大変お待たせしました。話の大まかな構想は完成していたのですが、リアルが多忙で、なかなか最後の調整が出来ず、時間を空けて見直すと、納得のいかない場面などがあり、想定以上に時間が掛かってしまいましたが、何とか今年中に投稿することが出来ました。 第68話です。
「ハアッ!」
「セイッ!」
テミスに到着した私とキリトは市街地に溢れかえったダーカー達を次々と屠っていく。
「早く逃げろ!」
民間人のほとんどはダーカーによって虐殺されており、私は唯一生き残っていた少女を取り囲むダーカーを一掃し、その少女を逃がす。
幾ら倒しても一向にダーカーの数が減る気がしない中、突然目の前で起きた爆発により、近くにいたダーカー達が一瞬で消滅した。
「一体何が?」
そう言いつつ周囲を警戒するキリト。私はその隣で近くのビルの屋上からこちらを見下ろす青髪の男のアークスを見つけた。
「天が呼ぶ!地が呼ぶ!俺が呼ぶ‼カッコいいぞっと皆が言う!」
そんな謎の口上と共に屋上から飛び降りた男は私達の前に着地する。
「君達!何か困っていないか!」
――やれやれ。これは面倒なのに捕まったな。
「……彼は?」
「知らん」
「いや、君が知らない訳ないだろ」
「……逆に知っているからこそ余計関わりたくないんだ」
「はっはっはっ!君達、俺が目の前にいるのを忘れてないか⁉」
男はオーバーなリアクションを見せる。……これがコイツにとっては平常運転の筈だから、そこまで気を落としてはいないだろう。
「まあ良い!まずは自己紹介だ!俺は六芒均衡の六、ヒューイだ!」
「六芒均衡って、アークスの中でも伝説的な強さを持ってるって言うあの?」
「伝説かどうかは知らんが、まあそんな所だな!強いのは本当だぞ!」
前世でもこの人のペースには付いて行けなかったのを今でも思い出す。
「私達は別に困ってなどいない」
「いやいや、これから困るぞ。何故ならさっきみたいに……」
ヒューイの言葉を遮るように周囲で連続爆発が起こり、その爆風で飛んできたダガンを彼は片手で軽々と受け止め、流れるような動きで放り投げた。
「いい加減にしないか!クラリスクレイス!」
先程までのお茶らけた雰囲気から一変。そう 責したヒューイの視線の先には、クラリスクレイスと呼ばれた赤髪の少女。彼女の手には色こそ違えど、以前ジグに修復を頼んだ杖と同形状の杖があった。
「何で止めるんだ?」
「アークスたるもの、避難を確認してからでないと攻撃してはならない。もし一般市民が巻き込まれでもしたらどうする⁉」
「だって、クラリッサが教えてくれたんだ!ダーカーがアークスシップを襲ってきたのは10年ぶりだって。ワタシは六芒の六としてクラリッサでダーカーをたっくさんやっつけないといけないんだぞ!」
クラリスクレイスはクラリッサと呼ぶ自身の杖を掲げ、ヒューイに反論する。
「大事の前の小事‼」
「ッ⁉ ダイジノマエノショウジ……ってどういう意味だ⁉」
「俺にも分からん‼」
自分で言っておきながら堂々とそう叫ぶヒューイに対し、キリトも思わず「分からないのかよ!」っとツッコミを入れる。
「だがこれだけは分かるぞ。やるべき事をやってこそのヒーロー。だが無理をするな。出来る最善を尽くすのが正義の味方だ」
「無理をせず、出来る最善を尽くす……」
「うむ!さて、そろそろ行くぞクラリスクレイス!困っている人を救うべくっておい、どこに行く?待つんだクラリスクレイスゥー‼」
話の途中で立ち去るクラリスクレイスを慌てて追いかけるヒューイ。
――相変わらず、真面目なのかふざけてるのか分からない奴だ。
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「やっぱり、ここもダーカーが多いみたいだな」
「……そうだな」
市街地の大通りは特に被害が酷く、辺りには瓦礫や死体が転がっていた。
無論ダーカーの数もその比ではなく、地上にはダガンが、空中にはエルアーダが陣取っている。
「ハアッ!」
キリトが空中のエルアーダに向かって跳びあがった瞬間、突然エルアーダの頭が吹き飛んだ。
「なっ⁉」
驚くのも束の間、エルアーダ達は次々と頭を撃ち抜かれていき、私達の周囲を取り囲んでいたダーカーは瞬く間に全て消滅した。
