メダロット5? すすたけ村の転生者 作:ザマーメダロット
どうなんでしょう。
「ここが部室?体育倉庫じゃない」
体育館1階。部室の前まで案内されたコノハの、第一声はそれだった。
「跳び箱とかボールとか入ったままじゃダメでしょう。部室として使うなら他のところに移して、掃除もしないと」
「きれい好きもいいけど、別の日にしてくれ。今日はサメハダとタテハの実力を見ておきたいんだ」
コノハがじっとオレの顔を見る。
「……なんだよ?」
「部長みたいなこと言うのね」
「そりゃ部長だからな」
「ふふ、わかってるわよ」
ドアを開けて中に入ると、ヤマト、アサヒ、オサムの三人が地べたに座って待っていた。積み上げられたマットの上で、仰向けのミヤマがいびきをかいている。
「ロボトルやるぞー」
「5人じゃ1人余っちゃうね。ぼくが抜けようか?」
「いや、ヤマトはヒョウモンと。サメハダとタテハはチームを組んでオレと対戦してくれ」
「パーツのやりとりは?」
「もちろん、ありじゃ!」
アサヒがルールについて確認すると、オレより先にミヤマが答えた。寝転がったまま。
「いつの間に起きたんだ?」
「かかかっ、勝負は非情なもんじゃよ。緊張感のないロボトルをしても、練習にならんからな」
振り返ったアサヒ他に、視線も向けずに笑って答える。
アサヒと組まされた上、パーツのやりとりもアリということになって、ヤマトが嫌な顔をするかと思ったが、そうでもないらしい。
まともに部活ができて嬉しいからか?
「コイシマル、流石に5人だと狭くないか?」
ヤマトの方を見ていると、横からオサムに声をかけられた。
「あー……じゃあオレらはグラウンド出るか。メダロッターが2人いると廊下でもちょっと狭いし」
……
体育館入口からやや離れた場所に、オレたちは立っている。
10メートルほど前方にオサムとコノハ。
「アッちゃんにハンデつきで勝った相手だ。油断はしないぜ」
「あら、そうなの?ちょっと自信ないかも。今回は2対2だし」
オサムが意気込み、コノハはその様子に口だけ気後れしながら、各々のメダロットを転送する。
リーダーのオサム機は男・多脚・タマムシ型のヴェイグマン。
瓜のような、緑色に縦筋が入った細長い形で体が構成されている、四本脚のメダロットだ。目を含む要所要所に仕込まれた赤色が映える。
頭部と両腕は全て格闘攻撃"ウェーブ"。成功が高く、威力も低くない。ゲームでは難敵となる機体で、アサヒより強かった。
コノハ機は女・浮遊・ウサギ型のピンクラビー。ボディカラーは赤っぽいピンクと薄いピンクの二色で、普通のピンクがない。
頭部パーツはウサギの頭なのだが、脚部パーツも雪うさぎから前足だけ生えた形になっているので、耳は4本ある。
頭部と両腕は全てガトリング。
「あれ、オリビアじゃないの?」
後から転送されたピンクラビーを見て、ヴェイグマンが意外そうに言う。
「攻撃パーツ持ってるのが1人だけじゃだめでしょ」
「そっか」
コノハが説明し、ヴェイグマンは納得した様子を見せる。ピンクラビーはじっとしたまま何も言わない。
「よし、オレもメダロット転送!」
転送するのはジャングルギボンにエルヘッドの左腕を着けたベーデンと、クロトジル一式のルート。
分厚く長い、茶色に塗装されたイノシシの牙が、テナガザル型たるジャングルギボンの左肩から生えている。本来こういうことをすると重量バランスが崩れてよくないのだが、ベーデンなら大丈夫。
しかし、普通は大丈夫じゃないことをしているだけあって、オサムが細い目を更に険しくした。本来守られる側のリーダー機が、他の機体のダメージを肩代わりする援護パーツをつけているから、というのもあるだろう。
「5秒前!4、3」
オレが右腕を頭上で振ってカウントダウンを始めると、メダロッターとメダロット、それぞれが身構える。
ベーデンは今回、左腕で胸を庇うように構えている。流石に部活では、サキやウスモン相手にやったようなロボトルはできない。
「2、1、0!」
「タマサブロウ、行けーっ!」
「カロチーヌ、味方に当てちゃダメよ」
ヴェイグマンのタマサブロウが、4本脚をシャカシャカ動かして駆ける。狙いはベーデンか。
後方ではピンクラビーのカロチーヌがスーッと横にスライドしながら、同じくベーデンに銃口を向けた。
「1対1を作るぞ。ルート、とにかく2番機を撃て!」
「りょーかい!」
ベーデンの方は前を向いたまま頷き、タマサブロウに向かって走る。
リーダー同士が格闘レンジに入る前に、ルートとカロチーヌが同時に射撃。カロチーヌの左腕ガトリングを、ベーデンは真横に方向転換して回避。ルートの右腕ライフルがカロチーヌの左腕を破壊し、連射が途中で止まった。
「避けるの!?」
互いの銃撃音の終わり際に、コノハの声が聞こえた。
ピンクラビーの頭と腕は、充填冷却も成功も高い代わりが、脆い。その成功も、ベーデン相手では発揮できなかった形だ。
撃たれて左半身をのけぞらせたカロチーヌが、ルートの方に視線を向ける。
ここで、正面衝突する勢いで向かっていたベーデンが、タマサブロウの間合いに入った。
