毎度の事ながら投稿間隔をどうにかして短く出来ないか悩んでいる作者です。
今回はアスナ達ALOsideメインです。どうぞ。
–––ALOside
「お兄ちゃん達、なかなか映らないねー」
「ほんとに意外ですねぇ。お2人のことだから、てっきり最初から飛ばしまくると思ったのに」
ここはALOの世界樹の上にある空中都市《イグドラシル・シティ》。その一画にキリトとアスナが共同で借りている部屋だ。
「いやいや、あいつら……特にキリトはああ見えて結構計算高ぇからな。参加者がテキトーに減るまで、どっかに隠れてる気かもよ?」
部屋の隅のバーカウンターにいるクラインの台詞に、リーファ、シリカ、リズベットの3人と共にソファに掛けていたアスナは苦笑した。
「幾らキリト君でもそこまではしないわよ」
「そーですよ、パパならきっと、カメラに映る暇もないほど一瞬で敵の後ろからフイウチしまくりです!」
アスナの左肩に乗るユイがそう付け足すと、今度はリズベットが笑った。
「しかも、銃ゲーなのに銃じゃなくて剣でね」
その様子を想像した全員の笑い声が部屋に満ちる。
現在アスナ達は大型スクリーンに投影されているBoBのライブ映像を観戦している。
無論、集まった理由はキリトとペルソナの応援だ。
–––当人たちは中々その姿を見せてはいないが……。
「おーあの人強いね」
リズベットが口笛を吹きながら呟く。
リズベットが強いと言ったのは、青白い迷彩スーツに身を包み、黒いシールド付きのヘルメットを被った《ペイルライダー》というプレイヤーだ。
ペイルライダーは鉄橋で待ち伏せていた《ダイン》の攻撃を、橋を支えるワイヤーロープを登りながら回避するという、まるでハリウッドさながらな動きを見せる。
そしてダインがマガジンの交換をしようとした一瞬の隙を突き、ペイルライダーはショットガンを立て続けに発砲。あっという間にダインを撃破してしまった。
「なんかこうして観るとGGOもけっこう面白そうだなぁ。銃って自分で造れるのかな……」
SAOから引き続きALOでも
「ちょっと、リズまでGGOにコンバートするとか言い出さないでよね。新生アインクラッドの攻略、まだまだこれからなんだよ」
「そーですよ、リズさん!もうすぐ20層台開放のアップデートがあるんですから」
アスナとシリカから突っ込まれ、リズベットは両手を上げる。
「わかってるわよ。どんなゲームにも強い人はいるもんだなーって思っただけよ。きっとあの青い人が、今回の優勝候補……」
と、そこまで口にした瞬間、正にそのペイルライダーがばたりと倒れた。
だがやられた訳ではなく、右肩のダメージ痕を中心に細かいスパークが這い回り、アバターの動きを封じているようだ。
「まるで、風魔法の《
さて、ペイルライダーが倒れてから10秒以上経過しているが、画面には特に変化はない。
–––ばさっ。
そんな音と共に、先程まで誰もいなかった場所からボロボロのフード付きマントを身に纏い、右肩に大きなライフルを掛けているプレイヤーが現れた。
ぼろマントのプレイヤーは倒れたペイルライダーに近づき、懐から黒いピストルを1丁取り出した。
「……ショボくねぇ?」
クラインの言う通り、肩に掛けているライフルの方が確認にペイルライダーを仕留められる筈だ。
ぼろマントはピストルに銃口をペイルライダーに向け、左手の人差し指と中指の先で額、胸、左肩、右肩の順に素早く触れる。いわゆる《十字を切る》ジェスチャーをした。
「あっ……⁉︎」
その声は誰が発したものだろうか。突然、ぼろマントは体を大きく後ろに仰け反らせる。
そしてそのコンマ1秒後に、先程までアバターの心臓があった位置を銃弾が通過した。背後から飛んできた銃弾を華麗に避けてみせたぼろマントの技術は驚異的なものだと、アスナは感じた。
