仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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お待たせしました。オーディナル・スケール編最終回です。

相変わらず戦闘描写は表現が難しい。



第61話 想いを背負い、未来へ

 

『リンク・スタート‼』

 

 

その言葉と共に、私達の意識は現実の身体を離れる。次に目を開けた私達の前に広がっていたのは、浮遊城アインクラッドと、その頂にそびえ立つ深紅の城だった。

 

 

「ここがアインクラッド第100層……紅玉宮」

 

 

「まさか2年も経ってここを見ることになるとはな……」

 

 

ゆっくりとアインクラッドの上空から紅玉宮に入った私達の目の前に、巨大な槍と剣を携えた巨大なボスモンスターがその場に鎮座していた。

 

 

ボスの目が光ったと思えば、ボスの持つ槍がエギルを攻撃していた。

 

 

エギルはギリギリの所で防いでいたため無事だったが、まともに攻撃をを喰らっていたらタダでは済まなかっただろう。

 

 

「行くぞ!」

 

 

キリトの合図で攻撃を開始する私達を迎撃するようにボスの目が光ると、ボスの周囲から魔法攻撃のような光線が飛んでくる。

 

 

私とキリトとアスナは姿勢を低くすることで光線を回避したが、フロアボスの戦闘には慣れていないリズベットとシリカは直撃し、後方の壁に叩き付けられる。

 

 

「「はあッ! / やあッ!」」

 

 

キリトとアスナの息の合った攻撃はボスに届く前に、見えない障壁に弾かれる。

 

 

「スイッチ!」

 

 

私も追撃するが、やはり見えない壁に攻撃が遮られる。

 

 

空中で無防備になった私に大剣が振り下ろされそうになるものの、シノンの射撃が直撃し、軌道が逸れる。シノンへ標的を変えたボスは彼女がいる位置に怪光線を放つ。

 

 

ボスの注意がシノンに向いている隙に、私とエギル、キリトとアスナ、リズベットとシリカの順でボスに追撃を行い、10本あるHPゲージの1本目を3割ほど削ったタイミングで、態勢を整えるべく一時後退する。

 

 

だがその直後、ボスの周囲に一本の巨大な大樹が出現。大樹の葉から一滴の雫がボスの頭上に落下すると、ボスのHPが全回復した。

 

 

――茅場め……ここまで厄介なボスを用意してたとはな。

 

 

やっとの思いで削ったHPを回復され、私達は落胆する。

 

 

絶望的なまでの戦力差。それでも私達は何とかボスのHPを削ろうと試みるが、フロアの床下から伸びた植物や、浮かび上がるブロックに妨害され身動きが取れなくなる。

 

 

「きゃあ‼」

 

 

「シリカ‼ぐあッ‼」

 

 

シリカがブロックに挟まれ、彼女を救出しようとしたキリトもボスに掴まる。

 

 

「キリトッ!シリカ‼」

 

 

伸びる植物の幹を伝って走り、ボスの眼前に飛び出た私はキリトへ向けて怪光線を発射される直前、怪しく光るボスの左眼に深く剣を突き刺した。

 

 

目を潰されたボスは初めて悲痛な叫び声を上げ、キリトとシリカを離す。

 

 

暫くの間ボスは左眼の痛みに悶えていたが、すぐに憤怒し大剣を振るう。私は自らの剣で受け止めたものの、クレーターが作られるほどの勢いで地面に叩きつけられた。

 

 

「ぐぅッ…‼」

 

 

大剣越しにボスが槍をこちらに向け構えているのが見えた。

 

 

「ペルソナッ‼」

 

 

キリト達も怪光線により近づくことが出来ない。

 

 

――こんなところで……ッ!

