メダロット5? すすたけ村の転生者   作:ザマーメダロット

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25.他校観光

土曜日。せいどう学院から招待の電話があった翌日。

 

目が覚めると、昼を回っていた。

今日は午前に用事がないので、安心して眠りこけていたというところだろう。

体を起こし、ベッド脇に置いたメダロッチの音声をオンにして、おはようと声をかけた。

 

「おはよう、コイシマル。って、もうこんな時間か?珍しいね」

 

「おはよー。いいでしょ別に寝てたって。今日は休みなんだし」

 

「別に悪いとは言ってないだろ」

 

2人して朝から元気なことだ。

 

着替えて鞄を背負い、1階に降りる。リビングの母と目が合った。

 

「おはよう」

 

「おはよう、コイシマル。今から出かけるの?ご飯は?」

 

「うん。だからお茶漬け食べる」

 

帰り道で腹が減るかもしれないが、バスの時間を考えるとあまりのんびりしてもいられない。

オレはお茶漬けをかきこんで、家を出た。

 

 

……

 

 

江戸紫市、学院前停留所でバスを降りた。

せいどう学院の敷地内からは、部活動に勤しむ生徒の声や、楽器の音が聞こえてくる。

今でこそメダロット部だが、前世ではずっと帰宅部だったのでやはり、休みによくやるなあという感想しか出てこない。

すすたけ小も恐らく弓道部他運動部はそうなのだろうが、メダロット部でそうするつもりもない。

 

門を見る。先週日曜、ハンカチイベントをこなした時と同様に、今日も閉まっている。

その脇の守衛室の前に立つと、中の守衛の男が窓を開けた。オレは軽く会釈して、先に口を開く。

 

「こんにちは。すすたけ小学校メダロット部のテンサンです。せいどう学院からロボトル大会への招待のお電話をいただいたので、返事と下見で参りました」

 

「ああ、そう。といっても、アラクネ学院長は少し前にお帰りにになったから……ちょっと待ってて、問い合わせてくる」

 

守衛は窓を開けたまま、奥の電話で少し話した後、首からかける入場証を箱から1枚取り出し、すぐに戻ってきた。

差し出された入場証を受け取る。

 

「門の鍵を開けたから、入っていいよ。職員室は、門を通ってすぐ左側の建物の1階にあるから」

 

「ありがとうございます」

 

言われた通り、門を開けて入る。

 

……敷地がとにかく広い。すすたけ小は平均的なの小学校という感じだが、その4~5倍くらいか?

目の前にある、2階の連絡通路で繋がれた2つの建物が校舎だろう。

さらに右の方には教会が見えるし、校舎のさらに奥には寮もあったはずだ。

寮といっても、安っちい学生寮ではない。食堂や浴場が併設されている。

 

この学校には、ロボトルが強ければ待遇がよくなるというシステムがあるのだが、それは寮にも適用されている。

上位陣は個室、そうでない者は4人部屋、とかだったか?

 

左側の校舎1階に入ると、土曜だけあって廊下には人がほとんどいない。職員室はすぐに見つかった。

中へ入ると、内装は職員室そのものでありながら、人はスーツと修道服がごちゃまぜになっている。

さすが、敷地内に教会を有するだけのことはある。

 

「失礼します、すすたけ小のテンサンです」

 

オレの声に立ち上がってこちらに向かってきた教員(のはず)も、シスターだ。

 

「こちらへどうぞ」

 

ついていくと、職員室内の応接スペースまで案内された。促され、お互いテーブルを挟んで向かい合わせで、ソファに座る。

シスターは一礼し、話し始める。

 

「すすたけ小学校のテンサンさんですね。わたくし、せいどう学院のイズモと申します。下見という風に伺っておりますが、我が校のロボトル大会にゲスト参加していただけるということでしょうか?」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。学院長にはわたくしの方から伝えておきます。構内の見学に関してですが、本日は授業がないため、教室には入れません。大会当日は、一部の教室を見学の方向けに開放いたします。こちら、大会の実施要綱になります」

 

シスターがA4のプリント1枚を机の上に置いて見せる。

 

大会名も書いてある。

……"2027年度 せいどう学院春期プレースメントロボトル大会"?いや、なんとなく意味はわかるが……

 

「……すみません、これ何の大会なんですか?」

 

「我が校がメダロッター育成に力を注いでいることはご存知ですか?」

 

「まあ、はい」

 

「我が校では年に2回、ロボトル大会でクラス替えを行っているのです。在籍クラスに応じた特典と課題があるので、生徒たちのクラス分けが適正になるように調整する意味があります」

 

こともなげにシスターは言うが、ほぼカースト制だ。課題というのがペナルティのことだと、オレは知っている。

まあ大人たちは、ペナルティの内容が大したことはないと考えているのだろう。

 

「それと、他校の生徒を招待するのはともかく、なんでうちなんでしょうか?」

 

「招待する学校は、つど学院長が決定します。基本的にはロボトルが強くて有名な学校が招かれます」

 

「うち、実績ゼロなんですけど」

 

「ええっ?変ですね……ごめんなさい、わたくしからはちょっとお答えできません」

 

小さく唸ってから、頭を下げて謝るシスター。

 

「いや、大丈夫です。なんとなく気になっただけなんで」

 

「他にご質問はございますか?」

 

「パンフレットありますか?入学案内とか……」

 

「そちらにございますよ。ご自由にお取り下さい」

 

シスターが手をオレの少し横に向ける。後ろを見ると、パンフレットラックに入学案内がずらっと並んでいた。

1部取り、そこに大会の要綱を挟む。

 

