仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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本当にお待たせしました。46話です。


第46話 聖剣をその手に

 

スリュムの剛腕が地を叩き、衝撃が容赦なく私たちのHPを削り取っていく。

 

 

「コイツただ復活しただけじゃない。パワーがさっきの比じゃないぞ!みんな、気をつけろ!」

 

 

「ンな事言ってもよッのわぁ⁉」

 

 

キリトの言葉に返そうとしたクラインを、浮遊するアンコウのようなダーカー《ダガッチャ》が襲う。

 

 

「この……やりやがったな!」

 

 

お返しと言わんばかりにソードスキルによる反撃を行うものの、クラインの刀は甲高い音を上げて奴の硬い皮膚に弾かれる。体勢を崩し、硬直によって動けなくなるクライン。

 

 

――全く、世話が焼ける。

 

 

私は動けないクラインが追撃を喰らう前に、ダガッチャの額にあるコアを剣で叩き、コアを破壊されたダガッチャは黒い粒子となって消滅した。

 

 

「た、助かったぜペルソナ」

 

 

「考えなしに突っ込むな。相手の動きをよく見ろ」

 

 

「悪かったって、次は気を付けるさ」

 

 

本当に分かっているのかと言いたいところだが、今は現れたダーカーの群れに集中した方が良さそうだ。

 

 

――それに、

 

 

奥の方で激しい攻防を繰り広げるトールとスリュムの方に目を向ける。

 

 

――このままではトールがやられるのも時間の問題か。

 

 

先程までの戦闘では私達の支援もあったとはいえ、トールはスリュムを圧倒していた。だが、今はスリュムが暴走しているのもあってか、奴の攻撃を防ぐのが手一杯という様に見える。

 

 

トールが倒れればこのクエストのクリアはほぼ不可能だろう。同じ事を考えていたのか、キリトと目が合い、私達は同時に組み合う2体の巨人の元へと駆け出した。

 

 

「キリト君!ペルソナさん!」

 

 

「俺とペルソナでトールを援護する!アスナ達はそいつらがこっちに来ないようにしてくれ!」

 

 

突然の行動に驚く皆に向かってキリトは走りながら指示を出す。そして、トールとスリュムが眼前に迫ったところでソードスキルを発動させ、スリュムの右足に一撃を与え、僅かに姿勢を崩した所でトールが自慢の金槌を振るい、スリュムを吹き飛ばした。

 

 

「ぐう……感謝するぞ妖精の剣士達よ」

 

 

「別に良い。私達も貴様に倒れられては困るからな。それよりもトール、私から提案がある。時間が惜しいから手短に言うぞ……」

 

 

私はトールにスリュムを倒す策を伝えた。

 

 

「……良案だ。だが其方たちは良いのか?失敗すれば其方たちもタダでは済まぬぞ」

 

 

「その時はその時だ。それに、失敗しなければ良いだけの話だ」

 

 

そうこう話している内にスリュムは起き上がり、私達に向けて咆哮を上げる。HPの減少は1割弱程度だが、奴にとっては相当腹立たしいのだろう。

 

 

「――さて、行くぞキリト」

 

 

「ああ!」

 

 

私とキリトは再び剣を手にスリュムに向かって突進する。

 

 

――トールに話したスリュムを倒す策。それは至ってシンプルだ。

 

 

スリュムは足下を這い回る虫を始末すべく、その剛腕を地面に叩きつける。

 

 

――私とキリトが攻撃を加えながら奴の気を引く。

 

 

私達はギリギリで直撃を避け、《スキルコネクト》を加えたソードスキルの連撃を次々とスリュムに与え、奴の膝を付かせる事に成功した。

 

 

――そして奴が無防備になった所を。

 

 

「おぉぉぉおおおおおっ‼︎」

 

 

トールがスリュムの顔面……右眼の所にある肥大化した《侵食核》目掛け力の限り金槌を振り下ろす。

 

 

(ダーカー因子の侵食によって凶暴化したエネミーの体から剥き出しになった侵食核は、種類にもよるが大した防御力は無い。スリュムのもの程度なら、前世の通り行くかは分からないが恐らく……)

 

 

トールの金槌が核に直撃した瞬間、核は返り血のように紅い飛沫を上げながら弾け飛び、スリュムのHPは瞬く間に0になった。

 

