神にいざなわれて 作:地球を救う転生ストーム1
「これで、どこか安全な場所に降りましょう」
「そうだな、まずは体勢を立て直さなければ」
ストーム1の提案に軍曹が応じる。
『...........おい、お前は本当に民間人なのか?』
「...........!?」
ふとグリムリーパーの隊長が発した一言でストーム1は思わず驚き、後ろを向く。黒いフェンサーの隊長が真っ直ぐと操縦席を、そしてストーム1を見ている事に気がついて、それは俺の事を言っているのだ、とストーム1はわかってしまった。
『本当に民間人なのか?』
そう問う彼は、しかし民間人である事を本当に疑問に思っているわけではない様だった。ストーム1が答える。
「俺は本当に民間人ですよ。ただ、少し昔に日本の空軍に居たというだけですよ」
『そうか......いい事を教えてやる、民間人』
グリムリーパーがその先の言葉を少し溜める。そして、言い放った。その言葉はそこにいた全員を震撼させるもので、特にストーム1にとっては驚くべき事だった。
『一つ。このブルートHU03は、つい先日配備されたものだ』
「...........」
『二つ。このヘリは従来のヘリと操縦桿の感覚が違うらしくてな。先行配備された空軍に所属するパイロットでさえ、こいつの操縦をマスターするのに二週間かけたらしい。...........そうだろう、ストーム1』
「...........!?」
彼等にとっては最後のストーム1というチーム名に聞き覚えはない筈だ。何故ならストームチームという名はそれぞれの兵科の精鋭部隊である、
「確かに...........おい民間人、どうやって運転してんだ?」
「運転ではなく、操縦です......それはそうと、私も気になりますね。どうやって操縦を覚えたのですか?」
軍曹の部下二人からの視線が痛い。それ以上に全員から、そして先輩からの視線......これは恐らく疑念の目ではなく、羨望の眼差しなのだろうが、こちらもかなり痛い。
「それ......は...........」
『どうした民間人。早く言え』
「..........................わかりました、本当の事を......話します」
そうしてストーム1が切り出した過去の『未来の話』は、そこにいた14人を驚かせる程の、衝撃的な出来事だった。平時なら笑って流すだろう突拍子もないその話は、しかし
ただ一人、グリムリーパー隊の隊長だけは、それを全て知っていたかのように鼻をフンと鳴らし、ストーム1に続くように話し始めた。
『俺が気が付いたのは、8月5日。ちょうど奴らが攻めてくる12日前だ。俺もあの時、夢だと思った。だがEDFという組織がある以上はあの
「...........まさか、隊長、あなたも...........」
「そうだ。ストーム3の隊長であり、あの巨人にお前達と挑み、死んでいった有象無象の一人だ」
ストーム1は仲間と会えて嬉しい反面、複雑な気持ちだった。人類の希望を託された筈の俺が目の前で失ったストーム3。その彼がグリムリーパーではなくストーム3としてここにいるのだから。
『隊長?何の話をしているのか、俺にはさっぱりわからないです。一体何がどうなっているんです?』
『お前も、ストーム3の副隊長として最後まで俺と共に戦った一人だ。お前は覚えていないだろうがな』
『?......どういう事です?』
『もうすぐ嫌でもわかる』
そうグリムリーパーの隊長が言葉を発すると、ほぼ同時にけたたましく通信要請が入る。それはこのブルートHU03に宛てられたものだった。
「こちら...........民間人、どうぞ」
『民間人だと......!?それは軍用の最新ビークル......いや、今はいい!そこに軍曹はいるか!?』
「わかりました。......軍曹!」
その声は何度も聞いた事のある
「どうぞ」
『軍曹か?』
「こちらゴールドチームリーダー、軍曹だ。聞こえている」
『無事だったか!戦況は酷い有様だ。この数時間で幾つもの部隊に被害が出ている。君達にはその先の街で怪物の掃討を頼みたい。行けるか?』
