メダロット5? すすたけ村の転生者 作:ザマーメダロット
数時間かけて文字数だけ増えてロボトルが始まりもしない
駅前のバス停から村はずれ停留所で降り、平らで何もない道を歩いていると、ふと、自分たちの影の長さが目についた。まだ空は赤くないが、少しすれば日が傾く頃か。
農夫のお爺さんに挨拶し、これからもダイブすることはないであろう肥溜めを通り過ぎ、それから3~4分ほどで鳥居まで着いたのだが。
「えーん えーん……」
ヤマトが別れの挨拶でもしようと口を開きかけたところで、境内の方からかすかに女の子の泣き声が聞こえてきた。ベニだ。
「ベニ!?」
ヤマトもそれを察知したようで、すぐに走り出し、オレもそれに着いていった。
直線の長い石畳を進むほどに声が大きくなり、御神木の前を右に曲がったところにベニがいた。
直立状態で、ただただ声を上げて泣いていた。
「ベニ!どうしたんだ!怪我したのか!?」
ヤマトがベニの肩に手を置き、目線を合わせてそう訊く。
「オバケがいじわるした~~!」
「オバケ!?」
「オバケ!!?」
そんなものがいるのか?と軽く驚く(フリをする)オレと、オレの声をかき消す勢いで飛び上がって叫ぶヤマト。
「ふぇっ、うええーーん!」
ヤマトの声に驚いたのか、ベニの泣き声がまた大きくなる。
「ヤマト、声がデカいって」
「ご、ごめんベニ。オバケに何をされたって?」
「ベニの風船取って~~!」
「風船……あれか」
御神木を見上げると、枝葉に赤い風船が引っかかっている。パッと見で高さはよくわからないが、とりあえず高い。三角測量でもすれば計算できるだろうが、今はそういうことをしている場合ではない。
「た、高いなぁ……どうしよう」
「いいよ、オレが取ってくる。ヤマトはベニを見ててやってくれ」
ヤマトがオバケを怖がってるのもあるが、この後メダルとメダロッチを拾うのを見られたくないのもあって、その場に留まるように言い含める。
「う、うん。気をつけてね」
さて御神木。改めて見るとでたらめな大きさだ。太さは、胴回り30メートルはあろうか。枝のうち太いものはそれだけでも大木と呼べるサイズになっている。実際、この後すぐ、枝の上でロボトルすることになるのだが。
向かって左側は植え込みがあって通れないので、右側からぐるりと回ると、ゲームと同様にうろがあった。うろというにはあまりにも都合よく、大人でも立ったまま入れる大きさだ。
うろから中を覗くと、中もまた不自然なほど都合よく広い空間になっており、この木の幹がスカスカであることがわかる。直観的には面白いとかすごいとかいう感想が出てくる光景だが、樹木に空洞ができるのは病気で、つまりこれは相当の重症――だった、かもしれないが――というわけだ。この状態でよく枝葉に負けて潰れないものだ。
中に入ってみると、まず湿った土の匂いがした。薄暗いが、上の方に開いた数々の穴(これもよくない)から射し込んだ日光が、地面を覆う背の低い雑草たちの上に、ぽつぽつと日だまりを作っている。内壁には太い蔦が這っていて、その穴の外まで伸びている。やっぱりこの木ダメなんじゃないかな。
と、不思議スポットをぐるりと見回したところで、視界に光るものがちらりと見えた。探す必要はなかったようだ。
内壁のそばまで行き、それらを拾い上げる。
「メダロッチとメダル?」
と問うベーデンに、
「落とし物かな。なんでこんなところに落としたんだか」
と白々しく返す。
メダロッチは未発売の最新モデル、メダルは……カブトメダルだ。となるとやはりヒコオのパートナーはシンザンか。
メダロッチの中身はKBT最新型のクロトジル一式。ただしティンペット抜き。ここも原作通り。
さて、メダロッチはさておき、重要なのはこのメダルだ。
メダロット研究所から盗み出されたレアメダル。カブトとクワガタはレアメダルの中でも稀で、世界に数えるほどしかない、らしい。歴代主人公の相棒になるお決まりのメダルで、メダロット5の主人公であるコイシマルも例外ではない。