「凄腕のスナイパーがいるんだな。シノンといい勝負なんじゃないか?」
「それ、絶対彼女の前では言うなよ」
今日はシノンがこちらに来ていないからまだ良かったが、もし彼女がキリトの発言を聞いていたら、キリトは頭を撃ち抜かれていただろうな。
「ん?あれは……ゲッテムハルト?」
話の途中でキリトが何かを見つけ、私も彼の視線の先を見てみると、ゲッテムハルトが建物の屋上を飛び移りながら鳥のようなダーカーを追いかけており、メルフォンシーナがその後ろをついて行っているという構図だ。
――確か奴等はジグの工房を強襲して修繕途中のクラリッサを奪うはずだ。
「奴らを追うぞ」
私がゲッテムハルトを追いかけようとすると、近くに建物が崩壊し、私とキリトは崩れ落ちてくる瓦礫に巻き込まれた。
「……くっ、そう言えば前もこれでアフィンとはぐれたな」
前回はこの崩壊のせいでゲッテムハルト達を見失ったが、今回はまだ視界に捉えている。
「行かせない。たとえこの場で殺してでも「駄目だよ」っ⁉」
コートエッジを杖代わりに立ち上がり、視線の先で街の奥へと向かうゲッテムハルトを追おうとするも、突然背後から声を掛けられ、足が止まる。
「この場で彼を手に掛けも未来は変わらない。それは君自身も分かっている筈だよ」
「ならどうするつもりだ。このまま多くの命が失われるのを指を咥えて見ていろと言うのか⁉」
そう抗議しながら背後にいる人物の方を振り向く。だがその姿は、私が記憶しているものとは異なっていた。
「貴様……」
「この子には悪いけど、暫くの間この体を使わせてもらうよ」
「……私に何をさせるつもりだ」
「取り敢えず、このまま僕について来て欲しいかな。大丈夫、君が抵抗しない限り、この子には何もしないから」
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キリトside――――
「つ……ってて。ペルソナー!無事かー⁉」
俺の体を潰すか潰さないかギリギリのラインで奇跡的に積み重なっている瓦礫をどかし、ついさっきまで隣にいた彼の名前を呼んだ。だが彼からの返事はない。
「……完全にはぐれちゃったみたいだな」
ペルソナの事だ。心配する必要はないだろうけど、またいつ周りの建物が崩れてくるか分からない為、俺はその場から離れて彼を探すことにした。……とは言っても、そこまで遠くに離れたわけじゃない筈だし、すぐに見つかるだろう。
道中で遭遇するダーカーを倒しながら進んでいると、不自然に集まっているダーカーの群れを見つけ、俺は近くの瓦礫に隠れて様子を窺う。
――この数、俺ひとりじゃ流石に分が悪いかもな。
そんな事を考えていると、目の前にいたダーカーの数体がその場から離れていき、奥の方に人影を発見した。
「あいつは……!」
一瞬、ペルソナを見つけたのかと思ったが、その人影が周囲のダーカー達に指示を出しているような様子を見て、俺はすぐに臨戦態勢に入る。人影の正体は、マトイを保護した時に現れた仮面の男だった。
男は俺が出てくるのを待っていたかのように、周囲に残るダーカー達を下がらせる。……よく見ると仮面の額の辺りに切り傷が出来ている。
「お前がダーカー達を操っていたのか」
「……マトイを殺せ」
俺の問いには答えず、代わりに衝撃の言葉を放つ。
「どうして俺に」
「それしかお前に道はない。さもなくば、お前は全てを失うことになる」
「質問に答えろ。どうして俺にマトイの殺させようとするんだ」
「……私の言葉の意味が分かった時、お前は深く後悔することになる。そうなりたくなければ、私の言う事に従え」
「! ま、待てッ!」
立ち去ろうとする男を追いかけようとした直後、紫色の閃光が視界全体に広がり、途轍もない衝撃が俺を襲う。
咄嗟に2本の剣を目の前でクロスさせ、直撃は防いだものの、かなりのHPが削られた。
追撃を警戒して周囲を見渡したが、もうそこに男の姿はなかった。
――逃げた……いや、見逃されたって方が合ってるか。
俺はHPを回復させながら立ち上がる。
――あいつ、どうして俺にマトイを殺すように促したんだ?
