メダロット5? すすたけ村の転生者   作:ザマーメダロット

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32.せいどうクラス替え大会・閉会

「とうっ!」

 

 両チームが整列したところで、どこからかカバシラが飛び降りてきた。着地ざま、ハンドマイクを口許へ動かす。

 

「レフェリーカバシラですっ! ごちそうさまでしたっ! 午後のロボトルも、わたしが判定いたします」

 

 せいどう1軍リーダーは、ヒコオも、残りの男子生徒2人も、口を真一文字に引き締めていた。ここへ来て言葉を交わすということもなく、挨拶の後に離れて位置につき、各々がメダロットを転送する。

 

 せいどう1軍1番機、言わずと知れた男性・KWG(クワガタムシ)型メダロット・シンザンのネクウ。

 2・3番機、男性・HFG(ツノガエル)型メダロット・ホーンドフロギー。車両タイプであることも含め、今ここにおいて最強の護衛機。

 

 対するこちら、すすたけ小1番機は、ベーデン。パーツ構成は、WLF(オオカミ)型メダロット――白い狼、スノーフェンリル一式。

 オサムの2番機も同じく、男性・二脚・WLF型、スノーフェンリルのクルウェルフ。オレがベーデンに装備させたのも、クルウェルフ用の予備パーツを借りたものだ。

 サキの3番機はジャンガリアンのスズキが続投。

 

 ヒコオがこちらのメダロットたちを見て何かを呟き、眉根を寄せるのが見えた。大方、"なに?"とか、"どういうことだ?"とか、そんなところだろう。

 

「両チームとも、準備はよろしいですね? それでは……」

 

 2体のスノーフェンリルが突撃の構えを取る。シンザンは動かない。

 

「ロボトルゥ、ファイトォッ!!」

 

 スノーフェンリルたちが地面を蹴り、駆け出す。だがそのスピードの差は歴然。ホーンドフロギーたちがシンザンの前を固めに出てこようとするも、その間をすり抜ける。

 

「だぁっ!」

「ちっ!」

 

 胸目掛けて突き出された左腕の爪に対し、シンザンは左腕でのガードを間に合わせた。見た目にも体重の乗ったその一撃は、丸鋸が金属を切るような音とともに、その腕を切り裂いた。

 メダロッチを見る。貫通ダメージは……頭部。

 

「よし……!」

「フリーズでこれほどの威力を……まずい!」

 

 フリーズ攻撃の停止効果を受けたメダロットは動きを止め、防御も回避も不可能。復帰までの時間は、攻撃で受けたダメージに比例する。

 高威力の左腕パーツ・高出力のベーデンのメダルなら、この一発で最低でも5秒は留め置ける。それがこの作戦の要だった。

 

 追いつこうとするクルウェルフの前で、2体のホーンドフロギーが右腕パーツを変化させた。

 現れたパーツの詳細はパッと思い出せないが、"変化(援護)"パーツの交換先なので援護系であることは確定している。

 パーツが起動してホーンドフロギーたちは緑色のオーラに包まれ、腕は元の純正パーツに戻った。現行生産パーツの緑のオーラは、特殊効果のない単純防御。

 

「うりゃー!」

 

 ここで間合いに入ったクルウェルフが右腕を振りかぶり、立ち塞がる2番機へ振り下ろす。2番機がいつも通り身代わりとして防御の構えを取ると、ヒコオはハッとした。

 

「ダメだ! 避けろ!」

「え」

 

 土壇場が過ぎる指示だった。2番機は混乱する間もなく防御をやり遂げてしまい、ダメージは多くないものの2番機も停止。

 続けざまにクルウェルフが体当たりでそれを脇に押しのけると同時、ベーデンの2回目のフリーズで3番機までも停止し、蹴り飛ばされる。どちらも転がったまま動かない。

 

 つまり、棒立ちのネクウを守る者はいなくなった。

 

「なっ!」

「速い!」

 

 それぞれのメダロッターである男子2人が、追い込まれた表情を見せた。

 

「これでクリアだ、行けるぜ!」

 

 オサムが快哉を叫んだ。ネクウをも数段上回るレベルのベーデンとワントップ特化の相手によって成立する状況。今、敵3体が全て停止し、そして味方には1体だけ動ける機体がいる。

 オレは両拳をグッと握った。

 

「詰めろ!」

「スズキくん!」

 

 オレとサキが叫び、ここまでじっと狙いを絞っていたスズキの左腕パーツ、その銃口が火を吹く。

 援護機体に割り込まれることもなく、ガトリングの一発一発が停止したネクウの頭部パーツを連続して打ち据え、揺れて倒れるまでの1秒足らずで1セットを撃ち尽くした。

 

 仰向けに倒れたネクウの顔……コミュニケーションモニター。そこに点灯していた目が、消えた。

 

「リーダー機能停止、すすたけ小チームの勝利!」

 

