前回の投稿から約3週間。ようやく自分なりに納得がいくもの出来ました。(あくまで私の主観なので温かい目で見てください)
それではオラクル編スタートです。
第62話 貴方を待っていた
「ふぅー……」
ある夏の日、ひと通り作業が終わらせた私は久しぶりにとても長い欠伸をした。……こんなにも何かに集中して打ち込んだのは何年ぶりだろうか。
《ピピピピピ……》
自室に置いてある小型冷蔵庫から取り出したゼリー飲料を飲んで一息ついていると、セットしていた携帯のアラームが鳴った。
――もうそんな時間か。
「リンク・スタート」
私はアミュスフィアを装着し、新たな仮想世界へと飛び込む。
その世界の名は『ファンタシースターオンライン2』
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それはいつものようにALO内のキリトの家に集まり、雑談を楽しんでいた時のことだった。
キリトが皆に『ファンタシースターオンライン2』略して『PSO2』というゲームのβテストが行られるという話をした。
誰でも応募するだけで参加が可能という事で、折角なら皆で行ってみようというユウキの鶴の一声で私達はそのゲームの世界にコンバートすることになったのだ。
因みに何故「2」なのかというと、このゲームは20年前に日本で初めて成功した家庭用ゲーム機用オンラインゲームと言われている『ファンタシースターオンライン』の正統続編だかららしい。
《Welcome to Phantasy Star Online2》
いつものようにシステムアナウンスが流れ、私はそれに従い慣れた操作で性別とキャラクター名を入力する。しかしその直後、不可解な事が起きた。
『次に種族を選たk……せん、センた……』
――何だ?
バグでも起きたのかアナウンスが乱れ、周囲が暗転する。そして……
「なっ⁉︎」
突如として足元に巨大な穴が開き、私は為す術なく穴の中へと落下していった。
▼
「っ!……ここは……一体何が起きた?」
目が覚めると私は森の中にいた。
――この景色……何故だか懐かしい。
そんな不思議な感覚を覚えながら、私は自分の身に何が起きたのか思い返す。
――確か、名前と性別の記入までは問題なかったはずだ。
問題が起きたとしたらその後、種族選択の時だ。アナウンスが途切れ、周囲が暗転したかと思えば、私は足元に出来た穴に落ち、気が付いたらこの場所にいた。
十中八九、あの時何らかの障害が発生したのだろう。
――そう言えばこの装備……これは⁉︎
自分の姿を見て私は驚愕する。それもその筈。
全身黒を基調とした戦闘服《クローズクォーター》。背には私がGGOで使用していた《コートダブリスD》と酷似している両手剣《コートエッジ》。そして首から掛かっている三角柱の銀色のペンダント。
前世の私と同じ姿をしていたのだから
「ははは……どうやら悪い夢でも見ているみたいだ」
周囲の風景にこの装備、まるで……、
「うわぁぁああああ⁉︎」
「っ、あっちか!」
突然、森の奥から悲鳴が聞こえ、私は一目散にその声の方へと駆ける。
木々の間をすり抜けるように走り、少し開けた場所に出ると、いくつもの死体が転がっている中、黒い四足歩行の蟲型ダーカー《ダガン》と、ライフルを持った金髪の少年が対峙していた。
「(アフィン!)伏せろ!」
背から引き抜いた剣で周囲のダーカーを一掃、黒い粒子となって消滅した。
「ふぅ……怪我はないか」
武器をしまい、襲われていた少年の方を振り向き手を伸ばす。
「助けてくれてありがとうございます!オレ、アフィンって言います!」
「私はペルソナだ。あと敬語はいい。……君の仲間は救えなかったからな」
周囲の惨状に私もアフィンも暗くなる。だが、休んでいる暇はなかった。周囲の空間を侵食し、再び出現したダーカーに私達はあっという間に取り囲まれる。
