最初の方、PSO2(ゲーム)のネタバレがあります。
ご了承ください。
最近、同じ夢を見る。
あの時の……私がマトイを殺めた時の夢だ。
◇惑星ナベリウス壊世区域:森林エリア
目の前には、私の
『………アッシュ。ごめん、いっぱい迷惑かけちゃった。辛い思い、たくさんさせちゃったね』
武器が体を貫通しているにも関わらず、その痛みに耐えながら彼女は私に語りかけてくる。
『でも、これでいいんだよ。これで、よかったんだよ。わたしと、あなたの本懐は果たされた。【深遠なる闇】は消えて、世界は平和になる』
–––君が居ない世界など、何の意味もない。
私は呟くように言うが、過去の存在である彼女に何を言っても、今の私の声は届きはしない。
『何も、悲しいことはない。もう、楽しいことしか起こらない』
–––君が居なければ、喜びも幸せも、全て悲しみや絶望へと変わってしまう。
『だからあなたにお願いがあるの』
そう言いながらマトイは私の方へと歩み寄る。
『………泣かないで、笑ってて、』
『マトイ……!』
さっきまで唖然としていた過去の私も、ついに声を出してマトイを抱きしめんと両手を広げ、彼女に近づいた。
だが遅かった。
『あ……あぁ……』
私が彼女に触れる前にマトイはこの世から消えた。先刻まで彼女の胸に刺さっていた武器が、ガシャン、カランっと、無機質な音を立てながら落ちるのを見て、マトイが死んだことを理解した私は一人落胆した。
▼
いつもそこで目が覚める。
あの後、マトイを救えなかった絶望や悲しみ。そして己の無力さを痛感した私は、ダークファルスと化した。
この
–––あの夢は一体何なのだろう?私の過去に対する後悔の表れだろうか?それとも別の何か……。
私はそこまで考えるが、すぐに考えを放棄し、もう過ぎた事だと切り捨てる。
あの夢を見た日はどうも攻略する気が失せる為、私は街で適当に一日を潰すことにした。
なに、最近ではあのアスナが血盟騎士団の副団長…別名「攻略の鬼」として攻略組を引っ張っている。放っておいても勝手に攻略は進んでいくだろう。
▼
–––暗くなってきたな……。
また明日から迷宮区に潜るために、街で必要な物を買っていたら、いつの間にか夕方になっていた。
「きゃあああああ‼︎」
「っ‼︎」
そろそろ宿に戻って明日の準備をしようと思っていた矢先、女性の悲鳴が聞こえ、私は悲鳴が上がった場所へ急行する。
広場に着いた私は辺りを見渡すと、胸を貫かれ、首にロープを巻き付けられて、教会の二階から吊り下げられている男の姿があった。
私が駆けつけた直後、男の体はポリゴン片となって消滅した。
「みんな、デュエルのウィナー表示を探せ!」
教会の近く、男が消えた場所のほぼ真下に、何故かいるキリトが広場にいる全員に呼び掛ける。
「キリト!」
「ペルソナ⁉︎なんで君がこんな所に……いや、それより君もウィナー表示を探してくれ!」
「わかった」
圏内ではプレイヤーのHPが減る事はまずない。だが、例外が存在する。それはプレイヤー同士が任意で行う対人戦闘システム【デュエル】だ。
デュエルにはいくつかの種類があるが、基本的に大きく二つの種類に分かれている。一つは相手のHPをイエローゾーンまで削ると勝利となる『初撃決着モード』。そしてもう一つが、相手のHPを0にすれば勝利となる『完全決着モード』だ。
デュエルは、合法的に行われるプレイヤー同士の決闘。言わば『対戦プレイ』である。その為、相手のHPをどれだけ削ろうともオレンジやレッドなどの犯罪者カーソルになる事はない。
「………30秒、経過した」
デュエルのウィナー表示は決着がついて30秒間は対戦したプレイヤーとの間に表れるのだが、今回はどこにも表示されていなかった。
