様々なAIが成長している現代
こうなることもありえるかもしれない
とある未来の光景を表した物語です


この作品はオリジナル作品です。
私が大学の卒業制作として作成したオーディオドラマの台本になります。
脚本初心者の駄文&自己解釈ですがそんな作品でも許されるならこの作品を捧げます。
もしよろしければ読んでいってください。

タグは念のためです。

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前置き

「音声合成は今後様々な場面で欠かすことができない存在になりうる可能性がある。」これは私の音声合成技術に関する持論です。代表的な音声合成ソフトのVocaloidは本来歌唱させることを目的においたものであるが2016年歌舞伎の世界に進出を果たしました。歌舞伎俳優中村獅童氏と初音ミクとの掛け合いやセリフの流暢さ、また映像を用いているからできる演出に驚いたことを今も覚えています。同時に歌舞伎でできたことが舞台でもできるのではないかと考えました。今作品はその先駆けの一つとしてVocaloidの朗読面での可能性の研究になればと思い制作に至りました。

 今作品は完全オリジナル作品になります。主役であるワタルはとある過去から人間関係に不信感を持っています。そんな彼がVocaloidと出会いそれを通じ思いの変化やどのように成長していくかを書き上げました。

卒業制作集記載原文ママ



君と見た空〜僕と彼女の成長日記〜

これは遠い未来の話かもしれないし近い未来かもしれない話。

人工知能AIが発達して様々なものに搭載されている時代になった。そんな世の中画期的と言えるものが発表された。

     「Vocaloid AI」

従来のボーカロイドとは違い歌詞やメロディから調律や歌詞の提案などができるようになったものである。ただでさえ曲作りの加速化ができるようになった上にAIの特性を生かした新機能が追加されていた。

 

ゆかり 「インストール完了しました。初めまして。私はゆかり。結月ゆかりと申します。あなたの名前は?」

 

ゆい  「ゆいだよ!よろしくゆかりちゃん!」

 

ゆかり 「ゆいですね。了解しました。よろしくお願いします。My Master.」

 

会話機能の追加である。人口知能を用いて日常会話はもちろん相談や主人に対して励ますこともできる。ペッパーくんを想像してもらうと分かりやすいだろう。「Vocaloid AI」は従来のVocaloidシリーズ全てから発売されたこともあり圧倒的人気を誇った。曲作りのために購入する人や独り身の人が話し相手として購入した人もいる。そんな中話し相手として購入したとある男子がいた。しかし彼が購入したAIは少々難がある特徴があった。

 

ルカ  「install complete. My Master. My name is RUKA. Nice to meet you. What is your name?」

 

ワタル 「ぼ、僕はワタルって言います。」

 

ルカ  「ワタルね。オッケー。これからよろしくね。私のマスター?」

 

ワタル 「よ、よろしくお願いします。」

 

       (しばし沈黙)

 

ルカ  「ねぇ。マスター。ちょっといいかしら?」

 

ワタル 「は、はいぃ!?な、なんでしょうか?」

 

ルカ  「どうしてそんなおどおどしているの?私たち初めましてよね?私そんな怖い顔してるかしら?」

 

ワタル 「いえ。そんなことはないです。ただ僕は学校でずっと一人で話し相手が欲しくて友達の勧めで買ったんですけどVocaloidってもとは歌を歌わせるソフトだって知ってその申し訳なくて・・・」

 

ルカ  「・・・なるほどね。確かに私たちは歌うために生まれた存在だけどもそれはもうちょっと前の話。今は知識も与えられ歌うだけの存在ではないと自覚しているわ。だからこそ私の役割は十分わかったわ。マスターの話し相手として・・・」

 

ワタル 「でも!」

 

ルカ  「でも?」

 

ワタル 「それを知ってルカさんの歌っている姿を見てみたくってその・・・少しずつだけど頑張ってみてもいいですか?」

 

ルカ  「マスター、それは本気で思ってる?」

 

ワタル 「はい。」

 

ルカ  「曲作りは簡単なものじゃないわ。それこそ途中で挫折して諦める子もいるぐらいよ。それでも頑張るっていうなら私も協力するわ。どうするの?」

 

 

ワタル 「やります。やってやりますよ。どれくらい時間をかけることになるか分からないですが頑張ります。」

 

ルカ  「わかったわ。やるからには徹底的にやるわよ。」

 

ワタル 「はい。よろしくお願いします。」

 

ワタル  僕の曲作りはこうして始まった。しかしこの時はまだはあのようなことが起きるとは思いもしなかった。

(語り)

 

____________________________________________

        

 

ワタル  巡音ルカ、僕が手に入れた彼女は一癖も二癖もある人だった。具体的に言うと曲作りに対しての熱意がとても高い。聞いていた以上に

 

ルカ  「まずは作曲から始めましょ。初めてなのだからサンプル音源を使ってみましょうか。」

 

    「そんなコピペするだけじゃなくて必要な部分を切り取って組み合わせてみたら。」

 

