明したのだろうか。
「コイシマルくん、本当にありがとう。また助けられちゃったね」
「それはいいんだけど、歯医者の時間大丈夫なのか?」
笑顔で礼を言うヤマトにそう返すと、ベニの方が逃げようとし、ベーデンがその手を掴んだ。
「ベニ!ちゃんと虫歯治しに行かないと、また歯が痛くなるぞ!今度歯が痛くなっても、兄ちゃんもう知らないぞ」
手を掴まれたままヤマトに叱られ、ベニはしょんぼりした様子ながら落ち着いたようだった。
「今どきの歯医者は麻酔の前の麻酔をかけるから全然痛くないぞ。今は怖いかもしれないが、やればなんてことない」
「本当ですか?」
「ウソじゃないよ。まして小さい子だしな」
一応フォローはしたが、ベニの表情はあまり変わらない。
「コイシマルくんにまで心配をかけてごめんよ」
「オレも出かけるし、停留所まで一緒に行くか」
「いや、ぼくたちは神社の外から車なんだ。そろそろ行かないと親がこっちまで来ちゃうかも」
「そっか。じゃあまた明日な」
「うん、また明日。行くぞベニ」
「コイシマルのお兄ちゃん、またね」
二人は小走りで外へ走っていった。
……
停留所まで歩いて来たが、時刻表を見るとバスの時間は先のようだった。
だが、今回できればバスには乗りたくないので、ベーデンたちに言い訳して見逃す手間も省けてよかった。
オレは停留所付近に誰もいないことを確認してから、ルートをクロトジル一式装備、ベーデンをジャングルギボン一式にチェネッツ右腕装備で転送した。
「あれ?なんで転送したの?」
「バス待ってる間にちょっと練習しようと思って」
ベーデンが何もないところに向けてプレスを撃ち、重力フィールドが発生する前にルートがライフルとガトリングで破壊する、という迎撃の練習を思いついたので、やってみようと思った。という風にベーデンたちに説明したが、本当の目的は別にある。
「わかった、やってみよう」
「よーし、特訓だ!」
実戦でない練習が初めてのルートはワクワクした様子で、ベーデンはいつも通りの様子で、それぞれ取り組み始めた。
……
プレス発射、ライフル発射、命中してプレスのエネルギー弾が霧散。もう一度プレス発射、ガトリング発射、命中して霧散。
「あっ上!」
不意にベーデンが真上にプレスを発射し、ルートの反応が遅れるが、右腕を構えて撃ち、重力フィールド発生前に命中して霧散。
「やった!」
ルートが声を上げて喜び、ベーデンは……特にリアクションしていないが、多分喜んでいるだろう。
そんなこんなでオレも適宜指示を出したりルートの邪魔をしたりしながら、停留所脇で迎撃の練習をすることおよそ二十分。不意に、舗装されていない車道の先からエンジン音が聞こえ、そちらを見ると、バスではなくタクシーがやって来ていた。流石に運転手までは見えないが、田舎だし恐らく当たりだろう。オレはなんでもない風を装って、ルートとベーデンの練習の監督を再開しつつ、腕に巻いたメダロッチ(2つのうち1つは最新型)が車道側からよく見える位置に立った。
誰も呼んでいないのに、タクシーがオレの傍に停まり、運転席から制服を着た若い運転手の男が焦りの表情を浮かべて駆け寄ってきた。
「君!ちょっといいか」
「はい、なんでしょうか」
案の定その男はオレに声をかけてきた。十数歩ほど離れた位置で練習していたベーデンとルートは何があったのかとこちらを見ている。オレ自身これから訊ねられる内容もわかっているが、厳しい顔をして問われると少し緊張する。
「その腕に巻いているメダロッチはどうしたんだ!?」
「どうって、落とし物ですよ。これから江戸紫市まで用事があるんで、ついでにそこのセレクト隊に届けますけど」
「拾ったって言ったね?どこで拾ったんだい?」
「神社です」
「メダロッチの中には、あっちにいるメダロットの着けているKBT型のパーツも入っていたのかい?」
ベーデンたちのいる方にちらっと視線を向けてから言う。それに気付いたベーデンたちがこちらへ歩いて戻ってくる。
「そうですね。KBT型のパーツ一式が入ってました」
オレの答えに、男は得心のいった様子でひとり頷いた。
「オレ、テンサン コイシマルって言います。もしかしてこのメダロッチの持ち主ですか?」
「いや、おれは違う。……ああ、急に済まない。怖がらせちまったかな」
男ははっとしてから少しだけ申し訳無さそうな顔をした後、笑顔を浮かべた。
「おれはハンミョウジ ミチオ。江戸紫市に用事があるならタダで送ってやるよ。そのメダロッチのことも話さなきゃいけない」
「待て」
戻ってきたベーデンが会話に割り込む。
「コイシマル、タクシーの運転手とはいえ知らない大人に黙って付いていくつもり?」
「メダロッチが落とし物だって予測がなきゃそもそも車停めてないでしょ」
「オイラも悪い人じゃないと思うな」
「ちゃんとした根拠があっての判断ならいいんだ。わかったよ」
「じゃ、練習お疲れ」
ベーデンが納得した様子なのを確認して(ルートはベーデンの言葉にちょっと不服そうだったが)、二人をストレージに戻す。
「というわけで、お願いします」
