私はヒロインという名の縛りから開放されたい 作:しろてにゃん
私の5歳の誕生日に、お母さんとお父さんが小さな(私と同じぐらいだけど)男の子を連れてきた。
あっ…これってまさか……。
「このぐらいの年齢で会わせた方が良いかな、と思ったから連れてきたのよ。言ってなくてごめんね」
なんてお母さんが言ってきた。やっぱり、これって…!
「えっと……。ぼくはアイルと言います。よろしくお願いします」
「お母さんとお父さんのパーティ仲間の子のアイルくんよ。最近こっちに引っ越して来たから、これから仲良くしてね」
ふあああああ!やっぱりじゃん!やっぱりそういう事じゃん!
絶対お母さん将来見越してだよね、これ!
両親のパーティ仲間という事は、強い子なのは分かるよ、分かる。でもさ、このタイミングで連れて来るって事は、ありがちの展開確定じゃん。伊達に21年生きてないからね。1回死んじゃってるけど。
でも、
これからなんとかしてその展開を回避しなくては…!
それは今は置いといて、こっちも自己紹介しなくては。
「初めまして、私はミーナと言います。よろしくお願いします」
顔を引き攣らせないように気持ちを一旦落ち着かせてから笑顔でそう返した。
…しかし、これからどうしよう…。あと1年後には学校へ行く事になる。しかも、アイルは私と同学年だからね…。
学校は6年間。この世界の学校は、魔法と戦闘の勉強をする機関なんだって。冒険者なるならない関係なく皆通う事になっていて、まあ日本の義務教育みたいなもの。冒険者以外にも職業は勿論あるから、護身術として魔法とかを習うって感じ。
学校での6年間の間に違う女の子をくっつけてその展開を回避するしかないか…。ま、それまでの間は普通にしておこうかな。
アイルまだ5歳だからね、きっと恋心なんて芽生えたりしない…よね?
それから1年間は魔法の練習を一緒にやったり、私とアイルの両親と散歩(という名の魔物虐殺)をしたりと色々な事をした。
アイルは魔法より近距離戦闘の方が得意っぽい。…どうやらここら辺の魔物って高位種が多いらしいんだけどさ、私達ってやっぱり感覚狂ってるよね…。
魔力制御と消費軽減はかなり慣れてきて、あと最上級魔法まで覚えられた。…正直、ここら辺の魔物相手だと初級魔法か中級魔法で事足りるから全く意味ないんだけど。でもアニメとかマンガとか無いから魔法書読むしか暇潰し出来ないからしょうがない。自作して書いたことも1回だけあるけど、酷かったから一行目でその紙をごみ箱に捨てた。
さて、今日は入学式!
楽しみだなぁ……なんて感情は一切なく、遂にこの日が……という感情しかないです。嘘じゃないよ?
いや、別にアイルが嫌いってわけじゃなくて、彼のヒロイン枠には入りたくないってだけだからね。
あの転生する時にしっかり伝えておけばよかった…。今更言っても仕方ないか。
これから毎日一緒に登校する事になるから、初日になるべく友達をつくって、一緒に帰れる子を見つけなきゃ。
拒否られる事はまずないと思うからまだ大丈夫だけど、私達の家の方向に帰る子がいなかったらかなり絶望的…。
いや、これ以上悪い方を考えるのは止めておこうっと。こんな事考えてるからなる事もあるんだし。
「はい、入学式お疲れ様でした。では、これからクラス決めの為にテストをしていきたいと思います」
と、先生は言った。そう、この世界の学校は入学試験というものがある。まあ、簡単な魔法を撃つだけなんだけどね。
現時点での実力を見る為、というのが一番の目的であり、ここである程度の適性と習熟度合いを検査されてクラス分けが行われる。まだここで将来の道が確定するわけじゃないからね!後々伸びてくる子もいるし。
試験方法は、先生に向かって魔法を撃つというもの。撃つ魔法は初級魔法で、勿論先生達はしっかり防御魔法を…じゃなくて、普通おかしいでしょ!何か所々適当なところがあるんだよね…。威力を測れる魔道具とか無いのかな。あるのかしれないけど、高いから使えないのかな。
こんな事を考えながら順番を待っていた。あと魔法の威力どうしようとも考えていたけど。
ちなみに、魔法は詠唱と使う魔法のイメージさえあれば魔力次第で撃てる。ただし、威力を伴うかは別だけどね。
大事なのは、イメージと詠唱、そこに魔力操作と制御を加え、魔力を意図的に送ることより威力が上がる。魔力をただ大量に送るだけでは威力は上がらない。撃つのは簡単、威力を出すのが難しい、それが魔法というもの。(魔法書に書いてあった)
周りでは半分以上の子が威力が出ずに終わっていて、少数の子は威力が伴った状態で撃つ事が出来ていた。アイルは先に終わっていて、魔法は少し苦手だったけど、1年生の中では最高の威力が出ていた。危うく、簡単な防御魔法しか張っていなかったから破壊するところだった。先生流石に舐め過ぎですよー。
さて、私の番が来た。いや…どうしよう…。普通に撃つか、加減して撃つか。まあいっか、普通に撃っちゃって。初級魔法だし、そんなに防御魔法を破壊して貫通してもダメージは出ない…よね?