左腕を盾と構えたままのベーデンに対して、タマサブロウは右腕を引いてから突き出す。
「そりゃあっ!」
太く長い腕でありながら、その動作は素早い。
だが、ベーデンは走るスピードを落としつつ、上半身をのけぞらせて避けた。そのままタマサブロウの背後へ抜ける。
タマサブロウは振り向いて、後ろへ離れていくベーデンを見ると、そのまま追いかけていく。
「タマサブロウ、そのまま追い込め!」
「カロチーヌ、もっと離れるわよ!」
ベーデンとルートの板挟みになるのを嫌っての指示だろう。カロチーヌもルートを見たまま頷き、横へスライドしていく。
分断完了だ。
「よし。ルート、ここからはガトリングの撃ち合いで行こう。壊れるまで左腕だけで攻撃」
「防御は?」
「する。あくまで、壊れるまでだ」
「りょーかい!」
ルートとカロチーヌが互いにガトリングを浴びせ合う。カロチーヌ側は頭パーツも使い、ルート相手には性能を発揮して装甲をどんどん削っていく。すぐに互いの両腕が破壊され、頭パーツでの撃ち合いになった。
「ミサイルはダメよ!迎撃して!」
弧を描きつつも対象に自己誘導するルートのミサイルが、迎撃を試みるカロチーヌの弾幕をすり抜けて、その足元で炸裂する。爆風で浮き上がったカロチーヌに、更にミサイルが殺到。カロチーヌの背中からメダルが排出された。
「ああっ」
「やった!次はあっちに……あっ、弾がないや」
「げっ、もうやられたの!?タマサブロウ、早く攻撃しろ!」
「追いつけないんだって!」
その間ベーデンはひたすら走り回り、タマサブロウから逃げ続けていた。距離は離しすぎずにキープしている。
「ルート、メダフォースチャージ!」
「おっけー!」
踏ん張って力を溜め始めるルートを見て、オサムが
「一旦あっちを機能停止させ――」
「行かせると思うか?」
「うわっ!」
反転して急接近したベーデンが、オサムの指示を遮るかのように、タマサブロウの脳天めがけてテナガザルの右腕を振るう。
そこを庇った左腕は一撃で破壊され、のけぞったタマサブロウは倒れないように数歩後退した。
「いっ……この!」
タマサブロウが反撃し、ベーデンがかわす。無視してルートの方へ向かおうとして、回り込まれる。また攻撃して、かわされる。
そうこうしている内に、ルートは準備を終えた。
「コイシマル、行けるよ!」
「よし!一斉射撃だ!」
「うん!」
ルートはタマサブロウの方に向き直り、両拳を握って前に突き出す。光が全身の装甲から滲み出し、弾切れした頭パーツの銃口に光が満ちる。
「やあああああ!!」
銃口から光線が放たれ、曲がり、タマサブロウの脚を撃ち抜く。脚部装甲を0にはできなかったものの、動きが止まった。
「ベーデン、もういいぞ!」
「ってことで、これで決着だよ」
ベーデンの右腕がタマサブロウに迫る。
「ひーっ!」
右腕、脚部、頭部を順番に殴打し、いずれも一撃で破壊。タマサブロウは機能停止した。
「うわあ……こりゃアッちゃんも負けちゃうわけだよ」
「新部長は随分と容赦ないのね……」
「お前ら、もうちょっと好意的な感想は出てこないのか?」
2人してため息をつかれて、オレまでため息をつきたくなった。
……
部室に戻ると、ヤマト対オサムも決着がついていたらしい。マットにあぐらをかいているミヤマを交えて、反省会をしているようだ。
オレたちが入ると、ミヤマがこっちを向いた。
「おう、お疲れさん。無事に練習試合もできて、いい感じに部がまとまって来たな。明日の期限を待たずして、公式試合に出られる6人まで揃えるとは大したもんだ」
「公式試合?オレたちが?」
アサヒが素っ頓狂な声を上げた。
「そりゃあ、部活なんじゃから、目標は対外試合で勝つことじゃろうが」
「あー、オレ部活なんて初めてだから、すっかり頭から抜けてたわ」
「いや、そうじゃなきゃ部活の意味ほとんどないでしょ」
アサヒが笑い、同じ身上であろうオサムがツッコむ。
「今日はもう遅い。みんな帰りなさい」
ミヤマにそう言われて、今日は解散することになった。
……
部活中大人しくしているように見えたヤマトだったが、帰り道では廃部回避について随分はしゃいでいた。
それにつられてテンションを上げて、神社前で別れた後、どっと疲れが出た。すぐに家につき、ドアを開ける。
「ただいまー」
「おかえりなさい」
母はちょうど夕飯の支度をしているようだった。振り向いて、首をかしげる。
「コイシマル、何かあったの?疲れるみたいだけど」
「部活でちょっと……ご飯できてる?お腹すいた」
「そうね、食べながら話しましょうか」
……
食卓に着いて、学校での近況を話した。母は食事をゆっくり食べながら、オレの目を見て話を聞いていた。
「そう、廃部にならなくてよかったわね」
「うん。ようやく一息つけそう」
「いつかコイシマルたちが、ロボトルの大会に出たりもするのかしら?」
「そのうちあると思うけど……先生に聞いとく。ごちそうさま」
「はい、お粗末さま。疲れたなら、お風呂に入って夜ふかしせずに寝るのよ」
「はーい」
言われた通り、オレは早めに床についた。