そんなメダルなので、当然強い。
ここまでベーデン以外のメダルを手に入れて育てて来なかったのは、すすたけ村で手に入るメダルを残る主力にする予定だからというのが理由の一つだ。
もう一つ、育てるメダルを一枚に絞ることでより鍛えられるようにするという狙いもあるが、このカブトレアメダルに比べればついで程度だ。
「持ち主のこと聞いてみるか」
メダルの自我がまだ起きていないことを知りつつも、持ち主が既に起こしているんだろうという体で、そのメダロッチにはめ込む。
メダルはティンペットやメダロッチにはめ込んだ時点でそれらの影響を受け、自我が目覚める。確認ボタンなどはない。だから、自我の起きていないままメダルを運ぶ場合はメダロッチに入れられず別々になるのだが、普通は失くさないようメダルケースを用意する。
"抜き身で置いてあったのだから、たまたまメダロッチに入れてなかっただけだと思った"と言い訳できる、というわけだ。
閑話休題。
電子音とともにカブトメダルが目覚める。
「こんにちわー!」
元気のいい男の子の声だ。
「はい、こんにちわ。オレはテンサン コイシマル。落ちてたメダロッチとメダルを拾ったんだ」
「落ちてた?」
「そう。だから、マスターに届けたいんだけど、名前を教えてくれないかな?」
「コイシマルがマスターじゃないの?」
「……コイシマル、これは」
これでようやくベーデンも、このメダルがまっさらだと分かったようだ。
どうでもいいが、"まっさら"は元々京言葉で、縮めて
「参ったな……起こしちゃった」
「え、なに、なに?」
声だけでもおろおろしているのがわかるカブトメダル。
「オレはマスターじゃない。落ちてたお前を拾っただけなんだ」
「んじゃ、今からオイラのマスターになってよ」
原作でもそうだが軽く言ってくれる。人格が完全に子供だから仕方ないが。
「ダメだろ、落とし主がマスターなんだから」
本音を隠して言う。駄々をこねて来ることは知ってるからな。
「どーして?どーして?マスターになってってば!!」
案の定、大声で駄々をこねてきた。ここで切り上げる。
「落ち着け。後で話をしよう」
メダロッチの音声をオフにし、腕にはめる。親に買ってもらったのと合わせて2本になった。
「余計怒ると思うけど」
「今はベニちゃんのことが先だ」
鞄からペンと手のひらサイズのメモ帳を出し、"ここにあったメダロッチとメダルはセレクト隊に届けます"と、名前を添えて書き、ページを破って足元に置いた。一応、その辺の草を抜いて文鎮にしておこう。
太い蔦を掴んで左右や手前に引っ張ってみると、とりあえず、千切れない。
風船の場所を思い出し、その方向に繋がる蔦を掴んで登っていく。体重で千切れたり、上から嫌な音がしたりはしないようだ。
途中で蔦に絡まっている謎の箱(索敵パーツが入っている。また今度回収する)は無視していき、そのまま御神木の側面に空いた穴から顔を出すと、見立て通り大木のような枝の真上だった。高低差はほぼなし。
下から見上げるとわからなかったが、枝の上部は樹皮がすり減って平らになっている。割と人が上り下りしてるのか?幅は3メートルあるかないかくらいだ。デカすぎる。
「これなら歩いて取りに行けるか」
非常識な大きさの枝の上を歩く。全く揺れない。ちょっと走る。全く揺れない。ダッシュしてみる。全く揺れない。
「何してるの?」
「安全確認……かな……」
そうして進むと、白い布を被せられた物体がぽつんと置かれていた。
(知ってるけど)なんだろうなーという気持ちで布をどけて横に放ると、それは男型ティンペットだった。
「なんでティンペットが置いてあるんだ?」
と、疑問(知ってるけど)を口に出した時。
「そこまでだ!」
同い年くらいの少年の声が真後ろから響く。
振り返ると、金髪オールバックに赤い蝶ネクタイ、サスペンダーをつけた謎のお坊ちゃま。と、KWG最新型メダロットのシンザンがこちらに歩いてきていた。
どこに隠れてたんだ?
