お待たせしました。第83話です。
『2人共、無事かい⁉』
「心配のつもりか?ここまで状況が悪化すると分かっていれば、マトイを連れては来なかった」
「わたしは大丈夫。それよりも早くシオンさんの所に行かないと!」
マトイは強がっているが、本当はかなり疲弊している筈だ。念のため通ってきた道を断っているが、ルーサーが干渉しているだけあって、次々とアークスやプレイヤー達が別ルートから転送されてくる。この人数を相手取るのは分が悪すぎる。
――アークスの生死を問わなければ話は別だが……マトイの前でアークスは殺せない。
さて、何故このような事態になっているのか今更説明する必要もないと思うが、原因はレギアスが発令した
「シャオ、さっきのレギアスの言葉、アレは本当か?」
絶対令直前のレギアスによる私の
皆とは違い、私だけが
『悪いけど、それが真実かどうかはシオンかルーサーしか分からない。ルーサーが君を惑わせる為の嘘の可能性はあるけど、真実の可能性も捨てきれない』
「真相を知るには、先に進む以外方法はないという訳か」
「大丈夫だよ。何があってもわたしは貴方の事を信じてるから」
「……ああ、ありがとうマトイ」
こんな状況でも私を信じてくれる彼女の優しさに感謝し、少しだけ心が安らいだのも束の間、殺気を感じた私はコートエッジを抜き、振り払った刃は正面から飛来した銃弾を弾いた。
「敵性存在ペルソナを確認。反逆者を抹殺する」
「そんな、アフィンまで……!」
――やはりこの戦いは避けられないのか。
溜息を吐き、背後から近づく2つの足音に振り向く。振り向いた先に居たのはアフィン同様に瞳に赤い光を灯したイオとリサだった。
――いや、リサは元からだったな。
「残念だよセンパイ。センパイは不器用でも正直なヒトだと思っていたのに」
「お前達は操られている。目を覚ませ」
「リサならずっと正気ですよォ?こうやって誰からも怒られず貴方を殺せる機会がやって来たので、ご機嫌なんです~」
「みんなしっかりして!ペルソナは裏切ってなんかいない!」
「全てのアークスに向けて情報が開示されたんだ。裏切りの証拠は揃っている。だから
制止するマトイを無視し、機械のように淡々と私に処刑宣告をするアフィン。マトイはおかしいと反論するも、彼女の言葉はアフィンには届かない。
「無駄無駄無理無理!分かりますかァ?
狂喜狂悦といった表情で語りながら躊躇なく撃ってきたリサ。彼女だけ普段通りなのが調子狂う。せめて2人と同じように操られている感じが出ていればまだマシだった。
「お願い止めて!ペルソナは仲間でしょ⁉」
「退けマトイ、邪魔するならお前も殺す」
「よせ……マトイに手を出すなら、例えお前達が相手でも加減できない」
思わず漏れた殺気にマトイは怯えるが、依然3人は無表情のままだ(ただしリサは除く)。
「歯向かったって構いませんよォ?結果は変わりませんけど。フハハハハハハッ‼」
同時に放たれるリサの銃弾とイオの矢。前世の私はここで負傷したが、今回は完璧に防ぎきる。
「お前達と戦いたくはない」
「なら早く死んでくれ、相棒」
アフィンの冷たい言葉と共にエスカレートしていく3人からの攻撃。マトイを背に隠し防戦一方の中、ついに一発の弾丸が私の肩を貫いた。
「ペルソナ!」
「大丈夫だ、キミは逃げろマトイ」
私を庇おうと前に出ようとするマトイを抑え、壁となるようにコートエッジを構え直した。
「ダメだよ。逃げるなら一緒に!」
「2人一緒には無理だ。……キミだけは絶対に私が守る」
前世ではここでマトイを前に出してしまったが為に、彼女を負傷させる事になった。当時は彼らが私以外に殺意を持ってなかったから良かったものの、今回も同じとは限らない。それに今の私が目の前でマトイを傷つけられようものなら、怒りを抑えられそうにない。最悪、私もアフィン達もタダでは済まないのは明らかだ。
――だが、抵抗しなければ死ぬだけだ。私が死ねば全てルーサーの思い通りになる。
「結局、戦う以外の選択肢はない……か」
ボヤきながら私は強く床を蹴り、アフィン達目掛けて力の限り刃を振り下ろした。
「まだ死ぬわけには行かないんだ。悪いが腕ずくでも通してもらう!」
