仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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お待たせしました。第56話です。


第56話 不穏な影

 

サムライロードとの戦闘があった翌日の夜。私は公開されたイベント会場へとバイクを走らせる。私はあの後、すぐ眠ってしまったが、ALOではキリト達の家に集まってイベントバトルの感想を話していたらしい。

 

 

その中で私がユナにキスされた事をアスナに暴露されていたらしく、いつものように病院に見舞いに行くと、その事について藍子と木綿季から責められた。更に、2人ともユナのファンだったようで、自分たちは会うことが出来ないのに、10回も会っている私が羨ましいと不満を垂れていた。

 

 

――その事については……流石に申し訳なく感じたが。

 

 

今回のイベント会場である公園付近に着くと、その入り口にはクライン達《風林火山》とアスナがいた。

 

 

「どうした?もうすぐイベントが始まる時間だぞ」

 

 

「よ、ペルソナ。それがよ、メンバーが1人連絡つかなくってな。揃ったらすぐ参戦するから、アスナと先に行っといてくれよ」

 

 

「そうか。なるべく早く来いよ」

 

 

「もし遅れたら、クラインさん達の分のポイント稼いじゃいますから!」

 

 

「ちょ、そりゃねえよアスナー⁉」

 

 

そんなクラインの叫び声を尻目に、私とアスナは先に進む。

 

 

「今日はキリトは来ないのか」

 

 

「一応メッセージは送ったんですが、多分今日は来ないかもですね。ペルソナさんは……またユナのキス狙いですか?」

 

 

「茶化すな」

 

 

ニヤニヤと含んだ笑みを浮かべ聞いてくるアスナにそう返すと、彼女は「ふふっ、ごめんなさい」と笑いながら言った。

 

 

私が欲しいのはあくまでポイント。それと交換できる特典だけだ。ユナが何をしようと私は興味がない。クラインじゃないのだから。

 

 

そんな事を考えていると、目の前にボスモンスターが現れる。その見た目は鷹のようね頭と翼を持つ四足歩行の化物だった。

 

 

「あれは11層ボスの《ザ・ストームグリフィン》!」

 

 

「厄介そうだな」

 

 

「そうですね。突進攻撃の時ぐらいしか地上に近づかないので、剣でダメージを与えるにはボスの攻撃をギリギリで避けるしかないので、実際フロアボス攻略のときにとても苦労したのを覚えてます。まあ今回は、前と違って遠距離攻撃できるので、それほど苦労しないと思いますよ」

 

 

そういうアスナが周囲のプレイヤーに指示を出し、ボス攻略が進む。

 

 

昨日も思ったが、流石に一度戦っただけあって、アスナの指示は的確だった。壁役がボスの攻撃の大半を防ぎ、銃使いが奴の翼を撃ち抜き、落ちてきた所を近接攻撃できる私たちが攻め立てる。

 

 

その一連の作業を繰り返し、最後はアスナの一撃でボスは撃破された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、クライン達は最後まで来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OSのイベントが行われた公園の近く。その青年は誰かと連絡を取っていた。

 

 

「……はい。攻略組の一角を担った有力ギルドを1つ潰しました。思った通り、奴らはAR(こっち)じゃ何もできやしない……計画は順調に推移してます。次の段階(ステージ)に進めてください」

 

 

電話からカタカタとタイピング音が聞こえたかと思えば、青年の目の前を浮遊するドローンから一筋の光が放射され、白いフードを被った少女が姿を現した。

 

 

 

 

「……お帰り」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後クライン達と会うことはなく、取り敢えず私は明日奈を家まで送り届け、自分も帰宅した。

 

 

 

家に着くと、父が何やら慌ただしそうに仕事に行く準備を始めていた。

 

 

「仕事か?こんな時間から」

 

 

「ああ、少し厄介な事件が起きたんだ。だが、お前は気にするな」

 

 

そう言い残して家を出る父。その様子だけで何かあった事は確かだった。しかも私に釘を刺すあたりARかVR関連なのは間違いなさそうだ。

 

 

――調べておく必要がありそうだな。

 

 

 

 

 

翌日――OSについて調べることにした私は昨晩イベントが開催された場所から、これまでイベントが開催された場所を巡っていったのだが、如何せん手掛かりは掴めそうにない。

 

 

本当は嫌だったが、菊岡の奴にも調査を頼んだ。

 

 

「とは言え、そうすぐに連絡が来るわけないか」

 

 

これまで巡ってきた場所をオーグマーの地図に印をつけながら周囲を確認していると、不意に目の前に白いフードを被った少女が現れた。

 

 

「君は……」

 

 

その少女からはまるで生気が感じられなかった。目に見えているが存在していない感覚。

 

 

もしやと思いオーグマーを外してみると、目の前から少女が消えた。やはりARの映像か。

 

 

再びオーグマーを装着すると、その少女はどこか遠くの方を指差していた。

 

 

『さがして』

 

 

声は聞こえなかったが、口の動きだけでそう言っているのは分かる。

 

 

少女が指差した方角を一瞥し、すぐに振り返るが、もうそこに少女の姿はなかった。

 

