メダロット5? すすたけ村の転生者 作:ザマーメダロット
『1回戦第8試合、せいどう4軍対すすたけ小学校メダロット部を行います。両チームの選手は……』
第7試合が終わり、オレたちすすたけ小学校メダロット部と、せいどう4軍が呼ばれた。ここまでに、2軍と3軍は当然勝っている。
試合の時間直前に、オレはサキと、トイレに行って戻ってきたオサムの様子を確認することにした。
「大丈夫か?」
声をかけてみれば、オサムの手に力が入っているのが目に入ったが、サキの方はいつもと変わらない。弓道部の活動で慣れっこなのだろう。
「ちょっと緊張してるけど、大丈夫」
「あんたと違って開会式の30分前には来てたし、最初から万全よ」
「そういう文句は反省会まで取っとけよな。じゃあ、行くか」
「みんな頑張ってね。ぼくらも頑張って応援するよ」
ヤマトたち控えメンバーに見送られつつ、オレたち出場メンバーはグラウンド中央へと出ていく。
同様にしてオレたちの前に見えてきたせいどう制服の女子三人が、せいどう4軍。その真ん中に教会前で会ったやつがいて、どうもリーダーらしい。変わらず、余裕のある様子だ。
こういう公的なロボトルをするのは自分も初めてなわけで、オレ自身は多少の緊張がある。少しでも頭をすっきりさせようと息を吸い、吐くと、もう礼の距離だった。
「ふふっ……分かってるわね、あなたたち」
「は?」
レフェリー含む外側に聞こえない程度に相手リーダーが言ったのに、オサムはきょとんとした。肘でつついてやればハッとしたので、そのまま互いに礼をする。
「よろしくお願いします」
それから離れて配置につき、散発的にメダロットを転送する。オサムはヴェイグマンのタマサブロウ、サキはジャンガリアンのスズキ、オレはクロトジルのルート。
せいどう4軍は……同種機体が3体。鬼とも竜とも形容できそうな頭部に、引き伸ばして柔らかくしたローラーブレードのような、車輪つきの尾。ずばりナーガ型のメダロット、赤い竜"ナガラジャ"だ。
結構なレアキャラが降って湧いたために、なぜ、という感想が生まれたが、一旦忘れることにした。今考えるべきことは、いかにして勝つかだ。
「両チームとも、準備はよろしいですね?」
アイコンタクトを取る間もなく、レフェリーのカバシラがフィールドの両サイドを見回す。6体のメダロットは、言われるまでもなく戦闘態勢に入っていた。カバシラがひとつ頷く。
「それでは、ロボトルーー……ファイッ!」
「前進!」
開始と同時にかけた号令で、自軍メダロット3体が前進する。ルートとスズキはそれぞれ右腕パーツでの牽制的な射撃を開始している。取り決め通りの動きだ。
整備されたグラウンドで、車両タイプのナガラジャは地の利を得られるが、ルートやスズキの銃撃をかわせるほどではない。それぞれこちらを向いたまま後ろへ横へとくねくねと走りながらダメージを蓄積させている。
ロボトル開始から数秒、3機が額に走る縦スリットを光らせた。対処必須な攻撃の予兆に、オレは叫ぶ。
「レーザーだ!」
つんのめるようにして跳ね上がったタマサブロウの胴体の下の地面を、白い光線が焼く。同じくレーザーに狙われたルートは横っ飛びにかわし、スピードを出せないスズキの左腕パーツを3発目のレーザーが掠めた。
メダロッチに表示されているスズキの左腕の装甲値がまたたく間に0になって、サキが舌打ちした。タマサブロウが細い脚でもしっかりと着地している横で、空中に浮いたままのスズキが、撃たれた勢いで半回転ほどしていた。
「コイシマル、次は!?」
「このまま行く!」
「了解、タマサブロウ、思いっきり行け!」
「思いっきり行くともさ!」
リーダーたるナガラジャ1番機をレンジに捉えたタマサブロウが右腕を引いて溜めを作り、真横を駆け抜けざまに一発殴りつけた。ガードした1番機の背後で上半身を捻って次の狙いをつけた。さらにそのタマサブロウの背中を、他の2体のナガラジャが見ている。
高威力レーザーの連打、速攻寄りの戦法か?
