仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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お待たせしました。第63話です。

前話のキリト視点になります。




第63話 運命の出会い

 

「切り裂き攻撃きます!斬撃に注意してください!」

 

 

俺達は緊急クエストを受け、現在。巨大な蜘蛛のようなダーカー、ダーク・ラグネと対峙している。どうやらこいつがこのクエストの最終目標らしい。

 

 

「パパ!新たなダーカー10体の出現しました!わたしが対応します!」

 

 

「わかった!無茶はするなよユイ!」

 

 

ソードスキルや魔法が使える事には驚いたが、何より1番驚いたのはユイが共に戦えるという事だ。曰くユイは戦闘やクエストを支援する《サポートパートナー》に分類されているらしく、こうして戦闘に同行するのは勿論、お使い系のクエストの手伝いもしてくれるそうだ。

 

 

ユイは初めて使う筈の《ガンスラッシュ》を巧みに使いこなし、出現したダーカー達を蹴散らしていく中、シノンのヘカートが火を吹き、ダーク・ラグネの両足を貫いた。

 

 

「今よキリト!」

 

 

「ああ!」

 

 

姿勢が崩れた隙に、奴の頭部の裏側にある赤いコアに二刀流スキルを放つ。

 

 

コアが破壊され、ダーク・ラグネは黒いモヤになって消滅した。

 

 

『congratulation!』の文字が表示されると同時に、周囲に出現していたダーカー達が撤退し、目の前に帰還用のテレパイプが開く。

 

 

「おっしゃクエストクリア!やったなキリの字!」

 

 

「シノンが奴の脚を崩してくれたお陰だよ。ありがとう」

 

 

「どういたしまして。それにしてもさっきのエネミー……」

 

 

シノンは少し考え込むようにしながら、エネミーが消滅した所を見つめていた。

 

 

「何か気になるのか?」

 

 

「ええ。あのエネミー、前にGGOでクエストのボスに設定されてたのよ。ただ、そのクエストはいつの間にか受注出来なくなってたんだけど」

 

 

「そう言えばGGOって人類が宇宙から戻ってきたっていう設定ありましたよね。もしかしたらこの世界とも何か関わりがあるんじゃないんですか?」

 

 

「そうかもね」

 

 

「まー今は難しいこと考えないでさっさと帰りましょうよ。わたしもうクタクタよ」

 

 

「そうですね。わたしもすごく疲れちゃいました」

 

 

「えー?ボクはまだまだ行けるよ。ねーちゃんは?」

 

 

「わたしも、もう少し探索してみたいかも」

 

 

「あんた達、どんだけ元気なのよ……」

 

 

「あははは……クエストはこれで終わりだし、今日はこの辺で解散してお互い自由行動ってことにしない?」

 

 

和気あいあいと話すみんなの様子を見て、アスナがそう提案した。

 

 

「そうだな。みんなもそれぞれ行きたい所があるだろうし、今日はこの辺で『―――て』え……?」

 

 

「パパ?」

 

 

「どうしたのキリト君?」

 

 

心配する2人をよそに、俺は謎の声が聞こえてきた方に目を向ける。視線の先では、一際目を引く大樹が不思議な光に照らされていた。

 

 

「悪い、ちょっと行ってくる!」

 

 

「ちょ、キリト君⁉︎」

 

 

――行かないと。

 

 

何故そう思ったかは分からなかったが、俺の足は自然と大樹の方に向かって駆け出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大樹の根元まで来ると、頭上で目も開けられないほどの光が差し込み、光の中から白い巫女服のような服装をした銀髪の少女がゆっくりと落ちてきた。

 

 

「……キリト」

 

 

初対面のはずの少女は俺の名前を呼ぶ。

 

 

「わたしを、殺して」

 

 

「なっ⁉︎」

 

 

少女の言葉に驚くのも束の間、光が消えると同時に重力に引っ張られるように落下してきた少女の体を俺は受け止める。

 

 

――この子は一体……。

 

 

「パパー!」

 

 

「キリトくーん!」

 

 

「アスナ、ユイ、わざわざ追って来なくても良かったのに。他のみんなは?」

 

 

「みんなには先に帰って貰ったよ。……その子は?」

 

 

