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お待たせしました。第84話です。今回は、ほぼキリトメインです。
「どういう事……?」
絶対令が発令された直後のキリトのマイルーム。重々しい空気が部屋を支配する中、ユウキが今にも消えそうな声を溢した。
「何でペルソナが……ねえキリト教えてよ!何でこんな事になってるの⁉」
「ユウ、落ち着いて!」
「でも姉ちゃん!」
荒れるユウキを諫めるラン。そのやり取りを前にしても尚、言葉を詰まらせているキリトを見て呆れたシノンは溜息を吐いた。
「あんた、いい加減ちゃんと説明しなさいよ。もうみんな、あんた達2人がこそこそと何かやってるのは知ってるんだから」
「そうそう。キリト君もだけど、ペルソナさんも意外と分かりやすかったから。でも、2人が隠してるって事はそれなりの事情があるんだろうなって思ったから、話して貰えるまで敢えてみんな何も聞かなかったんだよ」
シノンからのキツイ言葉に続いてアスナが優しい表情のまま話す。その傍らで「知ってたか?」とでも言いたそうに一瞬顔を見合わせるクラインやリズベッド達だったが、ここは空気を読んでアスナ達に話を合わせるように頷いた。
みんなの想いを受けてもまだ、キリトは話すのを躊躇っていた。それはみんなを巻き込みたくないという理由だけではない。何処まで話せば良いのか分からなかったからだ。ルーサーや時間遡行の話をしても果たして信じて貰えるのか。キリトがそう考えていると、不意にキリトの娘であるユイが立ち上がった。しかし普段の彼女とは少し様子が違った。
「それについては、ぼくから話をさせて貰ってもいいかな?」
「ゆ、ユイちゃん?……じゃない、あなたは誰!」
突然ユイから全く別人の声が出た事に一瞬驚きつつも、アスナはすぐさま細剣に手を掛けて臨戦態勢を取る。しかしキリトにはその声に聞き覚えがあった。
「シャオ……だよな。良いのか?みんなに話しても」
「こんな状況じゃ仕方ないよ。それに元々この件が片付いたら全部公表するつもりだったからね。あと、またこの子の体を借りちゃってごめんね」
そう言って諦めたように肩をすくめるシャオ。初めこそ笑っていたが、その表情はすぐ真剣なものに変わった。
「今日で全てが終わる。アークスをルーサーの支配下から解放する。その為にぼくらはペルソナとマトイをマザーシップへと導いた。こんな状況になる事は前もって話せたら良かったんだけど、ぼくらの計画をルーサーに悟られる訳にはいかなかった。だから、ぼくとペルソナは今日に至るまで敢えて今日の話はしなかった。ルーサーにぼくらが自分の掌で踊っているように思わせるために」
「ちょっと待ってください!さっきからお2人は何の話をしてるんですか?」
「そーよそーよ!こっちは仲間がお尋ね者になるわ、急にユイちゃんの体を借りたとか訳の分からない話をしだすわで頭がパンクしそうなのよ!」
自分の話を遮って、詰め寄ってくるリズベットとシリカの2人に驚いたシャオは目を見開き「そう言えば、自己紹介がまだだったね」と言いながら微笑んだ。
「ぼくはシャオ。アークスを元ある形に戻すために、そこに居るキリトと、ペルソナに協力して貰っているんだ。今は緊急でこの子の体を借りてるけど、ちゃんとこの子にも許可を貰ってるから、そんな怖い顔して睨まないでもらえるかな、アスナ」
「あなたを本当に信じていいか、証明してちょうだい」
「……分かった。でも今は説明してる時間はない。悪いけど、詳しい事はユイから聞いてほしい」
シャオがゆっくりとキリト達に向けて手をかざした直後、眩い光がマイルーム中を包み込んだ。
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光が収まると、キリト達は通路や壁が海のような鮮やかな青色の不思議な場所に立っていた。
「ここは……」
「マザーシップの中です。シャオさんがわたし達を転送したみたいです」
「ユイちゃん。今度は本物……だよね?」