 

「彼女は一体……《ブーーー》ん?」

 

 

丁度その時、スマホが震えた。和人からのメッセージだ。

 

 

どうやらユイちゃんがOSのイベントについて分かった事があるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん、これを見てください」

 

 

ALOのキリトの家に皆が集まると、ユイちゃんが見せたのは所々に印が付いた現実世界の地図。

 

 

「ここが一昨日、パパ達が《カガチ・ザ・サムライロード》と戦った場所。こっちが昨日ママとペルソナさんが《ザ・ストームグリフォン》と戦った場所です。残りはほか9体のボスモンスターの出現位置になります。……この上から旧アインクラッドの平面図を重ねると……」

 

 

「これは……」

 

 

今までのボスの出現位置が旧アインクラッド迷宮区と見事に重なっていたのだ。

 

 

「正確には迷宮区と重なる座標の最寄の公園や広場になるようですが、それを含めて予測は可能です。今夜の21時には渋谷区の恵比寿ガーデンプレイスに出現すると予測されます」

 

 

予め、イベント会場が予測できるのなら足がないシリカ達も参加することが出来る。リズベットはユナの前で活躍を見せようと意気込んでいた。

 

 

「そう言えばクラインはどうした?」

 

 

「さあ、今もどこかでOSにのめり込んでるんじゃない?」

 

 

「昨日のバトルにも結局参加してこなかったな」

 

 

「そうそう。風林火山の人が揃わないからって……」

 

 

「三度の飯よりゲームを選ぶ風林火山(あいつら)にしては珍しいな……」

 

 

あとで確認してみようと呟くキリト。

 

 

「でも、ARは現地集合しなくちゃいけないから、ちょっと面倒よね」

 

 

「待ち合わせと言えば、流星群を見に行くときの集合時間も決めておかないとですね」

 

 

シノンの言葉にふと思い出したようにそう口にするユイちゃん。事情を知らない者達が頭に「?」を浮かべる中、キリトは口に指を当て、そのまま私とユイちゃんを連れて外に出る。

 

 

「ユイ、例の星を見に行く件はみんなには内緒なんだ」

 

 

「す、すみません!」

 

 

キリトにそう言われ、申し訳なさそうに謝罪するユイちゃん。今回はどちらかと言うと、ちゃんと説明していなかったキリトが悪いと思うが。

 

 

「それはそうと、さっきのデータを俺の携帯に送っといてくれないか?」

 

 

「はい!わかりました!」

 

 

「何か気になることでもあるのか?」

 

 

「ちょっとな。君も一緒にどうだ?」

 

 

「いや、これからラン達の見舞いに行く予定があるから無理だ。それと……私も調べたい事があって、今朝方、今までイベントが開催された場所を回ってみたが、これといった収穫はなかった」

 

 

「そうか……まあ俺なりに色々調べてみるよ」

 

 

それじゃあっと言ってログアウトするキリト。……あの少女の事を話すのを忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SAOアインクラッド第40層迷宮区――

 

 

 

 

私は1人、迷宮区を練り歩いていた。

 

 

「あ、あの!」

 

 

突如、背後から聞こえた声に私は振り向く。

 

 

声の主は最前線(こんな所)にいる筈のない人物。あの吟遊詩人の少女だった。

 

 

「何をしている。ここは最前線だぞ」

 

 

「その声……もしかしてあの時のお兄さん⁉」

 

 

「……一度安全地帯に行くぞ。話はそこで聞く」

 

 

私は出現するエネミーから吟遊詩人の少女……《ユナ》を守りながら安全地帯まで戻った。

 

 

「君は何故ここにいる」

 

 

「……あなたにお願いがあって、あなたを探していました」

 

 

私は彼女から事情を聞いた。何でも、彼女の知り合いは《KoB》……血盟騎士団にスカウトされる程の実力者なのだが、死の恐怖を克服できず、ボス攻略に参加できない事に悩んでいるらしい。彼女の頼みは、私にその人物の助けになって欲しいというものだった。だが……、

 

 

「何故私なんだ。私の噂なら君も聞いた事があるはずだろう」

 

 

「はい……」

 

 

自分で言うのもなんだが、アインクラッド中の私の印象は良いものではない。第1層攻略の際に、情報を開示せずリーダーのディアベルを危険に晒した事を皮切りに、色々な噂が流れている。だからこそ分からなかった。何故彼女はその噂を知っていながら私に近づいたのか。

 

 

「どうしても死んで欲しくないんです。彼だけは、どうしても」

 

 

そう話す彼女の眼に私は揺らいだ。自らの危険を顧みず、会えるかも分からない私を探しにレベルの合わない最前線までやってきた彼女。断る事もできた筈だが、あの頃の私には無理だった。

 

 

「分かった」

 

 

そうして私は彼女の知り合い《ノーチラス》に稽古をつける事になった。

 

 

 

 

 

 

 




少しずつ明らかになるSAO時代の彼。

ユナが死んでるからどう足掻いてもバッドエンドになるのがキツイ。
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