仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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明けましておめでとうございます。……と言うには時間が経ち過ぎていますが、今年初の投稿なので一応言っておきます。

元日から大変な事が起きている年ですが、今年も頑張って投稿していこうと思います。

それでは第69話どうぞ。


第69話 破滅の足音

 

 

「それにしても、この人数で攻略ってのも久しぶりね」

 

 

「そうですね。それに今回はペルソナさんやアフィンさん達も一緒なので心強いですね」

 

 

「あはは……相棒に比べたら頼りないかもだけど、オレにも出来る限り頑張らせてもらうよ」

 

 

突然だが、私達はナベリウスで新しく発見された《遺跡エリア》の探索に来ている。

 

 

先日のダーカーによるテミス強襲から数日の事だ。突然、ナベリウスの凍土エリアの真ん中にこの遺跡エリアが現れ、我々プレイヤーにもフィールドが開放された。

 

 

――どうやら、私の記憶とは随分と流れが違うようだな。

 

 

私の記憶が正しければ、ダーカー強襲の直後にゲッテムハルトがマトイを攫い、この遺跡エリアの最深部に封印されているダークファルス【巨躯】(エルダー)を解放しようとし、私とその場に居合わせたゼノとエコー、そしてその時コンタクトを取ってきた六芒均衡の三、カスラと共にそれを阻止しようとする流れだった。今回のように一般アークス達に遺跡エリアの探索許可が出されるのはその後の話になる筈なんだが。

 

 

――クラリッサが奪われた以上、どちらが先でも些細な問題ではないが。

 

 

先日、ジグから預けていた杖…白錫クラリッサが何者かに盗まれたという報告を受けた。ジグ曰く、ダーカー強襲の騒ぎに乗じて工房に侵入されたらしい。自身は工房から連れ出されており、監視カメラは全て破壊されていて、犯人が分からないとの事だ。勿論、私には誰が犯人か分かっている。明確な証拠がない以上、言い逃れられる恐れがある為、直接問いただせないのが歯痒い所ではあるが。

 

 

「だけど良かったのか?俺達まで一緒に来ちまって」

 

 

「まあ良いじゃないゼノ。折角誘われたんだからお言葉に甘えちゃいましょうよ。回復や支援はあたしに任せて、結構得意だから」

 

 

「ようやくウチにもまともな回復役が……」

 

 

誰が発したのか分からないが、その呟きにドッと皆が吹き出した。

 

 

「確かに、アスナも姉ちゃんも途中からガンガン前に出ちゃうから、結局ヒーラー無しで戦う事の方が多いよね」

 

 

「あら?そんな事言うユウキにはもう回復魔法かけてあげない」

 

 

「ええ⁉アスナーそれは勘弁してよー!」

 

 

「まあユウは支援が無くても全然余裕だから大丈夫よね?」

 

 

「姉ちゃんまで⁉2人共ごめんってー!」

 

 

懇願するように2人に飛びつくユウキ。そんなやり取りを見て思わず笑みがこぼれる。

 

 

まだまだ不安要素はあるが、今はまだそこまで深刻に考える必要は無いのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「突進が来るぞ!お前ら、奴の進路から離れろ!」

 

 

ゼノが叫んだ直後、黒い巨体が私達のすぐ横を恐ろしい速度で通り過ぎて行く。

 

 

――ゼッシュレイダ……相変わらずあの突進攻撃は厄介だな。

 

 

フィールドの探索を進めていくうちに、私達は少し開けた場所で遭遇したゼッシュレイダと戦闘に入った。

 

 

ゼッシュレイダはエルダーの眷属の大型ダーカーの一種。先程のようなその巨体に見合わない速度の突進攻撃も厄介ではあるが、何よりも特徴的なのが、

 

 

「クッソー!やっぱコイツも滅茶苦茶硬いぞ!」

 

 

クラインの悪態通り硬いという事だ。ゼッシュレイダは巨大な亀のような姿をしており、背中の甲羅は恐ろしいほど硬く攻撃を全く通さない。しかも突進攻撃の後は決まって弱点のコアを持つ頭を甲羅の中に隠す。一瞬だけ頭を出す時があり、その時に頭部のコアに一定以上のダメージを与えられれば奴が引っ繰り返り、攻撃のチャンスになるのだが、奴は頭を出すと同時に火炎ブレスをしてくるため迂闊に近接攻撃を行うことが出来ない。