 

今度こそ完全に力尽きたスリュムは倒れ、その体は黒い粒子となって消滅していく。また、他のダーカー達もスリュムが消えた事で統制を失い、最後にはスリュム同様に消滅した。

 

 

――ラグネの時もそうだったが、消え方も前世と同じか。

 

 

正直、気味が悪い。何故GGOに続いてALOにまでダーカー達が現れたのか。それに動きも私の記憶と大差ない。完全に再現されている。いったい誰が……。

 

 

 

 

私が1人考えている間にトールが私たちの方を向き直った。

 

 

「今度こそ終わったな……お主達のお陰で余も宝を奪われた恥辱を雪ぐことが出来た。――どれ、褒美をやらねばな」

 

 

そう言ってトールがハンマーの柄に触れると、宝石の1つが外れ人間サイズのハンマーへと変形し、トールはそのハンマーをクラインに投げ渡す。

 

 

「《雷槌ミョルニル》正しき戦のために使うがよい。では、さらばだ」

 

 

トールが右手を振り上げたと同時に青白い稲妻が轟き、私たちは反射的に眼をつぶる。再び瞼を開けると、もうそこにトールの姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……伝説武器ゲット、おめでとう」

 

 

「オレ、ハンマー系スキル上げてねえし」

 

 

キリトはクラインを祝福するが、当の刀使いは泣き笑いの様な複雑な顔で煌びやかな片手用戦槌(ハンマー)を握りしめていた。

 

 

「要らないんだったらリズベットに譲渡すればいいだろ。貴様が大事に持っておくだけよりも有効に活用できるだろうしな」

 

 

「いやーでも、リズは溶かしてインゴットにしかねないぞ」

 

 

「ちょ!いくらアタシでもそんな勿体ない事しないわよ!」

 

 

「でもリズ、伝説級武器(レジェンダリィウェポン)溶かすとオリハルコン・インゴットがすごい出来るらしいよ」

 

 

「え、ホント?」

 

 

「あ、あのなぁ!まだやるなんて言ってねえぞ!」

 

 

守るようにハンマーを胸に抱えながら喚くクライン。そんな彼を見て皆が笑みを浮かべる。

 

 

その瞬間、スリュムヘイム全体が激しく震え始めた。

 

 

一瞬、何が起きているか理解できなかったが、首に下げたメダリオンを覗き込んだリーファが甲高い声を上げた。

 

 

「お兄ちゃん!クエストまだ続いてる‼」

 

 

その言葉に私はウルズが言っていたことを思い出した。彼女はスリュムヘイムに乗り込み、聖剣エクスキャリバーを台座から引き抜いてくれと言っていた。つまりスリュムを倒すことでさえ、このクエストの進行の一過程に過ぎなかったという訳だ。

 

 

「パパ、玉座の後ろに下り階段が生成されてます!」

 

 

ユイちゃんがそう言うや否やキリトは玉座の裏に現れた螺旋階段を駆け下り、私達も彼に続くように螺旋階段を駆け下りる。

 

 

螺旋階段が終わると、そこは少し広い玄室のようになっており、その中央の台座に黄金の輝きを放つ剣《エクスキャリバー》が突き刺さっていた。

 

 

キリトは暫くの間その剣をじっと見つめた後、一歩踏み出して剣の柄を握り、力一杯に台座から引き抜こうとする。

 

 

「ぬ……お……っ‼」

 

 

だがキリトがどれだけ力を込めても、剣と台座が一体化してるかのように剣が台座から抜ける気配は一向になかった。

 

 

「頑張れキリト君!」

 

「ほらもうちょっと!」

 

「根性見せて!」

 

「パパがんばって!」

 

「くるるるるぅ!」

 

 

皆の声援を受け、限界以上の力を剣に込めるキリト。すると、「ピキッ」という音と共に台座の隙間から眩い光が溢れ、エクスキャリバーは勢いよく台座から抜ける。

 

 

私達は剣を抜いた勢いのままこちらに飛んできたキリトを全員で受け止めた。そして互いに顔を見合わせると自然と口が綻ぶ。今度こそ正真正銘クエストクリア――――

 

 

 

――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ‼――

 

 

