メダロット5? すすたけ村の転生者 作:ザマーメダロット
あれから5日間、部活ではランダムチームを組んでのロボトルのみをひたすら行った。
普段大事なロボトルはベーデンに頼っているので、ルートはあまり育っていなさそうとは思っていたのだが、
一番伸びて欲しいヤマト、というかドーナンは、まだまだパーツのポテンシャルを引き出せる段階まで遠い。成長しているのは確かなので、次の機会に間に合うことを祈ろう。
……
土曜日の朝。
時間ギリギリにせいどう学院まで来たオレの手には、花の種が入ったビニール袋がある。
大会当日だというのに母にお使いを頼まれ、大会が始まるまでの時間でメダロデパートへ行ってきたからだ。
心なしか店員がピリピリしているようだったが、この時期に何かあっただろうか?
覚えていないなら、どうでもいいか。
校門をくぐってすぐのところで、ヤマトたち部員が集まっていた。オレのことを待っていたようで、こっちを見るなり口々に挨拶してくる。
ちなみに、招待が急だったために、顧問のアキは来られないということは聞いている。ミヤマも、事情は知らないが来ないという話だった。
「おはよう、ギリギリになってごめん。」
「まったく、こんな時に重役出勤なんて、何考えてるのかしら」
「ごめんって」
「受付はわたしが済ませておいたから。はい、これ」
コノハが差し出した、進行プログラムやトーナメント表が書かれたプリントを受け取る。
「不在でも大丈夫だったのか。ありがとうタテハ」
「あとさっきここの人が来て、もうすぐ開会式が始まるから、準備ができ次第グラウンドに来るように、だそうよ」
「了解。じゃあ行くか」
そういえば、ゲームでは開会式なんてなかったような……まあ、それもどうでもいいか。
……
グラウンドの周辺にはテントがいくつか設営されていたり、学院の生徒が観客として集まっている。外部の人間や父兄はいないようで、運動会や公式大会のような雰囲気ではない。
非公開の学内行事ということは先週もらったプリントにも書いてあったが、こうして制服を着た生徒でいっぱいな中に放り込まれると、アウェー感がすごい。制服のない学校なので余計に。
スタンドつきマイクが置かれた号令台から少し離れたところに、参加チームが整列している。せいどう学院の生徒のみで全15チームあるという話なので、100人いないくらいか。
グラウンド内に立っていた職員に案内されて、オレたちが生徒の塊の端っこに立ってすぐ。
テント下の長机、放送席に着いている女生徒が、マイクをトントンと叩き、スピーカーからその音がした。時間になったようだ。
「これより、2027年度、せいどう学院春期プレースメントロボトル大会を始めます。まず初めに、学院長からご挨拶があります。学院長、お願いします」
別のテント下からひとりが立ち上がり、号令台に上がってマイクを叩く。
フォックスフレームの眼鏡(いわゆる"ざます眼鏡"だ。悪い意味で似合っている)をかけた、40代くらいの女性だ。
ゲーム通りのビジュアルで、オレは人知れず安心した。
「皆さん、おはようございます。――」
背後から話し声が聞こえたりはしないところを見ると、アサヒとかも大人しくしているようだ。
時候の挨拶や、どうせ心にもないであろう話を聞き流しながら、ちらっと横を見たところ、遠くにヒコオの姿があった。金髪が目立っている。
数分後、学院長が一礼したところで、観客や学院生とともに、聞いていなかった話に拍手を送る。
「では、10分後に1回戦第1試合を行います。縦割り5班と、縦割り7班は、準備をお願いします」
どうやら、来賓だの選手宣誓だのもなく、サクサクと進行するらしい。
その放送で、オレたち参加者もグラウンドから散っていった。せいどう生の多くは校舎へ向かい、オレたちは観客に混ざって椅子に座った。
アサヒが伸びをしている。
「あーっ、疲れた。なんでロボトルするのに突っ立って長話を聞かなきゃいけねえんだよ」
「この大会は短い方よ。学校内部の大会だし、外からの見学も入れてないから最低限の挨拶だけみたいね」
「運動会とは違って、入場行進の練習とかもさせられないし。確かにマシだな」
サキの言葉に、オサムも頷く。
「コイシマルくん、うちのチームは第
隣のヤマトがオレに訊く。
「8。最後。相手は"せいどう4軍"」
「それって、強いチーム?」
「せいどう
「あれ?それじゃ何軍の方ばっかり勝つんじゃ……」
「かもな」
……