 山場を乗り越えた達成感はあったが、それよりもヒコオの反応が気になった。

 見ると、それなりに悔しそうではあったが、あくまで勝負に負けたという程度のもので、それ以上の深刻さはなさそうだった。

 残りの2人の表情には、諦念も混じっているように見えた。

 

 観客のせいどう生たちはというと、静かなものだった。どよめくでもなく、ただこの結果を突きつけられるままにしていた。

 

 互いにメダロットを帰し、再び整列する。せいどう1軍の生徒は、ヒコオを含め、試合前と同じ凛とした顔つきだった。

 

「コイシマルくん」

「?」

「この試合は、ボクが自分を見直すいい機会になった。やはり、ボクの……いや、彼らの判断は正しかった」

 

 彼らの、と言う時にヒコオが左右のチームメイトに目配せして示すと、こちらから見て右に立っている方の男子が口を開く。

 

「3回戦第2試合、タマヤスさんは見てなかったけど、僕らは見てた。それで、油断したままじゃ負けてしまうと思って、タマヤスさんに報告したんだ。本気でやりましょう、って。

 そう言ったのは本当にただ勝ちたかったから……なんだけど、タマヤスさんに本気のロボトルをして欲しいって気持ちもあった」

 

 懺悔するような語り口だったのでいたたまれなさを覚えるのと、その内容はオレにとってあまり関心がなかったので、聞いていて面白い話ではなかった。

 

「もういいよ。ロボトルした、結果が出た。大会なんてのが初めてのオレには、それでいっぱいいっぱいだ」

「ああ。さっぱり終わろうぜ」

 

 オレとオサムの言葉に、ヒコオはふっと笑った。

 

 

……

 

 

 それから挨拶をして、余韻に浸る間もなく、そのまま閉会式が行われた。

 あくまで主旨がクラス替え大会なので、表彰状やトロフィーの授与などはなかったが、学院長のヤクモから(お世辞か嫌味に聞こえるような)称賛と感謝が述べられた。

 

 閉会式が終わりせいどう生たちが散っていく中で、オレたちはその場に留まり、向かい合った。ヤマトが両拳を突き上げる。

 

「優勝おめでとう! 作戦、決まったね!」

「おめでとう」

「ああ、ありがとう」

「こうしてみると、メダロット部も悪くないもんだな」

「コイシマルとオサムが男を見せたんだから、次はオレさまの出番だな!」

「あんたに決定権ないでしょ」

 

 その後、立ち話は長く続かなかった。というか、サキがそれを許さなかった。

 

「そろそろ職員室へ行きましょ。本来部外者なんだから、長居はよくないわ」

「ああ、そうだな。学校に戻って反省会もやるんだし」

 

 6人揃って西校舎の職員室へ向かう途中、オレはふと賞品受け取り前に挟まるマイナスイベントの存在を思い出した。

 ……いや、この場合はないよな? 原因は多分潰したし、時間を無駄遣いしたりしてないし。すぐそこに見えてきた職員室の扉が、急に怖くなってきたぞ。

 

 扉の前に立ち、ノックする。すぐにヤクモが出てきて、オレたちを見回した。

 

「あら、みんなで来たのですか? それでは面倒ですから、代表者のテンサンくん、お入りなさい。賞品をお渡しします」

 

 イベントが消えていたことに内心ほっとしながら、オレは職員室に入った。ヤクモの後に続いて応接スペースに

行くと、机の上にはパッケージ入りの男型・女型ティンペットが3つずつ置かれていた。

 

「素晴らしいロボトルでした。これが賞品です。ティンペットを6体差し上げましょう」

「ありがとうございます」

「本当によくやっていただいて、感謝の言葉もありませんのよ」

 

 オレたちがせいどう生の成績を落としたことでメダルを回収できる、という意味だろう。オレはあえてリアクションを避けた。

 

「それでは、次からの試合も頑張るのですよ」

「そうですね、ありがとうございます」

 

 パッケージを重ねて両腕で持ち上げ、オレは肩で扉を押して廊下に出た。

 

「賞品って、ティンペットかよ」

「何だと思ってたんだよ」

「なんか、食いもんとか」

「それだとティンペットの方が高いじゃん」

 

 アサヒがオレに答えたのに、オサムがため息を付いた。

 

「好きなの取ってっていいよ」

「そう? じゃ、遠慮なく」

 

 サキがパッと女型を取り、コノハがもう一つ。オサム、アサヒが男型。2つが残り、ヤマトはまだ動かなかった。

 

「ヤマトは?」

「えっ? ぼくなんかより、一番貢献したコイシマルくんが選ぶべきだよ」

「いや、オレどっちでもいいし……」

「ぼくもどっちでもいいんだけどな」

「キリないわねー。もうじゃんけんで決めなさいよ」

 

 見かねたサキの提案でじゃんけんをした結果、オレが女型、ヤマトが男型を持ち帰ることになった。

 

「ちょっと、何で今開けてんのよ!? ここでゴミ捨ててく気!?」

「あ?」

「筋金入りね、アッちゃん……」

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