「ルート、2番!」
「スズキくんは3番機!」
だが、さらにそのナガラジャたちを、オレたちやルートたちは見ていた。頭部に狙いを絞った射撃攻撃で、ナガラジャを揺さぶる。
レーザーはスリットから真っ直ぐ発射される以上、視線を僅かに動かしただけで命中率が大幅に下がる。1度目はこちらの射撃に耐えながらの攻撃を強行できたが、2度となると機能停止のリスクがちらつく。メダロットはロボットじゃないからな。
狙い通り痛みや機能停止への恐怖に負けてか、ナガラジャたちのレーザーはあらぬ方向に飛び出しては霧散した。
援護を阻止したことで、振り返った1番機にタマサブロウの左腕が叩きつけられた。防御はしたが、腕と脚の装甲が尽きた。メダロッターのリアクションはどうかと、メダロットたちを越えた先へ視線をやると、なにやら呆気に取られているように見えた。
「行けるぞ! タマサブロウ、下がれ!」
手応えを感じたらしいオサムの指示で、タマサブロウがさっと身を引く。射線を開けるその指示を聴いて、オレも気を取り直した。
「ルート、一気にトドメだ!」
「りょーかい!」
「スズキくん、1番機にキヌゲジュー!」
ルートとスズキがガトリングを撃ち込めば、体勢を立て直す間もなく、ナガラジャ1番機はその場で崩れ落ち、背中からメダルがピンと跳ねた。
「リーダー機能停止、すすたけ小チームの勝利!」
決着がつき、握りしめていた手を開く。割れんばかりの歓声などはなく、それなりの拍手でもってオレたちの勝利は迎えられた。
メダロッチに戻そうとルートを見ると、事前に"本番ではいちいちはしゃぐなよ"と厳命しておいたからか、気をつけの姿勢で固まっていた。
サキと、手首を振ってほぐすオサムと合流し、再びグラウンド中央へ。整列したところで様子を伺うと、相手は明らかに不機嫌そうにしていた。とはいっても、前に対戦したヒステリー女子ほど激しい情動があるわけではない。
いうなれば、腹が減っている時に限って行きつけの店が急用で休みになっていた……みたいな?
「どうして勝つのよ! 少しは気を使いなさないよね!!」
「うわっ」
横にレフェリーがいるというのに、憚らず口にする程度には苛立っているようだった。またもオサムが面食らっているのを、肘でつつく。
「ありがとうございました」
礼をして退場、オレたち3人がグラウンドの外側へ向かい、ラインを越えたところで、終始堂々とした態度で無駄口を叩かなかったサキがオサムの肩を掴んだ。
「オサム、あんたもっとシャキッとなさいよ」
「急にあんなこと言われたらびっくりするじゃんか。ってか、なんで最初にその話?」
「なに、あの程度の相手に勝って嬉しいわけ?」
「嬉しかったけど?」
「ふっ……まだまだね」
オサムは、なんだこいつ、という目でサキを見た。多分オレもそんな目をしていると思う。
すぐそこというところまで行けば、ヤマトが立ち上がって駆け寄ってきた。いじめられっ子をやっていたとは思えないほど溌剌としていて、目を輝かせて両拳を胸の前に持ち上げている。
「みんなおめでとう!!」
「ヤマトくんも、声大きいわよ」
「あっ、ゴメン……」
ヤマトのフィーバータイムは一瞬で終わった。
「お疲れさん。手応えはどうだった?」
アサヒは、椅子の背もたれから片腕を垂らして、上半身だけ後ろを向いた。
「うーん……ちょっと拍子抜けしたかな」
「少なくとも4軍は大したことなかったわけだ。やっぱ、やばそうなのは1軍だけか?」
「それだと楽でいいんだけどね」
各々席につき、水分補給などして一息つく。
「コイシマルくん、相手の人たち、どうだった?」
「え? ああ……」
同じく水筒を開けていたところ、コノハから不意に声をかけられ、何の話か理解するのに1、2秒を要した。
「思ったほどショックは受けてなかったな」
「そう。よかった……かどうかはわからないのよね」
「わかったところでどうしようもないしな」
「冷静ね」
「事前に知ってたからな」
返すと、コノハがため息をついた。
「どうした?」
「自分のチームの試合って、見ているだけでも疲れるものなのね」
「ああ、そういう……」
思いつめているわけではなさそうなので、オレも一安心してため息をついた。