このゲームが始まってから1ヶ月が過ぎ、その間に2000人が死んだ。
そんな中、私は迷宮区に籠り続け、ボス部屋まで辿り着くことができた。
第1層のボス程度なら今のレベルでも十分戦えるが、安全を考慮し、敢えてボス部屋には入らなかった。
そして今日、第1層ボス攻略会議が行われる。
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「はーい!そろそろ始めさせてもらいます!」
ステージの中央で青髪の男が話始めたので、私は適当に人が少ない場所に座った。
「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!俺はディアベル。職業は、気持ち的にナイトやってます!」
すると、周りから笑い声とヤジが飛び、殺伐とした空気は一気に和む。
そしてディアベルは両手を挙げて皆を静かにさせ、真剣な表情で話を続ける。
「今日、俺たちのパーティがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した」
その言葉に、場にいたプレイヤー達はざわめく。
「俺たちはボスを倒し、第2層に到達して、このデスゲームもいつかきっとクリア出来るってことを、《はじまりの街》で待っているみんなに伝えなくちゃならない。それが、今この場所にいる俺たちの義務なんだ!そうだろみんな‼︎」
ディアベルはこの場の全員に問う。
プレイヤー達は互いに顔を見合い、やがて1人のプレイヤーが拍手をすると、他のプレイヤーからも拍手が上がり、中には口笛を吹くプレイヤーもいた。
「オッケー。それじゃあ早速だけど、これから攻略会議を始めたいと思う。まずは、6人のパーティを組んでみてくれ」
「(まずい)」
私はこのゲームが始まってからというもの、誰とも関わりを持ったことが無く、もちろんフレンド登録などしたことがない。周りが次々と決まっていく中、私1人が取り残された。
「あんたも溢れたのか?」
私がどうしようかと悩んでいると、黒髪の少し女顔の少年が話しかけてきた。
「ああ。お前もか?」
「正確には俺とあっちのフード付きのローブを羽織った子だ。あんた、ソロプレイヤーだろ?今回だけの暫定でいいからパーティ組まないか?」
「わかった」
少年とパーティを組むと、私のHPゲージの下に新たに2つのHPゲージ、そして《Kirito》と《Asuna》の2つの名前が表示された。
恐らく《キリト》というのがこの少年の名で、《アスナ》というのはあっちのローブを羽織った少女(名前的に)の事だろう。
「よーし。そろそろ組み終わったかな?じゃあ……「ちょお待ってんか!」」
全てのプレイヤーがパーティを組み終わり、ディアベルが話を進めようとすると、後方から声が聞こえてくる。
その声の主だと思われるサボテンのような髪型をした男は、石段を器用に一段飛ばしで降りてくると、ディアベルの前に立った。
「わいはキバオウってもんや。ボスと戦う前に、言わせてもらいたい事がある。こん中に今まで死んでいった2000人に詫び入れなあかん奴がおるはずや!」
「キバオウさん。君の言う“奴ら”とはつまり、元βテスターの人たちのことかな?」
「決まってるやないか!β上がりどもは、こんクソゲームが始まったその日にビギナーを見捨てて消えよった。奴らは美味い狩場やら、ボロいクエストを独り占めして、自分らだけポンポン強なって、その後もずーっと知らんぷりや。 こん中にもおるはずやで!β上がりの奴らが!そいつらに土下座さして、溜め込んだ金やアイテムを吐き出してもらわな、パーティメンバーとして命は預けられんし、預かれん!」
キバオウの言い分は確かだ。私もこのデスゲームが始まって直ぐにはじまりの街を飛び出した。奴の言葉に反論することは出来ない立場だ。
「っ……!」
「気にするなキリト」
キリトが苦虫を噛み潰したような顔をしているのを見て、自然と口が動いていた。
「言いたい者には好きなだけ言わせておけばいい。貴様が気に病むような事ではない」
自分で言っておいてなんだが、何故私はさっき出会ったばかりの見ず知らずの少年に、このような事を言ったのだろうか。
「発言良いか?」
すると、そこで新たに背の高く、スキンヘッドの黒人が前に出る。
「俺の名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、『元βテスターが面倒を見なかったからビギナーがたくさん死んだ。その責任を取って謝罪、賠償しろ』っということだな?」
「そ、そうや」
エギルは手帳のような物を取り出して、キバオウに見せつけるように目の前にかざした。
「このガイドブック、あんたも貰っただろ。道具屋で無料配布しているからな」
「貰うたで。それがなんや?」
「配布していたのは、元βテスター達だ」
エギルの言葉に、再び周りが騒めき出す。
「いいか、情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのにたくさんのプレイヤーが死んだ。その失敗を踏まえて、俺たちはどうボスに挑むべきなのか。それがこの場で論議されると、俺は思ってたんだがな」
キバオウは舌打ちをして、近くの石段に腰を下ろした。その様子を見たエギルも、キバオウの隣に座る。
「よし。じゃあ再開して良いかな?」
ディアベルは周りが静かになったのを見計らって、話を再開した。
「ボスの情報だが、実は先程、例のガイドブックの最新版が配布された。それによると、ボスの名前は《イルファング・ザ・コボルトロード》。それと《ルイン・コボルトセンチネル》という取り巻きがいる。ボスの武器は斧とバックラー。4段あるHPバーの最後の1段が赤くなると曲刀カテゴリのタルワールに武器を持ち替え、攻撃パターンも変わるということだ」
コボルトロード……。私はβ時代に奴と1人で戦ったが、レベル差があり、撤退するしかなかった。
その後、私が鼠に与えた情報を元にレイドを組んだプレイヤーが討伐したらしいが……。
「攻略会議は以上だ。最後にアイテム分配についてだが、金は全員で自動均等割、経験値はモンスターを倒したパーティのもの、アイテムはゲットした人のものとする。異存は無いかな?」
全員がディアベルの意見に賛同する。
「よし。明日は朝10時に出発する。では解散!」
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翌日、ディアベル率いるレイドは、第1層の森のフィールドを通りボス部屋へと向かっている。
「確認しておくぞ。溢れ組の俺たちの担当は《ルイン・コボルトセンチネル》って言うボスの取り巻きだ」
「わかってる」
「ああ」
私たちは攻略の最終確認を始めた。
「俺が奴らのポール・アックスをソードスキルで跳ね上げさせるから、透かさずスイッチして飛び込んでくれ」
「スイッチって?」
不意にアスナがそう言った。
「もしかして、パーティ組むのこれが初めてなのか?」
キリトの問いにアスナはこくりっと頷く。
これは、先が思いやられるな。
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「聞いてくれみんな。俺から言う事はたった1つだ。勝とうぜ!」
扉の前に立つディアベルの一声で全員の士気が高まった。そして、ディアベルがボス部屋の扉を開く。
「行くぞ!」
ボス部屋の中に入ると、部屋は一気に明るくなり、奥の玉座からコボルトロードがジャンプして目の前に着地し、同時にセンチネルが三体出現する。
「攻撃、開始!」
ディアベルの掛け声とともに、ボス戦が始まった。
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なので、初めは倒した所に攻略組が到着するという流れを考えてたんですけどね。なるべく原作に沿って書きたいので没にしました。