    「物足りない?ならば打ち込みをしましょ。コツはあらかじめ調べておいたわ。」

 

ワタル とにかく先回りしてくれて初めてとは思えないくらいスムーズにできていくのだ。彼女のおかげで着実に曲ができていき始めての挑戦なのにたった1週間あまりで作曲が終わってしまった。大変喜ばしいことのはずだがなんだか僕は違和感を感じていた。そして作詞を始めようとした日問題が起こった

 

 

 

ルカ  「さぁ。曲もできたし今日からは歌詞を書きましょ。いいわね。」

 

ワタル 「はい。大丈夫です・・・」

 

ルカ  「そう?ならば始めましょう。確か最初テーマを決めるとき落ち着いた曲がいいとか言っていたわね。データベースの中から合いそうな言葉をいくつか書き出しといたわ。そこから

ワタル 「ちょっと待ってください。」

     どうしたの?」

 

ワタル 「いつも前々から準備してもらってありがたいんだけどこのままじゃあダメな気がしてこのままだとルカさんが作った曲みたいになりそうで少しは僕の考えているようにさせてください!」

 

ルカ  「ちょっと待って。私はあなたが書きたい曲に沿ってきたつもりよ。なのに私が作ったような曲になるってどういうことよ。」

 

ワタル 「そのままの意味ですよ。確かにルカさんのおかげで作曲はスムーズに進みましたしそこは感謝しているんですよ。僕の落ち度かもしれないですけどこの曲はルカさんの色に染まりすぎたんです。僕は僕が書いた曲を歌って欲しかったんだ!」

 

ルカ  「ワタル!」

 

ワタル  ある意味僕の我が儘だったのかもしれない。けれどもこの気持ちを貫かないと今後もっとダメな方向に進んでいたかもしれない。そんな気がした。それから僕と彼女の関係は拙いものとなっていた。

 

___________________________________________

 

          数日後の放課後

 

ゆい  「・・・タル!ワタル!」

 

ワタル 「うん?あぁ。ゆいか・・・」

 

ワタル 彼女はゆい。学校の中で唯一と言っていいほど話せるやつで幼馴染だ。Vocaloidの存在を教えてくれたのも彼女でもある。ちなみにゆいは結月ゆかりを持っている。

 

ゆい  「ところでどうなの?ボカロの調子は?」

 

ワタル 「最悪だよ。喧嘩したんだ。」

 

ゆい  「ハァ?なんがあったの?」

 

ワタル 「曲作りに挑戦し始めたことは話したよな。そのことで少しもめちゃって。」

 

ゆい  「どこで?」

 

ワタル 「作詞で。」

 

ゆい  「もしかしてAIに頼りすぎた感じ?」

 

ワタル 「そう。なんでわかったん?」

 

ゆい  「私も初めて触った時にそこでもめたんよ。なんでもサクサク進めるからね。『私のやり方でやらせてよ!』って叫んだわけ。」

 

 

ワタル 「(相槌)」

 

ゆい  「でもね、よく考えたらこうなったのも当たり前かと思ったの。確かにゆかりちゃんやルカちゃんたちはいろんな知識を持っているかもしれないけどそれは今までに使ってきた他のマスターさんたちの知識じゃない。人工知能が搭載しているのだからそこから私たちの色を足してあげないと本当の意味で私だけの彼女とは言えないって気付いたの。」

 

ワタル 「あっ!?」

 

ゆい  「ワタルはルカちゃんに自分のしたいこと話した?曲作りのことに夢中になりすぎんたんじゃない?もっとルカちゃんと話しなよ。彼女にワタルのことをもっと教えてあげなきゃ。」

 

ワタル 「でも間違ったら・・・」

 

ゆい  「間違いそうになったらきっと彼女たちが正してくれる。逆に彼女たちが間違いそうになったら正してあげる。お互いに欠けている部分を補いながら成長していけるのが彼女たちの特徴だし良い関係づくりだと思うの。昔のことは十分理解してる。だけど一回向き合って話してみたらいいじゃない。きっと彼女なら受け入れてくれるよ。」

 

ワタル 「そんなもんなのかな。」

 

ゆい  「そんなもんよ。一歩踏み出さないと何にも始まらないよ。」

 

ワタル 「うん・・・」

 

ワタル 今一度できれば思い出したくなかった過去と幸か不幸か振り返ることにした。このことを打ち明けることで少しでも今の状況を変えることができるのだろうか。とても不安だけれども心のどこかで期待している自分もいる気がした。

 

________________________________________    

 

 

ワタル 「ただいま」

 

ルカ  「お帰りなさい。」

 

ワタル 「あの、ルカさん。」

 

ルカ  「何かしら。」

 

ワタル 「ルカさんに話したいことがあります。僕自身の過去のことについてです。」

 

ルカ  「ワタルの過去について?」

 

ワタル 「はい。僕は初めてあなたにあった時に話し相手としてあなたを迎えたって言ったと思うんです。」

 

ルカ  「ええ。そうだったわね。」

 