第3試合まで、せいどう生縦割り班同士の対戦が続く。
拍子抜けしたようで、アサヒが「なんだ、大したことないじゃん」などと言うし、他の部員も他校にいることでの緊張はほぐれてきているようだった。
これから、第4試合。せいどう1軍とせいどう縦割り1班の対戦だ。
グラウンドに両チームが離れて並び、メダロットを転送。
1軍側のリーダーは当然、ヒコオとネクウ(当然シンザン一式)だ。
レフェリーのカバシラが手を振り上げて、号令とともに下ろす。
観客席の生徒たちの歓声の中、メダロットたちが動き出す。
縦割り1班の2・3番機が、ネクウに向かって行く。だが、ネクウが一番速い。剣の生えた右腕を構えて走り、間合いに入った順に2機、胸を切り裂いた。
崩れ落ちたそのメダロットたちの背中から、メダルがピンと弾き出される。
パーツ使用後の冷却で走るスピードが鈍ったところに、縦割り1班側のリーダー機が右手のラッパからプレスを発射。
それを見たヒコオが何事か指示すると、ネクウは動きを止める。そのままプレスが直近で炸裂し、重力フィールドが展開。ネクウはその中で振り回され、最後に地面に叩きつけられた。
左腕パーツがスパークしている。衝撃をもろに受けて、装甲が0になったようだ。
重力フィールドが消える。
縦割り1班リーダー機が次弾発射の構えに入り、ネクウは起き上がって駆け出す。プレスが発射されるよりも前に、ネクウは間合いに敵を捉えた。
くるみ割り人形のような頭部に深々と剣が突き刺さり、力の抜けた右手のラッパからエネルギーが静かに放散する。背中からメダルが落ちた。
決着を告げるレフェリーの声とともに、歓声が大きくなった。
ここまで、1軍の2・3番機は一切動いていない。つまり実質1対3で、圧倒的に敵を叩き潰している。損害はパーツ1個のみ。
「な、なんだよ、あれ……」
一方、オレたちのいる観客席。
沸いているせいどう生とは対照的に、アサヒが口をあんぐりと開いている。その隣のオサムは何も言わないが、細い目をさらに細めて、グラウンドの方を睨むように見ている。コノハの眼鏡がずれた。
「うーん、ヒコオくんはやっぱり強いなぁ。やっぱりコイシマルくんに頑張ってもらわないと」
困っているのか、感心しているのか。ヤマトのコメントは、そもそも敵としての反応ではない。
「ヒコオと知り合いなんだっけ?」
「あれ、話してなかったっけ。ヒコオくんは転校する前、うちの部員だったんだよ。機会に恵まれなくて、対外試合の記録はないけど」
「当たったらあの子はあんたがなんとかしてよね」
サキがこちらをちらっと見て、言葉尻を上げてそう言うが、表情の方は特段沈んだ風ではない。
「いいけど、お前らにも頑張ってもらうのは変わらないからな」
「はいはい」
今度はこちらを見もせずに返事をする。
大人気なくベーデンに本気を出させた現場を見たのはヤマトとサキだけだったから、部員の間でもそこだけ意識の差があるということか?
「オサム大丈夫か?」
じっと前を向いたままのオサムに声をかけてみると、ようやくこちらを向いた。
「ああ……おれは動かなかったやつらが気になるんだよな。あれって援護タイプの機体だろ?なんで前に出なかったんだろうって」
「冷静だな」
「せいどう学院の1軍ってことは優勝候補だし、こうなるのも想像ついてたっていうか……そんなとこ」
「なるほど。まあ、動いてなかったのはハンデとかパフォーマンスのつもりなんじゃねえかな。出なかったというより、リーダーのヒコオが出させなかったんだろ」
「そんだけ自信と実力があるってことか……なあコイシマル、勝てそう?」
「そりゃあ、そのためのメンバー選出と練習をしてきたつもりだし。でも負けたって死ぬわけじゃなし、もっと気楽に――」
「負けていいわけないでしょ!!」
オサムをリラックスさせようとしたところで、オレが負けてもいい風なことを言ったせいか、サキが猛然と割り込んできた。
あれよあれよという間に部員全員が会話に参加し、みんな部室にいる時のようなテンションになった。おかげでヒコオショックも抜け、結果としてはいい方へ転んだといえる。
少し後で、近くのせいどう上級生に、うるさいと怒られた。
クラス替え大会当日に違法パーツが捌かれるのは前後がおかしいと思ったので、その点を変えてあります。デパートで普通に買い物できたのはそのためです。
この後コイシマルたちの1回戦を入れると長くなりすぎるのでここで切りましたが、それはそれで4000字には届いていないのが辛いところ。