仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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マザーズロザリオ編完結です。


第54話 門出

 

4月某日。私たちはとある墓の前に来ていた。墓石には「紺野家」と文字が刻まれている。

 

 

そう、ここは藍子たちの両親が眠る場所だ。

 

 

藍子が組んできた水を墓に掛け、私たちは揃って手を合わせる。

 

 

「お父さん、お母さん。紹介するね。この人達がわたしたちの新しい友達」

 

 

『そしてこっちがボク達を助けてくれた命の恩人で、ボクらの大切な人……かな?』

 

 

「なんで疑問形なんだ……、初めまして」

 

 

藍子たちに紹介され、皆口々に挨拶をする。当然だが返事はない。

 

 

「今日は2人にどうしても聞いてもらいたい話があるの。あと、みんなにも」

 

 

「良いの?わたしたちが聞いても」

 

 

『うん。大事な話だから、明日奈たちにも聞いて欲しい』

 

 

空気が重くなるのを感じた。藍子は深刻そうな顔で俯き、私の肩に乗るプローブを手に取ると、カメラと眼を合わせて大きく頷き、私たちの方へと向き直る。

 

 

「実はわたしたち……」

 

 

『ボク達……』

 

 

皆が自然に息を呑む。だが次の瞬間、彼女たちが口にした言葉は私たちの予想だにしていないものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『わたしたち(ボク達)、無菌室から出れる事になりました!』」

 

 

「「「「えっ……ええええええええええええ⁉」」」」

 

 

2人の言葉に私を含めその場にいた全員が驚愕する。それもそうだ。私も明日奈も倉橋医師からは無菌室から出るのにはまだ時間が掛かると話を聞いており、皆も本人たちからはそう聞かされていたのだから。

 

 

そんな私たちの様子を見て、藍子と木綿季は『大成功!』と悪戯が成功してはしゃいでいる。

 

 

「い、いつからなの、2人とも」

 

 

まだ少し動揺しているが、冷静に明日奈が2人に質問した。

 

 

『まだちゃんとした日は決まってないんだけど、先生が言うには来月にはボク達2人とも普通の病室に移動するみたいなんだ』

 

 

「先生も驚いてました。予定よりも数倍早い回復速度だって」

 

 

「良かったな、2人とも」

 

 

「はい!それと、シウネ―から聞いたんですが、スリーピング・ナイツのみんなも最近になって特効薬が見つかったみたいなんです」

 

 

「そうなの⁉」

 

 

「はい。まだもう少し時間は掛かると思いますが、今度現実で会おうって話もしました。もちろん明日奈さんも一緒に」

 

 

「うん、本当に良かった。本当に……」

 

 

感極まり、涙を流す明日奈。それを見て木綿季が『泣かないでよー』と笑いながら言い、その様子を和人は後ろで見守っていた。

 

 

皆が2人の状態が良くなっている事を祝い、喜んでいる。私も話を切り出すにはいいタイミングだろう。

 

 

「実は、私からも話がある」

 

 

私がそう言うと、皆の視線が一斉に私へと集中する。……ここまで注目されると、少し話ずらい。

 

 

「実は2人の親権についてなんだが……」

 

 

「もしかして、何か進展が?」

 

 

「いや、親権問題自体は解決していない。だが、すぐに良い報告が出来ると思う。その証拠に……」

 

 

私が鞄から1枚のコピーを取り出した。その紙には我が父の名前とある場所の住所が記載されており、和人たちはそれが何を意味するのかを理解できていないようだったが、藍子と木綿季は「あっ」っと声を漏らしていた。

 

 

「2人の家の土地権だ。名義上は私の父のものになっている。これでお前達の親戚とやらがあの家に手出しできない。取り壊される話もなくなったそうだ」

 

 

「ほ、本当ですか?」

 

 

「ああ本当だ」

 

 

「良かったね!2人とも」

 

 

『うん!ありがとうペルソナ!』

 

 

「礼なら私じゃなく親に言ってくれ。私は何もしていない」

 

 

「そんな謙遜しなくてもいいんじゃないか?2人のために何かできる事はないか、君が1番動いてたって君の両親から聞いたぞ」

 

 

「まったく、あの親は……というか和人、いつ私の親と交流持ったんだ」

 

