第1層のボス攻略から数ヶ月経った。
あれから私はずっと迷宮区に篭ったままだ。偶に街に戻るが、必要な物を買ってすぐにまた迷宮へ逆戻り。こんな日々をもう何ヶ月も繰り返してきた。
あれ以降ボス攻略には参加してない。最後に参加したのは、ディアベルから声が掛かった第25層の時だっただろうか?どちらにせよ、それ以降は本当にボス攻略には参加していない。
ただ、ボス攻略に参加しない代わりに、迷宮区のマップデータを《主街区》にある掲示板に匿名で掲載しておくなどして、攻略に多少の貢献はしている。
第26層から現れたギルド《血盟騎士団》の参戦で、攻略は前よりもスムーズに進んでいる為、私が無茶してマッピングを行う必要も無くなってきており、私は今まで以上に“狩り”に専念する事が出来ている。
他のプレイヤーとすれ違ったりする事も少なからずあるが、彼らから見た私の印象はあまり良いものではないようで、真相は定かでは無いが、いつの間にか私には「
これなら、まだ《ビーター》の方がましだ。
「フィニッシュ」
今日もまた、“態と”起動させたアラームトラップにより出現したモンスターを狩り尽くした。
この27層はトラップ多発地帯で、この層は最前線で戦っている攻略組でさえも、数多のトラップによって多くの死者を出した場所でもある。
だが、アラームトラップから出現するモンスターのレベルは高く、大量に出現する為、効率良く経験値を手に入れるには適している。…もっとも、こんな方法でレベリングするのは私だけだが……。
「あれは……キリトか?」
一度街に戻る為に、出口の方へ歩いていると、キリトが4人のプレイヤーと一緒に隠し扉の向こうに入っていくのが見えた。
こっそり近づいて中を覗くと、部屋の中には宝箱が1つポツンと置いてあるだけで、それをキリトのパーティメンバーの1人が罠解除もせずに開けようとしていた。
「ま、待て!」
キリトは彼を止めようと声を掛けるが時すでに遅し。宝箱が開いた瞬間、部屋中にアラームが鳴り響き、扉は閉まり、大量のモンスターが姿を現す。
私も扉が閉まる前に部屋の中へ飛び込だ。
「君は!」
「話はあとだ。貴様らは早くここから脱出しろ」
「駄目だ!クリスタルが使えない!」
–––クリスタル無効化エリアか。
アラームトラップの中でクリスタル無効化エリアが存在するのはかなり稀なケースだ。
「キリトはそいつらと共に部屋の隅に固まれ!盾持ちはガードのみに専念しろ!ただしHPには常に気を配れ。槍持ちは盾持ちが防いでいる間に盾の隙間から攻撃を与えろ!キリト、貴様はそちらに行くモンスターだけを倒せ!」
簡単な指示を飛ばし、彼らが私の指示通り部屋の隅に移動した直後、複数のモンスターが襲いかかってくるが、攻撃される前に装備していた槍武器【ディスペア・オブ・スピア】でなぎ払う。
仕留め損ねた何体かはキリト達の方へと向かうが、4人を守りながら戦っているキリトによって倒されていく。
トラップの作動から数十分が経過。出現した全てのモンスターを倒すことに成功し、私たちは無事に部屋から脱出することが出来た。
「あの、助けてくれてありがとうございました!」
「……気にするな」
話を聞くと彼らは《月夜の黒猫団》という小さなギルドで、キリトとは3ヶ月ほど前に出会ったらしい。
今日はギルドリーダーがホームを買いに第1層へ行ってる間に、家具を買う為の資金調達をしに少し上の層…27層に来たというのだ。
「確かに、レベル的に考えてモンスターと戦うだけなら安全だろう。だが、情報量が足りなかったな。この27層はトラップ多発地帯と言われるほど罠が多い。さっきのようなミスを犯せば、次は確実に死ぬぞ」
「ごめんなさい」
「別に謝る必要は無い。次は気を付ければ良いだけだ」
そんな会話を交わしている間に、彼らはポーションを飲んでHP全回復させていた。
その後、キリトがいるので問題ないとは思うが、何かの拍子で別の罠に填まり、死なれては後味が悪いので、私は彼らを主街区近くまで送ることにした。
◇ディスペア・オブ・スピア《槍》 NEW
持ち主のレベルに比例して攻撃力が上がる槍。
先端の刃の部分が通常よりも幅広い為、槍というよりはパルチザンに近い。
他の【ディスペアシリーズ】の武器同様、耐久値が減らない代わりに【ディスペア・オブ・コート】とセットで使用しなければ攻撃力が大幅ダウンする。