仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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お待たせしました。第67話です。



第67話 希望の歌姫、ダーカーを喰らう龍

 

「来たなキリの字、ペルソナ!」

 

 

ある日、突然クラインから「大事な用がある。すぐ来てくれ!」と呼び出され、私達はショップエリアの広間にやって来た。そこにはクラインの他に多くのプレイヤーやアークスが集まっていた。

 

 

「お、ちょうど相棒たちも来たみたいだな」

 

 

そんな声が聞こえたかと思えば、背後に大量のサイリウムを持ったアフィンが立っていた。

 

 

「あー……アフィン、それは?」

 

 

「サイリウムだけど?」

 

 

キリトの問いに当たり前のように答えるアフィン。そんな事を聞いている訳じゃないんだがっと私が言う前にアフィンは私とキリトとクラインに持っているサイリウムを2本ずつ手渡してくる。そんな中、周囲の照明が暗転していく。

 

 

「一応確認するが、これから何が始まるんだ?」

 

 

「え?相棒たち何も聞いてないのか?これからクーナちゃんのライブが始まるんだよ!」

 

 

「クライン……もしかしてこれが『大事な用』じゃないよな?」

 

 

「クーナちゃんのライブ以外に大事な用があるかよ!」

 

 

興奮気味にそう返してくるクラインに私とキリトは互いに溜息を吐く。よほど重要な事なのだろうと思い、準備した私達の時間を返して欲しい。

 

 

「……帰ってもいいか?」

 

 

「気が合うな。私も今そうしようと考えていた所だ」

 

 

「2人とも何言ってるんだよ!これを逃したら生のクーナちゃんを見れる機会なんて2度と無いかもしれないんだぞ!今の内に見といた方が良いって‼」

 

 

「アフィンの言う通りだ。後で『やっぱ見とけば良かった』って後悔しても遅いんだからな!」

 

 

――そうは言うが、私達は後で嫌と言うほど関わる機会があるんだがな……。

 

 

そんな事を考えていると、周囲のクーナファンが私達を睨んでいる事に気が付いた。

 

 

――はあ……これはクライン達に付き合わないとロクな目に遭いそうにないな。

 

 

「分かった。今回だけだぞ」

 

 

「おいペルソナ」

 

 

「他に用事がある訳じゃないだろ?それに……周りを見てみろ」

 

 

私が小声で指摘すると、キリトも周囲のクーナファンからの視線に勘づき、クライン達に付き合う事にした。同時にクーナがステージの上に現れる。

 

 

『みんなー!今日は来てくれてあっりがとー‼』

 

 

オレンジ色のツインテールをなびかせながら登場した彼女に、周囲のファンは歓声を上げる。それは隣の奴等も例外ではなく、

 

 

「うおおおおおおお‼クーナちゃーーーん‼」

 

 

「こっち‼こっちに目線くださーい‼」

 

 

暫くの間……少なくともこのライブの間だけは他人の振りをしていたいと私とキリトは思った。

 

 

 

 

 

 

 

――ライブ中、クーナと何度も目が合ったように感じたのは、恐らく気のせいではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まったく、クラインにも困ったものだ」

 

 

ライブの後、キリト達は意図せず付与されたライブブーストを活かす為にフィールドに出た。正確には、ライブの興奮が収まらないアフィンとクラインがキリトを強制連行したのだが。

 

 

2人の注意がキリトに向いている間に逃げた私はショップエリアの3階まで来ている。

 

 

ここは良い。ショップエリアが見渡せ、気持ちを落ち着かせるには丁度良い場所だ。

 

 

「……~~♪」

 

 

――ん?誰か居るのか?

 

 

「ら~ら~らら~♪……」

 

 

「あっ」

 

 

咄嗟に口を塞いだが最早手遅れだった。

 

 

「えっ?」

 

 

声の主は私の方を振り向くと、とても驚いたように眼を見開いた。

 

 

「あっ、あなた……っ‼」

 

 

そこで今度は彼女の方が口を噤む事になる。

 

 

「えっと……あっ、さっきあたしのライブ見に来てくれた人だよね!」

 

 

そう。彼女は先程までショップエリアの1階でライブを行っていたアイドル、クーナだった。

 

 

「良く覚えてるんだな。あの場には君のファンも結構多かったのに」

 

 

「まあね。それに君のお友達はあたしの大ファンだったみたいだし」

 

