毎度のことながら、本編を中途半端な所で区切るから中々良いタイトルが思いつかない。
なら本編をもう少し長くすれば良いのではという考えも浮かんでくるのですが、自分の性格上、長すぎる文章は読み終えるのに体力使うので、なるべく短い方が良いのかなと考えているのですが、実際に読んでくれている方々はどう感じているのか気になるので、是非良ければ参考までに感想などで教えていただけると幸いです。
早速、前書きから長くなってしまってますが第37話、どうぞ。
※報告、作品名を変更しました。
砂漠地帯に入った私たちは、近くに見つけた洞窟の中にバギーを入れ、さらに奥にある少し開けたスペースに腰を掛けた。
「シノン、さっき奴は君の前に突然現れたな。まさかとは思うが、あれは……」
「ええ、あれは《メタマテリアル
「やはりか……」
その能力を持つ装備が存在するという話を耳にしたことはあるが、どれも確証のない噂だと思って気にしていなかった。
「あのー、そのメタなんちゃら・カモってのは一体何なんだ?」
キリトは知らなかったな。
「メタマテリアル光歪曲迷彩……主に高レベルのボスモンスターが使用する能力だ。噂程度には聞いたことはあるが、まさか実在していたとはな。恐らく、スキャンに映らなかったのもそれが原因だろう」
「そうなると、いきなり目の前に現れて奇襲される可能性があるってわけか……厄介だな」
「それなら大丈夫、だと思う。透明になっても足音は消せないし、ここは地面が砂だから足跡も見える。だからいきなり近くに現れるのは無理」
「なるほど、じゃあせいぜい耳を澄ませてないとな。俺は入口の近くで
「分かった。気をつけろよ」
キリトにそう言い、洞窟の岩壁に背中を預けた私は取り出した筒状の救急治療キットを使って体力を回復させる。
そうしている間にも、5回目のサテライト・スキャンの時間になったが、洞窟内にいるため、私たちの位置情報が他のプレイヤーに知られる事はない。だが同時に私たちの端末にも衛星からの電波がこないため、私たちも他のプレイヤーの位置情報を知ることができない。
---あまり長居はできそうにないな。
「ねぇ、ペルソナ。さっきどうしてあんなに早くわたしを助けに来れたの?」
突然シノンがそんな事を聞いてきた。情報共有は大切だからな、話しておいて損はしないだろう。
「私たちが初め
「人違い?」
「ああ。何処からどう見ても女性だったからな。キリトの奴とは違って本物の」
「へぇ……」
「あと、《ジュウシエックス》ではなく《マスケティア・イクス》と読むらしい。倒す前に堂々と名乗ってくれたよ。そして嫌な予感がして戻ってみるとシノンが死銃に拳銃を向けられていたからな、咄嗟にマスケティアを倒した際に拝借したライフルとスモークグレネードを使って……あとは知ってのとおりだ」
「そう。わたしがもっとしっかりしておけば……」
シノンはそう言いながら抱えた膝に額を落とした。
「そう自分を責める必要はない。私も直前まで気が付かなかったのだから仕方ないさ」
「ペルソナ……」
「……さてと、私はキリトと共に奴を倒しに行くが君はここで隠れていろ。本当はログアウトしてほしいが大会中はできないからな」
私がコートダブリスDのバッテリーを補充しながらそう言うと、シノンは驚きの表情をしながら顔を上げる。
「あの男……死銃と戦うつもりなの……?」
「ああ、奴は私が倒さないといけないからな」
「あいつが怖くないの?」
「さあな。死ぬのは御免だが、これ以上被害者を増やさない為にも奴はこの手で始末する」
ダブリスの充電も満タンになり、いざ立ち上がろうとしたとき、シノンが私のコートを引っ張ってきた。
「わたし、逃げない。ここに隠れないで、わたしも外に出てあの男と戦う」
それは突拍子もない発言だった。いや、彼女の性格から考えれば当然か。だが、これ以上私たちの問題で部外者の彼女を危険にさらす訳にはいかず、私は彼女を止める。
「駄目だ。奴に撃たれれば本当に死ぬかもしれない。現に君は奴のターゲットにされているんだぞ。それに私やキリトと違って君は近距離戦闘には向いていない。さっきのように零距離で不意打ちでもされたら……」
「死んでも構わない」
私の説得はシノンが放ったその言葉によって遮られた。
「……わたし、さっき凄く怖かった。死ぬのが恐ろしかった。5年前のわたしより弱くなって、情けなく悲鳴上げて……そんなわたしのまま生き続けるくらいなら、死んだほうがいい」
「死に恐怖を抱くのは普通のことだ。死の恐怖を脱するなど狂人の所業だ」
「嫌なの、怖いのは。もう怯えて生きるのは……疲れた。別に貴方たちに付き合ってくれなんて言わない。1人でも戦えるから」
そう言い残して立ち上がろうとしたシノンの手を私は掴んだ。
「1人で戦って、1人で死ぬとでも言いたいのか」
「そうよ。多分、これがわたしの運命だったんだ……」
シノンは彼女を掴む私の手を振り払おうとする。
「……離して。わたし、行かないと」
「シノン……」
私は彼女の肩を掴んで体を正面に向かせる。そしてシノンの頬を勢いよく叩いた。
シノンは突然の私の行動に驚き目を見開いている。
「な、何するのよ⁉」