「こんにちわ。日本語うまいですね」
「ぼくが思っていた通りだ。オバケなんて、いるわけがない。そんなのナンセンスだよ。そう思わないかい?」
「無視かよ」
「……キミが犯人だね。そうやってとぼけてみても無駄だよ。オバケの正体は、白い布を被ったメダロット……キミはそのメダロットのマスターで、この騒ぎを起こした犯人なのさ」
両手を腰に当て、したり顔で言いたいことだけ言ってくれる。
「ぶっ飛んだ推理だな」
「ボクはメダロッターとして、キミのことを許せない。メダロットを悪用するヤツは、懲らしめてやる!ロボトルで勝負だ!!」
真面目に怒っているが見当外れだ。あと人を指差すな。
「つい最近引っ越してきた人間がそんなことをなぜする?どうやってできる?」
「引っ越してきた?確かに今までこの村でキミに会ったことはない……」
「甘いぞヒコオ!こいつは嘘をついている!」
と怒気溢れるシンザン。
「ヒコオくんか。村はずれに越してきたテンサン コイシマルです、よろしく」
「貴様、ふざけているのか!?」
腕を振ってなお怒るシンザン。
「ふざけてないし嘘もついちゃいない」
メダロッチ2つを外して地面に置き、数歩下がって両手を上げる。
「新しい方のメダロッチが拾い物で、メダル1枚パーツ1セット。私物の方に入ってるのはメダル1枚だけだ。確認してくれ」
膝をつく。
「三原則があっても、人間を怪我させない範囲で取り押さえることはできる。そいつに見晴らせれば安全なんじゃないか?」
と念を押す。
「……わかった。信じよう」
目を閉じて息を吐く。
「ヒコオ!」
「この高さだ。メダロッチも手放した状態では、簡単には逃げられない。彼は嘘をついていないよネクウ」
「分かってもらえたか。で、そろそろ名前聞いてもいい?」
言いながら立ち上がり、メダロッチを拾ってはめ直す。
「済まなかった、謝るよ。ボクはタマヤス ヒコオ、こっちがネクウだ」
ヒコオが丁寧に頭を下げる。
「……ふん」
そっぽを向くネクウ。ちゃんと漫画版の名前ついてるんだな。よかった。
「タマヤス?村長さんの息子か何か?」
知ってるけど。
「その通りさ」
「なるほど」
「どうだい、折角だし、ボクとロボトルしてみないか?スラフシステムもあるから、パーツを使うくらいは大丈夫だろう。もちろん遊びのロボトルだ」
「それもいいけど、この奥に用事があるんだ。後にしてくれ」
「ああ、そうだったのか。引き留めてしまったね。すまなかった」
枝の先へと進むと、枝からさらに分かれた枝葉が顔の高さにもちょっぴりかかるようになってきた。足元もやや色が濃く、丸みを帯びてきている。そうなってからすぐのところで、風船が見つかった。風船を取り、来た道を戻った。
「用事はその風船かい?」
「オバケに取られたらしい。オレじゃないぞ」
「ふっ、分かっているよ」
言い終わった辺りで、上からガサガサと枝葉を動かす音がした。
ヒコオが上に向かって叫ぶ。
「そこにいるのは誰だ!」
どこに隠れていたのか、上だけでなく横の枝葉の奥からも、白い布を被った何者かたちが浮いて近づいてくる。
割と強引に移動したのだろう、布はところどころ裂けていて、葉もまばらに刺さっている。布の裂け目からちらちらと見えているパーツの質感と、あと浮いているということから、それが浮遊タイプの脚部パーツを装備したメダロットだとわかる。
「オ、オレたちは……」
その内一体が声を発した。
「そうか!キミたちが噂のオバケだな!」
遮るようにオバケ認定を完了するヒコオ。せっかちだな。
オバケ三体がヒコオの近くに、一体がオレの近くにいる。ゲーム通りの配置だ。
「コイシマルくん、そっちの一体は任せた!」
「了解」
「ぼくの出番?」
自分のメダロッチからベーデンが問う。
「いや、KBT型のパーツ一式だし、一緒に落ちてたし。そっちに任せる」
「大丈夫かな……」
拾ったメダロッチの音声をオンにする。
「聞いてたか?力を貸してくれ」
「つーん」
口で言うのか。
「そうだな……じゃあ、マスターになってやる。だから機嫌を直してくれ」
言いながらティンペットを拾ったメダロッチにペアリング、転送。手に風船持ってるからちょっとやりにくい。
「コイシマル!?」
ベーデンが驚くのも無理はない。普通に考えるなら、そこまでしてカブトにこだわる必要性はないからだ。
ベーデンのボーイメダルはカブトメダルと同じ速度属性なので、KBT型のパーツの力を最大限に引き出せる。
ただ、オレがカブトメダルを手に入れるためにはそれでは危険だ。マスターになる理由は作れるだけ作りたい。
……もちろん、この辺りのことを黙って行動しているのはベーデンには悪いと思っているが、必要なのだ。
「……ほんとに?」
「ああ。お前の持ち主が見つかったら、頼み込んでお前を譲ってもらう」
更にメダロットのセッティングを完了。
「やったー!!名前、名前つけて!」
「あっ名前……じゃあ、"ルート"だ。とりあえずだけどな」
「ルート!いい名前!!」
心底嬉しそうな声だ。本当に間に合わせの適当に考えた名前なんだが。
「気に入ったか?ならそれでいいか、ルート転送!」
メダロッチに音声入力すると、オレの前に組み上がったKBT型メダロット・クロトジルが転送される。
さあ、原作の初ロボトルがようやく開幕だ。
※アンケ設置予定
※今回のアンケは参考にするためのもので、本編に適用されません。気持ちだけどうぞ
メダロット5は好感度調整するとクリア後全員デート可能状態になりますが、ヒロインは……
-
ストーリーの雰囲気壊れるから一人に絞れ
-
黙って股がけしろ
-
ヒロインはベーデンだから