 

 

「やられるわけにはいかない」そう思った瞬間、緑と紫の魔法攻撃が飛んできた。

 

 

――これは……いや、まさか⁉

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃーーん!」

 

 

「リーファ⁉」

 

 

「無事ですか、ペルソナさん‼」

 

 

「ラン⁉」

 

 

現れたのはキリトの妹のリーファと、私の義妹(予定)のラン。

 

 

「パパ、ママ、皆さんを呼んできました!」

 

 

彼女達に続いて、ユージーンやサクヤ、アリシャなどの領主達、スリーピング・ナイツの皆、更にクラインまで飛んできた。

 

 

更に妖精達が縦横無尽に飛び回りボスを翻弄する中、周囲から弾丸の雨が降り注ぐ。

 

 

「ヒャッハー‼︎撃って撃って撃ちまくれー‼」

 

 

「でけぇな、おい‼」

 

 

シノンがいる場所の近くにGGOのプレイヤー達が銃を乱射している。

 

 

「あいつら……」

 

 

「それだけじゃありません!みなさん、これを使ってください!」

 

 

ユイちゃんがそう言うと、たちまち私達は光に包まれ、アバターがSAO時代の姿に変化していた。

 

 

「これは……!」

 

 

「このSAOサーバーに残っていたセーブデータから、みなさんの分をロードしました!シノンさんの分はオマケです」

 

 

変わったのは姿だけではない。SAO時代に私が愛用していた《ディスペア》シリーズはもちろん、シリカの相棒であるピナも飛んできてくれた。

 

 

「……よし!みんな、やろう‼」

 

 

SAO、ALO、GGO……3つのゲームが入り混じり、ボスのHPは一気に削れていく。

 

 

再びボスは回復する為に周囲に巨大樹を出現させる。

 

 

「あれを防いで‼」

 

 

同じ轍を踏むほど私達は愚かじゃない。アスナが指示を出し、巨大樹から雫が落ちる前に一斉攻撃でHP回復を妨害する。

 

 

ボスが怯んだ所で私は刀武器【ディスペア・オブ・サーベル】の柄を掴む。

 

 

――もう一度、私に力を貸してくれ。

 

 

「ここで決める。行くぞキリト、アスナ!」

 

 

「「ああ! / はい!」」

 

 

キリト、アスナと共に駆け出すと、ボスは反撃と言わんばかりに植物を伸ばしてくる。迫る大樹の幹のいくつかはランとリーファの魔法と、シノンのヘカートの銃弾により破壊され、取り残しも私の《抜刀術》とキリトの《二刀流》で防ぐ。

 

 

「「スイッチ!」」

 

 

入れ替わって前に出るアスナ、そこにユウキも駆けつける。

 

 

「行くよ、アスナ!」

 

 

「うん、やろうユウキ!」

 

 

2人の剣が青紫色に輝き、2人だけのOSS《マザーズ・ロザリオ》が炸裂した。

 

 

「「はあああああああッ‼ / やああああああああッ‼」」

 

 

2人の剣技が終わると同時に飛び出した私は、槍武器【ディスペア・オブ・スピア】に持ち替え、《無限槍》で無数のラッシュを放つ。

 

 

「スイッチ‼」

 

 

「おおおおおおおおッ‼」

 

 

私と入れ替わったキリトが二刀流スキルを使い、ボスの身体に次々と斬撃が叩き込まれていく。

 

 

「はあああああああああああッ!!!」

 

 

キリトが最後に放った一太刀がボスの顔を斬り裂き、ボスは断末魔を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その場にいた誰もが「やった」と思った次の瞬間、2つに割れたボスの顔の裂け目から少女の姿をした闇が飛び出てきた。

 

 

上級ソードスキルの発動後の硬直で無防備なキリトに闇は容赦なくその凶刃を振り下ろさんとする。完全に不意を突かれ、誰も動くことができない。

 

 

「させない」

 

 

ただ1人、私を除いて。

 

 

地を蹴ると同時に抜刀し、闇の攻撃に合わせて刀を振るう。

 

 

――きっとコイツは私の記憶から生まれたのだろう。

 

 

対峙する闇は、【深遠なる闇】の依代となったマトイと酷似しているというより、そのままの姿をしていた。以前、茅場が私の記憶を観察していた時の情報をカーディナルが具現化させたのか、はたまた別の要因か。

 

 

何にせよ、原因が私である以上、やるべきことはひとつ。

 

 

「貴様は、私が仕留める!」

 

 

抜刀した刀で闇の体勢を崩し、そのまま刀を手放すと、続いて取り出した槍を闇の体に突き立てていく。

 

 

「スキルコネクト……」

 

 

流れるような動きで槍を離し、両手剣武器【ディスペア・オブ・ファルシオン】を抜き放ち、禍々しいオーラに包まれた刀身で斬りつける。

 

 

