メダロット5? すすたけ村の転生者   作:ザマーメダロット

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息抜きで書いたしっちゃかめっちゃかな文章の方が好評っぽいのはたいへん辛く、これが原作ネームバリューの差なんだなあと実感してます。
それでも本作の執筆に専念します。文句がある人はメダロット5をクリアしてください。

細かくカウントしてみたらメダロットの構成や機能の説明だけでおよそ1000字使ってますね。そりゃ長くもなる。
アンケートの箇所はあと2話先くらい?


16.ひと足お先

このままではメダロット部が廃部になってしまうという事実を知らされた次の日。目が覚めてすぐ、家を出る父の声が聞こえた。そういえばゲームでは父に会い損ねてヘコむイベントがあった。オレもコイシマルになる前、子どもの頃は一日や一週間を長く感じて、親と遊ぶ約束がちょっと先延ばしになっただけでひどく気分を悪くした覚えがあるから、気持ちはわかるけれども、今は気にならない。精神年齢の問題より、母同様、家族としての実感をあまり持てていないことの方が大きいかもしれないが。

そういうわけでいつも通り出かける支度をして1階に降り、食事を終えると、母が未開封の男型ティンペットと、メダルを1枚持ってきた。補助系の所持熟練度があるキヌゲネズミ(つまりハムスター)のメダルだ。使わない。

 

「今朝お父さんが来て、これを預かったの」

 

開封してストレージに移し、箱を畳んでゴミ箱に入れる。ブリスターはプラスチックなので、紙の外箱とは分別が必要だ。メダルはとりあえず鞄のポケットのひとつに入れた。とうとう使わないメダルを受け取ってしまったし、メダルケースも買わないといけないか。

 

「うん、オレも声は聞こえてた。後で電話しようかな」

 

「……コイシマル、お父さんに会いたくなったりしないの?」

 

母が、心配するような目でオレを見る。

 

「それはそうだけど、今朝だって時間がないからすぐ出たんでしょ。忙しい時期なら仕方ないよ」

 

「そう。コイシマル、あなたはいい子だけど、もうちょっとくらいはわがままを言ってもいいのよ」

 

「じゃあ、お父さんが帰ってきたらそうする。じゃ、行ってきます」

 

「行ってらっしゃい」

 

 

……

 

 

家を出て、神社入口前で待っていると、遠くにヤマトとベニの姿が見えた。

 

「おはよう」

 

ヤマトが近くまで来るのを待ってから、オレは挨拶した。

 

「おはよう、コイシマルくん」

 

「おはようございます、コイシマルのお兄ちゃん」

 

二人が挨拶を返している間に、神社の方からもう1人、巫女服の女性がこちらに駆けてくるのが見えた。近づくにつれ、それがカナエだとわかった。オレがそちらをじっと見ていると、ヤマトたちも気付いたようだった。

 

「あれ?カナエさんだ」

 

こちらに来るまで待つと、全力で走って疲れたのか、カナエは少し息が荒かった。

 

「よかった、追いついた」

 

「おはようございます」

 

挨拶はしておこう。

 

「どうしたの?カナエさん」

 

「あのね、学校の図書室で、本を借りてきて欲しいの。すすたけ村昔話っていう、ちょっと、古い本なんだけど。お願いできるかな?」

 

ヤマトが尋ねると、カナエは息継ぎをしながら要件を説明した。

 

「なんだ、お安い御用だよ」

 

「その()()は面白いですか?」

 

「そうね……ベニちゃんには、少しむずかしいかな?」

 

そういえばゲームでは具体的な内容は明かされず、太陽の宝玉と月の宝玉が存在するという情報しかなかったな。後でヤマトに詳しく聞いてみるか。まあ、ここでは何も言わないでおこう。

 

「ごめんね、呼び止めちゃって。じゃあ、頼んだわよ」

 

「うん」

 

ヤマトの返事を聞いて、カナエは歩いて神社の方へ戻っていった。

 

 

……

 

 

バス停まで着くと、バスが来るまで少し余裕があるようだった。

 

「コイシマルのお兄ちゃん……」

 

「なに?ベニちゃん」

 

「あのね、バスが来るまで、ベニとロボトルをして欲しいです」

 

「コイシマルくん、ちょっとベニの相手をしてあげてよ。いいだろ?」

 

「わかった。じゃ、長引くとよくないから1対1な。パーツのやりとりもなし」

 

「ありがとうございます♪メダロット転送!」

 