 

そこから話が更に盛り上がったが、続きはALOでという事となり、私たちは一時解散した。

 

 

帰ろうとした時「あの子たちの事を宜しくお願いします」っと聞こえた気がしたが、誰も反応してなかったからきっと気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ALO新生アインクラッド第24層。ユウキから話があるとメッセージが届き、私は今、彼女と初めて会った小島に向かっている。

 

 

「あ、ペルソナさん」

 

 

島に着くと、そこには私と同じようにユウキに呼ばれたのだろうアスナがいた。

 

 

「アスナ……君もユウキに?」

 

 

「はい。ペルソナさんもですね」

 

 

「ああ。しかし、その呼び出した本人がまだのようだが」

 

 

そんな会話をしていると、遠くから「おーい!」と手を振るユウキと、彼女の後に続いて、スリーピング・ナイツのメンバーがこちらに向かって飛んできていた。

 

 

「遅くなってごめん。準備に色々と時間が掛かっちゃって」

 

 

「別に平気だよ。それより何?話って」

 

 

「2人に渡すものがあってね」

 

 

「渡すもの?」

 

 

首を傾げるアスナに対し、ユウキはいつものように、にかっと笑顔を見せる。

 

 

「いま作るから、ちょっと待ってね」

 

 

そう言うとユウキは軽くウインドウを操作し、腰に掛けた剣を抜き放つ。そして、

 

 

「やあっ‼」

 

 

気合の入った声と共に、島の中央にある大樹に向かって自身のOSSを放つ。

 

 

技を出し終わると、ユウキの剣の先端から青く光る紋章を写した四角い羊皮紙が出現し、端から細く巻き上げられ、手を伸ばしてユウキは宙に浮くそれを掴んだ。

 

 

「まずはアスナ。これ受け取って、ボクのOSS」

 

 

「いいの?わたしが受け取っても」

 

 

「アスナに受け取って欲しいんだ。さ、ウインドウを出して」

 

 

アスナは言われるがままウインドウを開くと、ユウキは持っていた羊皮紙をアスナのウインドウの表面に置くと、その羊皮紙は光と共に消滅した。

 

 

「技の名前は《マザーズ・ロザリオ》。きっとアスナを守ってくれるよ」

 

 

「ありがとう、ユウキ」

 

 

「次はペルソナだね」

 

 

ユウキが私の方を振り向くと、後ろに控えていたランが前に出てウインドウを操作すると、彼女の手の中に紫色の刀身に赤いラインが入った両手剣が出現する。

 

 

「どうぞ、みんなでALO中のレア素材を集めてノリが打った両手剣です」

 

 

「本当はアスナみたいにOSSにしたかったんだけど、ボクらはみんなペルソナとスタイルが違うから、イメージにあったのが作れなくて……ごめんね」

 

 

私はランから両手剣を受け取る。見た目どおりのいい重さでキリトが羨ましがりそうだ。

 

 

「いいや、これでも充分だ。大切に使わせてもらう。ありがとう、みんな」

 

 

「気にしないで下さい。寧ろ礼を言いたいのは私たちの方なんですから」

 

 

シウネ―がそう言うと、他のメンバーも「うんうん」と頷く。

 

 

「2人に会ってから信じられない事の連続なんだ。学校にも行けたし、姉ちゃんともまたこうしてVRで一緒に遊べるようになった。みんなの病気も治っちゃってさ。本当は、まだいい夢を見てるだけで、ボクの病気は治ってないんじゃないかなって考えた時もあるんだ」

 

 

「ユウキ……」

 

 

「大丈夫。今はそんな事考えてないから」

 

 

瞼を閉じ、小さく息を吐いた後、再び私とアスナを見つめるユウキ。

 

 

私たちは互いに暫く黙ったままだったが、そんな静寂を吹き飛ばすかのように、突然、ノリが大きな声を張り上げた。

 

 

「あーもうダメダメ!暗い空気になるのは無し!ほらユウキ、あまりギャラリーを待たせるものじゃないよ!」

 

 

「そうだね、ありがとうノリ!じゃあペルソナ、早速始めよう!」

 

 

「何を?」

 

 

