仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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第18話 世界樹へ向けて

「あんた、昨日ナーヴ・ギア使ったでしょ」

 

 

ALOにログインした次の日、私がいつも通り朝食を摂っていると、突然、母がそんな事を言ってきた。

 

 

別に誤魔化す必要もなかったので何故気づいたのか聞いてみると、母が私の部屋に様子を見にきた際、ナーヴ・ギアを装着してあの世界にダイブしている姿を見たからだそうだ。

 

 

「別に怒ってないわ。やる事があるんでしょう?でも、どんな危険があるか分からないし、次からは“これ”を使いなさい」

 

 

母はそう言いながら、ダンボール箱をテーブルの上に置く。

 

 

私は箸を置き、母が置いたダンボールを開ける。そこには、ナーヴ・ギアの後継機アミュスフィアが入っていた。

 

 

「良いのか?」

 

 

「まあね、二年間の誕生日の代わりとでも思って貰っときなさい。あ、あとナーヴ・ギア使ってた事は、お父さんには秘密にしておいてあげるから安心しなさい」

 

 

「ありがとう、助かる」

 

 

私の父は警察の関係者で、本人曰くかなり上の立場にいるらしい。

 

 

まだ入院中だった私の見舞いに来た父が、仮想課の仕事でやってきた菊岡と偶然鉢合わせた際、菊岡が父にペコペコしていたので、高い地位にいるのは本当のことだろう。

 

 

別に父はVRゲームを否定している訳ではない。ただSAO事件がひと段落したばかりで、未だ帰還していないプレイヤーの件もあるのだ。私のことで余計な心配はかけたくない。

 

 

 

 

 

 

 

朝食を食べ終えた私は自室に戻り、早速貰ったアミュスフィアにALOのソフトを入れた。

 

 

適当にダイブの準備を済ませると、その後は勉強をして集合時間までの暇を潰す。

 

※彼は一応受験生

 

 

 

 

 

 

そして集合時間の五分前になり、私はアミュスフィアを被ってベッドに横たわる。

 

 

「リンクスタート」

 

 

 

 

 

 

 

 

ログインすると、ちょうど良いタイミングでキリトもログインし、リーファが宿屋に入ってきた。

 

 

彼女は世界樹に行くための道具を一通り買ってきていたらしい。

 

 

私とキリトは装備を新調しようと、リーファ行きつけの武具店で装備一式を取り揃えた。

 

 

キリトは黒い服に黒いロングコートという、SAO時代を思い出させる出で立ちに、彼の身長と同じくらいの大剣を。

 

 

私は防御性能が高めの服とロングコートと、大剣、槍、刀の三種類の武器を購入した。ただし、今は大剣のみを装備している。

 

 

–––金までもがSAO時代から引き継がれていたのは、さすがに驚かされたがな。

 

 

あとは出発するだけだったのだが、ここで少しひと悶着あった。

 

 

パーティーを抜け、リーファが私たちと行動することを彼女の元パーティーメンバーが咎めたのだ。

 

 

リーファとそのパーティーメンバーが口論になりかけた時、キリトが間に入って「仲間はアイテムじゃないぜ」と一喝。その後、喧嘩別れのような形で、リーファはそのパーティーとの縁を切った。

 

 

街を出る直前、リーファの友人であるレコンが現れ、少し気になることがあり今は共に行動できないが、すぐに追いつくと言い残し、そのまま去っていった。

 

 

 

そして私たちは遂に街から飛び出す。湖を目指している途中で何度かモンスターとの空中戦闘を経験し、だんだんと無意識に翅を動かしながら戦闘できるようになってきた。

 

 

 

しばらくして、時刻は午後7時を回ったという事もあり、私たちは入れ替わりでログアウト休憩する《ローテアウト》で休息を取ることにした。

 

 

フィールドではログアウトしてすぐにアバターが消えないため、誰かが見守ってなくてはならない。

 

 

「私は最後で良い。敵が来てもアバターは死守する。だから安心しろ」

 

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 

「よろしく頼むよ」

 

 

