メダロット5? すすたけ村の転生者 作:ザマーメダロット
2回戦第4試合、オレたちに敗れたせいどう3軍の男子生徒たちは、挨拶が終わる時もやりきれない表情をしていた。
他方で観戦の生徒からは、決着の瞬間に歓声が上がるようになり、アウェーかつ無名でも受け入れられて来たのかと思った。
その矢先。
「4軍落ちなんて嫌だーっ!!」
いざ去り際に後ろから叫び声が聞こえて、オサムは思いっきり振り返り、サキも何事かとその後に続いた。
叫んだのは3軍リーダーの男子で、両脇の仲間たちに運ばれるようにして出ていった。
席に戻ると、ヤマトを含め、みんな戦勝ムードではなかった。気にしているというよりは、冷や水を浴びせられた状態だった。
「どういう学校なんだよ、ここ……」
「びっくりしちゃうよなー」
これまで息を止めていたかのように、オサムが言葉を吐き出すと、タマサブロウがそれに続いた。事情を知っているコノハは、自分の席でただただ大人しくしている。
「高学年って感じでもなかったし……やっぱ悔しいんじゃねえのか?」
「そう? いくらロボトルに本気でも、ああまでなるもんかな」
アサヒの言葉に、オサムはうーんと唸り、それからサキの方を向いた。一拍少し置いて、サキが先に口を開いた。
「何か言いたいことでもあるの?」
「いや、なんでも」
「はっきり言いなさいよ」
「なんでもないって」
サキの肩と肘がぴくりと動いたが、小さく首を振って、結局何もしなかった。むすっとしたまま席につく。
「でも、確かに。鬼気迫る感じではあったよね。ロボトル中も声大きかったし」
オレがグラウンドに直置きされた椅子に座ると、隣のヤマトが誰にともなく言う。
「防御主体の戦法だから、余計メダロッターが目立ってたな」
「ルートのパーツ構成がそのままなら、もしかして厳しかったんじゃない?」
「そこんとこ、部員全体で見ても、サメハダのタマサブロウ以外は高威力って感じじゃないし。今後もオレが調整していくことになるかもな」
「えっ、それでいいの?」
意外そうにして、ヤマトの声のトーンが上がった。
「選手としてやってくなら、あれこれいろんなパーツを使えるようにするのは効率が悪い……ってのが通説らしいしな。そういうことをやるのはチームに一人いればいいだろ」
パーツを一式揃えて使用する、メダル1つに対してパーツの組み合わせは1通り。というのが、競技ロボトルにおけるセオリーになっている。
異なる型のパーツを混ぜて使うのは、人間でいえば腕や脚の片方だけに重りを巻いたりするようなもので、体を動かしにくくなる。それで慣らしていくのには根気と時間が要る。
パーツの組み合わせを変えた時は、同様のバランスの問題に加え、それまで手なりでできていたことができなくなる。
それらのリスクに見合うリターンがなければ、一式かつ同じパーツを使い続けるのが効率が良いとされている。
「そういえば、ヒコオくんもそんなこと言ってたっけ……」
「でも、それってつまんなくない?」
オレのメダロッチから、ルートが口を挟んできた。オレが左腕を持ち上げ、2人してメダロッチに視線を向ける。
こちらから顔が見えるわけではないが、ルートにはメダロッチを通してこちらが見えていることだろう。
メダロッター特有の所作だ。
「同じパーツをずっと使うのがか?」
「それそれ。前にテレビでやってたじゃない、"パーツ交換はメダロットのダイゴミ"って。いろんなパーツを使ってロボトルするのが楽しいんじゃないの?」
「楽しくてロボトルやってるわけじゃない人たちもいるんだよ」
「えー、じゃあなんでロボトルしてるの?」
「それは本人に訊いてみなきゃわからないな」
ルートは中々難しいこと言うんだね、とヤマトが苦笑した。
……
トーナメントが進むほど、番が回ってくるのは早くなる。
3回戦第2試合の呼び出し放送を受けて立ち上がったところで、オレはオサムの顔を見た。いつも通りの細目で、表情は読みにくい。少なくとも笑顔ではない。
入場口への短い道のりで、隣を歩くオサムに声をかける。
「サメハダ、大丈夫か?」
「ん、何が?」
「2回戦の相手のこととか」
「オレってそんなに繊細に見える?」
「いや、あんまり」
「じゃあなんで言ったんだよ」
「緊張をほぐすためのお喋り?」
「疑問形じゃねーか」
「部長が率先して私語しないでよ。もうグラウンド入るわよ」
呆れ混じりのサキの言葉に、オレたちは口を引き結んだ。
入場口から進んでいき、3度目に顔を突き合わせることになったのは、せいどう2軍。女子、男子と来てまた女子のチーム。真ん中から一歩前に出て立つリーダーは、例のヒステリー女子だ。
既に目つきが鋭くなっている。この試合にかける真剣さとオレ個人への悪感情、どちらの色が強いのかはわからない。後ろの女子2人は、いくらか心配そうに、様子をうかがうようにして、リーダーの背中を見ている。
「……あなた、どうして手を抜いているの?」
見かけに違わない、咎めるようなトーンだ。
「見解の相違だな。オレは本気でチームロボトルをやってる」
「あなたがどう考えてるかなんて関係ないわ。どちらがより強いのか、せいどう学院のロボトルにはそれしかないのよ」
「お前……」
絶句した。
あの日、オレがこてんぱんにした上でキツく言っておいたのに、懲りてないのか?
