仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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お待たせしました。第59話です。



第59話 ボスラッシュ

 

ザ・ダイア―タスク戦の翌日。私はオーグマー設計者である重村徹大教授のいる東都工業大学に見学という形で潜入した和人から調査報告を受けた。が、

 

 

「大した収穫は無しか……」

 

 

『ああ悪い。絶対何か関係してる筈なんだけど、ガードが堅くて深く切り出せなかった』

 

 

教授の反応からして、オーグマーに何かしらの危険がある可能性は高いのだが、相手が巨大プロジェクトである為、確たる証拠がない限り菊岡たちも動くことは出来ないらしい。

 

 

『でも少し気になることもあって、菊岡に調べて貰ったんだ』

 

 

「気になること?何だ」

 

 

『菊岡に聞いたんだが、重村教授には「悠那」って名前の娘さんがいたみたいなんだ。その子は2年前に亡くなってる』

 

 

「2年前……まさかSAO事件の」

 

 

『そう。死因はナーブギア。俺達と同じ被害者の1人だ』

 

 

通話しながら転送された重村悠那なる人物の写真を見た私は酷く驚愕し、思わず携帯を落としてしまうところだった。

 

 

「この子は……」

 

 

『似てる……というより瓜二つだろ?あのフードの子に』

 

 

「あ、ああ。……思わぬ所で繋がるものだな」

 

 

――奴を止めなくてはならない理由が、また増えたな。

 

 

「和人、そっちは貴様に任せる。私の方でも色々と調べておく」

 

 

『分かった。記憶を奪われないようにな』

 

 

「お互いに、な」

 

 

通話を切ると、見知らぬアドレスからメッセージが届き、勝手にナビが起動していた。

 

 

――この場所に来いという事か。

 

 

罠の可能性もあったが、何か手掛かりが掴めるなら何でも良い。私は指定された場所へとバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナビに案内されるまま、指定された場所に到着すると、私はオーグマーを装着して周囲を警戒しながら人気のない通りを歩く。

 

 

ふと、背後に気配を感じたかと思えば、私はいつの間にか先程までとは全く別の場所に立っており、服装もオーディナル・スケールの物に変わっていた。

 

 

――仮想世界……だがアミュスフィアを使っていない筈なのに何故……。

 

 

色々と考えても埒が明かず、取り敢えず目の前にある赤い城へ向かって歩く。

 

 

暫く歩いていると、小川に架かる小さな橋の上に1人の少女が立っていた。

 

 

「ユナ、やはり君だったか」

 

 

「久しぶりですね。ペルソナさん」

 

 

彼女の雰囲気は生前よりも冷たく、妙に大人びていた。

 

 

「君の父、重村教授は生還者(サバイバー)からSAOの記憶を奪い、何をしようとしているんだ?」

 

 

「……考えた事はないですか?デスゲームをクリアして現実世界に戻ったのは実は夢で、目が覚めたらまだアインクラッドに囚われたまま。そう思ったことは」

 

 

「無い」

 

 

彼女の問いに私はそうきっぱりと返す。

 

もしそんな事を考えてしまえば、これまで私たちが歩んできた全てを否定することになる。SAOを脱し、ALOでキリトとリーファと共にアスナを救出した時のこと。シノンと出会ったGGO、互いに過去を打ち明け、共に戦い抜いた《死銃事件》。皆でエクスキャリバーを取りに行き、流れでアルンを崩壊の危機から人知れず救ったこと。そして何より、ランとユウキ……スリーピング・ナイツの病気の件。今やどれもが私にとってかけがえのない大事な思い出だ。

 

 

「そう……」

 

 

「君は、私のことを恨んでいるのか?」

 

 

その問いに彼女が答えることはなく、代わりに指を鳴らすと私は元居た場所に戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モヤモヤするものを振り払い、私とキリトは二手に分かれて出現したボスを狩っていく。

 

 

キリトがいない為、私が未参加だったフロアボスとの戦闘も覚悟していたが、私が再び攻略に参加するようになった40層以降のボスが多かったため、どうにかなった。

 

 

――初戦でもある程度動きを予測できれば問題なかったが、連戦は流石にキツイな。

 

 

そう考えていると、対峙しているゴーレム型のボスが巨大な剣に変形した右手を大きく薙ぎ払う。

 

 

「ちぃッ!」

 

 

横薙ぎと遅れて飛んできた衝撃波をスライディングで避ける。

 

 

「きゃあ⁉」

 

 

「うわッ‼」

 

 

ボスの攻撃を受け、気絶するプレイヤーが見えた。

 

 

「っ、いい加減……倒れろ‼」

 

 

続けざまに放たれた右手を振り下ろし攻撃を避け、その体に深く剣を突き刺し、ボスは消滅した。

 

ボスが倒れプレイヤー達が歓喜する中、私は先程ボスの攻撃で気絶したプレイヤーの方を見る。仲間と思われる者達が心配して集まっていたが、すぐに平気そうな顔で立ち上がった。だが、恐らく彼らも記憶をスキャンされてしまってるだろう。

 

 

――やはり、全員を守りながら戦うのは無理があるか。

 

 

携帯しているゼリー飲料を口に流し込みながら一息ついていると、和人からメッセージが届いた。どうやら、エイジと接触したらしい。

 

 

奴が言うには、明日行われるユナのライブに来いとのこと。

 

 

「ユナのライブ、か」

 

 

私もOSの登録時に特典としてライブのチケットは貰ったが、何か関係がありそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日付は変わり、クラインを除くいつものメンバーがライブ会場に集合していた。

 

 

「ペルソナ、ちょっといいか?」

 

 

「……ああ」

 

 

私とキリトは静かに皆の元から離れる。

 

 

今朝、キリトのオーグマーに「地下駐車場に来い」とエイジからのメッセージが届いたそうだ。

 

 

「キリト、この先は私が行く。貴様は皆の所に戻っておけ」

 

 

「ペルソナ、でも……」

 

 

「大丈夫だ。私はあいつと何度も剣を交えている。あいつの動きや癖は世界で2番目に分かってるつもりだ。それに何が起こるか分からない以上、不足の事態に備え貴様には皆の傍にいて欲しい」

 

 

「……分かった。負けないでくれよ」

 

 

「当然だ」

 

 

背中越しにそう答え、私はエイジが待つ地下駐車場へと歩んでいく。

 

 

 

――彼女との約束もある……この事件は私が終わらせる。

 

 

 

 

 





今回はここまで。また次回もよろしくお願いします。

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