キリトの交渉により、彼らは捕虜にしたプレイヤーから情報を聞き出すことに成功する。
色々と話を聞くと、サラマンダーは何か大きな作戦を実行しようと動いているらしく、彼らは私たちがその作戦の邪魔になる可能性があると危惧した上からの命令で襲ってきたらしい。
「作戦とは…世界樹攻略のことか?」
私が聞くと男は首を横に振った。
「まさか。さすがに前の全滅で懲りたらしくて、最低でも全軍に
「取引でウソはつかないさ」
キリトは約束の金とアイテムを男に渡し、それを受け取った男は嬉しそうにして去って行った。
その後、私たちは鉱山都市《ルグルー》を散策していると、先程リーファの元に送られてきたメッセージの話になる。
「あっ、忘れてた」
リーファがメッセージを打とうとするが、レコンは既にログアウトしているようで、リーファは仕方なく現実世界で連絡を取るために一時的にログアウトした。
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しばらく経つと、ログアウトしたリーファが血相を変えて慌てながら戻ってきた。
「キリト君、ペルソナさん–––ごめんなさい」
彼女は戻ってくるなり、そんな事を言う。
「あたし、急いで行かなきゃいけない用事ができちゃった。説明してる時間もなさそうなの。たぶん、ここにも帰ってこられないかもしれない」
どうやらただ事ではないようだ。
「そうか。じゃあ、移動しながら話を聞こう。どっちにしてもここからは足を使って出ないといけないんだろう?」
「……わかった。じゃあ、走りながら話すね」
全力疾走で街を抜け、リーファから事情を聞いた。
どうやら、サラマンダーがシルフとケットシーの領主会談を襲うために進行中らしい。
しかも領主会談の情報は、出発前、私たちに絡んできたリーファの元パーティー仲間のシグルドがサラマンダーに密告していたものだと言う。
サラマンダーが領主会談を襲うことで、シルフとケットシー間で戦争が起こる可能性があり、更に領主を討った側は、討たれた側の資金の三割を無条件で手に入れらるだけでなく、街を占領し、税金を自由に掛けられるらしい。
「これは、シルフ族の問題だから……これ以上キミ達が付き合ってくれる理由はないよ……この洞窟を出ればアルンまではもう少しだし、多分会談場に行ったら生きて帰れないから、またスイルベーンから出直しだろうしね。–––ううん、もっと言えば……世界樹の上に行きたい、っていうキミ達の目的のためには、サラマンダーに協力するのが最善かもしれない。キミ達なら傭兵として雇ってくれるかも。だから–––今、ここであたしを斬っても文句は言わないわ」
リーファは私たちに斬られることを覚悟しているのだろう。ぎゅっと目を瞑り、力拳を作っていた。
だが私には、
「君を斬るつもりはない」
彼女を斬ることなど出来ない。
「君ならそう言うと思ったよペルソナ」
私の言葉に続いて、キリトがそう言った。
「所詮ゲームだから何でもありだ。殺したければ殺すし、奪いたければ奪う。–––そんなふうに言う奴には、嫌ってほど出くわしたよ。でも、この世界で欲望に身を任せれば、その代償は必ずリアルの人格へと還っていく。プレイヤーとキャラクターは一体なんだ。だから、たとえどんな理由でも、自分の利益のために人を斬るようなことは、俺は絶対にしない」
「そういう事だ。私も、決闘以外で仲間だった者と斬り合いたくはないからな」
「キリト君、ペルソナさん……ありがとう」
リーファから感謝の言葉を述べられ、キリトは少し照れくさそうに笑う。
「ごめん、偉そうなこと言って。悪い癖なんだ」
「ううん、嬉しかった。–––じゃ、洞窟出たとこでお別れだね」
「や、俺たちも一緒に行くよ、だろ?」
「ああ。それに今、リーファは私たちのパーティーメンバー…仲間だ。助けない義理はない」
「え、え?」
「–––しまった、時間無駄にしちゃったかな。ユイ、走るからナビよろしく」
「りょーかいです!」
自身の肩に乗っているユイちゃんが頷いたのを確認するや否や、キリトは未だ状況が理解できていないリーファの手を掴み、全速力で走り出した。
私も彼らの後を追いかけて走る。
目の前に現れたモンスターも、リーファの悲鳴をも気にせず走り続け、私たちは洞窟の外へと飛び出る。
自分が空中にいることに気づいたリーファは大慌てで翅を広げ、滑空すると、思いっきり息を吐いた。
「–––寿命が縮んだわよ!」
「時間短縮になったじゃないか」
「口論してる場合じゃないだろ。リーファ、領主会談の場所はどこだ?」
「ええと、ケットシー領につながる《蝶の谷》だから…北西のあの山の奥よ」
「残り時間は?」
「–––20分」
「急ぐぞ」
加速し、会談の場へと急ぐ。
本当はユージーン将軍のところまで行きたかったけど、諦めました。
もう少し短縮しても内容が伝わるぐらいの文章力が自分にあれば……っと日々悩む作者です。