ファントム・バレット編、始まります。
第28話 銃の世界
《ダン!ダダン‼︎》
廃れた施設の地下深く、静寂に支配された暗黒の空間に銃声が鳴り響く。
銃声とともに発射された銃弾は、目にも止まらぬ速度で一直線に目標へと命中した。
《キシャァアアア‼︎》
被弾した目標もとい巨大な蟲型のボスモンスターの咆哮で、地下全体が大きく揺れる。
そして自身よりもずっと小さい標的に向かって、自慢の鎌を振り下ろした。
だが彼はワイヤーを発射し、まるで空中サーカスの様な身のこなしでボスの攻撃を避ける。
「……懐かしい気配がしたとは思ったが、まさか貴様と会うとはな《ダーク・ラグネ》!」
彼……ペルソナは対峙しているボスモンスターに向かってそう叫んだ。
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ダーク・ラグネ……私が元いた世界に存在した大型蟲系ダーカーの一種。
長く頑丈な脚と正面からの攻撃を弾く硬い装甲を持ち、大きく膨らんだ腹部は、どことなく蜘蛛の様に見えなくもない。
《ダン!ダン!》
私は再びニ発の弾丸を射出するも、奴の装甲には歯が立たず、弾かれてしまう。
前世の経験から奴の弱点は把握しているが、弱点のコアは頭部にある装甲の裏側だ。そう易々と回り込めるものではなく、仮に回り込めたとしても、その巨大に反した機敏な動きと高いジャンプで簡単に避けられてしまうだろう。
だからこそ、初めは脚を狙って体勢を崩すのがセオリーではあるのだが、どうもそれも難しそうだ。
《シングル・アクション・アーミー》それが私の使っている回転式拳銃の名前だ。
自動式拳銃とは異なりフルオート射撃が出来ず、装填数も6発のみ。またリロードにも時間がかかる為、どうしても奴の体勢を崩す前にこちらがやられかねない。
他の武器として“光学銃”があるのだが、こちらは長い射程と的確な射撃が可能だが、SAAの様な“実弾銃”に比べて威力が劣る。どの道、有効打とはならなそうだ。
–––あとは各種グレネードが3つずつか……。
一瞬でも隙ができれば、最大級の威力を誇る《プラズマグレネード》をコアの近くで爆破させれるのだが。
そう思った瞬間、複数の銃声が絶え間なく鳴り響いた。
「ヒャッハー‼︎」
何事かと思えば、反対側の崖の上から複数人が一斉にマシンガンを乱射していたのだ。本能的に石柱の裏に隠れて正解だったな。
「弾ある限り撃ちまくる‼︎」
「それが我ら《全日本マシンガンラヴァーズ》の生き様よ‼︎」
悪くない考えではある。
実際、背後からの不意打ちと連続射撃によってダーク・ラグネのHPはかなり減ってきている。
–––しかし、それだけだ。
彼等はダーク・ラグネの動きを知らない。
だからほら、大ジャンプで彼等のもとに飛んだダーク・ラグネのボディプレスで全員圧死した。
–––だがお陰で奴の気が逸れた。今が好機だ。
私は再び手首の装置からワイヤーを射出し、奴の足下に通常のグレネードを2つ投下。
ダーク・ラグネの体勢が崩れ、透かさずあらわになったにコア目掛けてけてプラズマグレネードを投げつける。
直後、目も眩むほど強烈な光と爆炎が発生し、コアが破壊されたダーク・ラグネは黒い瘴気を放ちながら消えていった。
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ダーク・ラグネが完全消滅したと同時にドロップ品がウィンドウとして私の前に表示された。
「! この世界でも私の元に来るのだな」
ドロップしたのは銃を主力とするGGOでは異色の
通常の光剣は筒状の持ち手から1mほどのエネルギーの刃が伸長するものだが、これは実体を持つ武器の周囲に刃が浮かび上がるタイプの様だ。そして何より私はこの武器を知っていた。
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手に入れた両剣をしまって施設を出た私は、GGOプレイヤーの拠点《SBCグロッケン》へと帰還すべく荒野フィールドを歩いていた。
「!」
殺気を感じ、飛んできた弾丸を避ける。
地面に着弾した弾丸は、轟音と共に周囲の砂を巻き上げた。
