仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。←1か月遅れ

今年初の投稿です。第80話どうぞ。



第80話 海底調査

 

シャオ達と出会い、エルダー復活の時間まで戻ってゼノを救い、ログアウトした後にジョニー・ブラックこと金本敦が逮捕された事を菊岡から聞かされた日から数日。

 

 

――自分で言ってて意味が分からないほど濃い一日だったな。

 

 

ジョニーの事は皆には話したが、ジョニーが使った力やPoHの事はキリトにしか話していない。理由は色々あるが、一番は皆に余計な心配を掛けたくないからだ。

 

 

一応NPCが復活しないという今までのVRMMOにない要素があるものの、皆は今「ゲーム」を楽しんでいる。折角新たな世界を楽しんでいる中、皆を不安にさせるような事はしたくない。

 

 

そして今、私達が何をしているのかと言うと……

 

 

「まさか、またキャンプシップを盗むことになるなんて思わなかったよ」

 

 

「シャオが裏で手を回しているお陰だがな」

 

 

キャンプシップを盗んでキリトと共にウォパルへと向かっている。

 

 

――何故、私達がこんな事をしているのかと言うと……。

 

 

 

 

 

数分前――

 

 

オラクルに戻ってきたと同時に非通知の通信が入った。いつもならこんな怪しい通信は絶対に出ないのだが、タイミング的に誰からなのかは分かっているので応答すると、予想通りサラからだった。

 

 

「そろそろ連絡が来る頃だろうと思っていた。今日はどんな任務だ?」

 

 

『今日は護衛を頼みたいの。23番ゲートのキャンプシップを使って。ウォパルで落ち合いましょう。キリトにも連絡しておくから合流してから来てちょうだい』

 

 

「分かった。念のため聞いておくが、私達に付いている監視は解いてあるんだよな?」

 

 

『ええ。っていうか、そんな事まで知ってるのね。ルーサー側じゃなくて本当に安心したわ』

 

 

「奴に加担など死んでも御免だ」

 

 

『ブッ!ああ、ごめんなさい。確かにあんな奴の言いなりになるくらいだったら死んだ方がマシよね。それじゃあさっき言った通りにお願いね。待ってるから』

 

 

顔をしかめながら答える私に対し、吹き出しながら謝罪するサラ。別に怒る気も沸かないので、そのまま通信を切り、サラが言っていたキャンプシップでキリトと合流し今に至る。

 

 

現在――

 

 

「それにしても、シャオがこんな事が出来るなら、俺や君の手を借りる必要なんてあるのか?」

 

 

「貴様の言う通り、ルーサーの監視から隠れて探りを入れるならサラを動かすだけで十分だ」

 

 

――それでも奴の眼を完全に欺けはしなかったが。

 

 

「だがシオンの目的はより良い未来へと世界を導くこと。必要に応じて過去を改変しなければならない。だから、シオンやシャオの力で時間を超えられる私と貴様が選ばれた」

 

 

「でも何で俺まで?」

 

 

「それはシオンかシャオしか分からない。本人から直接聞くほかないだろう。……着いたぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄いな。まさか海の中にこんな場所があったなんて」

 

 

ウォパルに降り立った私とキリトは合流したサラに連れられウォパルの海底エリアの探索を始めた。ALOにも海底神殿という似た場所が存在するが、その場所とは違う雰囲気を感じる。

 

 

「最近、この星で研究施設がいくつか発見されたんだけど、アークスの調査が入る前に次々に破壊されてるの」

 

 

「それってもしかして……」

 

 

「お察しの通り、ルーサーの仕業よ。あたし達は施設が破壊される前に何としてもデータを回収したいの」

 

 

サラの説明を聞きながら暫く歩いていると、前方から頭部に殻が付いた生物が近づいてきた。

 

 

「お、アンタ等か!こんな所で何しとるんや?」

 

 

「カブラカンじゃないか!君こそ何でこんな所に」

 

 

謎の生物の正体はカブラカン。何故か言葉を介すことが出来る不思議な原生生物だ。

 

 

出会ったのは、ちょうどシャオとの一件があった翌日。再びウォパルに降り立った私達が探索をしていると、地面から突然姿を現し、今のような訛りのある喋り方で私達に話し掛けてきたのだ。

 

 

「今日はあのおっかないねーちゃん達と一緒じゃないんか。っにしても、また別のねーちゃんを連れとるなんて、アンタ等も隅におけんなぁ」

 

 

カブラカンの言う「おっかないねーちゃん達」というのは、アスナとラン、そしてエコーの事だ。カブラカンの見た目がエネミーと酷似しているという理由から、出会い頭に三人から攻撃を受けた事を未だに根に持っているのだろう。

 

 

「ねえ、あれこの星の原住民なのよね?何で会話が成立してるの?」

 

 

「私にも分からない。何せ初め会った時からあんな感じだったからな」

 

 

「初めから⁉未開の惑星で翻訳なしで意思疎通が可能な生物がいるなんて……いや、アイツが介入していると考えれば不思議じゃない。この辺りの施設を次々に破壊してるのも納得だわ」

 

 