本部のその言葉に、軍曹は頷いた。
「任せてくれ。俺達も軍人だ、民間人を守るためなら何時でも死地に赴く覚悟は出来ている」
『ありがたい。現地には既にタンクチームと、戦車に随伴するレンジャー7が待機している。彼等と協力して、怪物を倒してくれ』
「わかった。ゴールドリーダー、アウト」
軍曹が通信を切ると、他の隊員達に向き直り、ヘリのローターが回転する轟音にも負けない程の大声を張ってこれからの行動指針を明らかにした。
「よし、よく聞け!俺達はこれから地上に降りて怪物の掃討を行う!レンジャー3は民間人二人について行ってくれ、残ったレンジャー2、レンジャー6はこれよりゴールドチームとして再編成、グリムリーパー隊と同時に怪物へ攻撃をかける。いいか!」
「「サー!イエッサー!」」
『ふん、俺達をちゃっかり戦力に組み込んでやがる。これで貸しふたつだ、忘れるなよ』
「俺じゃなくて軍曹に言いやがれってんだ」
「よう、民間人。俺達がお前らを守る、心配するなよ」
「そうそう、何かあっても俺達が何とかしてやるよ」
「そういう事だ。レンジャー3が君達を守る。たった3人だが、選りすぐりの3人でもある、安心しろ」
そう言ってレンジャー3は俺と先輩を安心させようと言葉をかけてくれる。先輩もすっかり安堵したようで、安心しすぎたのかシートから滑り落ちて、床にしりもちをついてしまっている。
実際の所は幾ら優秀な人間といえど3人だけではとても安心できるものではない。強力な武装でも持っているなら侵略生物の一部隊程度蹴散らせるだろうが、戦争中期には、三人だけで戦局を覆す事は殆ど不可能となってくる。ただでさえEDF側の装備は一対多を想定していないというのに、それに対する基本戦略は
元々EDFには日本だけで30万人近く、世界全体で数えれば一千万にも及ぶ隊員の数がいた。しかし、戦争中期、つまりアーケルスを撃破できる事が確認されたあの時には既に隊員数は3分の2、300万人しか残っていなかった。日本に至っては欧州と同じレベルの襲撃を退け続けていたという事もあって、兵士の数は一万人以下、奴らによって厳選された精鋭だけが残る事となった。
圧倒的な戦力差には勝てない。ストーム1は前世の経験でそれを確信していた。文字通り命をかけた戦いに身を投じた彼が、しかし覆し得なかった事実でもあった。
「...........ぃ......ぉい、おい。民間人、大丈夫か?」
「え......あ、は、はい......大丈夫です」
考え事をしていて気が付かなかったと、そう返した。
「そうか。まあ、こんな事に巻き込まれたんだ、俺達ですら混乱してるんだから仕方ないさ」
そう言ってレンジャー3のリーダーはマガジンポーチから、なんと缶コーヒーを取り出し、飲み始めた。
「それ、コーヒーが入るように出来てるんですか?」
「ん?......ああ、これか。俺専用の改造だよ。なかなか便利でな。開発の佐藤って伍長がいるんだが、そいつがまあ奇抜なものを作るわ作るわでな、これはその試作品って訳よ」
「佐藤...........さん?」
「そうだ、佐藤伍長。開発部きっての変態さ。1年くらい前にEDFの新兵器バウンドガン!ってのがあったろう?新聞でも大きく取り上げられた奴だよ。あれの基礎を完成させたのがその佐藤なのさ」
ストーム1が覚えていた佐藤伍長は
「...........それも、
「お、おい?どうしたんだ、大丈夫か?」
「................すみません。大丈夫です。まずは軍曹達を作戦地域に降ろしましょう」
「おう、頼むぜ」
心の内に抱えた疑問は、そのまま晴れることはなかった。
レンジャー2、6は軍曹隊『ゴールド』チームへと編成されることとなった。グリムリーパーの行動指針もまた、ゴールドチームと共に戦線を転々とする方向に定まった。
先輩とレンジャー3の4名だけが、ストーム1の前に残った。
「せめて、守れる命は守り通してみせる」
ストーム1は静かに、しかし固く決意したのだった。