「はいママ。心配かけてしまってごめんなさい。事情はシャオさんから聞きました。皆さん、説明は先に進みながらするので、わたしに付いて来てください!」
「待ってユイちゃん。さっきの話、本当に信じても大丈夫なの?ペルソナさんやマトイがこんな状況になるのを分かってて黙ってた人だよ。それにさっきだってユイちゃんの体を勝手に使ってたし……」
「その事なのですが、口止めしていたのはペルソナさん本人なんです」
ユイが放ったその一言に、その場にいた皆が驚愕する。キリトも「何故、事情を知っている自分にも口止めをしていたのか」っと疑問を持たずにはいられなかった。
「ユイ、その話…(何か来る!)みんな下がれッ‼」
詳しい話をユイに聞こうとするキリト。しかし同時に、身の危険を感じたキリトはユイを抱えてその場から離れる。次の瞬間、彼らの頭上の空間が赤黒く歪み、ケンタウロスの様な姿に鳥のような大翼、首元にリングが2つ付いた鳥型ダーカー《ブリュー・リンガーダ》が現れ、両手に携えた槍をキリト達がいた場所に突き立てる。
「ちょっ⁉何なのコイツ⁉」
「おい、まさかシャオって奴、俺達を嵌めたんじゃないだろうな!」
「それはありません!でも、何で『ごめんみんな!ぼくが迂闊だった!』シャオさん‼」
「シャオ!これは一体」
ブリュー・リンガーダの襲撃に自分たちは騙されたのではっと疑い出すエギルやシノン達。そこにタイミング良くシャオからの通信が入る。
『ぼくは確かにルーサーの裏を掻いた筈だった。でもルーサーとは別の誰かが、こっちの動きを読んでいたんだ!こんな事、完全に予想外だよ!』
「何だって⁉」
『気を付けて……!今、そっちに――』
「シャオ⁉駄目だ、通信が繋がらない!」
「キリト君!」
途切れた通信にキリトは悪態を吐くも、後方から聞こえたアスナの声と戦闘音に、まずは目の前のブリュー・リンガーダを倒さなければと思考を切り替え、コートグライドに手を掛ける。だがその直後、キリトの直感が再び危険信号を発した。
剣を抜き、背後から迫る襲撃者に反撃するキリトだったが、襲撃者はキリトの動きを予測しており、両者の刃が激突する寸前、武器を自身の懐に引き戻す。キリトの剣は空を切り、もう一度強く踏み込んだ襲撃者の刃が無防備のキリトの体に深く喰い込んだ。
「ガハッ!」
HPを大きく削られ、衝撃で持っていた剣を落としてしまう。
「ぐっ……お前は⁉」
もう一本の剣を杖代わりに立ち上がったキリトは、襲撃者の顔を見て戦慄した。
「弱くなったな黒の剣士。SAOにいた頃のお前はどこに行ったんだ?」
「
「ハッ決まってるだろ、あいつ……ペルソナを殺しに来たんだよ。だが、今のあいつをただ殺すだけじゃ面白くない。だからその前にあいつが大切にしているモノを全て壊す。お前達もだが、その前に奴の最も大切なこの世界を壊す。俺は大事なモノを守れずに絶望したあいつと、昔ギルドの仲間を皆殺しにされた時と同じあいつと
「そんな事、させる訳ないだろ!」
キリトは激昂しPoHへ連続攻撃を行う。だがPoHは、キリトの事を「弱くなった」と言うだけあってキリトの連撃を難なく受け流していく。
「ハハッ!イイねぇ、じゃあ、コイツはどうだ?」
PoHが指を鳴らすと、リューダソーサラーの大群がキリトを取り囲むように出現した。
「こいつ等は⁉クソッ!」
「さあどうした黒の剣士。俺を止めるんじゃないのか?」
呼び出されたリューダソーサラーにキリトが手を焼いていると、背後から飛んできたプリュー・リンガーダの浮遊リングが直撃し態勢を崩したキリトにPoHの凶刃が迫る。
『キリト(君 / さん / パパ)‼』
――やられる‼
マザーシップの青い通路にそぐわぬ赤い血飛沫が舞った。
▼
ペルソナside――
「……」
「ペルソナ?どうしたの?」
「(嫌な気配がしたが、今は気にしてられない)いや、何でもない。行こうマトイ」
一瞬感じた悪寒を振り払い、先に進もうとしたところで柱の影からマリアさんが出てきた。
