仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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いつもの事ですが、PSO2要素がほとんど無いです


恐らく、ファントム・バレット編あたりから少しずつ入れていけると思います


では、第24話どうぞ






第24話 央都アルン

「そろそろ時間か……」

 

 

約束の時間が訪れ、私はALOにログインした。

 

 

 

 

 

 

目を開くと、既に来ていたリーファの姿が目に映る。

 

 

–––早いな。

 

 

そう思いつつ、彼女に挨拶しようと近づいた瞬間、私は彼女の頬に涙が流れているのに気がついた。

 

 

「……どうした?」

 

 

「ペルソナさん……あたし、失恋しちゃった」

 

 

リーファはそう言うと、未だ自身の目から流れる涙を指で拭き取った。

 

 

「ごめんなさい、会ったばかりの人に変なこと言っちゃって。ルール違反ですよね、リアルの問題を持ち込むのは……」

 

 

「………」

 

 

そんな彼女の姿を見て、私は彼女の隣にそっと座る。

 

 

「……こういう時、一体どんな言葉を掛ければいいのか良く分からない。分からないが、辛い思いをしているのなら、話を聞こう。大した事は出来ないが、一人で抱え込むよりは楽になるはずだ」

 

 

「ペルソナさん……」

 

 

静かな声で彼女がつぶやいた次の瞬間、リーファが私の胸に顔を埋めてきた。

 

 

突然の行動に私は一瞬驚いたが、すぐに零れ落ちる涙の粒に気がつき、手の平でそっと彼女の頭を撫でる。

 

 

そのままゆっくりと時間だけが流れていった。

 

 

 

 

 

 

 

どれほどの時間が経っただろうか。ずいぶんと長い間同じ体勢を維持していたが、遠くの方で響く鐘の音とともにリーファは顔を上げた。

 

 

「ありがとうございます。ペルソナさんって優しいんですね」

 

 

「その反対の言葉はずいぶん言われたがな……」

 

 

そんな風にリーファと話していると、聞き慣れた効果音とともにキリトがログインする。

 

 

「なんだ、二人とももう来てたのか」

 

 

「遅かったな」

 

 

「少しな……それじゃあ行こうぜ!」

 

 

私たちは宿を出て央都アルンへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流石はALO最大の都市と言ったところか、アルンではさまざまな種族のプレイヤー達が仲睦まじくしており、都市全体が活気に満ち溢れていた。

 

 

そして私たちの目的の場所……世界樹。

 

 

アルンの中心に(そび)え立つそれは、離れた外環部からでも分かるほど巨大だった。

 

 

混成パーティーの間を縫うように進みながら、世界樹のことについてリーファに聞く。

 

 

リーファ曰く、世界樹の周囲は侵入禁止エリアになっており、木登りで登っていくことは出来ないらしい。

 

 

–––こんな巨大な木を登ろうとするだろうか?

 

 

私はそんな事を思いながら、肩車でロケット式に飛んでいった猛者たちの事を尋ねると、どうやら既にGMが修正を入れ、雲の上に障壁が設けてあるようだ。

 

 

 

 

 

しばらくして、世界樹が巨大な壁としか見えなくなるくらい近づいた頃に、突然、キリトの胸ポケットから飛び出てきたユイちゃんが、真剣な眼差しで上空を見上げた。

 

 

「お、おいユイ……どうしたんだ?」

 

 

周囲のプレイヤーを気にしながらキリトが小声で囁き、リーファも首を傾けてユイちゃんの顔を覗き込む。

 

 

「ママ……ママがいます」

 

 

「なっ……!」

 

 

「本当か⁉︎」

 

 

「間違いありません!このプレイヤーIDは、ママのものです……座標はまっすぐこの上空です!」

 

 

それを聞いた私は、瞬時に上空を見上げるが、同時に響いた破裂音に後ろを振り向く。

 

 

直前までそこにいたキリトの姿はなく、彼は凄まじい勢いで遥か上空…世界樹の枝へと向かって急上昇していた。

 

 

「キリトッ!」

 

 

私もすぐに翅を広げ、キリトを追って飛ぶ。

 

 

だが、まるでロケットブースターの如く加速するキリトに追いつく事が出来ず、彼の黒い姿がだんだん点のように小さくなっていく。

 

 

しかし、ALOに入ってからたった二、三日で、ここまでの飛行技術を会得したキリトのプレイヤースキルは流石だと、このような状況にも関わらず思ってしまった。

 

 

 

「………‼︎」

 

 

 

後方からリーファが何か叫んできたが、その声を聞き取ることは出来ず、更にその直後、雷でも落ちたのかと思うほどの衝撃音が空に響く。

 

 

私は急いで音がした方へ向きなおると、先程まで勢いよく飛んでいたキリトが空中を漂っていた。

 

 

「キリト!」

 

 

キリトは体勢を立て直し再び上昇するも、すぐに見えないシステムの壁に阻まれる。

 

 

「落ち着けキリト!そこから先に行けないのは貴様にも分かるだろ!」

 

 

