メダロット5? すすたけ村の転生者   作:ザマーメダロット

22 / 38
コノハってオサムのことなんて呼んでたっけ……


21.先の先

廃部回避が決まった翌日。午後のホームルームが終わった後。

 

「よう」

 

声が聞こえて、自分の席に座ったまま振り向くと、アサヒが軽く手を上げている。その隣にはオサムもいる。

同じく気付いたヤマトは鞄を置いて立ち上がり、机を回り込んでアサヒの前へ。オレ、アサヒ、オサム、サキ、ヤマトで円ができた。

 

「お疲れ。ここにいる5人が現状の部員全員だな」

 

「ああ、最後の一人ってやっぱりオサムくんだったの」

 

オサムの入部を伝えるが、サキやヤマトに驚く様子はない。

 

「もしダメだったらと思ってたけど、ちゃんと入部してくれてよかった。これで5人だね」

 

「入って当たり前みたいな言い方しやがって」

 

頷くヤマトを見て、オサムが肩を落とす。

そして今日も、サキは「じゃあ私、弓道部に行くから」と言って出ていった。

 

「で、なんか用事?」

 

「"なんか用事?"って……部室に行くんじゃないのかよ?」

 

改めて尋ねると、アサヒに訊き返された。

 

「いや、今日こそは図書室に行かないと」

 

「なんで?オバケ退治に行くのか?」

 

転校当日に聞いた、学校にいるオバケの話らしい。

 

「図書室にオバケがいるのか?」

 

「オレもコノハから"いる"って聞いただけだけどよ」

 

「1組の女子に退治するよう頼まれて放っといてるって、その話か」

 

「うっ」

 

これまた転校初日に聞いた情報をぶつけてみると、アサヒは言葉を詰まらせた。オサムも何も言わない。

 

「……オレ、オバケとか、そういうの苦手なんだよ」

 

「オバケかぁ……いやだなぁ、出たらどうしよう?」

 

「いや、ヤマトは一回神社で見てるだろ」

 

「なにっ!?見たのか!?」

 

実際に見たという話を出すと、アサヒが大声を出す。周囲の生徒の視線が集中するが、アサヒ本人は気付いていない。

大声に怯んだヤマトが、少し置いてから話し始める。

 

「えっと……こないだうちの神社にオバケが出てたんだけど、どうもメダロットだったみたいで。その時はコイシマルくんが追い返したんだ」

 

「メダロットだぁ?誰かのイタズラってことかよ」

 

「イタズラにしては手が込んでるというか、長く続きすぎな気がするけどね」

 

ヤマトの指摘は正しく、イタズラではない。イトが表立って動けばバレるリスクが高まるから、メダロットを使ってあれこれ工作――というには乱暴だが――しているというのが事実だ。

 

「でも、神社のオバケと学校のオバケって同じなのかな?」

 

「オレが来る前からいたみたいだけど、出始めた時期はどうなんだ?同時期なら同じと見ていいと思う」

 

「うーん、じゃあ同じなのかな?」

 

「ただのメダロットってことなら怖くともなんともねえな。ちゃちゃっと用事済ませようぜ」

 

いまいちピンと来てなさそうなヤマトをよそに、アサヒはすっかりメダロットだということにして話を進め、教室を出た。

そのすぐ後にはオサムが続き、オレとヤマトも、鞄を持ってアサヒを追いかけた。

 

 

……

 

 

「きゃあ!」

 

1階の廊下の東端。アサヒを先頭に図書室に近づくと、中から女子の声がした。

 

「コノハか!」

 

反応してアサヒがドアに手を伸ばしかけるが、その前に勢いよく開き、オバケメダロット3体が、足音もなく飛び出す。オレがいつも見るやつらだ。

 

「うわああっ!?」

 

アサヒは飛び退いて、素早くオレの後ろに隠れる。ヤマトとオサムは固まっている。オバケメダロットたちはその間に、オレたちを避けて隣の部屋に飛び込んでいく。アサヒの叫び声に隠れて、鍵を開ける音が聞こえる。

あらかじめ分かっていたオレは、アサヒを押しのけて、オバケメダロットたちを追う。

 

開け放されたドアの中へ駆け込み、ベーデンを転送しようと手首を口元まで上げようとしたそのとき。

 

「コイシマル!危ない!」

 

ルートの声がし、目の前には本棚が倒れてきた。慌てて数歩後ろに走る。

部屋の入口付近で、背中が誰かにぶつかって、二人とも尻餅をつく。

 

本棚が倒れ、ゴンッと鈍い音が立った。中に並べられていた本がいくらか散らばる。思っていたより遠かったようで、元々オレがいた場所までも届いていない。

 