「『ファイア』!」
バリン!
「……あつつつつ!!!」
先生の悲鳴。やっぱり簡単な防御魔法しか張っていなかったみたい…じゃなくて!やり過ぎちゃった!と、とりあえず…
「ああああああ!ご、ごめんなさい先生、ちょ、ちょっと待っててください!『ウォーター』!」
バシャッ!
これでよし、…なわけないよね、所々軽い火傷のあとがあるし!(いや、このまま放置という手も…駄目か)
「『ヒール』!」
ふう、どうにかなった。
だんだん冷静になってきたところで、改めて先生見ていると何故か腹が立ってきた。美人なうえに胸もある、そんな先生を見ていると……。いやまだ気にする肉体年齢じゃないんだけども。
思ったんだけど、今の行動とか言動とか6歳としておかしい気がする。敬語なんてそんなに使わないよね…この年齢だとさ。
「…先生!大丈夫ですか!?どこか怪我は…?」
と、男の先生が駆けつけてきた。いや、駄目でしょ来ちゃ!悲鳴が聞こえたら誰かは来るのは普通だけども!その悲鳴を発したのは先生なわけだけどさ。
「…大丈夫ですよ。傷を治してくれましたし、初級魔法でしたしね。………しかし、初級魔法でこれ程とは……」
それを聞いて、安心したみたいだけど…。
「先生は私が試験の続きをするので戻っていてください」
「いや、もう試験は終わったので大丈夫ですよ」
「そうなんですか。…ここは試験は終わったみたいですね。では私は戻ります」
…あれ?水が消えてる…。魔法使っていないはず…ってただ単に服に魔法の効果を付与してるだけだよね。私の服にも効果付与されてるのに忘れてた。
次は剣術の試験。
先生と模擬戦をするだけと、魔法の試験よりは簡単というか楽というか、まあアイルの得意なやつ。
一応お父さんから教えてもらってるから私も出来るよ、一応。…お父さんが、「魔法が使える剣士になれ!」ってうるさいんだよね…。
試験は木剣でやっているため、そこらじゅうで打ち合わせる音がする。
超うるさいんですけど。早く終わんないかなぁ…。
なんて思いながらぼーっとしていると、いつの間にか番が来ていた。
……あれ?試験官の先生って…お父さんじゃん!飽きたみたいな表情して、しかもあくびなんかしながら生徒の攻撃を捌いてたのは見てたけど、気付かなかった。
「えっと、なんでお父さんがここにいるの?」
「それはミーナが心配だから見にき…じゃなくて、試験官をやってほしいって頼まれたから仕方なく受けたんだよ」
本音だだ漏れですよー。はあ、だからめんどくさいんだよね。
「そ、それは置いといてだな、さっさと始めないか?退屈だっただろう」
「まあ退屈だったけど…」
嫌そうに答えた理由はさ、お父さんやる気満々なんだもん。若干私引いたよ。余程退屈…じゃなくてあれだね。私とやるからか。
そして始まった。周りを気にせずに。
今の私だと全く勝ち目ないから、遠慮なくこれでもかと支援魔法を掛けまくって挑戦。これでなんとかついていけるぐらいはできるはず。お父さん手加減してくれないからなぁ。(もちろん掠り傷一つ与えないようにはしてくれる)
ほぼ溜めや重心移動無しで斬りかかってくる。が、お父さんの癖はわかっているので、大体の斬りかかってくる位置は予測出来る。お父さんの癖は、攻撃する時に目がほんの一瞬斬りかかる位置を見る。それがわかってないとお父さんの攻撃は一度も受けられない。それほどスピードが速い。おそらく周りの人はほとんど見えていないと思う。
こうして攻撃を予測して受け流しつつ、こちらが攻撃出来る隙を窺う。
一撃一撃が重い…。まだなんとか受け流せてるけど、真正面から受けてたら3、4回で剣が折れてるよ。
