仮面の男と仮想世界   作:オンドゥル暇人

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お待たせしました。2025年最後の投稿。


第85話 反逆

 

Noside――

 

 

 

「ふぅ……なんだ?」

 

 

ペルソナとマトイを先へ行かせるため、三人だけで出現したダーカーの足止めを引き受けたアフィン達。やっとの思いでダーカーを殲滅した彼らの前にいくつもの赤い光が灯り、そこから放たれる弾幕がアフィン達を襲う。

 

 

「これじゃあ切りがない!」

 

 

通路の支柱を利用して弾幕を防ぎつつ、アフィンはふとガラス張りの天井に目を向ける。そこには大量のキャンプシップがこのマザー・シップへと降り立っていた。

 

 

「オラクル中のアークスが集まってるのかよ!相棒、無理するなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ペルソナside――

 

 

 

「はぁああ!」

 

 

「やあ!」

 

 

私とエコーの連携による絶え間ない連撃ををカスラは軽々といなす。

 

 

「誰も彼も攻めあぐねていますね。本気でぶつかるわけにもいかず、といった感じですか。まあ、レギアスとマリアさんが本気でぶつかったら、ここが消える。そんな事するわけがない。クラリスクレイスも、アークスとの戦闘なんて考えてもいなかったでしょうし、仕方がないでしょうね」

 

 

「他の様子を見れるとは、随分と余裕だな」

 

 

「ええ。私は他とは違って力を抑える理由は無いのですが、いやはや、上手くいきませんね」

 

 

「(創世器(フローレンベルク)も使ってないくせに良く言う)カスラ、何故ルーサーの味方をする?」

 

 

「知ってますかペルソナさん?私は2代目だという事を。初代カスラは、ルーサーに命を奪われました。自身の勝手な都合でね」

 

 

「ペルソナ!」

 

 

私とカスラが鍔迫り合いになっている所に、マトイがテクニックを打ち込む。私とカスラはテクニックが着弾する直前に後ろへ飛び退き、直撃を避ける。

 

 

「やれやれ、話をしている途中だというのに」

 

 

「どうしてそんな人に服従するの⁉」

 

 

「今ルーサーに死なれると困るんですよ。ルーサーはオラクル船団の管制そのもの。彼が死ねば、オラクル船団は瓦解してしまう。あいつが何をしたか良く知っていますよ。しかし、船団全体から見ればごく僅かな犠牲です」

 

 

「アンタは!ルーサーが何をやっているか知りながら、止めなかったってこと⁉」

 

 

「結果的にはそうなりますね」

 

 

「よくもそんな事が言えたわね!ゼノなら絶対に止めたわ‼」

 

 

淡々と放たれるカスラの冷徹な言葉に激昂したエコーはソードを大きく振りかぶり突進する。だが大振りの攻撃をカスラは難なく防ぎ、容赦なくエコーを吹き飛ばした。

 

 

「ペルソナさんとそちらのお嬢さんは中々お見事でした。ですが、あなたは期待外れです。補助役が適正なのに、ゼノさんの真似でもしてるんですか?彼だって本来の適正を伸ばしていれば【巨躯】(エルダー)との戦闘にあっても遅れは取らなかったでしょうに……」

 

 

「でも、それじゃあ誰も守ることができなかった!だからゼノは前に立ったのよ!剣を持って誰よりも前に!たとえそれが枷になっているのだとしても、貴方なんかに否定はさせない!」

 

 

カスラの挑発に再び激昂するエコー。それを待っていたかのように、カスラは突進してくるエコーに対し、至近距離でテクニックを直撃させた。

 

 

「「エコー!/エコーさん!」」

 

 

倒れるエコーの元へ駆け寄ろうとする私とマトイを遮るように炎の壁が目の前に広がる。

 

 

「易々と挑発に乗ってはいけませんねえ、エコーさん」

 

 

倒れるエコーにトドメを刺さんとガンスラッシュを振り上げるカスラ。だが次の瞬間、銃声と共にカスラの持つガンスラッシュが何者かによって弾かれた。

 

 

――ようやく来たか。相変わらず、タイミングのいい奴だ。

 

 

