メダロット5? すすたけ村の転生者   作:ザマーメダロット

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 30話でコイシマルが部員を名前呼びしていたので苗字呼びに修正しました。油断していた……


33.せいどうクラス替え大会・反省会

 せいどう学院を後にし、オレたちは部室に集まっていた。部室の鍵を借りる時に職員室でミヤマ・アカネには結果を軽く連絡した。今、机を1つにくっつけた6人の他、ミヤマも定位置のマットに腰掛けている。今日は素面のようだ。

 部長ということで、オレが進んで音頭を取る。

 

「はい、改めてせいどうまでの出張お疲れさまでした、ということで反省会です。先に話したいやつがいないならオレから行くけど、いいか?」

 

 5人からの返答はない。オレは立ち上がった。

 

「じゃあ、まずは謝らせてくれ。チームロボトルの大会でありながらスタンドプレーに走ってすまなかった」

「なんじゃ、いきなり物々しいの」

 

 顔を上げる。声をかけてきたのは、なんともない気楽そうな表情のミヤマだった。

 

「何があった?」

「当初、オレは部員と足並みを揃えてロボトルをするつもりでした。ただ、せいどう側の出場者の1人は以前一度ロボトルしたことがあって、今日の大会でその時と違うメダルを使っていたのがバレてました。それで、対戦前に"手を抜くな、本気を出せ"と言われました」

「ルートとベーデンの話か。それで、ベーデンを出したんじゃな」

「はい。1戦限りとはいえ、勝ち負けが全てだからという相手を納得させるために、スタンドプレーに走りました」

「ふーむ……コイシマルよ。そもそも、スタンドプレーとはなんじゃ?」

 

 問いかけられ、オレは数秒考えた。

 

「味方との連携なく、単独の能力を頼みにゲームを進めることだと思います」

「では、その時コイシマル以外で試合に出とった者に訊こう。コイシマルは自分勝手な判断のもと、味方との連携を取っておらなんだのか?」

 

 ミヤマが他の部員を見る。先に、サキが首を振った。

 

「いいえ。土壇場ではありましたが、コイシマルは方針をわたしたちに伝えました。メンバーならともかく、リーダーの意思決定なので、従うべきと判断しました」

「えっと、よくわかんないけどオレもそんな感じで。3回戦以外でも、コイシマルはよくやってくれたと思う」

「結構」

 

 サキとオサムの答えに、ミヤマは満足そうに頷いた。

 

「なあコイシマルよ、お前は、スタンドプレーが良くないことだとわかっとるんじゃろ。その上でどうするか判断した結果なら、それはスタンドプレーではないのではないか?」

「……そうですかね?」

「本当に間違っとったら、みんなが正してくれるじゃろ。もっと肩の力を抜いてもバチはあたらんよ」

「……」

 

 5人の顔を見回す。誰の目にも、ミヤマの言葉を否定するような意思は見当たらなかった。

 

「そうですね。ありがとうございます」

「よいよい。その調子で励みなさい」

「はい」

 

 一礼して、着席する。話が終わったと見るや、サキが手を挙げた。

 

「いいかしら」

「どうぞ」

「改めて確認なんだけど、大会では今後もそういうスタンスってことでいいのかしら?」

「そうだよ、あくまで楽しむことが優先。元々無理言って集まってもらったメンバーだから、メダロットに人生とか命とかかけるような意識高い集団じゃないだろ?」

「優勝を目指さないわけじゃないのよね?」

「やる気が続く範囲で頑張る。誰かがついていけなくなるようなやり方はできない。それじゃ不満か?」

「いいえ? むしろ、部長としてちゃんとやっていけそうだなって、一目置いてるのよ。メダロット部部員としても、弓道部部長としてもね」

 

 そう言って、サキは微笑んだ。

 

「そりゃどうも。次、誰か話すことある? ないなら早いけど解散で」

 

 コノハ、オサム、アサヒ……と、順番に見ていくが、何か考えている様子はなかった。解散しようかと思ったところで、おお、そうじゃ、とミヤマが声を上げた。

 

「みんな、メダリンピックが今年の夏に開かれるという話を知っておるか?」

「ええ。でも、あれってごく一部の人たちが勝手に言ってるだけで、単なる噂ですよね」

 

 ミヤマ以外に事情をいくらか知っているのはサキくらいらしく、他はきょとんとしていた。

 

「わしもそうじゃと思っとるんだが……」

 

 メダリンピック。優勝チームは月旅行に招待される、全国規模のチームロボトル大会。ただ、折り悪くも宇宙で中学生たちが漂流してしまうというクラスター事故のため、主催のメダロット社は次回大会を無期限の凍結状態としていた。

 その名前を村おこしに利用しているのが村長、その村長も実はイトに操られていて……というのが真相だが、ここで言っても何にもならない。

 