 

 

だが、裏を返せば近づかずにコアの部分へ強力な攻撃を与えれば良いのだ。

 

 

「今だ、シノン!」

 

 

キリトが合図を出すと、腹まで響く爆音と共に一陣の閃光がゼッシュレイダの頭部を貫いた。

 

 

頭部のコアが破壊され、引っ繰り返るゼッシュレイダ。露見した胸部のコアに一斉攻撃を仕掛け、ゼッシュレイダは消滅した。

 

 

「やったなお前さん方。最後の狙撃も中々の物だったぜ」

 

 

「結局、オレあんまり活躍出来なかったな……」

 

 

「そんなこと無いさ。さっきの奴は倒せたのは紛れもなくアフィン達が居てくれたお陰だよ。きっと俺達だけじゃここまで早く倒せることは出来なかっただろうさ」

 

 

「そうだぞアフィン。最初会った時に比べたらお前さんはかなり強くなってる。もうすっかり一人前のアークスだ」

 

 

「!……ありがとうございますゼノさん!」

 

 

ゼノからの賞賛の言葉にアフィンはとても嬉しそうに礼をする。

 

 

「さてと、ここら一帯のデータは集まったし、俺達は上に今回の調査報告をしに戻るが、お前さん達はどうする?」

 

 

「わたし達も戻ります。出発前にマトイちゃんから『新しい場所について話をして欲しい』ってお願いされてたので」

 

 

「私は少し残って探索を続けようと思う。この先がどうなってるのか気になるからな」

 

 

「じゃあ俺もペルソナと一緒に探索に行こうかな」

 

 

ゼノからの問いにアスナ、私、キリトの順にそう答え、今日はそこで解散という事になった。

 

 

 

 

 

 

「……で、どうして2人まで?」

 

 

「何?わたしが一緒だと何か問題ある?」

 

 

「わたしは少しでも皆さんの役に立てるようになりたいので、パパ達の動きから勉強させて貰おうと思って付いてきました。あ、ちゃんとママからも許可が出てるので大丈夫です!」

 

 

「そ、そうか。別に断る理由もないし良いけど、無茶だけはしないでくれよ」

 

 

「アンタにだけは言われたくないわよ」

 

 

シノンからの反論に小さくなるキリト。後ろで繰り広げられているそんなやり取りを聞きながら、私は記憶と目の前に見える巨大な柱を目印に、このエリアの最奥へと進む。幸いなことに道中現れるエネミーは小型のダーカーがほとんどで、苦労せずに遺跡エリアの最深部、墓標まで辿り着くことが出来た。

 

 

「どうやら、先客がいるようだ」

 

 

墓標の前には大柄の男が立っていた。その男は私達の足音に気付き、こちらに振り向く。

 

 

「あ?オマエはあの時の……」

 

 

その男…ゲッテムハルトはキリトを見て面白そうに笑い出した。

 

 

「ほぉ?暫く見ねぇうちに随分と美味そうになったじゃねえか。それに横のお前」

 

 

ゲッテムハルトは眼だけ動かし、ギロリと私の方を睨み付ける。

 

 

「お前も中々良い目をしてるな。色んな地獄を見てきた。そんな目をしている。くくく……面白ェな。オマエらも導かれたって訳だ」

 

 

「導かれた?」

 

 

ゲッテムハルトの言葉にキリトは首を傾げながら聞き返す。

 

 

「とぼけるなよ。気付いてるだろ?この場に漂う、どす黒い感覚に。まあ、本当に気付いてないならそれでも構わねえ。オマエらみたいに真っ当な仲良しこよしはハナっから願い下げだ!さっさと帰れ!そして腑抜け同士で馴れ合ってろ!オマエらには、それがお似合いだ!」

 

 

「アンタ、さっきから「よせ」なんで…ッ⁉」

 

 

私は今にもゲッテムハルトに突っ掛かろうとするシノンを制止する。彼女が私に非難しようとしたが、彼女は突然声を詰まらせる。

 

 

「帰るぞ」

 

 

「ペルソナ、でも……」

 

 

「私が探索を続けたのは何故このエリアが突然現れたのか、最奥まで進めば何か分かるかと思ったからだ。だがここにあるのは巨大な柱と墓標だけだ。私が求めるモノはここには無かった。だとしたら、もうこの場所に用はない。……邪魔したな」

 

 