勿論、言う通りにするつもりは無いが、気になったのはどうして俺なのかって事だ。
彼が過去のペルソナなら、俺ではなくペルソナにマトイを殺すように促すはずだ。それにほぼ初対面に等しい俺の事を知りすぎている。……ペルソナは自分の知らない事が起きるかもしれないとは言ってたけど。
そんな事を考えている俺の目の前に、一台の装甲車が止まる。
「キリト君!良かった、合流できて」
装甲車から出てきたのは、アスナとゼノとアフィン、そしてウルクだった。
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装甲車で移動中、俺達は互いの情報を共有した。どうやらアスナはログインしてすぐに緊急アナウンスを聞き、ユイと一緒にテミスまで来たのだが、道中、大きな爆発と共に周囲の建物が崩壊し、ユイと逸れてしまい、装甲車に乗るウルク達と合流して今に至るという訳だそうだ。
「本当はユイちゃんを探したかったんだけど、時間がないって言われちゃって。ねえキリト君、ユイちゃんに何かあったらどうしよう」
「ユイならきっと大丈夫さ。この世界でならユイも戦える。今はユイの無事を信じよう」
「……うん。そうだよね、ユイちゃんの事、信じてあげないとね……」
アスナにはそう言い聞かせたが、ユイが心配なのは俺も同じだ。いくらユイも戦えるとは言っても戦闘経験は浅い。いつもはナビゲーションピクシーとして戦闘の補助をしてもらっているが、実際に武器を持って戦うのとはわけが違う。本当は今すぐにでも
「そう言えばゲッテムハルトが鳥型のダーカーを追ってるのを見たんだ」
「ゲッテムハルトが?……鳥型のダーカーか、俺は知らないな」
「またあの人の事だから、俺の獲物だーって追っかけてただけなんじゃないですか?頭まで筋肉の人だからさ」
アフィンはそう言うが、あの時見たペルソナの様子からは、何か大変な事が起きる前触れのような感じがした。
「そう悪く言うな。あれでも俺の先輩だ」
「え、そうなんですか⁉」
「憧れの先輩だったんだ……」
俺やアスナ、アフィンが驚く中、ゼノは過去を懐かしむような顔をしながら話し始めた。
「途轍もなく強くて、ナックルの扱いも超一流。ちょっと乱暴な所はあったけど、頼もしい良い先輩だったんだぜ。メルフォンシーナともいいコンビだった。みんなが羨むくらいの仲でな」
「メルフォンシーナさんと?そんな関係にはとても見えませんでしたけど」
アスナからの疑問の声に少し困った表情になるゼノ。
「そうだな。だが、十年前まではそうだったんだ」
「十年前……」
「ゼノ、十年前に何があったんだ?」
「……それは、」
ゼノが何か言おうとしたタイミングで、装甲車が止まった。
「到着しました」
「分かった。よし!おしゃべりは終わりだ。行くぞ!」
話は気になる所で打ち止めになったが、続きはまた今度ペルソナ辺りにでも聞くことにし、俺とアスナはゼノ達と別れて行動することにした。
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「ハアッ‼ アスナ!そっちは大丈夫か?」
「わたしは大丈夫!キリト君は?」
「俺も大丈夫だ。でもこの数、全然減ってる気がしないな」
そんな悪態を吐きながら俺は攻撃を仕掛けるが、俺の攻撃が当たる寸前で目の前からダーカー達が一斉に消えていく。
「一体何が……?」
『こちら管制。テミス艦内のダーカー反応は全て消失しました。各員は周辺地域の生存者の救助に当たってください』
「反応が全て消失?どうして急に」
「でも取り敢えずこれでクエストクリアって事で良いのかな?」
「そうなのかもな。とにかく言われた通り生存者がいないか探してみよう」
「うん。そうだね」
暫くの間、辺りを巡回していると、瓦礫の陰から1人のニューマンの少年が出てきた。
「君は、確かテオドールだったな。どうして隠れてたんだ?」
「だって怖いじゃないですか!全部転移したって言っても、まだダーカーが残っている可能性あるでしょう?」
「だったら、わたし達と一緒に行動しようよ。あなたも生存者を探してるんでしょ?」
「ええ、まあ」
「じゃあ決まりだね。みんなで一緒に行動した方が安全だし、効率も上がると思うから。良いよね?キリト君」
「もちろん構わないよ。テオ、君もそれで良いか?」
「はい。宜しくお願いします」
こうして俺達3人は周辺地域の捜索を始めた。だが、どれだけ歩いても目に映るのは崩れた瓦礫と、人の形を留めていない死体の山ばかり。
「酷いね……こんな状況だと生き残ってる人はもう……」
「大丈夫、もしかしたらまだどこかに隠れているだけできっと生きてる人は見つからさ」
そう言ったものの、これだけ悲惨な状況を目の当たりにすると、望みは薄いかもしれないと考えてしまう。それでも1人でも生存者がいる可能性を信じ、探索を進めていると、道の真ん中で炎を上げながら横転している装甲車を発見した。
「アスナ達はここで待っててくれ」
嫌な予感がした俺はアスナとテオドールを待機させて、装甲車にゆっくりと近づく。
「っ!」
炎上している装甲車の隣には運転手と思われる人物の焼死体が倒れており、その近くには死体のものだろうネームプレートが落ちていた。その写真を見て俺は戦慄する。
「あの……運転手は大丈夫ですか?」
「駄目だ!来るなテオ‼」
「え?でも誰かいるなら助けないと……」
俺は近づいてくるテオドールを止めようとするが、一歩間に合わず、テオドールは俺の背後の光景を見てしまった。
「ウル……ク?」
「え?」
消えそうな声でテオドールが口にした名前を聞いたアスナは動揺し、言葉を失う。
「嘘だ、ウソダウソダ……ウソだぁーー‼」
幼馴染の死という受け入れがたい現実に直面し、絶叫するテオドール。俺達はそんな彼の悲痛の叫びに呼応するように、激しく燃え上がる炎をただ見ている事しか出来なかった。
今回はここまで。また次回もかなり時間が空くと思いますが、来年もよろしくお願いします。
それでは皆様、よいお年を。