「話は後だ、まずはこの場を切り抜けるぞ!」
▼
同時刻アークスシップ――――
『《オラクル》。それはマザーシップを中心とした数百の宇宙船から成る巨大船団である。その誕生と共に外宇宙への進出が可能となり、新たな歴史が始まった。未知の惑星が発見された場合、《アークス》がそれを調査する。アークスとは、バランスに秀でた《ヒューマン》、フォトンの扱いに長けた《ニューマン》、屈強な体を持つ《キャスト》で構成され、数多の星に潜む《ダーカー》と呼ばれる生命体を殲滅する為、創設された組織である。宇宙に平穏が訪れるまで船団の旅は続く……』
『……異界からの戦士達、我々は諸君を歓迎する。これからは我々と諸君らと共にこの宇宙に平和が訪れるその時まで共に戦って欲しい』
映像が終わり、ウインドウが閉じる。
――さて、みんなを探しに行くか。
長いチュートリアルを終え、俺、キリトは一緒にログインした仲間を探そうと歩き出そうとした瞬間、
「「キリト君!/パパ!」」
とても聞き馴染んだ2人の声が後ろから聞こえてきた。
「良かった、ちょうどいま探しに行こうとってアスナ⁉どうしてその姿に⁉」
2人の方を振り向くとアスナは驚くことに血盟騎士団の装備をしていた。
「キリト君こそ!」
「え?なっ⁉嘘だろ……」
アスナに指摘され、改めて自分の装備を見返すと、アスナの言う通り俺もSAO時代の装備をしていた。防具だけじゃなく、武器もだ。
「ユイ、何が起きているか分かるか?」
「すみませんパパ、データを調べてみましたが手掛かりになりそうな情報はありませんでした。ただ1つ、バグではないという事は明らかです。ですが、何故パパ達のSAOのデータが復元されたのかは分かりませんでした」
「ユイちゃんでも分からないとなるとお手上げだね。どうするキリト君」
「……とにかく、バグとかではないんだよな?」
「はい、それだけは確かです」
「なら一度みんなと合流しよう。これからどうするかは、その後みんなで決めていこう」
「うん、そうだね」
そうして俺達は他にこのPSO2にログインしているメンバーと合流したんだが……
「……みんな同じ状況って訳か」
合流した元SAOのメンバーはSAO時代の装備を、リーファとシノンはそれぞれALOとGGOの装備をしていた。
「あたし他のプレイヤーの人達を見たけど、この世界にコンバートしてきた人達はみんなコンバート前の世界の装備とステータスを引き継いでるみたいだったよ」
「でもこの世界の武器とか《アーツ》?ってのも問題なく使えるみたいよ。わたしもさっきこの世界の戦い方早く慣れようってフィールドに出た人を見たわ。ま、それでもわたしはコレで行くけどね」
「あはは……ま、まあ他のプレイヤーも同じような状況なら多分問題ないだろ。でも俺やアスナ、クライン達はどうしてSAOの姿なのかは分からない。もし何か問題が発生した時は落ち着くまでこの世界にはログインしないってことで良いか?」
リーファの話に続けて
「あのーそう言えばなんですけど、皆さんペルソナさん見てませんか?」
「えっ?2人と一緒じゃないのか?」
「ボク達もそのつもりで一緒の時間にログインしようって言ったんだけど……ペルソナ、全然来なかったよ」
ランとユウキの話に俺は少し疑問に思った。俺の知る限り彼が約束を破った事は一度もない。仮に何か急な予定が入ったら連絡してくる。それをラン達にも何の連絡していないのはおかしい。
「ん-……でもここにいるみんなこの世界でまだ彼とフレンド登録してないからな。連絡手段どころか、どこにいるのかも分からないからな。まあ彼の事だから心配はいらないとは思うけど、みんなも気に掛けといてくれ。まあ最悪、リアルの方で事情を聞けばいいさ」
話を区切った所で突然、警報が鳴り響いた。