「これは、抜刀術、無限槍、暗黒剣のスキルコネクトです‼︎」

 

 

「まだだ」

 

 

暗黒剣のオーラを払うかのように青白く光り輝く刀身は巨大な刃になる。

 

 

「ここで、オリジナルソードスキル⁉」

 

 

皆が驚く中、闇と目が合った気がした。表情は読み取れなかったが、その視線からは「また自分を殺すのか」と訴えられているように感じた。

 

 

「すまない。だが今はまだ、記憶の中で眠っててくれ」

 

 

紅玉宮の床や壁を斬り裂くほど極大な光の刃を受けた闇は消え去り、フロアには静寂が戻った。

 

 

 

 

 

『……これで完全クリアだな』

 

 

不意にそんな声がフロア中に響く。

 

 

『しかし君達には、まだやることがあるんだろう?』

 

 

「茅場……?」

 

 

その声と共に、紅玉宮の天井から巨大な剣がキリトの元へと降りてくる。私はそれを彼から横取りする形で手にする。

 

 

「ペルソナ⁉」

 

 

「悪いなキリト。だが、これはきっと私の問題だ」

 

 

そう言いながら、剣の刀身から溢れ出る光に包まれた私が次に目にしたのは現実世界。死神がその鎌をユナ目掛けて振り下ろさんとしている光景。

 

 

――させない。今度は間に合わせる!

 

 

私が手にした剣を振るうと、SAOでは倒すのに苦労した死神が一撃で消滅した。

 

 

――この剣ならボスはどうにかなる。ならあとは……

 

 

ユナの方を振り向くと、彼女は私の真意を読み取ったように頷き、ステージに上がって歌う。

 

 

ユナの歌が会場中に響き渡り、彼女の歌声に勇気づけられたプレイヤー達からは恐怖が消え、ボスエネミーに立ち向かっていく。

 

 

私の持つ剣の力とプレイヤー達の奮闘もあり、遂に全てのボスエネミーが倒れた。

 

 

 

 

全てが終わった後、会場の入口で座り込んでいるエイジの姿を見つけた。

 

 

「なんだよ……笑いに来たのか」

 

 

「もう一つ、彼女との約束を果たしに来た」

 

 

「何を……」

 

 

「約束通り連れてきたぞ。あとは自分で伝えろ」

 

 

『ありがとうございます。ペルソナさん。最後まで迷惑掛けちゃってすみません』

 

 

オーグマーに向かって語りかけると、私のオーグマーから飛び出た光の欠片が集まり、在りし日の《重村悠那》の姿を形成した。……最後に、自分自身の言葉で想いを伝えるため、彼女に頼まれ、私の記憶も読み取って再構成された悠那のAIだ。

 

 

「悠那……」

 

 

「エーくん。ごめんね、わたしのせいでいっぱい迷惑掛けちゃって」

 

 

「そんな、僕は……」

 

 

「うん分かってる。わたしの為にエーくんとお父さんは頑張ってくれた。でも、そのせいでみんなが、2人が辛い思いをするのは、わたし嫌だよ」

 

 

「……ごめん」

 

 

目を背けるエイジをユナはそっと抱きしめる。

 

 

「謝らないで。わたし嬉しかったよ。わたしの夢、叶えようとしてくれたんでしょ?それだけで、充分だよ……」

 

 

「! 悠那‼」

 

 

悠那の身体が光り、消滅し始める。どうやら時間が来てしまったようだ。

 

 

「待ってくれ!行かないでくれ!」

 

 

悲痛な声を上げながら消えゆく悠那を掴もうとするエイジ。だが、その手は空を切る。

 

 

「泣かないでエーくん。わたしはいつでもエーくんの思い出の中にいるから。だから……そろそろ自分を許してあげて」

 

 

消えかけの手をエイジの頬に添え、悠那は満面の笑みを浮かべる。

 

 

「ありがとう鋭二。――――。」

 

 

最後の言葉は私には聞こえなかったが、きっと彼女の思いは彼に届いただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OS事件――私が勝手にそう名付けた――から数週間後、クラインの退院祝いでエギルの店に和人と明日奈を除いたメンバーが集まっている。

 

 

「ったくよキリトの奴、SAO時代1番の親友の退院祝いに来ねぇなんてよ」

 

 