ぬるりと上体を戻したぼろマントは一瞬だけ左後ろを振り返り、そして今度こそ、倒れているペイルライダーに向けて引き金を引いた。
乾いた銃声が空を切り、排出された空薬莢がちりんっと音を立てて足元に落ちる。
発射された銃弾はペイルライダーの胸の真ん中に命中したが、HPを一撃で削り切れなかった。
その直後、麻痺状態から回復したペイルライダーが勢いよく体を起こし、右手のショットガンをぼろマントの胸に突き付ける。
「うわ、大逆転……」
リズベットがそう口にし、誰もがペイルライダーの逆転勝ちを確信した。だが、カシャンっという音と共に、その予想は覆される。
その音はペイルライダーが手からショットガンを落とした音だった。胸を抑えて苦しみ悶え、再度地面に倒れるペイルライダー。
「な……何………?」
リーファが掠れた声を漏らしたのも束の間、ペイルライダーの体は光に包まれながら消滅し、アバターがあった場所には【DISCONNECTION】という回線切断を意味する文字が表示されていた。
アスナ達が突然のことに理解できず固まっていると、ぼろマントが右手の拳銃を生中継のカメラに向ける。
「……俺と、この銃の、真の名は、《
ぼろマントがその言葉を発した時、アスナ達の後ろから何かが割れるような音がした。
アスナが振り向くと、バーカウンターにいたクラインが手からグラスを落としたようだ。
「ちょっと、何やってんの……」
リズベットが文句を言おうとしたが、クラインの低い声がそれを遮る。
「う……嘘だろ……あいつ……まさか……」
「クライン、知ってるの⁉︎あいつが誰なのか⁉︎」
「い、いや……昔の名前までは……。でも……間違いねぇ、これだけは断言できる……野郎は……《ラフコフ》のメンバーだ」
ラフコフの名前が出た瞬間、アスナだけでなく、リズベットとシリカまでも激しく息を吸い込んだ。
アインクラッド中層で暮らしていた彼女たちの記憶にも、
「ま……まさか……あいつらのリーダーだった、あの包丁使い……?」
「いや……《
呻くようにそう言ったクラインは画面に眼を戻し、アスナ達もつられるように目を戻した。
画面の中ではぼろマントが拳銃をしまい、遠ざかりつつあるところだった。
すると突然、ぼろマントが後ろに飛び退いた。先程までぼろマントがいた場所に複数の銃弾が飛来する。
ぼろマントはすぐさま態勢を整え、銃弾が飛んできた右斜め後ろ、橋の上に視線を向ける。
橋の上には左手の拳銃を持ち、その銃口をぼろマントの方へ向ける仮面の男が立っていた。
ぼろマントは肩に掛けていたライフルを手に取り、その男に向けて発砲する。しかし、仮面の男はそれよりも早く橋の上から飛び降り、右手首から射出したワイヤーを使って、橋の鉄骨の間をまるでサーカスの様に通り抜けながら降りてくる。
そして地上に降りた瞬間、腰の辺りから両剣を手に取りながらぼろマントとの差を縮め、その勢いのまま斬りつけた。
咄嗟のところでぼろマントは攻撃を回避した様に見えたが、剣先が僅かに掠めていたのだろう、胸の辺りに斜めにダメージエフェクトが入っており、HPが1割ほど削れていた。
姿形、アバター名こそ変われど、人間離れした動きにアスナ達はその仮面の男が“彼”である事に気付き、彼の名を口にした。
『ペルソナ(さん)‼︎』
今回はここまで。ここからは補足説明です。
主人公ペルソナはALOでの名前はPersona
読み:(ペルソナ)ですが、GGOでは【仮面】
読み:(ペルソナ)で、アスナ達は彼のGGOでの名前を知りません。
↑本編の最後の文で困惑してしまう人が出るかもと思ったので、念の為説明しました。
ご愛読ありがとうございました。