ベニが転送したのは女・二脚・ガール型メダロット、サニヅラウのサニー……なのだが、一式ではなかった。両腕がパンダ型メダロット、メダシェンマオのものに差し替えられている。サニヅラウ一式だと攻撃パーツがないからか。

 

サニヅラウの頭パーツは特殊行動"反撃"。実はこれ、ゲームのようにバリアを張って攻撃を跳ね返すというわけではない。反撃は、攻撃しようとした相手のパーツに作用し、攻撃のために充填されたエネルギーを暴走させて壊す機能だ。例えると、水でいっぱいの水槽に石を投げ込んで水を溢れさせるような感じか。ただ、浅い水たまりに石を投げ込んでも大した水しぶきが立たないように、充填されたエネルギーが少ないと何も起こらない。そのまま攻撃されてしまう。

メダシェンマオの両腕は格闘攻撃"サンダー"だ。バランスの取れた性能だが、装甲が異様なまでに薄い。弱い攻撃一発当てれば壊せる。

 

つまり、そういうことだ。オレはルートにクロトジル一式を装備させて転送した。

 

 

……

 

 

クロトジルが右腕のライフルで攻撃。サニーの左腕を破壊。

サニーが右腕のサンダーで攻撃。クロトジルは左腕で受け、動きが止まる。

サニーの次の攻撃の直前にクロトジルが動き出し、ライフルで攻撃。右腕を破壊。

攻撃手段のないサニーにクロトジルがライフルで攻撃。サニーはクロトジルの右腕に対して反撃を試みるが、手数が多い代わりに低威力なライフルには効果がなく、撃たれ続けてサニーは機能停止。

 

 

……

 

 

ひどいロボトルだった。まあ、KBT型の性能のおかげというのも多少あるが。

しかし、オレ以外は満足した様子だった。

 

「やっぱりコイシマルのお兄ちゃんは強いですね」

 

「もうちょっと装甲高めの腕じゃないとキツいと思うよ」

 

「持ってるパーツはこれしかありません」

 

「それじゃ仕方ないか」

 

ロボトルが終わり、ちょうどいいタイミングでバスが来た。

 

 

……

 

 

放課後。サキは部活が忙しいのだろうか、教室をさっさと出ていった。

 

「ヤマト、そういや聞いてなかったんだけど、この学校って部活の掛け持ちはできるのか?」

 

「どういうこと?」

 

「いや、オオムラを勧誘しようと思ってるから、どうかなって」

 

「それは無理だよ!」

 

ヤマトがオレの言葉を勢いよく否定する。

 

「今メダロット部が部室にしている体育倉庫を、弓道部が物置にしようと狙ってるんだよ」

 

「メダロット部の廃部を望んでるってことか?」

 

「そういうことになるね」

 

「流石にひどい話だな……じゃあいいか、他の心当たりがあるから行こうぜ」

 

「うん?まあ、わかったよ」

 

ヤマトを連れて教室を出て2組へ向かおうとすると、ちょうど2組の方からアサヒとオサムがこちらに向かってきていて、ヤマトはそれを見ると数歩後ずさった。アサヒはヤマトを見てニヤリと笑い、2人はそのまま近づいてきた。

 

「あ、アサヒくん……」

 

「さあて、今日はどんなパーツが手に入るかな?」

 

アサヒの言葉に、ヤマトがさらに後ずさる。

 

「おい!メダロット部の部長のくせに、ロボトルの申し込みから逃げる気かよ」

 

「待てよ、部長はオレだぞ」

 

横槍を入れると、アサヒがようやくこちらを見た。あの日以来顔を合わせていないようで、オレのことはわかっていないようだった。

 

「なんだよお前、邪魔すんなよ。オレはヤマトと話してるんだぞ」

 

「ん?負けるのが怖いからヤマトとしかロボトルしたくないって?じゃあ仕方ないな。好きにしてくれ」

 

すかさず煽ると、アサヒはすぐに怒りの表情を浮かべた。

 

「都会から来たへなちょこ野郎のくせに、このオレに喧嘩を売ってるのか!?」

 

「弱い者いじめしかできないへなちょこ野郎が何言ってんだよ」

 

オレたちの言い合いの間に、ヤマトは少し迷うそぶりを見せた後、逃げ出した。

 

「あっ!待て!」

 

それを追って、オサムが走り出した。

 

「どうした?行かないのか?へなちょこ野郎」

 

「てめえ……ギッタンギッタンにしてやる!表へ出ろ!」

 

 

……

 

 