サラは少ない情報からカブラカンの謎やルーサーの行動の理由を言い当ててみせた。今までシャオと行動を共にしていただけあって、流石の推理力だ。

 

 

「研究施設?ああ、あっちにずーっと進んだ方にあるデカブツの事やな」

 

 

「知ってるのか?」

 

 

「オレはこっちにろくに来てないけど道はなーんとなくわかるんや。ここ生まれの特徴なんかな?先に行くならごっつ強いエネミーがおったりするから気ぃ付けや。最近ここら辺も物騒やからな。んじゃ、オレはこれで」

 

 

サラの推理力に関心している間にキリトがカブラカンと話を済ませており、カブラカンは研究施設の場所まで教えてから立ち去って行った。

 

 

カブラカンから教えられた道を進んでいくと、滝が流れる場所の裏にいくつもの丸いカプセルが陳列している施設に到着した。

 

 

「なんだこれ……ッ⁉」

 

 

カプセルに近づき、いくつか割れたカプセルの中身を見たキリトは戦慄する。

 

 

カプセルの中に入っていたのは、人魚のような生物の朽ち果てた姿だった。

 

 

「ルーサーが破棄した実験体よ。アイツはこうやって自分の興味が赴くままに命を弄んでいるの。さっきのカブラカンって原住民もアイツの研究の産物でしょうね」

 

 

「それって、虚空機関(ヴォイド)っていう研究機関と関係があるのか?」

 

 

「その名を知ってるなら、説明は不要ね」

 

 

キリトの問いにサラはそう返し、施設の奥に進む。やがて、何の変哲もない石柱が途中で折れたようなオブジェクトの前に立ち手をかざす。すると石柱は静かに輝き、幾つものウインドウが表示され、サラはそれを慣れた手つきで操作し始める。

 

 

「シャオ、転送を始めるわ」

 

 

『うん。慎重に頼むよ』

 

 

サラがデータを捜索している間、周囲を警戒している私とキリトにシャオから連絡が入る。

 

 

『キリト協力感謝するよ。ペルソナも。これで何か発見できれば、ルーサーへの対抗手段を得られるかもしれない』

 

 

シャオの言葉に「今度こそルーサーに裏を掻かれるなよ」っと眼で訴える。そんな私の視線に気付いてか気付かずしてか、仏頂面を貫いている。

 

 

「ずっと気になっていたんだが、ルーサーって一体何者なんだ?実際に会って只者じゃないってのは分かるんだけど……」

 

 

『……40年前、アークスは【巨躯】(エルダー)と戦い、崩壊寸前まで追い込まれた。それをある条件と引き換えに立て直したのがルーサーなんだ』

 

 

「ある条件?」

 

 

『ダークファルスを倒した《三英雄》の絶対服従。その三英雄というのが、レギアス、カスラ、クラリスクレイスさ。彼らは今もルーサーの支配下にある』

 

 

「レギアスって、アークスの総督じゃないか⁉」

 

 

驚愕するキリトに対し、シャオは静かに落ち着いた様子で話を続ける。

 

 

『そして言葉通りアークスを立て直したルーサーは、実質的な最高責任者となった。総督のレギアスも、ルーサーには背くことは出来ない。だけどそれは全て、シオンを手に入れる為の布石だったんだ』

 

 

「ルーサーがそこまでしてシオンを手に入れたがっている理由は何なんだ?」

 

 

『そうだね。そろそろ君にもちゃんと知ってもらうべきかな。シオンはこの宇宙の現在、過去、未来の全ての記憶を持っている。それは全知と言っていい』

 

 

「宇宙の全ての記憶を持つなんて。そんな事あり得るのか?」

 

 

「勿論そんな事、人間には不可能だ。だが彼女は人間じゃない」

 

 

『ペルソナの言う通り、シオンは人じゃない。彼女の正体はオラクル船団の中心《マザーシップ》の核。コアそのものなんだ』

 

 

マザーシップは船団全体の機能の維持を担っている。オラクル船団が広大な宇宙を旅する為に必要な命綱ともいえる存在だ。その核たるシオンがルーサーの手に堕ちるという事は、オラクル船団の全機能の停止を意味している。そうなれば、宇宙はダークファルスに対抗する術を失い、宇宙中の生命は遠からず滅び去るだろうとシャオは語る。

 

 

『だからシオンは君達2人に助けを求めた』

 

 

「シオンが俺達に……でも何で俺もなんだ?ペルソナだけでも十分だったんじゃないのか?」

 

 

『それは……』

 

 

ここで初めてシャオが困ったように表情を強張らせ、一瞬――キリトも気付かないほど一瞬――視線をサラに向ける。そこでタイミング良く、サラがデータを見つけたとシャオに声を掛け、シャオは逃げるように私達との通信を切った。

 

 

明らかにシャオが動揺していたのはキリトも気が付いたらしく、シャオの言動を不審に感じていたようだが、その瞬間、洞窟中に大きな爆発音が響く。

 

 

「何だ⁉」

 

 

「一旦出ましょ!」

 

 

崩れ落ちる天井の瓦礫を避けながら、私達は施設からの脱出を図る。

 