ストレージから取り出した簡易テレパイプにキリト達を押し込み、私もその後に続く。キャンプシップへと転送される直前、ゲッテムハルトが見せた不敵な笑みを私は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シノンside――――

 

 

 

 

あれは本当にわたしの知る彼だったのだろうか?あの時わたしを止めた彼はまるで別人のようで、あの時感じた殺気は人間が出していい物なのか?兎に角その殺気に当てられたわたしは暫くの間声が出せなくなっていた。

 

 

「悪いな。あのままだと間違いなくお前達はあいつと衝突していた。それは避けたかった」

 

 

キリトの後に現れた彼は、いつも通りの彼だった。

 

 

「それは良いんだけど、君は良かったのか?だってあいつは」

 

 

「今はその事は気にするな。それに今は何を言っても無駄だろうからな」

 

 

何かを気にしてるようなキリトを彼がそう諭す。わたしの目の前で意味が分からない会話をしている2人に苛立ちを覚えるも、さっきの事もあり、何とか絞り出せた声でわたしは2人に問い掛ける。

 

 

「アンタ達、さっきから何の話をしてるのよ?」

 

 

「「……」」

 

 

わたしの質問に対し2人して口籠る。

 

 

「もしかして、最近アンタ達の様子が変なことと関係してるの?」

 

 

わたしが問い詰めると2人は揃ってバツの悪そうな顔をしてわたしから目を逸らした。全くコイツらは、こういう所は本当にそっくりだ。

 

 

「ねえ、何か隠してる事があるなら――ドオオォオン!――きゃっ⁉」

 

 

更に問い詰めようとしたその時、急にわたし達の乗る舟が大きく揺れた。警報が鳴り響く。

 

 

「な、何だ⁉」

 

 

『パパ!大変です。突然、このエリア一帯の空域に強力な重力場が……!』

 

 

「ユイ⁉ユイ!どうしたんだ⁉」

 

 

操縦室にいるユイちゃんから通信が入るも揺れが大きくなり、強制遮断される。

 

 

「クソッ!」

 

 

険しい表情で操縦室へと駆けるキリト。わたし達も急いで後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姿勢制御、重力制御……ダメ、このままじゃ!」

 

 

「ユイ!」

 

 

「パパ!」

 

 

操縦室に入ると、ユイちゃんが慌てて色んな制御盤を操作していた。わたし達は彼女の傍に寄って様子を見守るが、状況は悪化し続ける一方で、警報がより一層大きくなっているように感じる。

 

 

「まずいな。このままじゃ墜落するぞ!」

 

 

「私に任せろ。キリト、お前はユイちゃんの傍に」

 

 

焦るキリトとは対称的に、彼は冷静に制御盤の操作を始める。

 

 

「何とかできるのか⁉」

 

 

「いや、この重力場からの脱出は不可能だ。どうにかして不時着させる。衝撃に備えろ‼」

 

 

彼の言う通りに近くの機器を掴んだ直後、今まで以上に激しい揺れがわたし達を襲う。

 

 

「っ!まずい!」

 

 

「えっ?」

 

 

珍しく彼が焦った声を出したと思ったら、彼に押し倒された所でわたしの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペルソナside――――

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……流石にさっきは焦ったな」

 

 

遺跡、正確には"この場に墜落したキャンプシップの残骸”が目の前まで迫っていたとは言え、キリトを突き飛ばし、シノンに覆い被さったのは配慮が足りなかったか。

 

 

「キリト達は、取り敢えず無事のようだな。グッ⁉……っ」

 

 

少し離れた所まで飛んだキリトとユイちゃんを見て一息つくと、突如として強烈な痛みが全身を襲い、私はその場に倒れ込みそうになるが、膝を曲げて踏みとどまる。その勢いで私の額から熱い何かが赤い塊となって地面に落ちた。私の血だ。

 

 

「さっき打っていたのか。応急処置ではあるが、この程度なら」

 

 

モノメイトを飲み干すと全身の痛みが少し和らぎ、額からの出血も止まった。私はシノンをキリト達と同じ所に運び、先程ゲッテムハルトと出会った墓標を目指して進みながら、緊急回線を使ってゼノを呼び出す。

 

 

「私だゼノ、聞こえるか?」

 

 

『おお。どうした、緊急回線なんて使ってよ?』

 

 

「キャンプシップが墜落して戻れなくなった。今から送る座標まで救援に来て欲しい」

 

