仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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お待たせしました。キャリバー編です。

設定を原作から少し変えてます。



キャリバー編
第42話 伝説の剣《エクスキャリバー》


 

死銃(デス・ガン)事件》から約2週間が経ち、気付けば今年もあと3日だ。本当に、最近は色んなことがありすぎた。

 

 

私が通う大学は数日前に長期休暇に入り、今日は少し羽を伸ばそうと思っていた矢先、急に携帯から着信音が鳴った。

 

 

———相手は……和人か。

 

 

私はすぐに電話に出る。そして、

 

 

「どうしたんだこんな朝早くから。死銃の時のような事件には付き合わんぞ」

 

 

と、開口一番に言ってやった。あの事件の後、明日奈たちに詩乃との関係について問いただされ、父からはまた危険なことに首を突っ込んだことをこっ酷く叱られた。もう12時間も説教されるのは御免だ。

 

 

「いや、そんなんじゃないよ。実は今日《エクスキャリバー》を取りに行こうと思っているんだけどさ、今日ヒマか?」

 

 

「一応空いてはいるが、それにしても急だな。何かあったのか?」

 

 

「実は今朝、スグに《MMOトゥモロー》を見せられてな。そこにエクスキャリバーが発見されたっていう記事が載ってたんだ」

 

 

「なるほど。つまり、このままではいずれ誰かがエクスキャリバーを手に入れてしまう。そうなる前に皆で取りに行こうという訳か」

 

 

「話が早くて助かるよ。それじゃあまたALOで」

 

 

通話を切り、私はALOへとログインした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ALOにて、待ち合わせ場所となった《リズベット武具店》には既に皆集まっており、奥の工房では店主のリズベットが全員分の武器を回転砥石に掛けている。

 

 

「クラインさんはもう正月休みですか?」

 

 

「おう、昨日からな。社長のヤロー、年末年始に1週間も休みがあるんだからウチは超ホワイト企業だとか自慢しやがってさ!」

 

 

シリカの問いに、クラインは調子良さそうにそう答えた。

 

 

実際、SAOに囚われていた2年間、クラインの面倒を見て、生還後すぐに仕事に復帰できた所を見ると、クラインが勤務している会社は良い会社である事には変わりないだろう。

 

 

「それはそうとキリの字よ、もし今日ウマいことエクスキャリバーが取れたら、今度オレ様のために《霊刀カグツチ》取りいくの手伝えよ」

 

 

「ええ……あのダンジョンくそ暑いじゃん」

 

 

「それを言うなら今からいくヨツンヘイムはくそ寒いだろが!」

 

 

そんな風に子供の様な言い争いをする2人、すると不意に私の隣に座っていたシノンが、

 

 

「あ、じゃあわたしもアレ欲しい。《光弓シェキナー》」

 

 

などと、突拍子もない事を呟いた。

 

 

「ALO始めてまだ2週間しか経っていないだろ。伝説武器(レジェンダリーウェポン)を要求するには早すぎると思うが」

 

 

「リズか作ってくれた弓も素敵だけど、もう少し射程がね……」

 

 

私の問いにシノンは工房の方に目をやりながら答え、工房ではリズベットが苦笑いをしていた。

 

 

「あのねぇ、この世界の弓ってのは、せいぜい槍以上、魔法以下のの距離で使うものなの。100m離れたとこから狙おうなんて普通しないわよ」

 

 

「欲を言えばその倍の射程は欲しいわね」

 

 

リズベットの言葉に対して、シノンは微笑を浮かべてそう言い返す。GGOでシノンが得意としていたのは、2000m以上離れた場所から敵を狙撃する文字通りの離れ業だ。その恐ろしさは、実際に彼女と対峙した事がある私は嫌と言うほど知っている。

 

 

シノンはALOでも遠距離攻撃に適した弓を使っている。本来なら風や重力などの影響で、矢は狙った場所に飛ばすのは難しいのだが、彼女はGGOでの経験を活かし、魔法よりも遠い距離からの狙撃でエネミーを近づく前に倒せてしまう。そんな彼女の狙撃技術は正に脱帽ものだ。彼女が敵でなくて良かったと心から思ったほどにはな。

 

 

「たっだいまー!」

 

 

「お待たせ!」

 

 

そんな事を考えていると、店の扉が勢いよく開かれ、ポーションなどを買いに行っていたアスナとリーファが帰ってきた。

 

 

そして2人に同行していたユイちゃんが、アスナの肩からキリトの–––色々あってSAO時代に近い髪型になった–––頭の上に座る。

 

 

「買い物ついでに情報収集してきたんですが、まだあの空中ダンジョンまで到達できたプレイヤーは存在しないようです、パパ」

 

 

「へぇ、じゃあなんでエクスキャリバーは見つかったんだ?」

 

 

「それがどうやら、わたしたちが発見したトンキーさんのクエストとは別種のクエストが見つかったようなんです。そのクエストの報酬としてNPCが提示したのがエクスキャリバー、という事らしいです」

 

 

「しかもソレ、あんまり平和なクエストじゃなさそうなの。お使い系や護衛系じゃなくて、スローター系。お陰で今、ヨツンヘイムはPOPの取り合いで殺伐としてるって」

 

 

ユイちゃんの説明に補足するようにそう話すアスナ。虐殺(スローター)系はその名の通り、指定されたモンスターを指定された数倒さなければならないクエストだ。同じクエストを受けているプレイヤーが近くにいれば、互いにモンスターの出現場所の取り合いになる事は必然的だ。

 

 

–––確かに穏やかではなさそうだが、

 

 

「でもよぉ、変じゃね?エクスキャリバーは邪神がウジャウジャいる空中ダンジョンの1番奥に封印されてんだろ?それをNPCが報酬に提示するってどうゆう事だ?」

 

 

アスナ達の話を聞いて、疑問に思った事を呟くクライン。その意見には私も同感だ。ダンジョンの入り口までの移動手段を与えるのならまだ分かる。だが、剣そのものを報酬とするのは、どうにも解せない。

 

 

「行ってみればわかるわよ、きっと」

 

 

そんな風に隣でシノンが冷静なコメントした直後、工房の奥でリズベットが声を上げる。

 

 

「よーし!全武器フル回復‼︎」

 

 

リズベットに労いの言葉を掛けながら各自、自身の武器を受け取り身につける。私も両手剣と刀、そして槍を手に取る。次にアスナの指示により7分割したポーションなどをポーチに収め、持ちきれない分はアイテム欄に格納した。

 

 

全員の準備が完了したところで、キリトが全員の方に向き直る。

 

 

「みんな、今日は急な呼び出しに応じてくれてありがとう!このお礼はいつか必ず、精神的に!それじゃ、いっちょ頑張ろう!」

 

 

ほとんどのメンバーは「おー!」っと唱和し、私とシノンは微笑しながら右手を上げる。

 

 

そしてリズベットの店を出て、アルン市街から地下世界ヨツンヘイムへと繋がるトンネルを目指して大きく踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ここで原作からの変更ポイント。

原作では、1パーティの人数上限は7人だったのに対し、この小説では8人に変更してます。これは単純にオリ主の分の枠を作りたかっただけで、それ以外に大した理由はありません。

それではまた次回。
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