「暇だな」
薄暗い森の中でため息混じりに呟やく大きな帽子をかぶった少女。彼女の名は霧雨魔理沙。普通の魔法使いである。暇が大の苦手であり、常に何か起きないかと考えている。
そして、そんな魔理沙が住むここは幻想郷。とある東の国の山の中にある地続きではあるが、幻想郷外からは認識はされない不思議な場所。
「異変でも起きないかな。平和は暇でつまらないし」
異変など起きないことに限るのだが、魔理沙にとっては退屈よりも異変のほうが良いらしい。何処ぞの博麗の巫女が聞いたら速攻でしばかれそうだが。
「あ~あ、霊夢んちでも行くとするかぁ~」
魔理沙はそう言うと箒に股がり東の空へと飛び去る。向かう先は博麗神社。幻想郷にある神社の一つであり、幻想郷にとってなくてはならない重要な役割を行っている。
「よぉ~霊夢~! 遊びに来たぜぇ~」
博麗神社についた魔理沙は中にいる親友に間の抜けた声で呼びかけた。
「あら、魔理沙じゃない。何? どうしたの?」
返事をしたのは巫女服のまま部屋でだらけている少女。彼女の名は博麗霊夢。楽園の素敵な巫女である。
「いや、ここのところ暇でさぁ。何か変な事やおかしな事とかなかったか?」
箒から降りた魔理沙は、縁側に腰を掛け話しかける。
「あんたねぇ、何事もないわよ。何も起きない、いいじゃない。こうやってのんびりとできるのは良いことよ」
「お前はな。でも、私は良くないな。退屈は苦手だ。あー、異変でも起きないかな」
「縁起でもないことを言わないでよ。起きてもらっちゃ困るわ。私の仕事が増える」
異変解決は巫女の仕事。であるが何度も起きてもらっては確かに困る。しかし、魔理沙は異変よりも退屈の方が一大事のようだ。
「そんなに退屈なら自分なりの娯楽を考えたら? そうね、香霖堂にでも行って外の遊びなんかを探してみるのはどうかしら」
「なるほどな。霊夢にしてはいい案だ」
霊夢の案に賛同する魔理沙。早速向かうまいと箒に股がる。
「んじゃ、行ってくるぜ。またな! 霊夢」
「気をつけるのよ」
短い会話を交わし、香霖堂へ飛んでゆく。そんな魔理沙を眺めながら霊夢は呟く。
「異変ね、何も起きないといいけど」
同時刻、霧の湖にて
「ねぇ、大変だよ!」
幼さが残る舌足らずな声。ここは霧の湖。妖精が多く住んでいる霧がかった湖である。声の主は大きなリボンをつけた氷の妖精。
「え、なに? チルノちゃん」
チルノの質問に答えたのは凛とした、しかし子供っぽさが感じとれる声。彼女はポニーテールのチルノより少し大人びていた。それもそのはず、彼女はただの妖精ではなく、大妖精である。
「アタイ聞いちゃったんだ! 吸血鬼がなんか企んでるんだって!」
「え! ほんとっ!? 何を企んでるの?」
「それはね……」
「ほう、面白そうだな。私にも聞かせてくれよ」
チルノが話そうとしたその時、後ろから声をかけられる。驚くチルノ。思い切って振り向くとそこには魔理沙がいた。香霖堂に行く前に霧の湖に寄り道したのだ。
「魔理沙! 脅かさないでよ!」
「ははっすまん」
プンプン、と怒るチルノに笑いながら謝る。
「こんにちは、魔理沙さん」
「よう、大妖精」
礼儀正しく挨拶をする大妖精に挨拶を返す。
「それで、吸血鬼が何をしようとしてるんだ?」
話を戻そうとチルノに尋ねる。
「あ、そうだ! 吸血鬼達がね! 今夜、満月の日、何かするって言ってたんだ」
「何か?」
「満月の日といったら妖怪の力が高まる日だよね? もしかして……幻想郷を……!?」
大妖精が驚いた顔言った。その言葉に空気がピリつく。「まさかな」と魔理沙。しかしその顔は真剣そのもの。
「これは確かめる必要がありそうだぜ、じゃあな! お前ら」
「ま、魔理沙! まさか紅魔館に!!」
「危ないですよ!?」
面白そうな予感に魔理沙は飛びつかないはずはなかった。二人の制止も虚しく飛び去る。目指すは紅魔館。
「さーて、お前たちの企み、私が止めてみせる!」
一体何を止める気なのか。そもそも本当に企んでいるのか。面白さを求め冒険する魔理沙には関係のないことであった。スピードをそのまま紅魔館に突入するのであった。
修正、3.10