私がそう聞くと、私の目の前に決闘申請ウインドウが表示される。更に、私たちの周囲に多くのプレイヤーが姿を現す。

 

 

「え、な、何⁉」

 

 

突然の出来事に驚きを隠せないアスナ。私も何が何だかわからず、周囲を見渡していると、

 

 

「おーいペルソナ!みんなオメェとユウキちゃんのマジ勝負を見に来たんだからよ!早く始めてくれよ!」

 

 

クラインを筆頭に周囲のプレイヤーから野次が飛んできた。

 

 

「……ユウキ、まさかさっき遅れてきたのは」

 

 

「あっははは……次の大会までペルソナと戦えないって考えたら、なんか体がムズムズしてきて、もうすぐにでも戦いたい―!ってなっちゃって。ここに来る前にみんなを呼んじゃった」

 

 

「だからって……」

 

 

「それに、大会じゃペルソナ絶対本気出さないでしょ!ボク、まだ本気の本気の超本気のペルソナと戦ったことないよ!」

 

 

「いや、あの時も結構本気だったんだが」

 

 

「じゃあフロアボス攻略の時に沢山武器使ってたあれはなにさ!」

 

 

痛いところを突かれた。ボス攻略の後も指摘されなかったから、てっきり忘れてるか、ボスに夢中でそれどころじゃなかったのだろうと思っていたのだが。

 

 

「ユウ、キリトさんからSAO時代の貴方の話を聞いてから、ずっと本気の貴方と戦いたいって言ってて……こうして人を呼んだのも、貴方を逃がさない為にみんなで協力したんです」

 

 

「すみません」っと苦笑しながら謝罪するラン。皆が私の退路を塞ぐためだけに共謀したこともそうだが、SAO時代の私のことをユウキに話したキリトに苛つきを覚える。

 

 

「ここで逃げるなんて男らしくないぞーペルソナー!」

 

 

――決めた。あとでキリトには痛い目を見てもらおう。

 

 

私はそう心に決め、ウインドウの決闘申請画面のOKを押すと、私とユウキの間でカウントダウンが始まった。

 

 

私はウインドウを操作し、腰に刀を、背に槍と先程彼女たちから貰った両手剣を携える。

 

 

そしてカウントが0になった瞬間、甲高い金属音を立てながら互いの剣がぶつかり合った。

 

 

持ち前の反射神経とスピードで、3つの武器を使い分ける私の攻撃に対応するユウキ。

 

 

「楽しいね、ペルソナ!」

 

 

私の攻撃を避けながらそう話かけてくるユウキ。いやそんな事より、私の動きにすぐさま対応して、攻撃に転じないで欲しい。以前戦った時より数段強くなってるのは何なんだ。

 

 

確かに、今や彼女はALO最強剣士の座に輝いたわけで、強くなってない訳がないのだが、

 

 

「ペルソナはボクとデュエルするの楽しくない?」

 

 

鍔迫り合いなった際、不安そうな表情でそんな事を聞いてくるユウキ。

 

 

――そんなの……決まってる。

 

 

「……楽しいさ。何せ君は、私が唯一、本気で戦える相手だからな」

 

 

「……!うん、ボクもだよ‼今まで色んな人と戦ったけど、ペルソナと戦うのがイッッチバン楽しい‼ずっと続いて欲しくなるくらい!」

 

 

「なら、これからも続けよう。これから、何度でも」

 

 

湧き上がる歓声に包まれ、私たちは何度も互いの持てる力の全てをぶつけ合った。いつまでも、何度でも、互いを高め合うかのように……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお後日、GGOのキリトの写真が仲間内で広がり、彼のメンタルが崩壊したのは、また別の話。

 




次はオーディナルスケールになるわけなんですが、原作の物語を沿った物語は次のOS編で最後にしたいと思います。なのでアリシゼーションには続きません。アリス、ユージオファンの皆さん、本当に申し訳ございません。

理由は超個人的なのですが、SAO三期を見て、正直自分には、ここまで長く続けられる自身は無いと感じたからです。※作者もアリシゼーションは好きです。

失踪とかもしたくないので。

その代わり、オリジナル展開をさせて、必ず完結まで持っていきたいと思っています。

最後に長々と失礼しました。それではまた次回もよろしくお願いします。
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