–––
“
他のライフルよりも威力が高い分、その反動はかなりのものである為、使いこなすには相当なプレイヤースキルが必要となる。
“
その時、先程弾丸飛んできたのと同じ方向から、相手がどこを狙っているのかを知らせる一筋の赤い線“
私はすぐに腰を低くし、全力で弾道予測線が伸びてきた方へ向かって走る。
相手の方もすぐに移動する私に狙いを再調整する。私はジグザグに動いて、狙いが定まらないようにしながら、腰のグレネードの一つに手を掛ける。
そして弾道予測線が再び私の額を捉えた瞬間、グレネードのピンを抜き、弾道予測線に沿うように投げた。
すぐに眩い閃光と強烈な炸裂音が周囲に響いた。
私が今投げたのは《スタングレネード》。敵にダメージを与える事はできないが、光と炸裂音で相手の視覚と聴覚を少しの間麻痺させる事ができる。
本来は付近の敵に投げるの方が効果的なのだが、相手はスナイパーである為、スコープ越しの閃光で目をやられた筈だ。
弾道予測線が離れた瞬間、私は敵スナイパーが潜伏しているであろう廃墟ビルの中へと入る。
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–––やられた。
相手の思いがけない反撃に彼女はそう思った。
スタングレネードの効力が切れ、視力が回復すると再びスコープを覗き、狙っていた標的を探す。だが、どこにもその姿はない。
自分が目が眩んでいる遮蔽物に身を隠したか、それとも逃げ出したかと考えていると、不意に後ろの扉が勢いよく開いた。
素早く背後を振り返ると、そこには先程の相手が自分に銃口を向けているではないか。
–––早すぎる!
彼女がいるのは廃墟ビルの屋上、どうやったのかは分からないが彼がこの場所まで上がってくるには明らかに早すぎた。
彼女はすぐにサイドアームを引き抜こうとするも、彼が発射した弾丸に撃ち落とされ、さらに後ろの鉄骨に当たり跳ね返った跳弾が被弾し、動きが止まってしまう。
その隙に距離を詰めた彼に押し倒され、額に銃口を突きつけられた。
「……降参よ」
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「女スナイパーとは驚いたな」
私は目の前の女性にそう言うが、よく考えればオラクルでもかなりの狙撃の腕を持つ人がいたことを思い出した。
「わたしも驚いたわ。まさか一瞬でここまで上がってくるなんて。……仮面を付けたシングル・アクション・アーミー使い。もしかして貴方が
「ああ、そんなこともあったか」
まだGGOを始めたばかり頃だ。レアアイテム狙いのスコードロンを壊滅させた事が噂になっていたらしい。
私は何故かレアアイテムばかり手に入るからよく狙われてたな。本当いい迷惑だった。(遠い目)
「そんな事より、スナイパーが観測手も付けずに1人とはな。余程の自信家か、ただの命知らずか」
「貴方だけには言われたくないわ」
痛いところを突かれたが、こんな殺伐とした世界で信じられるのは自分だけだ。一度共闘した仲でも、フィールドで会えば敵同士。恐らく彼女も同じ考えの筈だ。
「しかし狙撃の腕は見事だった。いいセンスだ」
「皮肉にしか聞こえないけど、一応褒め言葉として受け取っておくわ」
–––仲間の存在を警戒したが、杞憂だったか。
私がトリガーに指をかけると、彼女は私の意を察したようにゆっくりと目を閉じた。
「あっ、ひとつ言い忘れてたわ」
と思ったら、彼女はすぐに目を開けた。
「なんだ」
「わたしの名前は《シノン》。次はわたしがアンタを倒す。覚えておきなさい!」
自信に満ちた目で私を見るシノン。
「良いだろう。だがそう簡単にやられるつもりはない。次も私が勝たせてもらう」
そう言って私は彼女の脳天を撃ち抜き、彼女の体はポリゴン片となって消滅した。
暫くして、私は再びグロッケンに向けて歩く。
どうだったでしょうか?
久しぶりなのにオリジナルストーリーを書く無謀な事をしましたが、楽しんでいただけたのなら幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。