「カズマ、入るわよ〜」
私達はカズマが泊まっている部屋の扉をノックし、返事が返ってくる前に中に入る。
「……………。」
そこには、髪をボサボサのまま虚ろな目をしてベットに腰掛けているカズマの姿があった。
あの日……ベルディアを倒し、迅を失ったあの日からカズマはダメージのせいで丸3日目を覚まさず、目を覚ましてからもずっとこの調子だ。
余程、迅を失ったことが応えたのだろう……。
「カズマ、お弁当持ってきましたよ?」
「……………。」
めぐみんがお弁当を差し出してもピクリとも動かない。
「換気をしよう、空気が淀んでいるからな」
ダクネスが気をきかして窓を開ける。空気が淀んでいるのはそれだけが理由ではないのは明白だった。
「そ、それにしても今日はいい天気ですね〜。カズマ、リハビリも兼ねて久しぶりに簡単なクエストでも受けに行きませんか?」
お弁当箱を机に起き、カズマに呼びかけるように尋ねるめぐみんだったが、カズマの口から出たのは私達の思いもよらない言葉だった。
「俺は……もう、戦えない……。」
「「「え?」」」
私達はベッドの上のカズマに一斉に視線を向ける。カズマの表情は私達の視線を受けても眉一つ動かさず、無気力な表情のまま。
「ちょ、ちょっと!どういうことよ、それっ!?戦えないって、魔王との戦いはどうするのよ!?」
「……………。」
カズマは相変わらず表情一つ動かさない、焦点の合わない目でひたすらに虚空を見つめている。
「アンタねぇ……!」
流石に我慢の限界が来た私は、カズマの胸ぐらを掴み無理矢理ベットから下ろし顔をグンッと近づける。
「お、おいっ……。」
「アクア……。」
めぐみんとダクネスが宥めようとするがそれよりも先に私はカズマに今まで溜まっていた鬱憤を全てぶつける。
「いい加減にしなさいよっ!!アンタがいくら悲しんだって迅は帰ってこないのよ!?アンタがやるべきは親友の願いを叶えてあげることでしょうっ!!これ以上グズってるつもりなら、必殺のゴッドブローをその横っ面にーーー「フッ、ハハハ……」ーーーえ?」
怒鳴り声の中聞こえる場違いな笑い声、何かを嘲るような笑い声、嘲笑。その発生元は私がいま胸ぐらをつかんでいる顔を俯かせたカズマからの声だった。
そして、視線を上げた彼は濁ったその目を私に向けて、たった一言。
「殴りたきゃ……殴れよ」
口元に歪んだ空虚な笑みを浮かべながら、そう告げた。
その一言でカズマが嘲っている相手が
その笑みに気圧され掴んでいた手を離し、フラフラと後ろに下がる。
「悪い……今日はもう帰ってくれ……。」
右手で額を抑え、切実な声で私達にそう頼むカズマに私達は何も言えなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「重症ね……。」
「無理もないですがね……。」
私達はギルドの酒場でテーブルを囲い、カズマについて話し合っていた。まさか、あそこまで心の傷が深いなんて……私の回復魔法は心までは癒せないのが悔やまれる。
平和な日本で暮らしていたカズマにとって、親友を失うなんて始めての経験だし落ち込むのは仕方ない。オマケにあんな最後を目の前で見せられたら……。
「なんとか……できないものだろうか?」
「「………………。」」
ダクネスの問に私もめぐみんも答えることができなかった。
ふと、ギルドを見回すと他のテーブルも私達と同じような状況になっていた。迅と交友があった冒険者は少なくない、彼は何百年もあの洞窟にいたからこの街のことが目新しかっただろうし、色んな人と話をしていたから。
ギルド全体がまるで、お通夜のようだった。
「ねぇねぇ、この席いい?」
声のした方向を見ると銀髪の見覚えのある盗賊の少女がいた。
「……クリス」
現れたのはダクネスの友人のクリスだった。
クリスは私達の返事を待たずに空いていた席に座り、口を開く。
「迅のこと、聞いたよ……。」
「……そうか」
「……カズマは大丈夫?」
「大丈夫とは、言い難いな………。」
ダクネスは唇を噛みながら悔しそうにクリスに言う。多分、この中で一番悔しい思いをしているのはダクネスだと思う。
生真面目な彼女のことだから自分がトラップになんて引っかからなければめぐみんの爆裂魔法で状況を打破できたかもしれないも思っているんだと思う。
それに関してはあのミツルギってソードマスターと同じだった。城の外で合流した彼は迅の話を聞くと、非常に悔しそうな顔をし目覚めたカズマに土下座して開口一番こう言った。
『済まなかった!僕がなんの考えもなしに君を誘ったばっかりに……君の大切な友人を……!謝って済むことではないとわかっているが……本当に済まなかった!』
その懺悔にカズマは何も言わなかったが、カズマは彼を責めることはないと思う。
ミツルギは修行のために王都に向かったらしい、見送りの際、
『アクア様、僕は必ず強くなってみせます。胸を張って、彼の……カズマの友人になれるように頑張ります!』
そう力強く宣言して旅立った。
「ダクネス達でも駄目だったかぁ……。まぁ、アタシもショックではあるけどさ、迅はいい子だったし」
「そうね……。」
「はい」
「あぁ」
迅は私達にとってもかけがえの無い仲間だった……。確かに彼は人間じゃなかったけど女神の私にはわかる。彼には確かに
私達は最後まで気付かなかったけど、迅は自分の本当の役目を隠して私達を騙してたことに心の底から罪悪感を感じてたんだと思う。
カズマが落ち込んでるのはその気持ちを最後まで察してやることができなかったこともあるんだろうけど。
「……そうだ!貧乏店主さんに頼んでみたら?」
クリスが何かを思いついたように、私達に提案した。
「「「貧乏店主?」」」
聞き慣れない単語に私達は疑問符を浮かべる。
「この街にはね、元々凄腕のアークウィザードとして名を馳せた人が営んでいる魔道具店があるんだけど、そこの店主さんは冒険者の人達の悩みを色々親身になって聞いてくることで有名なんだ」
「なるほど、だが貧乏店主というのは?」
「なんか、頑張れば頑張るほど貧乏になる難儀な性格だかららしいよ?」
なるほど……。
見ず知らずの人にカズマのことを相談するのは気が引けるけど……もう私達には手段が思いつかないしその人に頼んでみるしかないのかしら?
クリスは持っていた紙とペンで地図を走り書きして私達に渡すと、席を立つ。
「アタシもなんとかカズマにやる気を出してもらえるよういってみるよ」
「すまないな……。」
「まあ、カズマには色々されたけどこの街の為に戦った英雄が凹んでるなら手を差し伸べないとね」
そう言ってクリスはギルドを去っていった。
私達も件の貧乏店主とやらに会いに行くべくギルドをあとにした。
次回、街の人たちの気持ちをクリスが代弁します、題名は『カレラにとっての仮面ライダー』。
乞うご期待!
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六巻と七巻の間に記憶をなくしたカズマがライダーからプログライズキーを受け取るオリ章『継承編』をやろうと思うのですがどっちの案がいいでしょうか?
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それぞれの世界に行って力を受け取る
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一つの世界に揃ってて一人一人から受け取る