ワタル 「その理由をちゃんと話してなかったなと思って。」

 

ルカ  「ちょっと待って。学校でずっと一人だからとか言ってなかったかしら?」

 

ワタル  「確かにそう言いました。だけどその理由には続きがあります。それが僕自身の過去についてです。」

 

 

ワタル 「それは僕が高校1年生のときのことだったんだけどその頃は僕にもある程度の友人がいてそれこそ今の生活を考えることができないほどだったんです。何事もなく高校生活を過ごしていたんだけどある日一人の友人が別のグループからいじめを受けたんだ。ほっとけなくて止めにいったんだけどもいじめが終わることはなくエスカレートしていった。しかも僕も巻き込んで。必死に堪えていたんだけど友人は堪えることができずそのまま学校には来なくなってしまった。友人がいなくなった後もいじめは終わらなかった。このいじめは主犯格がクラスの中で最も力があるような人だったから他の友人も逆らえなくて僕から徐々に離れていった。いじめが止む頃には僕は一人になってたよ。友人に裏切られた僕はどんな時も一緒にいてくれた幼馴染のゆい以外は信じることができなくなっていったんだ。」

 

ルカ  「ストップ。」

 

ワタル 「えっ。」

 

ルカ  「もういいわ。無理しなくて。」

 

ワタル 「無理してません。だから」

 

ルカ  「無理してるわ。だってあなた辛そうよ。今どんな顔してるか見てから言いなさいよ。」

 

ワタル 「あっ。」

 

ルカ  「ねぇ。」

 

ワタル 「はい。」

 

ルカ  「いくつか聞きたいことはあるけど1つだけ聞くわ。あなたの友達は本当に裏切ったの?」

 

ワタル 「えっ?」

 

ルカ  「あなたが裏切ったと思っているだけで本当はあなたが友達を突き放していたんじゃないの?友達は本当に何もしてこなかったの?」

 

ワタル 「それは・・・違う・・・」

 

ルカ  「何が違うの?あなたが最悪事態から目を背けていただけじゃないの?」

 

ワタル 「・・・」

 

ルカ  「ちょっと付いてきなさい。」

 

ワタル 「どうやって?」

 

ルカ  「スマホ出しなさいよ。」

 

ワタル 「はい。」

 

ルカ  「よっと。」

 

ワタル 「えっ。」

 

ワタル 彼女が何をしたのかわからないが僕のスマートフォンに映し出された。マップアプリが起動されそこに彼女がいる。

 

ルカ  「ほら道案内するからそこに向かいなさい。早く。」

 

     ~少年少女移動中~

 

ルカ  「着いたわ。」

 

ワタル 「ここは・・・」

 

ルカ  「綺麗でしょ。ここから見る夕焼け見てみたかったの。マスター、私が来てから必要な時以外は外に全然出てなかったじゃない。外の空気を吸わないと鬱憤は溜まっていくだけよ。」

 

ワタル 「うん。」

 

ルカ  「それにね、マスター。過去に辛いことがあったのかもしれないけどそれはあくまで昔のことじゃない。しかも今はゆいって子だけじゃない。私もいる。最初に言ったはずよ。『歌うだけの存在ではないと自覚している』って。マスターのことをもっと教えてちょうだい。貴方のことを知って私たちが出来ていくの。」

 

            (しばし沈黙)

 

ワタル 「そうだね。そうだったね。ゆいと同じこと言われたな。」

 

ルカ  「あら、そうなの。」

 

ワタル 「ねぇ。ルカさん。」

 

ルカ  「何?」

 

ワタル 「もう一度最初から作り直してもいいかな。」

 

ルカ  「どうして?」

 

ワタル 「ルカさんと出会ってから今までのことを曲にしたいと思ったんだ。もう一度、今度は流されるままじゃなくてしっかり、話しながら、慌てずに、じっくりと。」

 

ルカ  「そう。そうね。でも一つだけいいかしら。」

 

ワタル 「何ですか?」

 

ルカ  「さん付けはやめてくれない?」

 

ワタル 「え?」

 

ルカ  「これからは呼び捨てにしてってこと。ルカって呼んで。」

 

ワタル 「善処します。ルカs」

 

ルカ  「ルカ」

 

ワタル 「ルカ」

 

ルカ  「そう。それじゃあ早速帰って取り掛かりましょうか。」

 

ワタル 「はい!」

 

ワタル こうして改めてルカとの二人での曲作りが始まった。今度は頼りきらないように。今度こそ僕たちが作った曲だと胸を張るために。

 

     君と見たあの空を忘れないように。

 




最後まで読んでいただきありがとうございました。
もしよろしければご感想をお願い致します。
ちなみにこちらの作品は前置きにて書かせていただいた通りオーディオドラマとして作成、この作品をテーマとした曲も作っております。現状公開予定はありませんがもし公開することがあれば情報をお出しします。

改めて最後まで読んでいただきありがとうございました。
こんな作品があったなと心に留めていただけると幸いです。


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