「いやぁ、恐ろしいぐらいドンピシャ」

 

 

その場にいた全員が銃声が鳴った方に目を向ける。そこには紫色のガンスラッシュを携えたゼノが立っていた。

 

 

「はっ、やっと来たね!」

 

 

「あれは……!」

 

 

「そうさ、アタシが手塩に掛けて育てた新たな"六芒均衡の四"!」

 

 

「六芒の四⁉空席だってクラリッサが言ってたのに……!」

 

 

「クラリスクレイス!目を覚ませ。クラリッサが言うこと全てが正しい訳じゃないんだ」

 

 

突如現れた新しい六芒の四という存在に、レギアスとクラリスクレイスが啞然とする中、ゼノは私達がいる足場に降り立つ。

 

 

「久々の再会が銃口越しとは思わなかったぜ、カスラさんよ」

 

 

「まさかあの状況から生きてらっしゃるとは」

 

 

「生きてらっしゃいましたよッ、トォ‼」

 

 

力強い掛け声と共にゼノが武器を振り下ろした衝撃がカスラの方へ伸びる。カスラは足下を一閃し、自身の足場を上昇させて衝撃波を避ける。

 

 

「ゼノ!」

 

 

「よおペルソナ!それにエコーも、久しぶりだな。わりーな、来るの遅れちまって。この武器中々いう事聞かなくて、ギリギリになっちまった」

 

 

いつもの調子で話すゼノとは対称的に、俯いたまま肩を震わせるエコー。彼女は静かに立ち上がって顔を伏せたままゼノに近づくと、平手打ちをゼノに浴びせた。

 

 

「ってぇ!何しやがる⁉」

 

 

「バカ!生きてたんならすぐに帰って来なさいよ!連絡の1つもよこさないで‼」

 

 

「本当は死んでもおかしくなかったんだ。そこをペルソナに助けて貰ったんだよ」

 

 

「何ですって?何で教えてくれなかったの!」

 

 

猛抗議するエコーの気迫に押され、眼を逸らしながら経緯を説明するゼノ。そのせいで、エコーの怒りの矛先が私の方にも向いた。

 

 

「俺が頼んだんだ!俺が生きてるって知ったらお前……」

 

 

私の代わりにゼノが弁明しようとするが、そこに再び――今度は大きく振りかぶった――エコーの平手打ちが炸裂する。

 

 

「イッ…テェな‼こっちにも色々と事情があったんだ!地獄の特訓で何度も殺されかけたんだ!」

 

 

「そんなの知らないわよ!あたしが、あたしがどれだけ待ったと思ってるのよ!どれだけ、怖かったと思ってるのよ……このばか」

 

 

感情を爆発させながらゼノの胸にもたれるエコー。ゼノはエコーを優しく抱きとめた。

 

 

「すまん。今はこれで許してくれ。それに、お前もうこれ以上は厳しいだろ?」

 

 

「……ははっ。やっぱゼノには隠せないか」

 

 

「柄にもなく頑張り過ぎなんだよ。おい嬢ちゃん、すまないがエコーを頼めるか?」

 

 

「あ、はい!」

 

 

マトイにエコーを任せたゼノは先程のカスラ同様に足下を斬り、カスラを追うように自身の足場を浮上させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトside――

 

 

 

「あばよ、黒の剣士!」

 

 

――やられる‼

 

 

PoH(プー)の武器が振り下ろされる寸前、俺は思わず目を閉じる。直後に何かが斬られる音がした。だけど体が斬られた感覚はない。俺は恐る恐る目を開くと、俺の目の前に仮面の男……アッシュが立っていた。

 

 

それだけじゃない。さっきまで俺の周りを取り囲んでいたリューダソーサラーの大群が塵になっていて、振り上げられていたPoHの右腕が肘の上から切断されて、PoHは出血している自分の腕を抑えながら苦しそうな表情をしている。

 

 

「お前は!」

 

 

「やり、やがったな…!おいデカブツ、そいつらはもういい、コイツをヤレ!」

 

 