「なんだよ先生、勿体ぶってねえでさっさと言ってくれよ」

 

 普段はロボトルを単に遊びとしか見ていないアサヒも、一大イベントのことは気になるようで、ミヤマを急かした。

 

「ついさっき村長から、代表チームを決めるロボトル大会を行うと聞いたところでな」

「……じゃあ、メダリンピックは開催されるんだ」

「まだ、確認は取れておらんが……代表チームを選ぶロボトル大会は決定じゃ」

 

 オサムが期待に顔を綻ばせるが、ミヤマは手を軽く横に振った。

 

「随分急な話ですね」

「まったくじゃ。お前さんが職員室に来る10分20分前に電話して来おったからな。しかも、大会は明後日の月曜日から始まるということでな」

「明後日!?」

 

 コノハが素っ頓狂に叫んだ。

 

「うむ。タイミングがいいんだか悪いんだかのう……初戦の相手はみずうみ分校じゃ。わしは行かんから、お前たち、頑張るんじゃぞ」

「授業は?」

 

 ヤマトが尋ねると、心配するな、とミヤマが笑った。

 

「大会中は特別に許されておる。ただし、出場チームだけだから、分校の授業を邪魔しちゃいかんぞ」

「わかりました」

 

 そこで、入り口の扉が開いた。アカネだった。

 

「みんなお帰りー! そして優勝おめでとう!」

 

 入ってくるなり、アカネがビニール袋を机の上にどんと置く。

 

「お祝いにアイス買ってきたから、みんな食べて食べて!」

「おおー、先生太っ腹!」

「こーら、女の人にそんなこと言わないの」

 

 アカネが腰に手を当てて曲げ、手を拍つアサヒに向かって言うが、明るい笑顔だった。

 

「この時期によう冷たいもんが入るわい。わしゃ、もう気が済んだから帰るぞ」

「お疲れさまでした」

 

 卓上のビニール袋に群がる5人をよそに、ミヤマはさっさと出ていった。挨拶をしてからビニール袋に視線を戻すと、アイスは最後の1つになっていた。その容器の色合いと書かれた文字列を見て、オレは凍りつく。

 

「……チョコミント……」

「あれ? もしかしてコイシマルくんってチョコミントダメだった?」

「……先生が食べてください」

「あはは……ごめんね」

 

 

……

 

 

 オレ以外がアイスに舌鼓を打ちながら、大会のいきさつを軽く話し、その場はお開きとした。アカネがロボトルのことをよく知らないというのもあったといえばあったが、何より、大会の後で長々と学校にいる・いさせるのも、という気持ちがあった。

 

 もうすぐ空が赤らんでくるだろうという辺り、オレがヤマトとバス停へ向かうと、土曜の人がまばらな噴水広場、バス停のそばに、大荷物を置いて立つ女子がいた。制服と髪型で、せいどう2軍のリーダーだとわかり、思わずオレは顔をしかめた。

 2度のロボトルでバキバキに折ってやったはずのやつがなぜここに……?

 

 そんなオレの考えなど知らないとばかり、その女子はこちらを見つけると、ぱぁっと顔に花を咲かせた。ヒステリーの化身みたいなかつての姿とは似ても似つかない、かわいらしい顔つきだった。

 

「コイシマルくーん!」

 

 バス停から名前を呼んで手を大きく振るもので、他人のフリをするわけにもいかず……

 

「知り合いの子?」

「ヤマトも今日の大会で見てるぞ」

「ええ……?」

 

 仕方なく、2人して女子の前まで歩いていった。土曜ダイヤとはいえ、バスの時間に合わせて切り上げてきたのもあって、次が間もなく来る。

 

「よかったぁ、村外れに越してきたってヒコオくんから聞いて、きっと帰りはバスだと思ったの」

 

 手を合わせて言う女子を目の前にしても、やはりヤマトは誰なのかわからないようで、小さく指差しつつこちらを見てくる。

 

「誰で何しに来たのか言ってくれないと困りっぱなしなんだけど」

「ああ、ごめんなさい。わたし、ツユクサカオル。せいど……じゃなくて。みずうみ分校の4年生よ」

「みずうみ分校? せいどう学院じゃなくて?」

 

 カオルの話し声に、エンジン音が重なる。バスが来た。

 

「あ、どうしよう。これを逃すとしばらく来ないし……」

「みずうみの町も同じ方面だから、一緒に乗れば大丈夫よ」

 

 言って、カオルは率先してバスに乗り込んだ。車内はガラガラに空いていて、オレとヤマトは左右の席に分かれて座った。カオルは床の上に荷物を置き、オレの席についた手すりを掴んで立っている。

 荷物は、寮にあった私物のうちどれだけが入っているのかはわからないが、小学生女子には少々厳しそうに見える。

 

「で、せいどうは辞めたんだっけ?」

「ええ、今日付けで辞めたの。転入だったから、元の学校に戻るのよ」

 

