仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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第38話 ギルド《星の騎士団(スター・ナイツ)

 

 

キリトside

 

 

「私はかつて、ラフィン・コフィンに……正確にはその元となったギルドに所属していた」

 

 

突然の彼の告白に俺は耳を疑った。

 

 

今まで頼もしい仲間の1人として共に戦ってきた彼が、実はラフィン・コフィンの元メンバーだと言いだしたのだ。

 

 

「じゃあ、死銃(デス・ガン)が言ってた『裏切り』ってのは……」

 

 

「半分正解だ。だが、私は決して奴らの殺人に手を貸していた訳ではない。私から言わせてみれば、裏切ったのは奴らの方だからな」

 

 

シノンからの問いかけにペルソナはそう答える。

 

 

そうだ。彼にも何か事情があったのだろう。それにどんな過去があるにせよ彼は彼だ。

 

 

「ペルソナ、聞かせてくれ、君の話を」

 

 

「勿論だ。お前たちには知っていて貰いたいからな。私の、かつての仲間たちのことを」

 

 

彼はそう言うと、一呼吸置いてから

 

 

「……ギルドの名前は《星の騎士団(スター・ナイツ)》。主に中、下層で活動していた小さな支援ギルドだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---SAO時代---

 

 

 

 

ギルド結成当時、スター・ナイツのメンバーは私を含めて僅か7人しかいなかった。元々ソロで活動していた私は正式にギルドに加入している訳ではなく、あくまで雇われているという形で力を貸していた。

 

 

結成したての頃は、それはもう酷いものだった。ギルドの情勢は常に火の車。そんな中、意見の食い違いから内部分裂が起きたり、たまに暴走して単独で上層に向かうような奴もいた。

 

 

そうして紆余曲折しながらも、ギルドの支援活動が軌道に乗り、初期メンバーも健在のまま着々とメンバーは増えていったのは、偏にギルドリーダーの人柄の良さがあってこそだろう。

 

 

 

……ギルドの活動も安定し、中層あたりにならそこそこ知名度が上がってきた頃だ。奴が……PoH(プー)が私たちの前に現れたのは。

 

 

 

 

 

その日、私たちはいつものように中層の少し高めのダンジョンでアイテム集めを行っていた。

 

 

ダンジョン内を一通り探索し終わり、街へと引き返していた道中、私たちは1人のプレイヤーが複数のモンスターと対峙している所を目撃した。

 

 

プレイヤーのHPはもう少しでレッドゾーンに入りそうで、危険な状態であることは火を見るよりも明らかで、お人好しの我らがリーダーは「あの人を助けるぞ」と言っていの一番に駆け出し、私たちもそれに続くように攻撃を開始する。

 

 

何度も来ているダンジョンということもあり、こちらはモンスターの行動パターンを完全に把握していた為、数分もしないうちに戦闘は終了した。

 

 

助けた男はつい最近になってこの層まで来たらしく、ここのダンジョンのモンスターが予想以上に強く苦戦していたから助かった、と言った。

 

 

私はその男の言葉に違和感を覚えた。確かにここのダンジョンのモンスターは一階層下の奴らと比べると飛躍的にレベルが上がっている。

 

 

しかし、それはこの階層とひとつ下の階層で活動するプレイヤーにとっては常識なのだ。仮に彼が最近までもっと下の層にいたとしても、上の層に来る際に事前に情報を集めないとは考えづらい。それもソロプレイヤーなら尚更だ。

 

 

だが、この時の私はこの違和感に対して深く考えることはしなかった。

 

 

その怠慢さが後に取り返しのつかない事態に陥る事とは知らずに。

 

 

何か礼をしたいと言い出した男に、リーダーがギルドの戦力として活躍してほしいと言うと、彼は二つ返事で了承し、ギルドに加入する事となった。

 

 

 

その男こそがPoHだ。

 

 

 

 

PoHがギルドに入ってから数週間経ったある日、私はリーダーから呼び出された。それも2人きりで秘密裏にという事でだ。

 

 

あのリーダーがそんな事を言い出すとはただ事ではないと思い、ダンジョン攻略直後で疲弊していたが、すぐさま彼が指定した場所へと向かった。

 

 

 

 

 

そこは下層にあるダンジョンの安全地帯だった。

 

 

だがそこに居たのはギルドリーダーだけでなく、PoHや奴が加入してから続々とギルドに入ったメンバーが、リーダー達古参メンバーを拘束している光景が広がっていたのだ。

 

 

その時、私はようやく初めて奴と会った時の違和感が何だったのか分かった。

 

 

奴は始めからギルドを乗っ取るつもりでいたのだ。

 

 

中層以下のプレイヤーを支援出来るほど潤沢な資金や素材を持つ私たちは、奴等にとって格好の獲物だったのだろう。

 

 

PoHはレッドギルド《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》の結成を宣言し、私たちのギルドを壊滅させた。

 

 

一瞬の隙をつき、複数の仲間を連れて私は街に向けて撤退したが、結局、私と共に逃げた仲間たちも追ってきたPoH達によって惨殺された。

 

 

 

……そこからの記憶は曖昧だ。PoHがどうなったのか、自分はどうやって拠点まで逃げ帰ることが出来たのか、今でも思い出すことはできない。

 