 

――あそこまで騒いでいれば嫌でも目に入るか。それよりも、

 

 

「意外だな、アークスのアイドルがこんな所に居るなんて。ファンに見つかったら不味いんじゃないか?」

 

 

意外だったのは本当だ。前世ではこの場所で彼女と会うことは無かったからな。

 

 

「なんか『自分はあなたのファンじゃないです』って言われてるみたいなんだけど?……まあ良いけどね。あと、ファンに見つかる心配はいらないよ。さっきまで歌ってたけど、あなた以外に気付いてる人いなかったでしょ?」

 

 

確かに彼女がファンに見つかってたら、この辺りに彼女のサインを求めるファンの大行列ができてるだろうな。

 

 

「ま、あたしは暫くお忍びで楽しみたいし、この事は内緒でヨロシクね!その代わり、いつでも好きな時にサインを書いてあげる権利をプレゼント!一度だけね!」

 

 

そう強く念を押され、他人には秘密にするという約束をクーナと半ば強制的に交わす事になった。取り敢えずアフィンとクラインには言わないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトside――

 

 

 

「おっしゃああ!これでも喰らぇええ‼」

 

 

威勢のいい声を上げ、浮遊するアンコウのようなダーカーに突っ込んでいくクライン。だが、振り下ろした刀はその硬い皮膚に弾かれ、動けなくなっている所に体当たりを喰らう。

 

 

「ッてぇー!オメェラ気を付けろ!こいつらメッチャ硬いぞ!」

 

 

「分かってる!セイッ‼」

 

 

俺はどこかで見たことある光景だなと思いつつ、クラインが倒し損ねたダーカーを倒す。

 

 

「アフィン、離れてろ!」

 

 

クラインもすぐに立て直し、アフィンに迫る巨大な盾を持ったダーカーのコアを背後から確実に攻撃する。

 

 

「サンキュー、クライン!」

 

 

「まだ死ぬなよ!ここを乗り越えて、またクーナちゃんのライブ見に行こうぜ!」

 

 

「おう!」

 

 

そんな死亡フラグにも聞こえる会話の最中も、ダーカー達は次々と現れる。

 

 

「にしても、この数は流石に切りがないな」

 

 

俺が悪態を吐いていると、突然飛んできたフォトン弾がダーカーに被弾した。

 

 

「まだ生きてるか?ルーキー?」

 

 

フォント弾が飛んできた方向からは、サングラスを掛けたアークスが華麗な動きで二丁拳銃を使いこなし、次々とダーカー達を屠っていく。

 

 

「す、すげぇ……!」

 

 

「お楽しみはこれからってな」

 

 

「タクラさん助けて!助けてくださいよ!」

 

 

次々とダーカーが消滅していく中、俺達から少し離れた場所でニューマンの少年がダーカーから逃げながら、タクラと呼ばれたサングラスのアークスに助けを求めていた。

 

 

「あの、あの人助けた方が良いんじゃないんですか?」

 

 

「まあ見てろ」

 

 

タクラの言う通り暫くその少年を見守っていると、彼は短杖(ウォンド)を振り下ろし、(ゾンデ)系のテクニックで迫りくるダーカー達を一掃した。

 

 

「100年に1人のの逸材ってやつだ。ああ見えて、君らと同期の新人だぜ」

 

 

その時、新たなダーカー達が俺達の周囲に出現する。

 

 

「新手のお着きだ。君達、まだ戦えるかな?」

 

 

「勿論だぜ!だろ?キリの字」

 

 

「ああ!」

 

 

俺達が身構えていると、突然空にひびが入り、白い体と青いコブのような物を持ち、背中から黒い棘が翼のように生えている怪物がひび割れた空間を破壊しながら出てきた。

 

 

その怪物が両手?を目の前に構えると、周囲のダーカー達が次々と手の中に吸い込まれていき、奴は団子のように固めたダーカーに喰らい付く。

 

 

「ダーカーを、喰ってる……!」

 

 

その光景を見て俺達が戦慄していると、

 

 

「暴走龍……実在したのか……‼」

 

 

信じられない物を見るように暴走龍とやらに近づくタクラ。次の瞬間、彼は暴走龍に喰われ、血痕と彼が持っていた二丁拳銃だけがその場に残った。

 

 