 

「2人共、隠れて!」

 

 

サラの指示通りに近くの岩に身を隠し、岩陰からサラと同じ方向を見ていると、何もない空間が突然歪み、二つの影が現れる。1人はルーサー、そしてもう1人は……

 

 

「テオドール!」

 

 

「知り合い?」

 

 

「ああ。でも彼はニューマンのはずだ」

 

 

ルーサーと共に現れたテオドールはデュ―マンになっていて、以前までのようにおどおどとした自身のない雰囲気も無くなっている。

 

 

「後天的に種族を変えたってこと⁉なんて無茶を……」

 

 

キリトの言葉に驚き、サラが一瞬2人から眼を離している間に、テオドールが上げた手から眩い光が放出される。

 

 

「危ない!」

 

 

私は咄嗟にキリトとサラを地面に伏せさせ、爆発の影響で落ちてきた瓦礫の山から2人を守る。

 

 

 

「お見事!君の性能は申し分ないようだね」

 

 

「完全にここを消滅させる事もできますけど」

 

 

「いや十分だよ。少しは残しておかないと、アークスが僕の掌で踊れなくなるのは無粋だろう?」

 

 

「そうですか。僕には少し分かりません」

 

 

「……では行こうか」

 

 

 

ルーサー達が立ち去った事を確認し、私は全身で支えていた瓦礫の山を退かす。

 

 

「2人とも、大丈夫か?」

 

 

「ええ……」

 

 

「何とか……君のお陰だよ」

 

 

「データはギリギリ回収できたわ。あたし達も脱出しましょう」

 

 

2人を起き上がらせた次の瞬間、洞窟内が再び大きく揺れる。先程の爆発で洞窟全体が崩壊し始めたらしく、私達は急いで海底洞窟から脱出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう……!助かったわ……」

 

 

「いや、私は何も……」

 

 

命からがら洞窟から脱出した私達は肩を上下させながら息を整える。

 

 

『三人共ご苦労様。無事で良かったよ』

 

 

返事は出来なかったが、私はシャオからの労いの言葉を素直に受け取る。だがキリトは表情を曇らせ、何かを言い掛けて口を噤んだ。

 

 

「テオドールの事を気にしているのか?」

 

 

「ああ……あの時テオを止められなかった。シャオ、どうにかしてテオを助けられないか?」

 

 

『それは、過去に戻って彼を引き留めるって事かい?』

 

 

「出来るのか⁉」

 

 

『いや、変えられない過去もある。悪いけど、テオドールの事は今は諦めるしかない』

 

 

希望がありそうな事を言っておきながら、即座に可能性を切り捨てるような言葉を吐くシャオ。容赦のないシャオからの返答にキリトは肩を落とした。

 

 

『残念だけど、ぼくにも手を出せない事情がある。いつか君にもそれを話せる時がくると思う。どうかそれまで、ぼくらを信じて欲しい』

 

 

「いつか……か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャオside――

 

 

 

 

 

『意地が悪いのね』

 

 

「仕方がないさ。意地悪でやってるんじゃないよ」

 

 

キリトとペルソナが去った後、サラから厳しい言葉を貰ったけど特に気にはならなかった。嫌味を言われるのが初めてって訳じゃないし、何より彼女の言葉が全て本心じゃないのは、ぼく自身が良く理解しているからね。

 

 

『ごめん分かってる。それで、データは受け取れた?』

 

 

って、今は自分語りをしてる場合じゃないか。すぐに返事しないと無視するなってまたサラに怒られちゃうし、前の経験からしてルーサーは何かしらの方法でぼく達の情報を得ていた。変に意識して奴に警戒される訳にも行かない。

 

 

「ああ。どうやらルーサーはこの惑星をを使ってシオンのレプリカを作ろうとしていたらしい」

 

 

『シオンのレプリカ?』

 

 

「彼女を理解する為の研究の1つだったんだろう。だけど、それも破棄されて終わっている」

 

 

『……もう偽物は必要ないって事なのね』

 

 

「そうだね。残された時間はもう無いんだ」

 

 

夕日に照らされたサラの顔に悲痛な表情が浮かぶ。きっとこれから起こりうる最悪の結末を思い浮かべているのだろう。けど大丈夫、ぼくとペルソナに言わせれば、これから起こる事は全て過去に乗り越えた試練だ。唯一の不安要素はキリト達プレイヤーの存在だが、ルーサーがどんな手段を取ってきたとしても大丈夫なように、対抗策を練っている。

 

 

――ペルソナからも無言で圧を掛けられちゃったし。

 

 

「本当に、全知使いが荒いんだからさ、もう」

 

 

自分に対しぞんざいな扱いをする友人に悪態を吐きながら、ぼくは来たるルーサーとの決戦に向け最後の準備を進めるのだった。

 

 





今回はここまで。

原作ゲーム屈指の人気キャラ(※作者の主観です)「カブラカン」の登場。

今後の出番は……あと一、二話くらいあるか無いかくらいです。まあ、次の登場はだいぶ先になると思いますが。

それではまた次回もよろしくお願いします。
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