『緊急警報発令!惑星ナベリウスに多数のダーカーの反応を確認。出撃の準備をお願いします!』
「ユイ、今の警報は?」
「はいパパ、今のはランダムに発生する《緊急クエスト》の予告アナウンスです。今から約10分後にクエストカウンターの方で受注可能になるみたいなので、参加する際は前もってあちらにあるクエストカウンターに並んでおくことをお勧めします」
「おっしゃキリの字!俺達も他の奴らに置いてかれねぇように、早速この世界の戦い方ってやつを学ばせてもらおうじゃねぇか!」
「ああ、そうだな。行こうみんな!」
『おー‼』
俺達は緊急クエストを受けるためにカウンターに向かった。
▼
ペルソナside―――
ダーカーの群れから何とか逃げ切り、私達は近くにあった洞窟に身を隠している。
少し落ち着いた所でアフィンから何があったのか聞いた。アークスになって初の実戦任務の訓練中、ダーカーの強襲に遭い部隊は壊滅。自分もやられそうになった直前、駆け付けた私に助けられたとのこと。
――ある程度は前世の記憶とも合致する。ただ唯一違う点があるとすれば……
この世界に《アッシュ》という名のアークス……つまり前世の私がいないという事だ。だが、この世界に私がいないとは言え、"彼女"がいないとは限らない。
――もし"彼女"がこの世界にいたとして、私は……
「オレも初日から色々と大変だったけど、相棒も大変だったな。いきなりナベリウスの森のど真ん中に放り出されるんだから」
「そのお陰でお前を救うことが出来た。それだけでも良かったさ」
「ああ……そうだな」
道中、私はアフィンに私が別の世界の人間である事を伝えた。意外にもアークス間で異界から戦士達が訪れるという事が何故か周知されており、アフィンはすんなりと私の話を聞き入れた。……因みにアフィンが勝手に私の事を「相棒」と呼んでいるが、そう呼ばれた方がしっくりしてるので指摘はしていない。
「お前は、どうしてアークスになったんだ?」
「探し物があるんだ。10年前に無くした大事な探し物が。アークスになって色んな惑星を調査すれば、見つかるんじゃないかと思ってな」
「そうか。いつか見つかるといいな。……さて、そろそろ行くとするか。なるべく早く転送ポイントに向かおう」
「ああ、そうだな」
その時、再び空間を侵食する気配と共に、私達の前に蜂型のダーカー《エル・アーダ》が私達の目の前に出現する。同時に、次々とダーカーが空間転移してきた。
「チッ、突っ切るぞアフィン!」
「分かった!」
私が先陣を切り、アフィンが後ろから援護射撃を行う。私がアフィンの癖を熟知していることもあり、初めてとは到底思えないコンビネーションでダーカーの大群の中を突き進んでいく。
だが、私は失念していた。今のアフィンはまだ新人。一瞬の隙を突かれ、エル・アーダにアフィンが捕まり上空へと連れ去られた。
「アフィン!」
私の攻撃が届かない所まで上昇したエル・アーダだったが、何処からともなく飛んできたフォトン弾にコアを撃ち抜かれ、消滅した。
その他のダーカー達も先程同様にファトン弾で次々と消滅していった。
「ふー、恐ろしい程ドンピシャ」
「ゼノさん!」
ゼノと呼ばれた赤髪の青年。彼はガンスラッシュを仕舞い、私達に近づく。
「よお、お前ら大丈夫だったか?」
「はい、ありがとうございます。オレはアフィンです。こっちは相棒のペルソナ」
アフィンがゼノに私を紹介すると、ゼノは不思議そうな顔で私の顔を覗き込む。
「そっちのお前……どこかで見た気がするな?」
「いや、それは無いですよ。だってコイツ今日こっちの世界に来たばっかですから。な、相棒」
「そうなのか。じゃあレギアスの爺さんが言ってた転送装置の誤作動でナベリウスに転送された異界からの戦士ってお前さんの事か!いやー早く見つかって良かった!」
アフィンの説明でゼノが納得しているとゼノがやって来た道からもう1人、ツインテールの女性アークスが悪態を吐きながら現れた。