さてどうしようかな。このままだと間違いなく何もしないまま終わってしまう。…ここはお父さんの弱点を突こうかな。狡いと私も思うけど。
次の攻撃を受け流した後、バックステップをする。その時、バランスを崩した…振りをする。狡過ぎるとは思うけど、ほんとに。
案の定お父さんは庇おうと…しない!?あ、やっぱりバレた?バランスを崩した振りをした時に受け身をとれる体勢になってたからか…流石だね。
お父さんは一旦離れて、私は受け身をとって警戒しながら向き直る。
「狡いぞ!お父さん助けようとしかけたじゃないか」
「だって…手加減してくれないから全く攻撃出来ないんだもん…」
秘技、上目遣い!これにはお父さんは…、
「うっ、ご、ごめ…」
「隙あり!」
お父さんの頭に軽くコツンと木剣を当てる。やった!勝った!
「んな…」
「完全勝利!」
お父さんに(不意討ちだったけど)勝てた喜びで笑みがこぼれた。
「…まあいっか。あの笑顔が見られただけで最高過ぎる…負けた時の悔しそうな顔も良かったけど…」
と呟いた。おっとそれが手加減無しでやってきた理由ですか。そのためだけに手加減無しでやってきたんだ…。なんかもう凄いとしか言いようがない。まあとりあえず脅しておけば次から手加減してくれるでしょ。
「…お父さん、聞こえてるよ?後でお母さんに言っておくからね!」
「そ、それはやめてくれ!お父さんの生死が掛かってくるから!」
ちょっと待って、こんな桁違いに強いお父さんを脅せるお母さんって何者ですか?冒険者ですかそうですか。
「冗談だから気にしないで!ただし次にガチで来たら言い付けるから」
「はい、次からは本気でやったりしません」
6歳の子供に謝る30代のおじさん。どういう状況なのかな…。まあいいや。
「私は先に帰ってるからじゃあね!…あと次の番の人アイルだから頑張ってね~!両方とも~」
帰り道に、後ろから絶えず響く木剣の打ち合わせる音。最早爆発音だけど…。
今日は疲れたなぁ…なんて考えて現実逃避をしながら転移魔法を唱えて家まで帰った。
何者なのあの二人!
と私は校長室に戻ってから考えていた。
まさかあの二人が例の子供?6歳の時点であれほどの力を…。一体12歳までの6年間でどれだけ伸びるのか、記録しておかなければ…!
将来、あの人達の後を継いで、新たな人類の希望となるに違いない……。
おそらく次回にはある程度のキャラは出せるので、その次に番外編として登場キャラ紹介を出したいと思います。
一気に6歳まで飛んでいますが、学校生活は12話分ぐらいはやろうかなと思っています。
※ここからネタバレ…的なものがあります。基本的に世界の説明となるので、読むのが面倒くさかったり、見たくない人は飛ばしてください。
この世界は人間の国と魔物の国に別れており、内側に人間の国、その外側に魔物の国がある。
主人公が住んでいる街は人間の国と魔物の国の境界線のすぐ近くにあるため、強い魔物が多数生息している(中に入ってくる魔物は基本的に人間に敵対している者)。
人間の国の周りには何層もの結界が張られている(外側から内側になるにつれて入ってこれる魔物が弱くなっている。つまり外側に行けば行くほどより強い魔物がいることになる)。
魔物の国には魔王がいる(魔物は高位種ほど高い知能を持ち、魔物と人間がどちらも住んでいる街もある。人間と敵対している者と、そうでない者と別れている)。
魔王となる者は、能力の覚醒・解放が必須条件であり、そのためには長い間過ごしてきた者の魂を得ること、その魂を得る際に負の感情のみがあることが条件。
人間の国も、魔物の国も、それぞれいくつかの国に別れている。
ここから先は次回の後書きに続きます。
…なんか学生生活終わった後、タイトルとは全然違う展開になりそうだなぁ…。