「ああ、さっき空から降ってきて……」

 

 

「空から?」

 

 

「NPCのようですがアークスではないようです」

 

 

俺の言葉にアスナは首を傾げ、ユイは興味深そうに少女を観察している。

 

 

直後、俺は途轍もない威圧感を感じ、咄嗟に抱えていた少女をアスナに渡した次の瞬間、頭上に仮面を被った男(?)が現れ、暗い紫色の刃が特徴的な“2本”の剣を振り下ろしてきた。

 

 

俺はすぐさま防御体勢を取り、男の剣を受け止める。

 

 

「ぐっ……!」

 

 

――重い!俺……いや、もしかしたらペルソナ以上だ!

 

 

「急に攻撃してくるなんて、何なんだあんた!」

 

 

「………」

 

 

俺の質問に仮面の男は無言のまま剣の重みを増していく。

 

 

「パパ!また別の反応が来ます!気をつけて‼︎」

 

 

「ガッ⁉︎」

 

 

ユイが警告した時には既に、もう1人の襲撃者――容姿からして女性。こちらも仮面を付けているが、男の方とは違い目元だけが隠れている――が俺の体に拳を打ちつけていた。

 

 

モロに受けた俺は吹き飛ばされ、何とか受け身を取り、地面との激突は避けることができた。

 

 

「「キリト君!/パパ!」」

 

 

「ありがとう2人とも」

 

 

駆け寄ってきた2人に肩を貸してもらい立ち上がる。

 

 

そこにさっきの2人組が俺たちの前に現れ、男の方がこっちに……正確にはアスナが抱えている少女を指差した。

 

 

「私達は、その娘を殺す者。そしてお前を殺す者」

 

 

男はそう言って再び剣を構えると、地面を蹴り、一気に間合いを詰めてくる。

 

 

――何とか3人だけでも!

 

 

「おらぁああああ‼︎」

 

 

その時、俺と仮面の男の間に割って入ってきたアークスが《ナックル》で仮面の男に殴りかかるものの、ギリギリのところで防がれる。

 

 

「気まぐれでも任務に来てみるもんだな。面白いことになってんじゃねえか。……おい、シーナ!アイツらは何者だ!」

 

 

「ゲッテムハルト様、その方達の情報はアークスのデータベースにありません」

 

 

「何?ってことは、ぶっ殺しても構わねえって事だよな」

 

 

『シーナ』と呼ばれたエメラルドグリーンの髪の女性アークスの言葉に、『ゲッテムハルト』と呼ばれたアークスは嬉々とした顔でそう言った。

 

 

だが戦う気満々の彼とは裏腹に、仮面の2人は空間転移で撤退した。……取り敢えず難は逃れたと考えて良さそうだ。

 

 

「チッ逃げたか」

 

 

ゲッテムハルトは悪態を吐きながら武器をしまうと、俺の方に近づいてきた。

 

 

「お前、弱すぎて何もできねえくせに、他人を守った気でいやがる。ムカついて反吐が出るぜ」

 

 

「なっ⁉︎ちょっとアンタ、初対面にしては失礼じゃないか?」

 

 

「そうよ!今のは聞き捨てならないわ!」

 

 

「ハッ!弱い者同士仲がいいもんだな。ますます反吐が出る…!おい、シーナ!行くぞ!」

 

 

「はい……ゲッテムハルト様」

 

 

俺とアスナの抗議を鼻で笑い、ゲッテムハルト去っていった。シーナさんも彼の後について行く。

 

 

「何なのあの人!失礼にも程があるよ!」

 

 

「………」

 

 

「パパ、ママ、気にしなくていいですよ!パパ達がすごいという事はわたしが1番よく知ってます!」

 

 

「……ありがとうユイ。アスナ、さっきのことはひとまず忘れて、今はこの子をどうにかしよう」

 

 

そうして俺たちは謎の少女を連れてアークスシップへ帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謎の少女を連れて帰還した俺達はオペレーターのNPCに促されるまま、メディカルセンターに連れてこられた。

 

 

「結局、何だったんだろうねこの子」

 

 

「ここなら何か分かると思ったんだけど、まさか何も情報が無いなんてな」

 

 

病室のベッドで静かに寝息を立てている少女は一向に起きる様子はない。

 