激昂するシノン。
「少しは頭を冷やしたらどうだ!貴様が死ぬことで家族や友人といった貴様の周りにいる者がどんな思いをするのか考えたことはないのか‼」
人に言っておいてなんだが、私もシノンに負けないくらいこの時は冷静さを欠いていたと思う。いつになくらしくない事をしてしまった。
「そんな事知らないわよ!わたしが死んだって悲しむ人なんて……」
「私がいる!少なくともここに1人、君の死を望まない者が!」
「なら……」
直後、私はシノンに胸倉を掴まれた。
「なら、あなたがわたしを一生守ってよ‼」
彼女は瞳に涙を浮かべながら固く握った拳を私の胸板に向けて何度も打ち付けてくる。
「何も知らないくせに、何もできないくせに、勝手なこと言わないで!これは、わたしの……わたしだけの戦いなの!たとえ負けて死んでも、誰にもわたしを責める権利なんかない‼ それとも、貴方が一緒に背負ってくれるの⁉ この……っ」
シノンは震える拳を私の前に突き出す。
「この、人殺しの手を、貴方が握ってくれるの⁉」
その言葉を最後に彼女は私の胸をもう一度強く叩き、そのまま私の胸に凭れ掛かってきた。
「う……うっ……」
暗い洞窟には少女の小さな嗚咽交じりの声だけが響いていた。
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暫くの間そのままでいたが、泣き疲れたのかシノンは全身の力を抜いて私に体を委ねてた。
「……少しだけ、寄りかからせて」
「ああ……」
弱々しく呟く彼女に私はそう小さく答えた。
先程の騒ぎを聞いて心配したのだろう、入口で見張りをしていたキリトも様子を見にきた。
そしてキリトが地面に腰を下ろしたところで、シノンがゆっくりと口を動かした。
「わたしね……、人を、殺したの」
そうしてシノンは自身の過去を語り始めた。
小さい頃、母親と共に出掛けた郵便局で強盗事件に巻き込まれたこと。
その時男から取り上げた拳銃で強盗を射殺したこと。
その事が原因で周囲から虐げられてきたこと。
事件がトラウマとなり、銃を見るたびに発作が起きていたがGGOでは発作も起きずにいたが、死銃に銃を向けれた瞬間、発作が起きそうになったこと。
「わたし、いつの間にか《シノン》じゃなくて現実のわたしに戻ってた。死ぬのは、そりゃ怖いよ。でも、それと同じくらい、怯えながら生きるのも辛い。死銃と……あの記憶と戦わないで逃げちゃったら、わたし前よりも弱くなっちゃう。だから……」
私には想像する事が出来ないであろう辛い記憶を呼び起こしながら話すたびに、彼女の体は小さく震え、それを見て私は勝手に言葉を発していた。
「私も人を殺したことがある」
「おい、ペルソナ」
「キリト、彼女は自分の過去を話してくれた。私たちも話さなければ不公平だろう?それに彼女も勘づいているはずだ。私たちが
「じゃあ、やっぱり貴方たちは……」
「ああ、《ソードアート・オンライン》。俺やペルソナ、そして死銃もそのゲームに囚われていた。俺たちはアイツと互いに命を奪い合ったはずなんだ」
「奴は《ラフィン・コフィン》という犯罪者ギルドに所属していた。……奴らは金やアイテムを奪うだけでは飽き足らず、積極的に殺人を楽しんでいた」
「で、でも……あのゲームではHPが無くなったら本当に死んじゃったんでしょ?」
「そうだ。だからこそ、かな。一部のプレイヤーにとって殺しは最大の快楽だった。ラフィン・コフィンは、そんな連中の集まりだったんだ」
キリトの話を聞いて信じられないという顔をしていた。まあ無理もない。ゲーム内の死が現実の死に繋がる世界で実際に殺人を行う団体がいるなどとは考えたくはないだろう。
「無論、放っておけば犠牲者は増え続けるばかり。そこで私たちは大規模な討伐部隊を結成し、奴らを壊滅させるために動いた。勿論、殺さずに無力化して牢獄に送るという作戦だ。入念に奴らのアジトを捜索して、戦力もこれでもかというほど高レベルのプレイヤーを揃えた。だが、何処からか情報が洩れていて、私たちは逆に奴らの張った罠に掛かった。何とか態勢を立て直したが、それでも物凄い混戦でな、その中で私は15人のプレイヤーを殺した」
今度こそ、シノンは絶句した。
「それでも君はその事を覚えていた。俺なんか昨日、総督府の待機ドームで死銃に会うまで無理矢理忘れて思い出そうともしなかった」
「辛い記憶を忘れたいと思うのは決して悪いことではない。問題はその後どうするかだ。この手で奪ってしまった命の重さを受け止める。私たちにはそれしかできない。それに……どれもこれもラフィン・コフィンというギルドが生まれてしまったことが原因だ。……それに間接的ではあるが、その責任は私にもある」
「それってどういう……?」
そう言って首をかしげるキリトだったが、段々と私の言葉の意味を理解してきたのだろう「まさか」とでも言いたそうな顔をして目を見開く彼に向けて私は仮面の下で小さく笑みを浮かべながら続けた。
「私はかつて、ラフィン・コフィンに……正確にはその元となったギルドに所属していた」
ファントム・バレット編も佳境に入りました。
頑張って書き上げていきます。