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銃弾と矢の嵐を搔い潜り、あなたは剣を振るう。対峙する彼らはつい先日まであなたを慕ってくれた相棒、後輩、戦友(?)。こんな闘いは誰も望んでない。あなたも、あなたと対峙している彼らも、そして「わたし」も。
「……やめて」
零れるように出た言葉は、目の前で繰り広げられている戦闘音に掻き消される。わたしが零した願いとは裏腹に、あなた達の戦闘は激しさを増していく。でも、優しい今のあなたは決して仲間を傷つけられない。だから今も、あなたは自らの武器で直接彼らを攻撃する事だけは避けている。
「あっ‼」
拮抗している様に思えた戦況は、突然あなたがバランスを崩した事で一変した。あなたは苦い表情を浮かべてさっき撃たれた左肩を気にしていた。そんなあなたの様子を見て、わたしは自分のせいだと考えたけど、今は自責の念に駆られてる場合じゃない。膝を折るあなたにアフィンが銃口を向けて今まさに引き金を引こうと指に力を込めていた。
「ヤメテエエエエエエエッ‼」
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「わからない。ぜんっぜん、わからないっ!どうして、この前まで一緒に笑いあっていた仲間達が戦わなきゃいけないの⁉それが命令だっていうんなら……そんなのおかしいよッ‼」
私とアフィン達の間に木霊したマトイの叫びがアフィン達の動きを止めた。同時に先程まで彼らの瞳に宿っていた怪しい光はない。
――あの時と同じだ。
「ああ、そうだ。そんな命令はおかしい。なのにオレは……」
「そうだよ。何でセンパイを殺そうなんて……別の自分がおれの中に居たみたいだ」
「あらーもうおしまいですか?ま、これはこれで楽しめましたし、リサは結構満足しましたから、皆さんがやめるならやめますけど」
絶対令の効力が消えた事でアフィン達は正気に戻った。唯一リサだけは正気に戻ったのか初めから正気だったのか分からないが。
「オレ、もう少しで相棒の事を」
「気にするな、お前のせいじゃない。それに私もお前達に攻撃したからな、お互い様だ」
「それにしても不思議ですよね。絶対令が無効化されるなんて」
「そんな事より、とにかくここを出ようぜ」
相変わらず、しれっと本質を突いてくるリサ。そんな彼女の指摘を放って、アフィンがこの場からの撤退を提案した。
「それは駄目だ。私にはまだやるべき事がある。手を貸してくれアフィン」
「……分かった!」
「だったら急いだ方が良いですよ」
リサの忠告と同時に、彼女の視線の先に鳥系ダーカーが多数出現した。それはルーサーの妨害が激化している。同時に奴自身も焦っているという証だ。
「ダーカー⁉まさか、マザーシップだぜココ!」
「誰が黒幕か知りませんけど、マザーシップにダーカーを入れてしまうなんて、もう本末転倒もいい所ですね!」
ダーカーがマザーシップに侵入してきた事に驚くイオと、何故か喜んでいるリサ。そしてアフィンがダーカー達の前に立ち塞がる。
「ここは任せろ。ただし約束だぜ、2人とも必ず無事に戻るってな!」
「分かった。だが私とも約束だ。危なくなったら私達の事は構わず逃げろ。絶対、死ぬなよ」
「ああ。行け、相棒!」
アフィン達とダーカーの交戦の音を背に私はマトイを連れてマザーシップの中枢へ向かった。
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「ねえ、そういえばみんなは大丈夫かな?わたし達の事で迷惑が掛かってないといいんだけど」
暫く進んだ所で、突然マトイがそんな事を聞いてきた。
「皆にはキリトが付いている。それに皆、かなりの実力を有している。心配はいらないさ」
だがそんな私の期待を裏切るように、この時キリト達は最悪の相手と邂逅していた。
同時刻、マザーシップ別エリア――――
「……どうしてお前がここにいるんだ、PoH‼」
コート・グライドを杖代わりに片膝を付く形で何とか持ち堪えるキリト。彼の前には黒いポンチョを羽織り、手には巨大な薄刃包丁のようなダガーを携えた男、PoHが立っていた。
「ククッ、さあ楽しもうぜ黒の剣士。イッツ・ショー・タイム!」
今回はここまで。次回もよろしくお願いします。