手の甲で額の汗を拭い、隣を見ると、どうやらぶつかったのはオサムらしい。

 

「な、なにがどうなったんだよ?」

 

「悪い、本棚がな」

 

オサムは、オレが邪魔で前が見えず、何が起こったかよくわかっていないようだ。一言謝ってから立ち上がり、改めて部屋の中を見る。

 

図書室の隣の部屋は書庫か何からしい。本棚がびっしり配置されているのに、貸し借りを行うカウンターとか、読書・自習に使う机がない。

本棚は、目の前の一つ以外にも、そこかしこのが倒されている。

 

「くそっ、マジかよ……」

 

ゲームでは、箱を押して並べると本棚が上に持ち上がって出口が現れる、というギミックがあったのだが、流石にそんなものはないようだ。

代わりに、右奥にはドアがあり、これも開け放されている。オバケメダロットたちは、オレが本棚に驚いて止まっている間に、まんまと逃げおおせたようだ。

 

何にせよ、わかっていたのに逃げられてしまったのが悔しい。まさか、こんな三原則スレスレの手を使ってくるとは。

 

「うーわ、本棚倒れてるじゃん」

 

立ち上がったオサムが、惨状にため息をついた。

 

「オバケが逃げるためにやったんだろうな。オレたちだけじゃ片付けられないし、先生呼んできてくれるか?」

 

「わかった」

 

ドアの外に出てみると、校舎裏だった。オバケメダロットの姿はない。塀の近くに、本が数冊落ちている。オバケメダロットは塀を飛び越えて、学校の外へ逃げて行ったのだろう。

 

落ちていた本を拾って、一冊一冊ページをめくって砂を落としてから部屋に戻ると、40代くらいの男の先生が来ていた。先生は、本棚から散らばった本を拾って、壁際に積んでいる。オレが入ると、すぐにこちらに気がついた。

 

「テンサンくんだね。サメハダくんから事情は聞いたよ。この部屋のことは先生に任せておきなさい。危ないからね」

 

「わかりました。あと、そのサメハダがどこにいるか知りませんか?」

 

「タテハさんと図書室へ行ったよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

……

 

 

廊下側に出て、改めて図書室に入ると、ヤマト、アサヒ、オサム、コノハがいた。立ち話をしているようだ。

図書室の本棚はどれもスカスカだ。オバケメダロットが盗んでいったからだろう。

 

「オバケ、いた!?」

 

入るなり、コノハがサッとこちらを向き、鋭い声で問う。

 

「いたけど、中の本棚を倒して逃げてった。あっちも慌ててたみたいで、塀の近くにこれが落ちてた」

 

拾った本を手渡すと、コノハはそれを近場のカウンターに置く。緊張が解けたのかなんなのか、頬が少し緩んでいるように見える。

 

「ありがとう。何かお礼をしなくっちゃね」

 

「それならメダロット部に入ってくれ」

 

オレに向き直り礼を言うコノハに対して、入部を要求する。コノハは躊躇ったり嫌がったりせず、表情を変えない。その横にいるヤマトは小さくガッツポーズしている。

 

「あら、それでいいの?」

 

「それはこっちの台詞なんだけど、タテハがいいなら」

 

「そう」

 

コノハは両手を前で重ねてお辞儀する。

 

「よろしくお願いします」

 

「これで部員が6人になったね。じゃあ、みんな部室に案内するよ」

 

ヤマトが両手をパンと打ち合わせて言う。

 

「待って。わたし、ここの戸締まりをしなくちゃ」

 

「あと、ヤマトは結局本借りられたのか?」

 

オレが訊くと、ヤマトは首を横に振る。

 

「ううん。探したけれど、見つからなかったんだ。オバケが持っていったんだと思う。コノハちゃんの方はコイシマルくんが後から連れてきてくれる?ぼくは先にアサヒとオサムを部室に連れていくから」

 

「わかった」

 

「じゃあ、行こうか二人とも」

 

ヤマトはどういうわけか、アサヒに対して、もう苦手意識はないようだった。

 

「また後でな」

 

アサヒもオレとコノハにに一言かけてから、文句一つ言わずついていく。オサムもこちらに向かって軽く手を上げてから、その後に続いた。オレのいない間に何かあったのか?

 

「コイシマルくん?もう窓も閉めたから、外に出てちょうだい」

 

ぼーっと考えていると、コノハに声をかけられた。

 

「あ、ごめん」

 

コノハが図書室の鍵を閉め、オレたちは部室へ向かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。