キリトとリーファはログアウトボタンを押してログアウトする。同時に二人のアバターは目を閉じ、眠ったように動かなくなった。

 

 

顔の前で手を振ったり、頬(キリトの)をつねっても反応がない。完全に抜け殻だ。

 

 

少しの間、抜け殻になったキリトのアバターを弄っていると、キリトの胸ポケットからもぞもぞと動いてユイちゃんが姿を現した。

 

 

「キリトがいなくても動けるんだな」

 

 

「はい。一応ナビゲーション・ピクシーとして扱われていますが、わたしはわたしとしての自我があるので」

 

 

「そうか……」

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

 

 

–––気まずい。

 

 

今思えば私とユイちゃんは大して関わりがない。唯一あったとすれば、あの隠しダンジョンのときぐらいだ。なのでこの子と私には共通の話題というものがない。

 

 

–––そう言えば。

 

 

「一つ聞きたい事がある」

 

 

「はい、なんですか?」

 

 

「アインクラッド第1層の隠しダンジョンのことを覚えているか?」

 

 

「はい。わたしにとって忘れる事のできないパパとママとの大切な思い出です。あ、もちろんペルソナさんと初めて会ったという意味でも大切な思い出ですよ」

 

 

私のことを気遣ってくれてか、ユイちゃんはそう付け足してくれた。

 

 

「あの時、どうして怖がらなかったんだ?」

 

 

「? どういう意味ですか?」

 

 

「いや、君くらいの歳の子供は、仮面を付けた知らない男に会ったら普通、恐怖で泣き出すからな。無反応だったのは初めてで少し気になっていてな」

 

 

私がそう言うと、彼女は納得したように右手の拳で左の掌をぽんっと叩く。

 

 

「実はあの時、ペルソナさんのことは少しだけ不気味な人だなとは思ってましたよ」

 

 

–––思ってたのか……。

 

 

「でも、パパとママが信頼しているのを見て、良い人だって事がすぐに分かりました。それにペルソナさんからは優しさのようなものを感じました」

 

 

「私は優しくなんかない」

 

 

「いいえ、ペルソナさんは優しいです。一見冷たい心の人と思われがちですが、わたしはMHCPなので、隠れた優しさを感じることぐらいは出来ます。それに優しい人じゃなかったら、初めて会ったわたしの事を助けてくれたりしませんよ」

 

 

「それは……」

 

 

続きを言う前に、口の中で言葉が詰まる。私を見つめる少女の目がとても真っ直ぐで自身に満ち溢れていたからだ。

 

 

「確かに、君の言う通りかもな」

 

 

「はい!ペルソナはとっても優しくて頼りになる人です。わたしが保証します!」

 

 

「ありがとう」

 

 

私がそう言うと、何故かユイちゃんは顔をキョトンとさせた。

 

 

「どうした?」

 

 

「いえ。ただ、ペルソナさんの笑ったところを初めて見たので……少し見惚れてました」

 

 

そう指摘された私は自分の口元を触ってみる。なるほど、確かに口角が微妙に上がっている。

 

 

–––他人の前で笑ったのは何年ぶりだろうか。

 

 

「あの……ペルソナさん」

 

 

「なんだ?」

 

 

「ペルソナさんさえ良ければ、またこうやってお話できませんか?わたし、パパやママ以外の人とあまり話した事なかったので、迷惑でなければ……」

 

 

最後の方になるにつれて、ユイちゃんは申し訳なさそうに下を向く。

 

 

そんなユイちゃんを見て、私は彼女の頭を人差し指で撫でてあげる。

 

 

「別に構わない。好きな時にいつでも話しかけてくれ」

 

 

「はい!」

 

 

その後、私とユイちゃんはキリト達が戻ってくるまでの少しの間おしゃべりをした。

 

 

私が知ってる限りのキリトやアスナのことや、私の知らない彼らの周りで起こった出来事など、私たちは色んな情報を互いに出し合った。

 

 

 

 

 

 

 




ユイちゃんの喋り方はこんな感じで良かったのだろうか。久しぶりでキャラの性格が少しあやふやになってる?大丈夫だよね、きっと……。
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