と、ならないのがこの世界の理不尽なところで、キリトが聖剣を抜いたことで剣が刺さっていた氷の台座から解放された世界樹の根っこが成長を始め、スリュムヘイム全体が大きく揺れ始める。

 

 

「スリュムヘイム全体が崩壊します。パパ、避難を!」

 

 

直後ユイちゃんがそう叫ぶが、私達が降りてきた螺旋階段は上から伸びてきた世界樹の根によって粉砕され、来た道を帰るのは不可能。世界樹の根に掴まろうにも天蓋に固定されている根っこは私達がいる位置から10mも上にあり、ジャンプしても届きそうにない。

 

 

「ちょっと世界樹!そりゃ薄情ってもんじゃないの!」

 

 

リズベットが拳を上げて抗議するが相手は樹、謝罪の言葉など返ってくるわけもなく氷の城はより一層大きく揺れて崩壊し続ける。

 

 

「よ、よおし……こうなりゃ、クライン様のオリンピック級垂直ハイジャンプを見せるっきゃないな!」

 

 

と言いながら突然立ち上がったクラインが助走を始め、

 

 

「あ、バカ、やめ……!」

 

 

「よせ……!」

 

 

私とキリトが制止する前に踏み切り、華麗な大跳躍を見せる。だが世界樹の根っこには届かず、物凄い音を立てて床に墜落。……それがトドメとなったのだろう。周囲を覆う氷壁にひびが入り、遂に最下層フロアがスリュムヘイム本体と分離した。

 

 

「クラインさんの、ばかーっ‼」

 

 

今この場にいる全員が思った事をシリカが絶叫し、私達を乗せた氷塊はヨツンヘイムの象徴とも言える大穴に向かって落下していく。

 

 

このまま行けば女王ウルズの言っていたニブルヘイムとやらに着くのかもしれないが、そこは霜の巨人族たちの本拠地。タダでは済まないだろう。

 

 

――まあ、この高さからでは落下ダメージで即死だろうがな。

 

 

だが、トンキーと仲間達の虐殺クエストは止められたわけで私達の苦労が無駄ではなかった。そう信じたいものだ。

 

 

「……何か聞こえた」

 

 

唐突にリーファがそう呟き、耳に手を添える。

 

 

「ほら、また!」

 

 

今度はそう叫び、立ち上がるリーファ。同時に私の耳にも聞きおぼえのある鳴き声が聞こえてきた。

 

 

私はすぐに周囲を見渡し、鳴き声の主を探す。 そして多数の氷塊が落ちる中を小さな白い影が弧を描きながら接近してくるのが見えた。

 

 

「トンキー‼」

 

 

リーファが名前を叫ぶと、くおぉーんっと返すトンキー。彼が私達を迎えに来てくれたのだ。

 

 

「へへっ……オリャ最初っから信じてたぜ……アイツが絶対助けに来てくれるってよ」

 

 

この状況を作り出した原因の半分が何か言ってるが、今回はトンキーに免じて大目に見ておくとしよう。

 

 

氷塊の近くまで来たトンキーに皆乗り移っていき、最後に残ったのが私とキリトだけとなったところで再び問題が発生した。

 

 

「キリト、どうした?」

 

 

突然、立ち尽くすキリトにそう問いかけながら私は気付いた。彼の靴が氷に食い込んでいる。恐らくエクスキャリバーが重すぎてトンキーのいる所まで跳ぶことが出来ないのだろう。

 

 

「キリト!」

 

 

「キリト君!」

 

 

異変に気付いて皆からも切迫した声が届く。

 

 

キリトは今、究極の選択を迫られている。聖剣を捨てて生き延びるか、それともこのまま心中か。偶然か、システムによって意図的に仕組まれていたものなのか。どちらにせよ、辛い選択である事に変わりない。

 

 

「キリト…」

 

 

「パパ……」

 

 

キリトは暫くの間キリトは聖剣を見つめ、次に私と頭上のユイちゃんを一瞥する。

 

 

「……まったく、カーディナルってのは!」

 

 

苦笑を浮かべそう叫んだキリトは聖剣を放り投げ、トンキーの背中に跳び乗った。

 

 

続いて私もトンキーに乗り移り、キリトと共に黄金の光が大穴へと落ちていくのを見つめる。

 

 

「……また、いつか取りに行けるわよ」

 

 

「わたしがしっかり座標固定します!」

 

 