 

確かなことは、私とラフコフの因縁はこの時から始まったということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---GGO---

 

 

 

 

「そんな事があったのか……」

 

 

「攻略に没頭していた貴様は兎も角、他の攻略組も知らないだろう。そもそもスター・ナイツの名を知るプレイヤーは上層にはいなかったからな。もしもあの時、PoHの事をもっと警戒していれば、ギルドが乗っ取られる事も、多くのプレイヤーがラフコフの被害に遭うことはなかったかもしれない」

 

 

 

私たちはしばらくの間沈黙し、やがてシノンが掠れた語りかけてきた。

 

 

「ペルソナ、教えて。貴方はその記憶をどうやって乗り越えたの?」

 

 

「乗り越えてなどいないさ。今でもその時のことを思い出すだけで、当時の自分に対して煮え滾るほどの怒りを感じるし、自責の念を感じることもある。だからこそ私は、あの時の出来事を一生忘れる事はないだろう」

 

 

「そんな……じゃあ、わたしは一生このまま……」

 

 

「だが、私はそれで良いと思っている」

 

 

「えっ?」

 

 

「過去はどう足掻いても過去だ。決して変えることはできない。だからこそ、自分が犯した罪とその重みを受け止め、覚えておくことが、彼らに対する唯一の償いであり、責任なのだと私は思う」

 

 

そうして私たちは再び黙り込む。

 

 

再びその沈黙を破ったのは、またしてもシノンだった。

 

 

「死銃……あのボロマントの中にいるのは、実在する、本物の人間なんだね」

 

 

「そりゃあ、そうさ。元ラフィン・コフィンの幹部プレイヤー、それは間違いない」

 

 

「そして恐らく、PoHがギルドを乗っ取った時からいたメンバーの1人。あとは当時の名前さえ思い出せればな……」

 

 

「でも、死銃はどうやって人を殺しているのかしら……」

 

 

「そればかりはまだ何ともな、あいつが今まで殺した《ゼクシード》や《薄塩たらこ》、そして《ペイルライダー》も奴に撃たれてから死んでいる。それもゼクシードとたらこの死因は脳損傷じゃなくて心不全なんだ……」

 

 

「その事について、ずっと疑問に思ったことがある」

 

 

2人の視線が私に集まる。

 

 

「奴はあの拳銃で仮想世界の相手を銃撃すると、現実世界のプレイヤーの心臓を止める事ができる。なら何故、奴はあの鉄橋で私を撃たなかった?私はスタングレネードの効力で視覚と聴覚がやられていた。私を撃つチャンスなら幾らでもあったはずだ。少なくとも、私が死銃なら間違いなく撃っていた」

 

 

「でも、あの時はわたしがライフルで狙ってたから、十字を切れなかったんじゃ……」

 

 

「いや、バギーで逃げてる時、奴は十字を切らずにシノンを撃ってきただろ?だから、あまり関係ないとは思うけど」

 

 

「それにその時も、避けられる可能性があるシノンを無理に狙うより、バギーを運転していて行動が制限されてる私を狙っていれば、あとで確実にシノンを撃てたはずだ」

 

 

「そうなると、死銃は殺せたのにペルソナを殺さなかったって事になる。でも君を見逃す理由なんかないはずだ。君はGGOでも名が売れてる訳だし……」

 

 

その時、視界の隅に2匹のエネミーの姿が映った。

 

 

片方のエネミーが自分よりひと回り小さいエネミーに背後から忍び寄り、一瞬で小さいエネミーを捕食した。

 

 

だが次の瞬間、更にその背後からひと回り大きいエネミーが後ろから現れて先程のエネミーを捕食。まるで食物連鎖でも再現しているかのような行動パターンに、最近のゲームはこんな細かい所にまで力を入れているのかっと関心をすると同時に、何かが引っ掛かる。

 

 

–––獲物……2匹目……2人……?

 

 

その瞬間、私の頭の中で全てが繋がった。

 

 

「ああ……そうか。そう言う事だったのか……」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「分かったんだ。死銃がどうやって人を殺していたのか、その手段が」

 

 

「本当か⁉︎」

 

 

「よく考えれば分かるほど簡単な話だ。仮想世界からの銃撃で現実世界の人間の心臓は止められない。当たり前だ、私たちが使っているのはアミュスフィアだ。心臓に異常をきたすどころか、ナーヴギアの様に脳を焼き切るほどの電磁波を出すことすら出来ない。つまり死銃は仮想世界からではなく、現実世界で人を殺しているという事になる」

 

 

「で、でも!奴は現にわたし達の前にいるわ。それに貴方も言ってたように、BoBに参加しているプレイヤーはゲームオーバーか強制ログアウトでもしない限り自発的にログアウトできないはずよ」

 

 

「そう。だが私たちの言う死銃があの骸骨マスクの男だけではない場合、話は別だ」

 

 

「……まさか⁉︎」

 

 

キリトが私の言わんとしている事に気付いたらしい。

 

 

「ああ。そのまさかだ……」

 

 

 

 

 

「死銃には共犯者がいる」

 

 

 

 

 

 





今回はここまで。

次回もまた宜しくお願いします。

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