「おう。それにしても最近の子は随分しっかりしてるんだな……」
ミチオが車に乗り、後部座席のドアを開く。オレはその後部座席に乗り込んだ。車が動き出す。長くまっすぐな道で、スピードが安定してきた頃、ミチオが口を開いた。
「さて、そのメダロッチの話なんだが……少し前、江戸紫市のメダロット研究所に泥棒が入ったんだ。その時、開発中のメダロッチといくつかのパーツ、研究中であったレアメダル1枚が盗まれた」
「盗品だったんですか。あれ、じゃあこれは泥棒が落としたってことになるんですかね」
「不自然だが、そういうことになるな」
……
ミチオには江戸紫市のメダロット研究所で研究員として働いている友人がいて、盗難の件も彼から聞いたらしいことや、その他の雑談をしている内に、田畑が広がる村はずれとは打って変わってデパート等の大きな建物がいくつもあるところへ着いた。すすたけ村から見て隣町である江戸紫市だ。
セレクト隊とメダロット研究所が半分ずつ使っているビルの前まで来たところで、ミチオは車を停めてオレに降りるように促した後、離れたところで切り返して戻ってきてから自身も降りた。
ビルは正面入口が二つあり、向かって左側がセレクト隊、右側がメダロット研究所だ。
「それじゃ、メダロット研究所へ入ろう。セレクト隊にはおれの友達から届け出て貰えばいいからな」
ミチオに連れられて、オレはメダロット研究所に入った。
入口の自動ドアをくぐると、ミチオは受付と一言二言話し、すぐにまた歩き出した。友人がいるというよりは、ここの出入りにも慣れているようだった。
1階にはショーケースに入れられたパーツやメダル、壁際に取り付けられた縦向きのカプセルに入れられたメダロットが展示されていて、これまた壁にかけられた液晶モニタにはそれらのメダロットの詳細データが表示されていた。詳細すぎて素人にはあまりわからない内容なので、この展示スペースのターゲットがよくわからない。
エレベーター脇で警備しているセレクト隊員に挨拶して2階に上がると、研究員たちがPCやよくわからない機械に向かって作業をしているフロアに出た。奥へ進むと、1階から連絡が行っていたらしく、白衣の男が1人オレたちを待っていた。笑顔、というよりはニヤニヤ顔といった表情をしている。
「こんにちは。テンサン コイシマルです」
「こいつはおれの友達でシゲユキって言うんだ」
「よろしく、コイシマルくん」
なぜか本人ではなくミチオが紹介し、シゲユキもそれをスルーしている。
「早速だが、キミが拾ったメダロッチを見せてもらえないかな?」
腕からメダロッチを外して渡すと、シゲユキは設定画面から情報を確認し始めた。
「どうだシゲユキ、やはりそれは……」
「ああ、番号が一致したよ。ここから盗まれた開発中のメダロッチだ」
「すいません、さっき話しそびれたんですけど、もしかして盗まれたメダルってカブトだったりしません?」
「ん!?……というと?」
「中には入ってなかったんですけど、一緒に落ちてたんですよ」
「何言ってるのコイシマル!?」
予想外だ、という顔をするシゲユキに向かってそう続けると、オレが巻いているメダロッチの中からルートの声がした。そして、シゲユキとミチオは、これがメダロッチの件よりよほど大事なのか(まあそうなんだろう)、大層驚いたようだ。
「そ、そのメダルは今どこに?」
「今喋ったのがそうです」
「ああああコイシマルのバカバカバカバカ~」
シゲユキの質問に素直に答えると、ルートが騒ぐ。
「……起こしたのか」
「持ち主のことを聞こうと思ったんですが、まさか眠ったままとは知らずつい。すみません」
「まあ、それは仕方ない。じゃあ、メダルを返してくれるね」
「それは……嫌です」
「何?」
シゲユキの目が険しくなる。
すかさずオレは、シゲユキの前で土下座した。
「お願いします!ルートを……このメダルをオレに譲って下さい!」
「メダル以外なら持ってるものはなんでも出します!できることならなんでもします!」
「こいつはオレにマスターになって欲しいって言ってくれて、短い間でも一緒に過ごした大切な友達なんです!」
ルートを大切な友達と思っているのも本当だが、強力なレアメダルだから欲しいというのも本当だ。
だが、つまりオレは、結局ルートを手放したくないと心の底から思っている。だから本気で請える。
「……そうだなぁ……」
即土下座に移行して畳み掛けるように嘆願しているオレからは表情が伺えなかったのだが、しばらくしてからシゲユキがそう言うのが聞こえた。
「ぼくにロボトルで勝てたら考えてみてもいいよ」
顔を上げる。勝った、と思わず思い、笑みがこぼれる。一方でミチオは、その言葉を聞いて気を悪くしたようだった。
「なぁ、シゲユキよお、意地悪してやるなよ」
「いいんですよミチオさん、オレが何でもって言ったんです。だったら筋は通します」
オレがそう言うと、シゲユキは再びニヤニヤ笑いを浮かべ、白衣の袖を引っ張ってメダロッチを露わにした。
「ふっふっふ……言っとくけど、ぼく、強いよ」