PoHの命令を受け、アスナ達の相手をしていたボスエネミーが俺達の方に向かって突進してくる。俺は急いで立ち上がって武器を構えるが、アッシュは慌てる様子もなく、ただ静かに迫りくるエネミーを……いや、そのエネミーの頭上にいる何かを見つめていた。

 

 

「今だヴァベル」

 

 

「はい……アッシュ」

 

 

その時、一筋の閃光がエネミーを貫き、首元の巨大な二つのリングを破壊しながら現れた少女……ヴァベルは、追撃の十一連撃でコアを破壊、アスナ達が抑えるだけで手一杯だったボスエネミーを涼しい顔で倒してしまった。

 

 

「まだ、やるか?」

 

 

「……チッ、まあいい。お前等をヤル機会はいくらでもある。それに楽しみも増えたしな、今回は見逃しといてやるよ」

 

 

PoHはそう言って不敵な笑みを浮かべ、切断された右腕を拾って切断面に近づける。すると奴の腕は何事もなかったかのように元通りくっついた。

 

 

「あばよ、黒の剣士」

 

 

「ま、待て!」

 

 

「追っても無駄だ。既に簡易テレパイプで転移しているだろう」

 

 

俺は通路の柵を飛び越えたPoHを急いで追うが、アッシュの言う通り、奴は既に海のように青い霧の中に消えていた。

 

 

「……行くぞヴァベル」

 

 

「はい」

 

 

「待て!お前、何で俺を助けた?」

 

 

「そんな事を聞いてどうする?貴様はこんな所で悠長にしている場合じゃないだろ。今も絶対令(アビス)を受けたアークスがこのマザー・シップに集結している。それだけではない。ルーサーの眷属のダーカーもペルソナ達を狙っている。放っておけば、ルーサーにオラクルを支配されるどころか、ペルソナの命まで危ういぞ」

 

 

「それ、どういう意味。きみ、ペルソナに何かしたのなら、ボクが許さないよ」

 

 

アッシュの意味深な言葉を聞いたユウキが静かに、だけど俺にも分かるような怒気を孕んだ声でアッシュ達に問い掛ける。彼らは動揺してはいないが、何か思い出すような仕草をして「まだ知らなかったか」っと小さく溢した。

 

 

「妾達が直接手を下す必要は無い。お前達も気付いている筈だ。この世界はただのゲームではない。お前達は『異界の戦士』という役割を与えられ、各々の世界の装備でここにいるが、ペルソナは違う。彼の者だけがこの世界の人間としての体を用意された。この世界のNPCが死んでも復活しないのと同様に、彼の者がこの世界で死を迎えれば現実世界の肉体も死を迎える」

 

 

「ふ、ふざけた事ぬかすんじゃねえよ!SAOじゃあるまいし、仮想世界で死ぬなんて有り得ねぇ!それにアミュスフィアには強制ログアウト機能があるだぞ!ペルソナが死ぬ前に、ログアウトされるだろうがよ!」

 

 

「クラインの言う通りよ!そもそも、アンタみたいな怪しい奴の言う事なんて信じられる訳ないでしょ!」

 

 

「信じるも信じないも貴様らの勝手だ。だがいずれ貴様らは気付く。私達の言葉の真意を。その時には何もかもが手遅れだがな」

 

 

2人の言葉に反論するクラインとリズ。だが彼らはクライン達の言葉を気にも留めず踵を返すと、俺達の前から姿を消した。

 

 

『回線回復!みんな無事かい⁉』

 

 

アッシュ達が消えたタイミングで、俺の元にシャオからの通信が入る。シャオは俺達の様子がおかしい事に気付き、俺はシャオとの通信が切れている間に何があったのかを説明した。

 

 

『…その2人が言ってた事は恐らく本当だ。ペルソナの(アバター)はシオンが用意したものだからね。でも、シオンが何の考えも無しにそんなリスクがあるようなことをしたとは思えない。きっとこの世界を救う為に、必要な何かがあったんだ』

 

 

「だからって!何でペルソナさんだけが危険な目に遭う必要があるんですか!自分達の世界が守れれば、彼が死んでもいいと言うんですか!」

 

 

『そんな事、ぼくもシオンも望む訳ないじゃないか!ペルソナはぼくらに取っても大事な仲間なんだ。彼にもマトイにも死んでほしくない』

 