「放してくれ!行かなきゃ……行かなきゃいけないんだ‼︎この先にいるんだ‼︎」

 

 

キリトに私の言葉は届いていないようで、取り憑かれたような光を両眼に浮かべ、何度も見えない壁に突進を繰り返す彼の腕を掴み、力づくで止める。

 

 

その間、キリトの胸ポケットから飛び出したユイちゃんは、必死に世界樹の上に向かって叫んでいた。

 

 

「ママ‼︎わたしです‼︎ママー‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なんだよ……これは……!」

 

 

俺は歯を食い縛りながら、右拳で見えない壁を殴った。

 

 

「わたしも警告モードで呼びかけたですが……」

 

 

追いついたリーファの手の中で、ユイが申し訳なさそうに呟く。

 

 

「キリト……」

 

 

見えない壁を睨み続ける俺の心情を察してか、ペルソナはそのまま静かに首を振った。

 

 

彼の言いたい事はすぐに分かった。これは侵入禁止エリアを示す障壁だ。ここから先に俺たちが進むことは出来ない。

 

 

でも、だとしても!この先にアスナがいる!あと僅かで手が届く距離にいるのに、《ゲームシステム》などというプログラム・コードにすぎないものが目の前に立ち塞がるのだ。

 

 

 

俺の全身を凄まじいほどの破壊衝動が貫く。

 

 

今すぐにこの見えないシステムの壁を破壊して、彼女の元に辿り着きたい。

 

 

そんな思いとともに、背中の剣を抜き放とうと柄を握りしめた瞬間、

 

 

上空から小さな光を瞬かせながら、小さなカード型のオブジェクトが俺を目指して舞い降りてくる。

 

 

俺たちは手の中に収まったものをじっと見つめる。

 

 

「リーファ、これ、何だかわかる……?」

 

 

「ううん……こんなアイテム見たことないよ。クリックしてみたら?」

 

 

俺はその言葉に従い、カードをシングルクリックするが、出現するはずのホップアップ・ウィンドウは表示されなかった。

 

 

その時だ、ユイが何かに気が付いたように身を乗り出し、カードに触れながら言った。

 

 

「これ……これは、システム管理用のアクセス・コードです‼︎」

 

 

「っ⁉︎……じゃあ、これがあればGM権限が行使できるのか?」

 

 

「いえ……ゲーム内からシステムにもアクセスするには、対応するコンソールが必要です。わたしでもシステムメニューは呼び出さないんです……」

 

 

「そうか……」

 

 

「だが、そんなものが理由もなく落ちて来ないだろう……っとなると、それは恐らく……」

 

 

ペルソナはそれ以上の言葉は言わず、ただ静かに世界樹の枝を見つめる。

 

 

「はい。ママがわたし達に気付いて落としたんだと思います」

 

 

その言葉に、俺はカードをそっと握りしめ、彼女(アスナ)の意思を感じ取ろうとした。

 

 

そしてしばらくしてから、リーファの方を向き直る。

 

 

「リーファ、教えてくれ。世界樹の中に通じてるっていうゲートはどこにあるんだ?」

 

 

「樹の根本にあるドームの中だけど……で、でも無理だよ。あそこはガーディアンに守られてて、今までどんな大軍団でも突破出来なかったんだよ」

 

 

「それでも、行かなきゃいけないんだ」

 

 

俺はカードを胸ポケットに入れ、そっとリーファの手を取る。

 

 

「今まで本当にありがとう。ここからは俺一人で行くよ」

 

 

最後に彼女の手をぎゅっと握り、後退して距離を取る。そして深く一礼し、翅を畳んで一直線に世界樹の最下部を目指して急降下した。

 

 

 

–––待ってろよアスナ。すぐに行くからな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく……何でも一人で解決しようとする。貴様の悪い癖だな」

 

 

–––私が言えた事じゃないか……。

 

 

自身の言葉に自分でツッコミを入れつつ、キリトを追って降下する。

 

 

リーファには全て終わった後で説明すると言い残して来たので、恐らく問題はない筈だ。

 

 

 

 

 

 

 

降下途中、世界樹の手前にある石段を登るキリトを発見。私は石段の先にある世界樹の中へと通じてるであろう扉の前に着地した。

 

 

「ペルソナ……」

 

 

「安心しろ。止めにきた訳じゃない」

 

 

「……手伝ってくれるのか?」

 

 

「無論そのつもりだ」

 

 

扉に近づくと、扉の両隣にある巨大な石像から、声が聞こえてきた。

 

 

『未だ天の高みを知らぬ者よ、王の城へと到らんと欲するか』

 

 

同時にクエスト発生し、受注するか否かを決める⚪︎と×のボタンが出現。迷わず⚪︎を選択。

 

 

『さればそなたが背の双翼(そうよく)の、天翔けるに足ることを示すがよい』

 

 

すると、石像たちが互いに交差させていた剣が上がり、巨大な扉は地響きを上げながら、ゆっくりと開いていく。

 

 

私たちは背中の剣を抜き、扉の先へ踏み入る。

 

 

世界樹の中は、無駄に広いドーム状の空間だった。

 