グラウンド、校舎入口から少し離れた位置でオレとアサヒが向かい合っている。殴り合いにならないかちょっぴり心配だったが、ちゃんとロボトルの方にやる気が向いてくれたようだった。

 

「パーツ1個だけ賭けたんじゃつまらないだろ。負けた方は勝った方の命令になんでも1つだけ従うっていうのはどうだ?」

 

「上等だ!メダロット転送!」

 

そんなやる気充分といった様子のアサヒの周囲に転送されたメダロットは3体。

 

1番機、男・車両・アマガエル型メダロット、ヒーラヌーラ。頭も両腕も応援行動"変化(速度)"。装甲は薄めだが充填冷却が速い。

 

"変化"はかなり特殊な機能で、パーツ自体が持つ通信機能でメダロット社やRR社にリクエストを送り、その部位のパーツを異なるパーツと交換してしまう。交換した後は1回使うか、2秒経つか、そのパーツに攻撃を受けると元に戻る。"変化(速度)"の場合、カブト型やクワガタ型のパーツを始めとする属性が速度のパーツの中からランダムに交換対象が選出される。格闘か射撃かすらランダムなので、変化パーツは基本的に使いづらい。

交換後のパーツを攻撃しても元に戻るだけで、元のパーツにダメージがフィードバックされたりはしないが、使用前に元に戻した場合はパーツを使っていないのに放熱時間に入っているわけなのでそれなりのリターンになる。

 

2番機、男・車両・バス型メダロット、シティラッシャー。頭パーツは装備しているだけで他パーツの充填冷却が高速化する"チャージ"、右腕は自分もしくは他のメダロットの充填もしくは冷却を一息に完了させる応援行動"急速チャージ"、左腕は急速チャージとは違い持続的に充填冷却性能を上げる"補助チャージ"。純正一式でも使い分けができる。

 

3番機、男・飛行・カワセミ型メダロット、リビニンリバー。頭部両腕全てが重力射撃攻撃"ブレイク"。頭パーツは額から、両腕パーツは肩から生えたカワセミの翼の先から発射する。リビニンリバーのブレイクは重力系としては比較的威力が高めで、成功が低めだ。

 

ブレイクもプレスと同様、ゲームでは具体的にどういう攻撃なのかわからない。どういうものかというと……

 

遅くて誘導のかかるエネルギー弾を発射し、何かにぶつかるか一定時間経過で起爆し、重力を発生させる。そして基本的に威力が低い。というところまではプレスと変わらない。違うのは発生する重力が弾を中心に外向きであり、強く、持続時間がごく短いこと。結果として、空気を強く押し出して爆風を生み出す攻撃になる。ただ、万が一エネルギー弾が直撃した場合は、発生した重力が直接パーツを破壊することになる。プレス同様、爆風は受けて直撃は避けるという欲張らない対処が基本となる。

 

「いい返事をありがとう。メダロット転送」

 

今回、リーダーはクロトジル一式のベーデンだ。ルートはジャングルギボンの頭部脚部、チェネッツの両腕を装備させてある。

 

「ん?」

 

「えっ!?」

 

「落ち着けルート、それも射撃パーツだから勝手はそう変わらん。ちゃんと指示も出すからやるだけやってみてくれ」

 

「わ、わかった」

 

ベーデンは転送された当初こそ驚いたようだったが、既に落ち着いている。編成の意図が伝わったのだろう。

 

「2体だけだと?なめてんのか!?」

 

「いや、単に2体しか持ってないだけ」

 

「は?……ぷっ、ははははは!!お前、そんなんで勝てるわけねえじゃねえか!」

 

オレが駒落ちで手抜きしているように見えたらしいアサヒが怒声を発し、オレが訂正を入れると、次は笑い出した。

 

「バカ笑いしてると後で恥かくぞ」

 

「言ってろ。負けた時の約束忘れんなよ!」

 

「合意と見てよろしいですね!?」

 

カバシラの声に、メダロット5体とメダロッター2人が身構える。慣れたものだ。

 

「それでは……ロボトルーー、ファイッ!」

 




アサヒ3番機がなぜリビニンリバーかというと、特別な理由はありません。
シティラッシャーがシロチョウメダルなのでその派生からミツバチメダルを設定し、ミツバチメダルの所持熟練度を撃つ・狙い撃ち・妨害に設定し、"じゃあ射撃系のパーツにしよう"と思って適当に目についたメダロットを選びました。なので所持熟練度は一致してますが、性格とパーツ属性は一致していません。

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