「まあ良いじゃないの来ない人達のことは置いといて」

 

 

――今日は確か……明日奈と星を見に行くと言っていたな。

 

 

以前、和人がユイちゃんと話をしているのを偶然にも聞いてしまい、皆には内緒にしてくれと釘を刺されていた。

 

 

合宿帰りの直葉が持ってきた土産をつまみに、酒を飲みながら和人に対する愚痴を口にするクライン。私はそんなクラインを尻目に、テレビの中で歌うユナの姿を眺めていた。

 

 

「どうしたの?ぼーっとしてるけど」

 

 

「ああ……少しな」

 

 

隣に座った詩乃からの問いにそう応えはしたが、私は依然として上の空。

 

 

もしあの時、私がもっと早くあの場所に辿り着けていたら……いや、それ以前に私が彼らの元から離れず、エイジが戦えるようになるまで共に行動するという選択肢もあった筈だ。

 

 

「結局、私はまた選択を誤ったという訳か……」

 

 

「そう自分を責める必要ないんじゃないか?」

 

 

エギルはそう言いながら私の前にコーヒーを出す。

 

 

「お前とキリトがSAOをクリアしたから、アイツも彼女の本当の遺志を知ることが出来たんだ」

 

 

「そうね。それに貴方たちのお陰で命を救われた人も多いはずよ。わたしもその1人」

 

 

エギルに続いて詩乃は微笑み、直葉から受け取った土産を私の前に置く。

 

 

「……」

 

 

私は詩乃に言われた事を振り返る。自惚れる訳ではないが、詩乃の言う通り私が救った命も多い。だがそれと同様に私が奪った命も多いのだ。

 

 

ふとコーヒーの表面に前世の私の姿が映る。

 

 

『忘れるな。貴様の罪は未来永劫、消えることはない』

 

 

かつての自分にそう言われた気がした。

 

 

――もちろん忘れはしない。

 

 

この世界に来て、多くの者達との出会いと別れを経験した。それは決して良い思い出だけとはいかないが、今の私があるのは、そんな彼らとの繋がりがあってこそだ。私はそれを永遠に忘れる事はないだろう。

 

 

「少し、気が楽になった……ありがとう」

 

 

「ふふっ、どういたしまして」

 

 

少し口籠りながら感謝の言葉を口にすると詩乃は少し笑いを堪えながらそう返し、他の皆からは生暖かい表情を向けられた。……やはり慣れないことはするものじゃないな。

 

 

「さてと、そんじゃ暗い話はここまでにして、今夜はパーッと飲み明かそうぜ!」

 

 

「悪いが私は遠慮させてもらう。明日は大事な用があるのでな」

 

 

「オイオイ、そりゃノリが悪いぜペルソナ」

 

 

「そう言えば明日でしたね、ランさんの手術。あたし上手くいくよう祈ってます!」

 

 

「ああ、良い報告を期待しててくれ」

 

 

そう言い残し店から出た私は帰路につく。明日は藍子の目の手術があるのだ。倉橋医師からは難しい手術になると説明されていたが藍子ならき大丈夫だろう。

 

 

――それでも近くで見守りたいと思うのは、私も甘くなったのかもな。

 

 

空を見上げると満天の星空が煌めいていた。

 

 

それはまるで私達の未来を指し示すかのように……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『戦いに赴く剣士たちを勇気づけてくれた歌姫がいた…名もなきプレイヤーたち1人1人を我々は忘れてはならない』

 

 

新しく発行された《SAO事件記録全集》の最後のページにはその一文が追記されていた。

 

 





最後の2文はどんな形になっても入れたかった。それにこだわりすぎて終盤の調整だけで随分と時間が掛かっちゃいましたけど。

初めはジョニー・ブラックに不意打ちで注射器打たれて、次の章に繋がる感じにしようとも考えたのですが、それだと自分が考えている展開との繋がりが無理があるのと、上記のとおり最後の2文を入れたかったので没にしました。

次章ですが、54話(マザーズロザリオ編最終話)の後書きで前もって言っていたようにアリシゼーションではありません。アリシゼーション好きの皆様、本当に申し訳ありません。

次回投稿もまた間隔が空くと思いますが、それでも楽しみにして頂けているのなら幸いです。

それでは、また次回もよろしくお願いします。
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