「もう大丈夫です」

 

「今日はわざわざお越しいただきありがとうございました。ガードマンに連絡しておきますので、お帰りの際はこちらに寄っていただく必要はありません」

 

「ありがとうございます。失礼します」

 

入学案内を手に持ったまま職員室を出て、校舎を出た。

 

「どうするの?それ」

 

校舎の壁によりかかったところで、ルートの声がした。

 

「いや、大したことじゃないんだけどな。ここって私学だから」

 

入学案内を開く。いかにもエリート校という雰囲気で、意識の高そうな文言が並んでいる。ついでに学院長のでかでかとした写真。性格が透けて見えるようだ。

問題の制度についても、"課題"の内容だけぼかして、上位クラスの高待遇をメインに書かれている。

 

そして一番の注目ポイント、学費を確認し……

 

「うわ、たっか……」

 

べらぼうな金額に、二の句が継げない。

スカウト組(あるいはその親)が、喜んで転入する(させる)気持ちも、ちょっとだけわかった気がする。

 

 

……

 

 

シスターの説明を受けた後、敷地をぐるりと回ってみた。

体育館、プール、男子寮・女子寮、教会……ほとんど全部が立ち入り不可なので、外観しか見られなかったが。

意外なことに、男子寮内の食堂は外部の人間も利用できるとのことなので、メニューをメモしておいた。オススメはカレーらしい。

 

「校舎の中にコンビニがある小学校なんて、ここくらいじゃない?」

 

「大学とかなら、敷地内にコンビニは割と普通だと思うけど。小学校でってのはなあ……」

 

そのコンビニで買ったジュースを飲みつつ、呆れるベーデンに同調する。

 

今オレは、元の本校舎前、つまり校門付近から、本校舎2つの間……連絡通路下を抜けて、まっすぐ進んでいる。

その先には第2校舎と、いくつかの動く影が見える。敷地がばかに広く、遠目にはなんなのかわからない。

あれが今日のメインイベントなので、知ってはいるのだが。

 

黙々と歩くうち、校舎の前にいるものの輪郭がはっきりしてきた。

6体のメダロットと、1人の女生徒だ。その指示で、メダロットたちが動き回っている。3対3でロボトルの練習をしているようだ。

 

ここまで近付くと、はっきり見えるのはお互い様のようで、メダロットの一部が動きを止めてこちらを見た。

それにつられて他のメダロットもこちらを向き、そうするとメダロッターの女生徒も、何事かとこちらを睨んだ。

知った顔……以前、ここの校門前で"T.K"の刺繍が入ったハンカチを落とした、あいつだ。

 

「ああ、おかまいなく。どうぞ、続けて続けて」

 

「いつから見てたの!大会のための特訓だったのに!」

 

片手を上げて軽く横に振って挨拶すると、目つきに違わぬ尖り声が返ってきた。メダロットたちが黙って道を空け、女生徒がずんずんと歩いてくる。

額に汗が滲んでいる。休みの日も長時間練習しているのだろう。

それとどうも、オレのことは覚えていないらしい。

 

「クラス替え大会ねえ。せいどう生は大変なんだな」

 

「……ここの生徒じゃないなら、別にいいけど。まさか、転校生だなんて言うんじゃないでしょうね?」

 

「もちろん違うよ。ただの……ゲスト参加校の部長」

「なんですって!?」

 

参加校、辺りで食い気味に叫ばれた。オレは両手のひらを向けて制する。

 

「落ち着けよ。ちょっとやそっと練習を見た程度で勝ち負けが動くもんじゃないだろ、ロボトルって。そんなにムキにならなくても」

 

「わたしたち学院生はあなたみたいに甘いこと言っていられないの。もし大会で最下位になったら、"特別補習"の名目で、学院指定のメダルをパートナーにさせられるのよ」

 

「それだけ?」

 

「わかってないわね!」

 

三度怒声が飛ぶ。これは理不尽だと思う。

 

「その間、大切なパートナーを学院に取り上げられちゃうのよ!」

 

「なるほど。じゃ、辞めたら?」

 

「……え?」

 

女生徒は呆気にとられた様子で、目を見開いた。

 

「だって話を聞く限り、ろくな学校とは思えないし。なんで転校しないんだ?」

 

「それは……確かにプレッシャーはきついけど、最強最高のメダロッターを目指すには、最高の場所だもの。わたしだって、実力を買われてスカウトされて来て、今は2軍のリーダーにもなったのよ」

 

「"だから、自分以外の誰かがパートナーを取り上げられてるのは仕方ない"って?」

 

「!!」

 

指摘すると、女生徒はみるみるうちに色をなす。

 

「なによ、知った風な口を利かないで!」

 

「嫌なら黙らせてみればいいだろ、お得意のロボトルでさあ」

 

「~~っ!」

 

オレがメダロッチを構えると、女生徒もそれに応じた。

 

 

……

 

 

夜。

オレは歯を磨いて自室に戻り、これから寝るところだ。

 

「本当によかったの?」

 

そんな時に、メダロッチからベーデンが問いかけてきた。

 

「何が」

 

「というか、どうしてあそこまでしたの?」

 

「答えになってないぞ。えっと、せいどうでのロボトルの話か」

 

ベーデンの質問の意図はわかっている。

サキやウスモンなんかは、こっぴどくやる理由があった。しかしどうして赤の他人に、ということだろう。

 

「どうもこうも、昼間に言った通りだよ。じゃ、おやすみ」

 

オレはメダロッチの音声を切って、床についた。




ここまで女生徒の名前を出すタイミングがありませんでした。
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