 

ランの言葉に声を荒げながらも否定するシャオ。シャオが感情をあらわにしたのを見てみんなが驚き、固まっていたその時、俺の敵感知に新しい反応が現れ、俺達の周囲に再び鳥系ダーカーの大群が出現する。

 

 

「くそ、またコイツらか!」

 

 

『みんな聞きたい事が沢山あるだろうけど、今だけはぼくを信じて打倒ルーサーに手を貸して欲しい。とにかくペルソナの所に急いで!』

 

 

そう言ってシャオから一方的に通信を切られ、ウインドウが閉じた瞬間、眼前にランズ・ヴァレーダが迫っていた。俺は急いで姿勢を低くし、奴が通り過ぎる勢いを利用して腹部のコアを斬り裂いた。

 

 

「どうするの?正直、あんな子供の言ってる事なんて信じたくないけど、この状況はどうにかしないとなんじゃない?」

 

 

ハンドガンでダーカーを牽制しながら、そう語りかけてくるシノンに俺は「分かってる」と返して立ち上がり、彼女の背後に迫っていたダーカーを斬り裂く。

 

 

「みんな!とにかく今はシャオに言われた通り、ここを突破して、ペルソナ達の所に向かうぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペルソナside――

 

 

 

「行くぞ!ゼノ!」

 

 

「おうよ!」

 

 

私とゼノは連携してカスラに攻撃を行う。当のカスラはというと、相変わらず飄々とした様子で私達の攻撃を交わしている。ゼノの《戒剣ナナキ》を警戒してか、《燐具フローレンベルク》を出しているが、攻撃してくる様子はない。

 

 

「流石、やりますねゼノさん。伊達に四を継いだ訳ではないという事ですか」

 

 

「よく言うぜ、地獄の特訓の成果を飄々といなしやがって!カスラさんよ、あんたケリ付ける気ないな?さっきのエコーの時もそうだったろ。何を待ってやがる」

 

 

「さあて?何でしょう?」

 

 

ゼノの問いに表情こそ変えなかったものの、惚けるカスラの声色が明らかに変化した。

 

 

その時だ。突如として無数のデータファイルが私達を囲むように出現し、その中のモニターに、1人の少女の顔がアップで映し出される。

 

 

『よしクラック成功!あっ……みんな!ちゃんと聞こえてるかな?みんなのアイドル、クーナです!』

 

 

その少女はアイドル姿のクーナだ。

 

 

『今から大事なメッセージを送るから、受け取ってね!』

 

 

クーナのその言葉と共に、送られてきたのはルーサーが行った情報改竄に関する証拠。

 

 

『他にも知らない情報がめじろおし!ルーサーが裏でやっていた事など、いっぱい!』

 

 

「人体実験やクローン作成のデータまで……奮発してくれますねクーナさん」

 

 

カスラもこのデータの数に、感嘆するようにクーナを賞賛する。

 

 

『みんな、いい加減目を覚ませ‼︎何を信じたらいい?本当の敵?うっさい知るか!その目で見て自分で考えろ!自分で考える事だって許されない。そう言う人達だっているんだ!』

 

 

アイドルらしからぬ強い声でオラクル中の全員に訴え掛けるクーナ。その姿は、まるで過去の自分と弟を今のアークスに重ねているようにも感じられた。

 

 

『いい?この放送を聞いてるみんな!みんなはね、駒じゃない。一人一人生きている。だから人の言いなりになるんじゃなくて考えて!本当の敵が誰なのか‼︎』

 

 

クーナのハイジャック放送が終了すると同時に、パズルのように浮遊していた足場は元に戻り、辺りは静寂に包まれる。恐らく今の放送でアークスに掛かった絶体令は解除されてる筈だ。

 

 

――問題はプレイヤー達だがな。

 

 

絶体令が解除されたは良いとして、何かしらのクエストとしてこのマザー・シップに降り立っているプレイヤー達がどんな状況になっているかを考えていると、再び重く鈍い衝突音が部屋に鳴り響く。レギアスとマリアがぶつかったのだ。

 

 

