「そろそろ時間か……」
私は身支度を済ませて家を出る。行先はダイシ―・カフェだ。
何故そこに向かうのかというと、クエストクリア直後、キリトの発案で打ち上げ兼忘年会を行うことになったのだが、ALOか現実のどちらで行うかを話し合い、アスナが翌日から父方の実家に帰省することもあり、現実世界のエギルの店を貸し切ることとなった。
――急な予約で口うるさく唸ってたがな……。
そうこうしている内に店に着き、扉を開けると、先に到着していた和人と直葉そして詩乃の3人が中央のテーブルを囲んでいた。
「何をしているんだ?」
「ユイちゃんの端末の調整をしてるんだって。ほら、あのカメラ」
そう答えながら詩乃が指差す方を見ると、店の四隅に同型のカメラが設置されており、一番近くのカメラのレンズがぐるぐると動いていた。
「懐かしいな。私も昔似たような物を作ったものだ」
「そうなのか?」
「ああ。機械いじりに興味があってな。今は大学の研究で人型ロボットのプログラムを組んでいる。まだ試作段階だがな」
「へえー、良かったら詳しく聞かせてくれよ」
そうして暫く私たちはそれぞれの研究やユイちゃんの端末――《視聴覚双方向通信プローブ》と言うらしい――の事で意見を出し合いながら、残りのメンバーの到着を待った。
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「祝、《聖剣エクスキャリバー》ついでに《雷槌ミョルニル》ゲット!お疲れ2025年!――乾杯!」
『乾杯‼』
和人の音頭に皆が唱和し、目の前の料理を一斉に食べ始めた。
「……それにしてもさ。どうして《エクスキャリバー》なの?」
パーティーが始まり、テーブルの上の料理が無くなってきた頃に、ふと詩乃がそう呟いた。
「へ?どうしてって?」
質問の意図が分からなかった和人は首を傾げる。
「確かに、私もそこまで詳しくないが、大抵は《エクスカリバー》だからな」
「まあ別に大したことじゃないんだけどね。《キャリバー》って言うと、わたしには別の意味に聞こえるから、ちょっと気になっただけ」
「へぇ、意味って?」
「銃の口径のことを英語で《キャリバー》って言うのよ。例えばわたしのヘカートは50口径で《フィフティ・キャリバー》。エクスキャリバーとは綴りは違うと思うけど」
一瞬詩乃は口を閉じ、ちらっと和人の方を見てから話を続ける。
「……あとは、そこから転じて《人の器》って意味もある。《a man of high caliber》で《器の大きい人》とか《能力が高い人》とかね」
「へえー憶えとこ……」
感心する直葉に対し、詩乃は「多分試験には出ないかな」と笑う。
ここで里香がテーブルの反対側でニヤニヤしながら、
「ってーことは、エクスキャリバーの持ち主はデッカイ器がないとダメってことよね。なんか噂で最近どこかの誰かさんが、短期のアルバイトでドーンと稼いだんだけどぉー?」
っと和人に向かって言った。
里香が言っているのは、十中八九《死銃事件》の調査協力費のことだろう。
確か先日振り込まれていたはずだが、和人の顔を見る限り、既に大した金額は残っていないようだ。たった1日で何に使ったのやら。
「も、もちろん最初から、今日の支払いは任せろって言うつもりだったぞ」
胸をドンっと叩きながら宣言する和人。途端、四方から拍手とクラインの口笛が上がる。
何やら和人が眼で訴えてきているが、私が手で小さく×を作ると残念そうに首を垂れた。
あとで金を借りるつもりだったのだろうが、私も昨日、研究用の器材やら何やらの購入で振り込まれた報酬はほとんど残っていない。先程、和人の金の使い方に呆れておきながら私も人のことが言えないな。
――自分の分くらいは出してやるか。
そう思いながら、和人の2度目の音頭に合わせて私はグラスを上げる。
その後、日が落ちるまで忘年会は続いた。
次回からマザーズロザリオ編。頑張ります。