 

壁にはステンドグラス状の紋様がぎっしりと描かれており、その一つ一つが白く発光している。

 

 

更にその遥か先の天井には、十字に分割された石盤に閉ざされている円形の扉のようなものが見える。

 

 

「–––行けッ‼︎」

 

 

キリトは己を鼓舞するように叫び、力強く地を蹴る。

 

 

私もキリトに続いて飛び上がるが、すぐに異変が起こる。

 

 

白く発光する窓から、白銀の鎧を纏った騎士が長剣を携えて出現した。

 

 

十中八九あれがガーディアンだろう。

 

 

「そこをどけええええっ‼︎」

 

 

絶叫と共に撃ち込まれたキリトの剣が、騎士の首を深く貫き、騎士は白い煙を放ちながら爆散する。

 

 

–––行けるな。

 

 

このガーディアンは大した強さではない。これなら私とキリトで容易に突破できる。だが、その考えを覆すように、視線の先にある全ての窓から、無数の騎士たちが出現した。

 

 

 

「–––––うおおおおおおおお‼︎」

 

 

だがキリトは己に鞭を打つように咆哮、騎士の大群目掛け一直線に突っ込んでいく。

 

 

卑怯とも言えるような数のヘイトがキリトに集中するが、彼のはその猛攻に怯まずに進む。

 

 

剣を振るい、騎士たちの首を跳ね、一心不乱にドームの天井に向かって飛翔し続ける。

 

 

私は死角からキリトを狙うガーディアンを次々と斬り落とし、キリトを前に進ませる。

 

 

 

 

だが、それにも限界があった。

 

 

一本の矢が彼を貫き、それに続いて周囲のガーディアンが、一斉に矢を放つ。

 

 

私は飛んでくる矢を落とすが、キリトの方までは手が回らない。

 

 

幸い彼も最小限の動きで、矢のほとんどを回避し、目と鼻の先にある天蓋のゲートに手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、複数の剣がキリトに突き刺さった。

 

 

「キリトォォォォォッ‼︎」

 

 

私は手を伸ばすが、その手は届くはずもなく、目の前で彼は炎と化した。

 

 

「……アアアアアァァァァァァァァァッ‼︎」

 

 

私は絶叫し、目に映るガーディアンを全て斬り伏せた。無限に湧いてくる奴らを何度も何度も斬り殺した。

 

 

久しぶりだった。こんなにも何かを憎いと思ったのは、こんなにも自分が非力だと感じたのは。

 

 

リメインライトが消えていないため、まだ蘇生のチャンスはある。

 

 

そんな単純な事でさえも忘れてしまうほどの怒りが込み上げ、私は狂人の如く剣を振り続けた。

 

 

と、その時だ。数体のガーディアンが入口の方に視線を向ける。

 

 

奴らに釣られるように、私も入口を見ると、そこには俊敏な動きと長刀で騎士たちの剣を回避しながらこちらへと向かってくるシルフの少女があった。

 

 

「–––キリト君‼︎」

 

 

それはリーファだった。

 

 

キリトのリメインライトを回収し、ドーム内から退避しようとする彼女を、ガーディアン達が黙って見過ごす筈もなく、その無防備な背中に矢の雨が降り注ぐ。

 

 

何本か矢が命中し、バランスを崩すリーファ。

 

 

私は彼女を援護しながら、ガーディアンを確実に一体ずつ倒していき、なんとかドームからの脱出に成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脱出後、キリトはすぐにリーファの持つ蘇生アイテムで復活した。

 

 

「ありがとう、リーファ。……でも、もうあんな無茶はしないでくれ。俺はもう大丈夫だから……これ以上迷惑はかけたくない」

 

 

「迷惑なんて……あたし……」

 

 

リーファがその先の言葉を言う前にキリトは立ち上がると、ゆっくりと私の方へと歩み寄ってきた。

 

 

「ペルソナ……」

 

 

「私にもこれ以上迷惑をかけたくないから、あとは一人で行く……とは言わせないぞ」

 

 

「……流石だな、俺の考えてる事は丸分かりか」

 

 

「いや、分かる事しか分からない。貴様が一刻も早く彼女……アスナを救いたい気持ちは分かる。だが一人では無理だ。それぐらい、貴様にも分かるはずだが?」

 

 

私の正論に、キリトは苦虫を噛み潰したような顔をして俯き、沈黙する。

 

 

 

「……いま……いま、何て……言ったの……?」

 

 

不意に、リーファがそう尋ねてきた。

 

 

「ああ……アスナ、俺の捜してる人の名前だよ」

 

 

その問いにキリトが答えると、リーファは明らかな動揺を見せ、半歩後退った。

 

 

「でも……だって、その人は……」

 

 

口元に両手を当て、とても小さな声で呟く彼女は、信じられないと言うような目でキリトを見つめる。

 

 

そして………

 

 

 

 

 

「……お兄ちゃん……なの……?」

 

 

 

 

今にも掻き消えそうな声で発せられた言葉に、まるで全てが凍りついたように、世界が静寂に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

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