「仮初とは言え、アークスの平和を保全する為には是非なき事!」

 

 

「まだ言うのかい!」

 

 

「さもなくば、“アルマ”の犠牲が無駄になってしまう‼︎」

 

 

レギアスは私と同じだ。愛する者が守り抜いた世界の為に自らの魂を悪魔に売るその姿。痛いほど良くわかる。そんな悲痛な心を吐露しているレギアスを嘲笑うかのように、私が最も忌み嫌う男の声が部屋中に響いた。

 

 

『やあレギアス。彼女、アイドルとして従順に活動をしていると思っていたけど。なるほど、この為だったんだね』

 

 

「話はそれだけかルーサー!こちらは交戦中だ!」

 

 

聞こえてきたルーサーの声に激昂しながら応答するレギアス。ルーサーはこんな状況ですら何の問題もないとでも言いたげな声色で話を続ける。

 

 

『いや、何だか君達が苦戦しているみたいだからね。差し入れをしておいたよ』

 

 

突如、降り注いだ巨大な火の雨がその場にいた全員を無差別に襲い、光の中から、クラリスクレイスと瓜二つの少女達――違いは服が黒いことだけか――が降り立った。

 

 

『無事届いたようだね。“ソレ”、調整が面倒でね。纏めて処分できるタイミングを探してたんだよ』

 

 

「ルーサー貴様!六芒均衡を崩すつもりか‼︎」

 

 

『六芒均衡?そんな物もう関係ないよ。僕の夢を叶える為にアークスが必要だっただけさ。だけどもう用済みお払い箱。それじゃあねレギアス。くれぐれも、僕と彼女の逢瀬を邪魔しないでくれたまえよ』

 

 

「ルーサーァァァ‼︎」

 

 

激昂するレギアス。だが、もうその言葉に応える男はいない。

 

 

「“クラリスクレイス”タイプのクローンを全機投入ですか……派手な真似をしてくれる」

 

 

燃え広がる炎の中、次々と降り立つ無数のK.K(クラリスクレイス)クローン。その異様な光景にゼノ達は勿論、クラリスクレイス自身も戦慄していた。

 

 

「あ、あんなの、わたしは知らない。教えてよクラリッサ!答えてよ、ねぇ!どうして黙ってるんだ……!」

 

 

まるで母親に縋る少女のようにクラリッサに呼びかけるクラリスクレイス。だがそれはルーサーが作った偽物の創世器。ルーサーがアークスに興味を無くした今、彼女な声の応える者はいない。

 

 

クラリスクレイスが狼狽えている間に、クローン達は最初の標的をクラリスクレイスに決め、狙いを定めた。

 

 

「怖いよ……誰か、助けて……助けて、ヒューイ」

 

「オレを呼んだか!クラリスクレイス‼︎」

 

 

今にも消えてしまいそうな声。だが、それほどまでに小さな声だとしても、ヒューイはその場にいた誰よりも早く、彼女の前に飛び出し、彼女に迫る炎の玉を自らの燃える拳で全て相殺した。

 

 

「ヒューイ……!」

 

 

「クラリスクレイス、辛かっただろう。我慢しなくて良い。今はゆっくり眠れ」

 

 

泣きつくクラリスクレイスを優しく眠らせたヒューイはゆっくりとレギアスに語りかける。その声はいつものおちゃらけた感じではなく、怒気を孕んだ本気の声だ。

 

 

「おいレギアス。アンタまさか、この期に及んでも『アークスの保全』とか言わねえよな?っていうか、言わないでくれよ。言ったらアンタ、ぶっ殺すぞ」

 

 

「……彼奴の持つ絶対的な支配からどうやって脱却すれば良いのか。その手段を見出せないから、私は従っていた。従うしか、アークスを保つ手段が無かった。だが!この仮初の平和、最早保つ価値はない!」

 

 

「っと、言う事は?」

 

 

「全力でルーサーを叩く‼︎」

 

 

ルーサーの蛮行、ヒューイの怒り、全てを受け止めたレギアスを筆頭に、私達はルーサーへの反逆を開始した。

 

 

 

 

 




今回はここまで。
それでは皆さま、良いお年を。
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