「来たねペルソナ。おや?そっちのお嬢ちゃんはあの時の」
「アークスの人……」
「おっと警戒する必要はないよ。アタシ達は敵じゃない。アンタ達と同じさ」
マリアがマトイの警戒を解こうとしていると、私達の頭上からヒューイが変なポーズを決めながら現れ、逆にマトイの警戒心が更に強くなった。
「
「概ね予想通りだ姐さん。三人が三人、準備万端で待ち構えてるぜ」
「ヒューイさん」
「っておおっ⁉君達いたのか⁉良くここまで来てくれた。それと道中助けに行けなくてすまない。言ってしまえば我々、六芒均衡の暴走に近いもんだっつ―のにだ」
「だーかーら!アタシ達が止めてやるんだよヒューイ!」
「六芒均衡の暴走……」
「ルーサーが三英雄に絶対服従をさせている事、アンタも知ってるね?」
「ああ」
三英雄とは六芒均衡の奇数番号。マリアやヒューイは
「もっとも、初代六芒の四と六である"アトッサ"と"ヴォルフ"は10年前の戦闘で死んじまってる。この均衡は当に崩れていたんだ」
「つまり、新たに六芒の六となったこの俺が、2人分の働きをしないと均衡にならないのだ!」
「それには手を打ってある。間に合うかどうかは分からないけどね。さ、ぐずぐずしちゃいられない。行くよ」
「待って待って待ってえー!」
話を切り上げたマリアが先へ進もうとすると、突然背後から聞き覚えのある声が響き、声の主……エコーが慌ただしい足音と共に私達の元にやって来た。
「用があるなら全部片が付いた後にしてもらえるかい。こっちは時間がないんでね」
「そうはいかないわ。あたしはペルソナがやる事を手伝うって決めてるの!」
「(やはり絶対令が聞いていない。そうか、この子がゼノ坊が言っていた)面白いね。よし、アンタも付いて来な。ただし、自分の身は自分で守る。ここからの戦いは桁違いだよ」
「わかってる」
「すまないなエコー、私達の問題に巻き込んで」
「謝らないで。何か理由があるんでしょ?それにゼノなら貴方の味方をする筈だから」
そう言って張り詰めた表情になるエコー。彼女に何か声を掛けてやれないか悩んだが、私が何か言うよりも先にマリアに催促され、私達はマリアを先頭に先へと進む。
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暫く進んだ後、私達は一際広い部屋まで着いた。いつ攻撃を受けても良いように警戒しながら進んでいると、突然足下が輝き、私達は一斉に飛び退く。その直後、先程まで私達が立っていた場所が爆発した。
「テクニック⁉一体誰⁉」
「誰なんて問うまでも無い。マザーシップに侵入した者を打ち滅ぼす最強の番人、それはアークスの最大戦力こそ相応しい」
「おいおい、随分と手荒な挨拶してくれるな。クラリスクレイス!」
ヒューイがいた事に動揺したクラリスクレイスがバツの悪そうに顔を逸らす。恐らく彼女はヒューイがこちら側にいる事を知らなかったのだろう。それはそれとして、
「カスラさん?」
「これはこれはエコーさん、ご無沙汰しています。ところで貴女の隣にいる方、アークスの敵と通達した筈ですが、どうして殺らないんですか?」
「彼は仲間だからよ!何があっても仲間を信じぬく。ゼノなら絶対そうするわ!」
ヒューイとクラリスクレイス。カスラとエコー。互いに少なからず縁がある者同士が対峙する中、レギアスとマリア……アークスの現最高戦力同士が相対していた。
「久しいなマリア」
「アンタの頑固さは知ってたけど、よもやここまで融通が利かないとはね」
「その者の傍らに立つという事は、敵対の意志ありと受け取るが」
「六芒均衡は馴れ合いじゃない。それはアンタが一番知ってるだろ!」
レギアスの言葉にマリアが反論しながら武器を構えると、レギアスも自身の創成期"
「ならばもはや問答は無用。アークスに害を成す存在を討つ!それが三英雄だ」
「そう言う思い上がりを止める!その為にアタシ達、
ぶつかり合う鈍い金属音と共に、アークスの最高戦力同士の戦いの幕が切って落とされた。
今回はここまで。
また次回もよろしくお願いします。