 

『分かった。すぐに向かうからそこで待ってろよ!』

 

 

連絡を取り合っている中、大きな地響きが起こる。見上げるとナベリウスの空全体が紫色に染まっている。更に私の行く手を阻むようにエルダーの眷属たちが立ち塞がる。エルダー復活が近づいている証拠だ。

 

 

――目視でも50体以上はいるか。

 

 

「悪いが悠長に待ってられなさそうだ。キリト達を救助したらそのまま避難してくれ」

 

 

『お、おい!』

 

 

通信を切り、コートエッジを引き抜いた私はダーカーの群れと対峙する。出来れば万全の状態で挑みたい所だったが、今回は状況が状況だ、我が儘は言えない。

 

 

「ッ弱音を吐いている余裕もない、な!」

 

 

攻撃を受けつつも確実に一体ずつコアを潰しながら進む。だが、ダーカー達は際限なく溢れ出てくる。

 

 

いくら私が奴等の弱点や攻撃パターンを熟知しているとは言え、ここまで数を相手にするのは多勢に無勢もいい所だ。

 

 

「……どうしても私の邪魔をしたいらしいな。まあ、当たり前か」

 

 

無尽蔵に出現するダーカーとの戦闘。昼間の攻略から連戦という事もあり、私は徐々に集中力が切れ、不覚にも後ろを取られた。

 

 

――しまった!

 

 

背後から迫る一つ目が特徴のキュクロナーダの存在に気付いた時にはもう遅く、奴は棍棒の形をした右腕を私目掛けて振り下ろす。

 

 

「ハァ!」

 

 

正に間一髪。棍棒が私の目の前で止まり、キュクロナーダは消滅し、更に上空から降り注いだ無数の(ゾンデ)系テクニックにより、他のダーカーも一匹残らず消滅した。

 

 

「おや?突然ダーカー反応が増加したので嫌な予感がして来てみたのですが、危ない所でしたね」

 

 

「あんた……」

 

 

私の前に現れたニューマンの男。白と黒を基調とし、所々に緑色のラインが入った戦闘服に、髪色は緑でサングラスのような眼鏡を掛けている。出来る事なら1番関わりたくない人物が目の前にいた。

 

 

「失礼、自己紹介がまだでしたね。とは言っても私はただのアークスですので、特にこれと言って紹介する事は無いんですけどね」

 

 

――ただのアークスにこんな芸当はできないだろ。

 

 

「おいおい冗談だろ?あんたがただのアークスだったら、俺達はどうなっちまうんだ?」

 

 

そう言って私と男の会話に割って入ってきたのはゼノ。同時に、ゼノと一緒にやって来たエコーが回復テクニックを私に掛けて傷を癒す。

 

 

「なあ、六芒均衡の三、カスラさんよ」

 

 

「私のことをご存知なら話は早いですね。六芒均衡の1人として、早急に退くことを推奨します。脅しではなく、本気で」

 

 

カスラは稀に見せる本気の眼で私達を止めようと説得する。私とて危険なのは承知の上だ。だからと言ってここまで来て引き下がる訳にもいかない。そんな私の考えを知ってか知らずか、カスラはすぐ不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「……と言って、1人で進むというのが六芒均衡として正しい対処だとは思うんですけどね。こうしてお会いできたのも何かの縁。よろしければ、ご同行願えませんか?」

 

 

「勿論だ。私も仲間達を危険な目に遭わせた原因を知りたいからな」

 

 

「しかし良いのか?六芒均衡サンの足手まといになるかもしれないぜ?」

 

 

「はは……大した事ありませんよ。私は情報収集専門。戦いは不得意です。正直、1人で進むのは不安なだけです。ですから、どうか(かしず)くことなく、いちアークスとして応対してください」

 

 

先程あれだけの数のダーカーを一掃しておきながら何をっと心の中で思ったが、再度地響きが発生し、時間が無いと判断した私達は、カスラと共に遺跡エリアの最奥を目指し歩を進めた。

 

 

 

 

 

 





今回はここまで。書いてると「もっと、もっと」と書きたい欲求が溢れ出てくるので中々止めどころが掴めない。決して悪い事ではない筈ですが、それが原因で皆さまを待てせてしまっているので、自分の欠点でもあると思います。

次回もまた時間が空くと思いますが、なるべく早く投稿できるように頑張ります。
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