アスナとユイちゃんがそう言ってキリトを励ましていると、

 

 

「――200メートルくらいか……」

 

 

そう呟きながら前に出たシノンが弓を引き絞り、彼方で落下し続けている聖剣の少し下の方に照準を合わせ流れるように矢を射った。

 

 

放たれた矢は銀色のラインを引きながら飛んでいく。弓使い専用の種族共有(コモン)スキル《リトリーブ・アロー》、矢に強い伸縮性・粘着性を持つ糸を付与して発射する魔法で、主に手に届かない場所にある物を回収するために使われるが、糸が矢の軌道を歪めてしまうため近距離でしか当たらず、実際に使用しているプレイヤーは見たことがない。

 

 

――そもそも弓を使うプレイヤーが少ないのだが。

 

 

シノンはこの魔法を使ってエクスキャリバーを回収しようと考えているのだろう。その真意を悟ったキリトは「幾ら何でも」と呟くが、私は彼女ならやってくれる気がした。

 

 

その予感は的中し、シノンが放った矢はまるで聖剣に引き寄せられるように近づいていき、そして……カァン!と高い音を立てて衝突した。

 

 

「よっ!」

 

 

彼女が魔法の糸を引っ張ると、落下していた聖剣はこちらに引き寄せられ、そのままシノンの手の中に納まった。

 

 

「うわ、重…」

 

 

それが伝説級武器を手にした感想かと心の中で思う私とは真逆に

 

 

「「「「「シノンさん、マジかっけぇーーーー‼」」」」」

 

 

正に神業と呼ぶに相応しいシノンの技術に対し、仲間たちは賞賛の声を上げた。

 

 

当の本人はそれに対して少し耳を動かしただけで、すぐにキリトの方を向き直り、呆れた顔で軽く肩を上下させる。

 

 

「あげるわよ、そんな顔しなくても」

 

 

「あ、ありがと――」

 

 

キリトは礼をしながら差し出された剣を受け取ろうとしたが、彼が剣を受け取る寸前、何を思ったのか、シノンが再び自分の方へと剣を引き戻した。

 

 

「その前にひとつ約束。――この剣を抜く度に、心の中でわたしのこと思い出してね」

 

 

私も初めて見る笑顔でそう言い放つシノン。彼女からすれば深い意味は無いだろうが、私は明らかに場の空気が重くなるのを感じた。

 

 

「おーおー辛いな、モテる男はゴォ⁉︎」

 

 

隣から空気を読まずに茶々入れようとするクラインの腹を私が殴って黙らせる。

 

 

「うん、思い出してお礼を言うよ。ありがとう」

 

 

「どういたしまして」

 

 

シノンは最後にはウインクをすると、身を翻してトンキーの尻尾の方へと移動し、矢筒からハッカ草の茎を取り出して一服した。

 

 

相変わらずクールだなと思っていると、トンキーが長い咆哮を上げて上昇を始める。つられるように上空を見ると、スリュムヘイムが丸ごと落下し始めていた。

 

 

今まで三角錐だと思っていたダンジョンは天蓋に全く同じ形のものが埋まっており、実は正八面体だったという今更どうでも良い事が判明する。

 

 

「……あのダンジョン、あたしたちが一回冒険しただけで無くなっちゃうんだね」

 

 

「ちょっと勿体ないですよね。行ってない部屋とかいっぱいあったのに……」

 

 

「マップ踏破率は37.2%でした」

 

 

崩れ落ちる氷の城を見つめながら、リズベット達は残念そうに小さく呟いた。

 

 

その間にもスリュムヘイムは崩壊し続け、残骸は真下の大穴へと落下し続けている。そして一段と大きい氷の塊が穴に落ちると、穴の奥から大量の水が湧き出し、続けて落下していく氷は次々と水面に落ちては即座に溶け、大穴は溶けた氷の水で満たされていく。

 

 

天蓋近くから伸びてきた世界樹の根は水面を編み目のように覆い、四方に伸びた根からは小さな芽が次々と発芽していく。

 

 

風が吹き、雪や氷が溶け、各所に建設された《霜の巨人族》の砦は廃墟と化し、それらを覆うように新緑が芽吹く。雪と氷で殺風景だったヨツンヘイムは、瞬く間に草木が生い茂る楽園のような大地を取り戻した。

