メダロット5? すすたけ村の転生者 作:ザマーメダロット
逆に今回はロボトルがないので1話で1日進みます。
ルートを正式に譲って貰った次の日。オレは遅刻することもなく学校へ行き、そしてたった今午後の授業も終わった。
「コイシマルくん、今からメダロット部の部室に案内するよ」
「おう」
周囲が帰り支度をしている中、オレも同様に鞄に教科書やノートを詰めていると、左隣の席のヤマトが話しかけて来る。右隣の席のサキは、その言葉を聞いてふふっと笑った。理由は知っているので、特に気にしないが。
帰り支度が終わったというタイミングで、一度外に出ていたアキ先生が教室に戻ってきて、こちらに来た。
「あ、いた!シジミくん、ちょっと先生のお手伝いしてくれないかなぁ」
「いいですよ」
「じゃあお願いね。今から一緒に来て」
「ヤマト、部室の場所だけ教えてくれ」
「えっと、体育館1階の一番左奥の部屋だよ」
「じゃあ先に行って待っとくよ」
「ごめんね、コイシマルくん。カギは開いてるから」
オレとヤマトとアキ先生は教室を出て、廊下で別れた。入れ替わりに、弓道着を着た知らない女生徒が教室に入っていった。サキを呼びに来た後輩だろう。
校舎1階に降り、低学年の教室へ向かう。
「あれ、コイシマル、体育館に行くんじゃなかったの?」
「ああは言ったけど行っても誰もいないだろうし、暇をつぶそうかなって」
ルートの声に返事しつつ、教室のドアの窓ごしに中を覗き、ベニの後ろ姿を認めてオレは1年1組の教室に入った。黒板を消しているベニの肩をとんとんと叩くと、ベニはなんだろうと振り返り、オレの顔を見て表情を明るくした。
「あー!コイシマルのお兄ちゃんだぁ」
「日直か?真面目にやってるんだな。えらいぞ」
「えへへー……あ、コイシマルのお兄ちゃん、ベニのお兄ちゃんに、早くベニを迎えに来てって言ってください。遅くなると、オバケが出てきますぅ。ベニ、オバケ、キライ……」
"コイシマルのお兄ちゃん"と"ベニのお兄ちゃん"が一緒に出てくるとややこしいな。
「オバケって、神社にいたのは退治したろ」
「うん。でも、まだ、学校にはオバケいますよ」
まあ、退治したと言っても追い出しただけだし、実際学校に来てるのも同じやつらなんだよな。学校ではまだ仕事が残ってるってだけのことだ。
「万が一本物の幽霊だったらちょっと怖いな」
「コイシマルのお兄ちゃんも、オバケがキライですか?」
「本物はね」
「え~、コイシマルカッコわる~い」
「そうかな?見たことがないものを怖がるのは道理だと思うけど」
ベーデンの意見は、疑問に思ったというよりは、明確にオレを庇おうとしているように聞こえた。
「別にフォローしなくていいぞベーデン。カッコ悪くて結構だ」
「わぁ、サニーちゃんとおんなじですね~」
「サニー?」
「こんにちは、コイシマルさん。ベニちゃんのパートナーのサニーって言います」
その声はベニのメダロッチから聞こえた。機体名のサニヅラウからサニーなのは変わらないのか。
「サニーちゃん、よろしく!オイラ、ルート」
「ルートさんですね、よろしくお願いします」
姿を見せないもの同士の会話は中々不思議だ。……ベーデンは特に何も言わない。さて、暇つぶしがてらイベントは消化できたかな。
「そろそろ部室行くか。じゃあなベニちゃん、また明日」
「ばいば~い♪」
……
一度グラウンドに出て、すすたけ小学校体育館へ。入口から入ると、前、左、右にそれぞれ廊下が伸びている。左には部屋一つと、一番奥に上り階段。奥へ進むと壁に当たり、さらに左右に廊下が伸びている。右は今後行くことはないのでどうでもいい。
オレは左に進み、部屋のドアを見た。特にプレートや紙で何の部屋か示してあるということもなく、ただのドアだけがある。ノックするか少し迷っていると、右の方から足音が聞こえた。振り向くと、弓道着を着た女生徒が二人来ていた。
「何か用?先に言っとくけど、男子は弓道部に入部できないわよ」
転校生ということは知っているらしく、釘を刺される。
「ああ、ここ女子弓道部か。じゃあ、男子弓道部は?」
「ないわよそんなもの」
「え、じゃあ弓道部って女子だけなの?」
「昔からそうよ」
「なんで?」
「知らないわよそんなこと。行きましょ、ナンテンさん」
「はい」
「おっと」
話していた一人がドアの前に立っていたオレを押しのけ、後輩を連れてドアの前に立つ。
「失礼しまーす!」
そしてそのまま入っていった。ドアが閉まる。
「おいおい、程度が知れるな」
オレがこぼすと、再びドアが開いた。サキだった。