 それを聞いても、ヤマトは誰だかわからないようだった。しばし唸った後、軽く頭を下げる。

 

「ごめん、大会に出てたって聞いたけど、ぼくは見てなかったみたい」

「いや、せいどう2軍のリーダーだぞ」

「え? ……あっ!」

 

 オレが付け足してようやく、ヤマトの中で顔が一致したようだった。

 

 ツユクサカオル。せいどう2軍リーダーとして初登場するキャラクター。「メダロット5」のソフトをGBA(ゲームボーイアドバンス)にセットしてプレイする場合のみ発生するハンカチイベントを起こすことで、サキやコノハ同様の友情度(好感度)システムが解放される、雑な言い方をすれば追加ヒロインだ。

 専用の追加イベントがあり、貴重なレアメダルの持ち主でもあり、追加と言いつつ一番恵まれたポジションといえる。

 

 そして、最大の特徴、そして人気の源が、主人公・テンサンコイシマルに対する態度の豹変。当時、原義上のツンデレを先取りしたキャラクターということだった。

 原作では、キツい態度のカオルにも怯まずフレンドリーにコイシマルが接したことで、大会イベント中に反転するという流れなのだが、それはオレも当然覚えていた。

 ただ、オレはゲームのキャラクターと惚れた腫れたなんて関係になったとして、うまくやっていける自信がなかった。だから、カオルに対してわざわざ神経を逆なでする接し方をした。大会で強く当たってきて、成功したと思った。そのはずなんだが……

 

「こっちはシジミヤマト、今日は出してなかったけどうちの部員」

「それで一緒にいるのね。よろしく、ヤマトくん」

「う、うん。よろしく」

「2人でお話するつもりだったんだけど……コイシマルくん、あの日のこと、ヤマトくんたちには?」

「あ、ああ。大雑把には。ロボトルしたとしか言ってないから、改めて説明するよ」

 

 オレは、カオルのハンカチを拾ったこと、大会前のカオルとロボトルの前後で"せいどうなんて辞めろ"と言ったことをヤマトに説明した。本人の前で悪し様に言うのは憚られたので、なるべくマイルドな言葉で伝えようと心がけた。

 

「……思った以上に複雑な事情があったんだね」

「学院の方針に従っても、"最高のメダロッター"になんてなれっこない……昔のわたしが今のわたしを見ても、きっと同じことを言ったでしょうね。いつの間にか、わたし、メダロッターとして大事なものを見失ってたみたい。コイシマルくんのあの時の言葉で、ようやくそれに気付けたわ」

「大会の時はそうは見えなかったけどなあ」

「あら、わからなかった? あれは演技よ♥」

 

 オレの疑問に、カオルはそう笑顔で答えた。ヤマトは目が点になり、オレは頭がズーンと重く痺れるのを感じた。

 

「学院を出る前にメダロッターとしてすべきことをしなきゃって思ったの。わたしと同じように忘れてしまったり、あるいは学院の犠牲になったみんなのためにね。

 それで、いろいろ考えたんだけど……思いついたのは、あの景色を大会の場で見せつけて、みんなの目を覚ますって方法しかなかった。例年、ゲスト校のチームは4軍から1軍の順に当たってるから」

「あの景色って……コイシマルくんとのロボトルのこと?」

「ええ。そのために、あの大会が終わるまでは"せいどう学院のツユクサカオル"でいようって決めてたの。2軍のわたしじゃ力不足かもしれないし、結局は1軍との試合が決め手だったみたいだけどね」

「決め手って、何の?」

「行動に移してる子はまだ少ないけど、みんなの中で"せいどう学院は信用できない"って流れが出来てるの。メダロッターとして上を目指したくて来たって子はどんどん離れていくはずよ」

「なんだか、話のスケールが大きいなぁ……」

「と・に・か・く!」

 

 ピンと来ていない様子のヤマトの言葉を遮って、カオルが()()とオレに顔を近づけた。

 

「コイシマルくんに直接会ってお礼が言いたかったの。はいこれ、メールアドレスと住所と電話番号」

「ああ、はい……」

 

 ポケットから取り出された、折りたたまれたメモ用紙を受け取る。新幹線脱線事故級の展開に、言葉が出てこない。原作で渡してたのはメールアドレスだけだったはずでは? と、現実から思考が逸れていく。

 

 

……

 

 

「コイシマルくん、またね♥」

 

 バスが村外れに着くまでカオルは主にオレに向かって話し続け、オレはギリギリ生返事にならない程度に会話を成立させていた。別れ際もその声を背中に受けながらバスから降り、バスが行った後のバス停で、オレは眉間を人差し指の背で強く押さえた。

 

「……途中からちょっと様子がおかしかったみたいだけど、大丈夫?」

「すまん、月曜にみんなに説明するのはヤマトに任せる……」

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