 

――どうしてこの子は俺の名前を……それに……、

 

 

『わたしを、殺して』

 

 

――あの言葉は一体どういう意味だったんだ……。

 

 

「あ、」

 

 

俺が考え事をしていると、不意にアスナが声を漏らした。

 

 

「ごめんキリト君、わたしもう落ちないと」

 

 

「え、もうそんな時間か」

 

 

「キリト君はまだ残るの?」

 

 

「ああ、この子の事も気になるし、この世界についてももう少し調べてみたいからな」

 

 

「そっか。でも、あんまり遅くなり過ぎたら駄目だよ。リーファちゃんにもよく言われてるでしょ」

 

 

「善処します……」

 

 

「ふふ、それじゃまたね」

 

 

そう言い残しログアウトしていったアスナ。

 

 

「わたしもパパのマイルームに戻ってますね」

 

 

「ああ」

 

 

アスナに続いてユイも病室から出ていき、俺と少女の2人だけの病室に静寂が訪れる。だがすぐにドタバタと騒がしい足音が病室の外から聞こえ、病室の扉が開いた。

 

 

「君は……?」

 

 

突然現れたアークスは、とても驚いた顔で俺と少女の両方を見る。心なしか彼はペルソナに似ているように感じた。

 

 

 

「……マトイ」

 

 

彼が口にしたのは恐らく少女の名前だろう。じゃあ彼はこの子の知り合いなのか。

 

 

 

「揃ったようだな」

 

 

「ッ⁉誰だ!」

 

 

突然、背後から聞こえた女性の声に俺は飛び退き、背中の剣に手を伸ばす。

 

 

「落ち着けキリト、彼女は敵じゃない」

 

 

「なんで俺の名前を……もしかしてペルソナか⁉」

 

 

「やはり気付いてなかったか。まあこの姿で会うのは初めてだから仕方ないか」

 

 

そう話す彼の顔が、一瞬だけ曇ったように見えた。

 

 

「まずは貴方に感謝を。偶発事象の優位改変が確認され、貴方達とマトイの運命は新たな状況に進行した。……私は謝罪する。曖昧な言葉では貴方には伝わりづらいことを」

 

 

正直何を言っているか良くわからない。そんな俺の心を読み取ったのかのように隣でペルソナが彼女と話し始める。

 

 

「彼女の言葉を理解するには苦労するからな。……シオン、私は良いがキリト達を巻き込むのは止めてくれ。これは私だけの問題の筈だ」

 

 

ペルソナの言葉にシオンと呼ばれた女性?は首を横に振った。

 

 

「既に輪廻は貴方の知りるものから大きく変化しつつある。もはや運命は貴方だけが背負っている訳ではない」

 

 

「待ってくれ。輪廻とか運命とか、さっきから一体何の話をしてるんだ?」

 

 

「その答えはいずれ分かる。貴方達には多くの運命が待ち受けている。今はまだそれだけ知っていればいい」

 

 

そう言い残してシオンは消えた。まるで初めからこの場に居なかったように。

 

 

「相変わらず身勝手なんだな。あんたは……」

 

 

「ペルソナ、君は何か知ってるのか?」

 

 

「………」

 

 

俺の問いに彼は少し困ったように顔をしかめるが、すぐにいつもの仏頂面に戻り、静かに語り始めた。

 

 

「……いつかは話さなければならない。そう思っていた。だが、こんな事態になるまで話を切り出せなかったのはきっと……恐れていたんだろうな私は。今の生活やお前達を失うことを」

 

 

彼は窓から見える星空を見上げた後、俺の方に向き直った。その真剣な眼差しからは固い決意を感じ、思わず俺も息を呑んでしますう。

 

 

「話すとしよう。決して消すことも忘れることも許されない私の罪を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ……最高だよ。まさかこんな手を残していたなんて」

 

 

暗い部屋の中、その男は目の前に表示されているペルソナとキリトのプレイヤーデータを見ながら、不気味な笑みを浮かべていた。

 

 

「どんな悪足掻きを用意しているのか、楽しませてもらうよ……シオン」

 

 

 

 

 

 

 

 





今回はここまで。それではまた次回もよろしくお願いします。
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