一瞬の出来事に固まっている俺達を暴走龍は一瞥し、すぐに自身が破壊しながら出てきた空間へと消えていく。その場は何も起きなかったのように静かになった。

 

 

 

 

「……タクラさん、死んでしまったんですね。人って簡単にいなくなっちゃうんだな」

 

 

タクラの武器を拾い上げながら感じの悪い言い方をするニューマンの少年。これにはアフィンも黙っていられなかったようで、その少年に抗議する。

 

 

「しょうがないじゃないですか。死体も無いのに実感なんて湧くはず無いですよ」

 

 

「それにしたってさ、感じ悪いぜ。一体何様のつもりだよ。そりゃあ、アークスの仕事は命懸けだから、ダーカーと戦って「そうゆうの嫌なんですね」」

 

 

アフィンのの言葉に被せるようにその少年はそう言った。

 

 

「僕は戦いとか争いとか、あんまり好きじゃないんです」

 

 

「だったら何でアークスになったんだよ」

 

 

「成り行きなんですよ。友達の付き合いで選抜を受けたら僕だけが採用されちゃったんです」

 

 

どこかで聞いた事のある話だった。数日前、いつものようにカフェテリアでアスナの料理全制覇に付き合っていた時だ。

 

 

その時、料理を持ってきたウェイトレスが似たような話をしていた。確か名前は……

 

 

「その友達ってウルクか?」

 

 

「そうですけど、何でウルクの事知ってるんですか⁉」

 

 

「そうか、じゃあ君がテオ、テオドールなんだな……ウルクとはカフェテリアで知り合ったんだ。熱意を認めてくれる人がいたお陰でアークスになれるって喜んでいたし、君に絶対追い付いてみせるって言ってた」

 

 

「ウルクが、アークスに……」

 

 

「何だよ、嬉しくねえのか?」

 

 

「だって嫌じゃないですか!彼女がタクラさんみたいな目に遭ったら……」

 

 

クラインの問いにそう答えるテオドールは本当にウルクの事を心配しているようだった。

 

 

「本当は僕、反対だったんです。ウルクがアークスになるの」

 

 

「だったら、自分でウルクにそう伝えてみたらいいんじゃないかな?」

 

 

「僕が…?」

 

 

俺の言葉に少し煮え切らない様子のテオドール。

 

 

「そうですよね。そうしてみます」

 

 

すぐに顔を上げて、彼は迎えのキャンプシップへと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペルソナside――

 

 

 

ナベリウスから帰還したキリト達を出迎えた私は、すぐに彼らの表情から何かあったのを察し、キリトから話を聞いた。

 

 

「タクラは救えなかったか……」

 

 

私がそう言うと、キリトは申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 

 

「ごめん。目の前に居たのに……」

 

 

「……気にするな。と言っても無理だろうが、奴の死は受け入れるしかない。恐らく私でも奴を救う事は出来なかっただろう」

 

 

「君は平気なのか⁉だってここは君の世界で、彼は君の……」

 

 

そこまで言いかけた所でキリトは再びバツの悪い顔をして目を伏せる。

 

 

「ごめん……少し興奮しすぎた」

 

 

「いや、私の方こそすまない。配慮が足りなかった」

 

 

そうだ。いくらSAOでの2年間を生き抜き、剣士として強くてもキリトは普通の人間だ。救えた筈の命が目の前で消えて、思い詰めない訳がない。

 

 

――私とは違う。

 

 

私はキリトの肩にそっと手を置く。今はコレが精一杯だ。

 

 

「大事なのはこの先、貴様がどうするかだ」

 

 

「俺がどうするか?」

 

 

「ああ。タクラを救えなかったのは残念だが『非常警報発令!128番艦テミスにダーカー出現!繰り返します!128番艦テミスにダーカー出現!』……来たか」

 

 

――相変わらず間が悪い。

 

 

「行くぞ!タクラの死を悔いるなら、今ある命を全力で救え。今の私達が出来るのはそれだけだ」

 

 

「今ある命……分かった。行こう、ペルソナ!」

 

 

1つでも多くの命を救うため、私達はテミス行きのキャンプシップへと急いだ。

 

 

 

 

 

 





今回はここまで。

SAO組はキリトを毎話必ず出すとして、他の面々をオラクルでどう立ち回らせるかが今後の課題。1、2話くらいオリジナルの話が出来れば上々かなぁ。

また次回もよろしくお願いします。
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