「紹介するわ、こいつエコー」
「ちょっと!紹介雑過ぎ‼」
久方ぶりに見た夫婦漫才のようなやり取りに頬が緩みそうになるのを抑え、場所を変えた私達はゼノ達にこれまでの経緯を話した。
「そうか、2人とも大変だったな。ま、ダーカーと戦う以上、いつかは仲間の死に立ち会う事になる。早めに経験しといた方が長生きできるからな。ほれ、」
そう言いながらゼノは私達にモノメイトを投げ渡す。
「その悔しさを忘れるな、諦めるな。忘れず諦めずにいればいつかきっと何とかなる!」
「相手しなくて良いからね。どーせただの受け売りだから」
「ちょっ、バラすなよ!師匠の言葉は俺の言葉だから良いんだ!」
「なによ偉そうに!」
再び目の前で言い争いを始める2人を見て、少し気が楽になり、私とアフィンは貰ったモノメイトを飲もうとする。
『――――』
「っ………」
感じた。いやこの場合は感じてしまったという方が正しいか。
動揺で手からモノメイトが滑り落ちる。
「相棒?大丈夫か?」
「あ、ああ。少し手に力が入らなかっただけだ。問題ない」
「色々あって疲れたんだろ。さっさとアークスシップに戻ろうぜ」
「「はい」」
落としたモノメイトを拾いながら、『約束の場所』の方に目を向けると、眩い光の中で人影のようなものが落ちて行くのが見えた。
「どうした相棒?早く行こうぜ」
「……ああ」
――すまない。
心の中で懺悔するように私はその場から離れた。
▼
ゼノ達が乗ってきたキャンプシップを使いアークスシップへとやってきた私達。キリト風に言えばSFチックな光景をみて私は当たり前ながらに懐かしく感じた。
「それじゃ俺らは報告に行くから、ここらでお別れだな。今後も頑張れよ2人共!」
「じゃあね!」
「ありがとうございました!ゼノさん、エコーさん!」
「助かった」
2人を見送った後、私とアフィンもその場で別れることにした。
「オレはもう休むことにするけど相棒はこれからどうするんだ?」
「私はこっちに来ている筈の仲間を探そうと思う」
「そうか。早く合流できるといいな。じゃ、また会ったらその時はよろしくな、相棒!」
「ああ。アフィンも」
そうしてアフィンと別れると、不意に周囲から人の気配が消えた。
「貴方を待っていた」
突如として背後から聞こえた女性の声。振り向くと、そこには研究者のような出で立ちで、眼鏡を掛けた黒髪の女性がそこに立っていた。
「否、この表現は正確ではない。"貴方達"を待っていた」
「私をこの世界に呼んだのも君なのか、シオン」
私の問いに彼女……シオンは首を横に振る。
「全ては偶然であり必然の事象。貴方達は多くを救う機会を得る。そして貴方は再び大いなる選択を強いられることになる」
「どういう意味だ」
「私は謝罪する。再び貴方を、そして貴方達を輪廻に巻き込んでしまうこと」
「ま、待て!」
手を伸ばした時にはシオンは既に消えており、周囲にはいつの間にか多くの人で溢れかえっていた。そんな中、私はシオンが言っていた言葉の意味を考えていた。
――まさか……!
やがて1つの答えに行きついた私はメディカルセンターの方へと走る。そして、一室の病室の前に辿り着いた私は扉を開け、息を呑んだ。病室の中には何故かSAO時代の装備をしているキリトと、その隣のベッドに銀髪の少女が横たわっていた。
「君は……?」
突如として現れた私にキリトは困惑していた。この姿で会うのは初めてだから当たり前か。だが、そんな事は気にも留められないほどに、私の意識は少女の方へと向けられていた。
「……マトイ」
かつて私が守り、共に戦い、そして殺した。"
今回はここまで。基本的にはエピソードオラクルを基にストーリーを展開していくつもりです。
今後もこれくらいの頻度で投稿になると思いますが、これからもよろしくお願いします。