ますたーは 幼児化 してしまった! 作:あたらんて
路行く職員を避け、会釈して、マシュは黒い風のように走った。食堂で皇帝たちの酒宴の、その宴席から離れた道を駆け抜け、酒宴の人たちに疑問を抱かせ、ランスロットを蹴とばし、フォウくんを飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽と、同じくらいで走った。
ひたすらに走って、やっとの様子でとある扉を開ける。
「緊急事態ですダ・ヴィンチちゃん!」
扉を開けたその先には万能の天才が1人、座っていた。
何か仕事が一段落着いたようで、リラックスしていた天才は入ってきたマシュの尋常でない様子に、思わず立ち上がる。
「どうしたんだい、そんなに焦って。何事にも冷静に対処することが肝」
「先輩が幼児化しました!!」
「・・・え?」
「わー、すごーい、すぱるたくす、すごーい!!」
「フハハハハ!これも圧制者へ叛逆するための力である。君も圧制者への叛逆を望むかい?」
「あっせいしゃってなにー?」
「圧制者とは圧制を行う者だとも」
「あっせいってなにー?」
「圧制とは圧制者が行う事だとも」
とんでもなく屈強な男が5歳程の男児を振り回している。
誰が見ても通報である。
その様子を眺めているにも関わらず、通報しない女が一人いる。ブーディカである。スパルタクスとはどこかの特異点での縁があってか、案外仲が良いのである。
経緯としては、マシュも含めた3人で歩いていたら幼児化したマスターをカルデアの廊下で発見、マシュがダ・ヴィンチに報告に行き、その間スパルタクスは遊んであげている?ということだ。
記憶も消えているようで、自己紹介もした。
そして、今ブーディカは頭を抱えていた。
(何でマスターが小っちゃくなってるの!?おかしいでしょ!いや、まず原因は置いといて解決策よね。この間に特異点でも発生したら目も当てられないわ。他のサーヴァントたちに任せたら戻るかしら…?それでもし治らなかったら…)
「ねぇぶーでぃか…。ねむい…」
思考の途中で幼児と化したマスターが目をこすりながら抱き着いてくる。
普段からマスターを可愛がろうとしてきたブーディカにとって念願のことである。ブーディカは思考をなんか誰か引き篭ってそうな理想郷辺りまで放り投げてマスターをあやし始めた。
「じゃあお部屋に行っておねんねしましょっか。おんぶして連れてってあげるわ」
「うん、ありがとー」
まぁ、子供は可愛いものである。
ぶーでぃか は 母性 を はっきした!
マスターの部屋で3人のサーヴァントと1人の元デミ・サーヴァントが立っている。
スパルタクスにはお帰り頂いた。清姫は元々マスターをストーキングしてた。
「ざっと調べたところマスター君の症状は5歳前後の時点に肉体・記憶・精神ともに戻ったとみていい。何故か着ていたカルデアの制服もサイズが合っている。原因は完全に不明。そして対処も不可能。完全にお手上げだね。唯一の救いはサーヴァントとのパスは繋がったままであるということだ。一応戦闘行為は可能だろう。しかしそれは非常に危険な行為だ。一刻も早くこの事態を解決しなければいけない。」
一同はブーディカに寝かしつけられて幸せそうに眠っているマスターを心配げに見つめる。
「ああ、そんな、安珍様…。でも、これも試練です。何としてもこの事態を解決してみせましょう!待っていて下さい!」
狂化EXは部屋を飛び出していった。
「…そうだね、確かにああなるサーヴァントもたくさんいるだろう。まず全サーヴァントに通達しないとね…。一度ブリーフィングルームに職員、サーヴァント共に集まろう」
ダ・ヴィンチも放送をかけに行った。
「先輩…。私は今やサーヴァントの身では無いですが、お役に立てそうな時が来ました!まずは会議の準備のお手伝いをしてきます!」
マシュも部屋を出る。
「皆忙しいなぁ…。あたしもさっさとブリーフィングルームに行きますか」
一人残ったブーディカも生前にあった子供は寝かしつけたら大丈夫といった感覚で部屋を出てしまった。
当然、マスターは一人きりである。
そして、一人のサーヴァントがマスターを訪ねて部屋にやってくる。
「マスター、汝がとても欲しがっていた金の林檎をようやく手に入れ…」
今のマスターにとって最も危険な人物の一人、純潔の狩人が現れた。
次回はアタランテ回です