原作でもこんな風にこじらせたキャラじゃなかったはずだ。わざわざ不利になるようなことを言う辺り、わけがわからない。
後ろの女子も口を挟んで来ない。オレのことを説明済みだから黙ってるというのも、自分たちの待遇がかかった大会では不自然だ。
いや、もういい。考えるだけ無駄だ。
オレは頭を振った。息を吐き、前を向いたままチームメイト2人に告げる。
「サメハダ、オオムラ、ごめん。この試合の出番は消えた」
サキの方から、ハッと息を呑むのが聞こえた。
「急にどうしたんだよ?」
「後で話すから」
釈然としないであろうオサムには、とても申し訳なく思うが、オレはそれで押し切った。
挨拶をして、歩いて位置に付く。
転送された相手チームは、それぞれ異なる純正一式のメダロットが3体。しかし、もはやパーツ構成や地形相性は関係なくなった。
「メダロット転送!」
転送されたクロトジル――ベーデンが、半身で右腕を敵方へ突き出した構えを取る。
「両チームとも、準備はよろしいですね? それでは」
カバシラの言葉を待つ。
「ロボトルゥ……」
右手を振り上げて、
「ファイトォッ!!」
降ろした、と同時にベーデンが一射。リーダー機、ハクビシン型の白いメダロットは、頭をデコピンされたフィギュアのようにバタッと倒れた。
仰向けに倒れた後に転がって、その背からメダルがピンと排出されたのが、はっきり見えた。
「うわっ」
「リーダー機能停止、すすたけ小チームの勝利!」
オサムの声に被さって、カバシラが試合終了を宣言した。
そして、その後は静まり返った。こう展開が早いと、さもありなんという感じではある。
構えを解いてオレの目を見てくるベーデンに、小さく肩をすくめて応え、それからストレージに転送した。
応えるというか、オレとしてもコメントのしようがない。
サキと、目を丸くしていたオサムを連れ、整列に向かう。
相手チームはどうなってしまったのかと思ったが、いずれもショックを受けた様子はなかった。
リーダーはあれほどピリピリと見えない針毛を逆立てていたのがウソのように落ち着いていて、チームメイト2人は安心した風にさえ見える。
この流れで? どういうことだ?
と考えている暇もないわけで、オレは頭がぼうっとするのを自覚しながら挨拶を終え、寝起きにトイレに行く時のような足取りで席へ戻った。
気がつけばオレは水筒を手にして、中の麦茶を飲み干したところだった。
周囲の様子は試合の合間時間と同様に戻っていて、気まずい静かさはなくなっていた。
「で、何がどういうことだったんだ?」
「あの女子とは前にかちあったことがあって、その時に同じように負かしたんだ」
袖で口を拭き、オサムに説明する。
「一撃でか?」
「そう。でも、そんなのチームロボトルでやることじゃないだろ? ヒョウモンはやりそうだけど」
「しねえよ!」
「ヤマトからパーツ巻き上げてたくせに何言ってんだよ」
「それとこれとは話が別だろ。そんなことしたってつまんねえじゃんか」
おや、とコノハがアサヒを見た。
「豪華賞品が貰えるなら別だけどよ」
「アッちゃん、サイテー……」
「いまのは一言多かったなあ」
「んだよ、何が悪いってんだ?」
オサムとコノハを交互に見て、へっ、とアサヒが軽く笑う。
『第3試合までが終了しました。第4試合は、昼休みの後に行います』
放送と同時、視界内のせいどう生の多くが動き出す。
「っとと、昼メシの時間か。行くぞオサム!」
「おう!」
そしてこちらからも2人があっという間に駆け出していった。
「……食堂でしょうね」
「これが弓道部だったら、ウスモン先生に首根っこ掴まれてるわよ」