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その後、私とキリトはアスナと合流し、殺された《カインズ》という男の友人で《ヨルコ》と名乗るプレイヤーから話を聞いた。
彼女の話によれば、殺されたカインズ氏とは前いたギルドの時からの付き合いで、今日は食事をしにこの街へ来ていたらしい。
しかし、広場で彼とはぐれ、周りを見渡しているとカインズ氏が教会の窓から槍が刺さった状態で吊り下げられていたとのことだ。
カインズ氏が誰かに狙われる理由を知らないかとキリトが尋ねるも、ヨルコさんは首を横に振るだけ。その後も、いくつかの質問に答えてもらい、彼女を宿まで送り届けた。
「さて、どうする?」
「手持ちの情報を検証しましょう。あのスピアの出所がわかれば、それから犯人を追えるかもしれない」
「だが、そうなると鑑定スキルを持つ者が必要となるが、貴様ら、あてはあるのか?」
「ええ、私の友達で武器屋やってる子が……ってそんな事より、私はさっきからその人がここに居る理由を知りたいのだけれど」
アスナがこちらに指を差してきた。
「偶然通りかかった。で、さっきの話の続きだが、武器屋を営んでいる友人がどうかしたか?」
「鑑定スキルを持ってるけど、今は1番忙しい時間だし、すぐには頼めないかなぁ……」
「そっか。じゃあ、俺の知り合いの雑貨屋にでも頼むか」
キリトの提案で、その知り合いの元へ向かう事に。
▼
第50層《アルゲード》
この街の裏通りにキリトの言う雑貨屋はあった。
「よお、キリトか」
「安く仕入れて安く提供するのが、うちのモットーなんでね」
「後半は疑わしいもんだな」
「何を人聞きの悪いことを」
店主の声に聞き覚えがあり、店内に入ると、そこに居たのはあのエギルだった。
「まさかエギルの事だったとはな」
「よお、ペルソナ!フロアボス以来か?」
エギルとは第1層からの縁で、ボス攻略の時にはいつもパーティを組んでもらっている。30層以降、かなり強いボスが出る為、フロアボス攻略の際には、いつも血盟騎士団の団長から直々に声が掛かるのだ。
私の後にアスナが入ってくると、エギルは驚いた顔をして、キリトを掴んで反対側を向いた。
「ど、どうしたキリト!ソロのお前が、ペルソナならまだしも、アスナと一緒とは、どう言う事だ?仲悪かったんじゃねえのか?なんか言えって!」
「おい、“私なら”とは一体どう言う意味だ」
エギルは動揺して、私の言葉は耳に入っておらず、アスナはそんなエギルを見て苦笑している。
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エギルが落ち着きを取り戻した所で、私はさっき起こった出来事をエギルに話した。
「圏内でHPが0に?デュエルじゃないのか?」
「ウィナー表示を発見出来なかった」
「直前までヨルコさんと歩いていたなら、睡眠PKの線も無いしね」
「突発的デュエルにしては、やり口が複雑すぎる。事前に計画されたPKなのは確実と思っていい。そこで、こいつだ……」
討論を重ねた私たちは、テーブルの上に置いてある槍を見つめる。エギルは槍を手に持ち、鑑定し始める。
鑑定の結果、この槍はプレイヤーメイドだと言うことがわかった。作成者は《グリムロック》というプレイヤー。聞いた事のない名だ。
武器の固有名は【ギルティソーン】《罪の茨》
けったいな名前をしているが、武器自体にこれといって変わった事は何も無かったそうだ。
「罪の茨……」
そこで何を思ったのか、キリトはエギルに渡された槍を自身の手に突き刺そうと振り下ろそうとする。が、それにいち早く気付いたアスナに止められた。
証拠品の槍はエギルが預かることでその日は解散。
明日はまたヨルコさんに話を聞きに行く。
しかしこの事件、何か引っかかる。