「ちょっと、部室の前で騒がないでくれる?」
「騒いじゃいないだろ。いいがかりか?」
「なんでもいいから、どっか行きなさいよ」
「はいはい」
サキが部室に戻った。もう一言言いたい気分になったが、やめておこう。うっぷんを晴らすチャンスは後日にある。
今度は入口から見て正面の廊下を進み、それから左に曲がり、一番奥の部屋の部屋へ。今度は迷わず、ドアを3回ノックする。
「返事ないね」
「まあ、ここが部室なら無人だろうしな」
ルートの声に返し、そのまま開けて入る。カギは開いていた。
中には、跳び箱、ハードル、ライン引き、マット、バスケットボール、順位フラッグなどなどが整頓されて置かれ、立って歩けるのは部屋のスペースの半分に満たず、特に入口付近が狭い。
「倉庫?」
ベーデンの疑問も尤もだ。
「一番左奥っていうとここしかないから、そういうことなんだろうな」
……
部屋の奥に積まれたマットの上で待つこと数分、部室のドアが開いた。が、開けたのはヤマトではなく白髪の老人だった。明らかに酔っており、学校関係者に見えない。しかし実際は学校関係者だ。
「おい、わしの寝床を取るんじゃない。降りんか」
手を軽く振って指図され、オレは大人しく降りた。
「わしはもう寝るから、後は勝手にやりなさい」
老人はそう言うとマットに寝転んだ。
「ほんとに寝ちゃったよ……どうするのコイシマル?」
「ほっとこう。ヤマトが来てからだ」
……
さらに数分後。今度こそヤマトがやってきた。
「コイシマルくん……と、ミヤマ先生は寝てるのか」
「先生?もしかして顧問?」
「そうだけど……そうか、非常勤の先生だから、コイシマルくんは見たことないのか。これも先に言っておけばよかったね」
ヤマトは眠っているミヤマに近づき、肩を揺する。
「先生、起きて下さい」
「うーん……なんじゃ、勝手にやれと言ったじゃろう」
「新しい部員が来てますから、紹介しないと」
「なに?新しい部員?……はて。まあええか」
のっそり起き上がったミヤマはオレを見て首を傾げた後、マットから降りた。
「じゃあ、改めて紹介するよ。この人がメダロット部顧問のミヤマ先生だよ。先生、彼が噂のコイシマルくんです」
「テンサン コイシマルです。よろしくお願いします」
「よろしくな」
オレが会釈すると、ミヤマ先生も小さく手を上げて挨拶を返す。
「土曜日にメダロット部に入ってくれたんです」
「かかかっ、そうか、そうか。お前さんが噂の転校生か。よかったなヤマト、これであと3人……いや、奇数はいかんな。ロボトルの練習をするなら2人ずつ対戦相手を組まんと」
「そうですね、あと4人は集めたいですね」
「なに、やっぱり廃部の危機にでも晒されてるのか?」
「えっ?あ、その……」
あと3人、というところにツッコみを入れると、ヤマトが口ごもる。
「なんじゃヤマトよ、話をしておらんのか?」
「え、ええ……」
「ふむ……コイシマル、お前さんはその予想が立っていてなおメダロット部への入部を希望したのか?」
「まあ順番は前後しますけど、とりあえず入部を取り下げる気はありませんよ」
「なるほど。じゃが、詳しい事情はきちんと話さねばならんじゃろう。ヤマト、後は2人でよく話し合いなさい。わしゃ、帰る」
ミヤマはヤマトにそう言ってから、部室をさっさと出ていった。
「で、いつまでに何人?」
「それが……最低でも5人必要なんだけど、期限は今週末までなんだ。ごめんよ、騙すつもりはなかったんだ、だけど、こんなこと言ったら入部してくれなかっただろ?」
「オレの考えを勝手に決めるな。入るって言ったら入るんだよオレは」
泣きそうになるヤマトに、そんなことはない、と強めに伝えると、表情がいくらか明るくなった。
「それ……本当?」
「おう」
「部長もやってくれる?」
「いいよ」
「ありがとう……なんて言ったらいいのか」
今度は別の方向に感情が振れてのことか、ヤマトがまた泣きそうになる。
「いいんだよ。それより部員集めのことだ。もうお前が散々試したんだろうし、普通に勧誘したんじゃ無理なんだろ?」
「う、うん」
「この学校でロボトル強いのって誰だ?」
「一番強いのが2組のアサヒ、その次がオサムかな。うちのクラスだとサキちゃんが一番強いと思うけど……どうして?」
「よし、当てが出来た。帰るぞヤマト、ベニちゃん迎えに行こう」
「えっ?……ああ、忘れてた!ぼくたち、また歯医者さんに行かなきゃいけないんだ。バスには乗らないから、ここでお別れだね」
「あ、そうなのか。じゃあ、また明日な」
「うん。また明日」