 

 

「見事に、成し遂げてくれましたね」

 

 

突然聞こえた声に顔を上げると、金色の光の中から女王ウルズが姿を現した。

 

 

「《全ての鉄と木を斬る剣》エクスキャリバーが取り除かれたことにより、イグドラシルから断たれた《霊根》は母の元に還りました。樹の恩寵は再び大地に満ち、ヨツンヘイムはかつての姿を取り戻しました。これも全てそなたたちのお陰です」

 

 

「いや……スリュムは、トールの助けがなかったら到底倒せなかったと思うし……」

 

 

「かの雷神の力は私も感じました。ですが……気をつけなさい妖精たちよ。彼らアース神族は霜の巨人の敵ですが、決してそなたらのらの味方ではない……」

 

 

キリトの言葉を遮るようにそう呟くウルズ。確か死の間際にスリュム本人も似たようなことを言っていたが、あれは一体どういう意味だったのか最後まで分からなかったな。

 

 

「――私の妹たちからも、そなたらに礼があるそうです」

 

 

ウルズの言葉とともに、彼女の右側が水面のように揺れ、ウルズと同じ金髪でそれでいて彼女より少し幼い顔立ちの女性が現れる。

 

 

「私の名は《ベルザンディ》。ありがとう、妖精の剣士たち。 もう一度、緑のヨツンヘイムを見られるなんて、ああ、夢のよう……」

 

 

可憐な声で囁く彼女が手を振ると、突如として眼前に大量のアイテムやユルドが出現し、ストレージの中へと納まっていく。

 

 

――なるほど、このクエストの報酬という訳か。

 

 

私がそう納得していると、今度はウルズの左側に旋風が発生し、先の2人とは打って変わって、鎧兜姿の勇ましい女性が現れる。

 

 

「我が名は《スクルド》! 礼を言おう、戦士たちよ!」

 

 

見た目通りの勇ましく凛とした声でそう叫ぶと、ペルザンディと同じように大きく手をかざす。すると再び私たちの前に大量の報酬が流れ込む。先程の分と合わせて、そのあまりの量にストレージ上限の警告が出てきた。

 

 

妹2人が左右に退き、もう一度ウルズが進み出る。

 

 

彼女はキリトに微笑みかけると、

 

 

「――私からはその剣を授けましょう。……ゆめゆめ、《ウルズの泉》には投げ込まぬように」

 

 

「は、はい、しません!」

 

 

キリトがそう答えると、聖剣が彼のアイテムストレージの中へと消えいった。

 

 

今ならタイミングが良いだろうと思い、私は一歩前に出る。

 

 

「女王ウルズ、貴女に聞きたい事がある」

 

 

「何です?妖精の剣士よ」

 

 

「スリュムとの戦いの中、奴に起こった異変。あの時現れたエネミーについて、貴女は何か知らないだろうか?」

 

 

何故ダーカーがALOにまで現れたのか、少しでも情報が欲しかったが、ウルズから返ってきたのは私の期待するものではなかった。

 

 

「それは、私にも分かりません。唯一分かることは、かの者たちはこの世界とは異なる世界の者たちということだけ」

 

 

ウルズはそこまで言うと、「あとは貴方が良く分かっている筈」とでも言いたそうな表情でこちらを見つめた後、妹達と共に距離を取り、口を揃えて礼を言った。

 

 

「「「ありがとう妖精たち。また会いましょう」」」

 

 

同時にクエストクリアのシステムメッセージが表示され、それが薄れると3人は飛び去ろうとする。

 

 

「すっ、すすスクルドさん。連絡先をぉぉ!」

 

 

突然飛び出したクラインがスグルドに向かってそう叫び、流石の私も呆れることしか出来なかったが、なんと彼女は振り返って小さく手を振り、彼女の手から流れる光の粒子がクラインの手の中に納まった。

 

 

「クライン。あたし今あんたのこと、心の底から尊敬している」

 

 

その時ばかりはリズベットに同感した。

 

 

 

 

何はともあれ、突如として始まったエクスキャリバーを巡る――ついでにALOの命運を掛けた――冒険は終わった。

 

 

 

 




この話を書いてる間に行事やら試験やらが重なって気付いたらもう年末になってしまった。

少しでも短い間隔で投稿できるように頑張ります。
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