京太郎お世話録 世界編   作:暇人I

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第1話

「何処だここ…」

  

 見知らぬ土地で迷子を探し自分も迷子に、まさか携帯の電源が切れるとは思わなかった。ミイラ取りがミイラにとはこのことだろう。事前に確認する間も無くふらりといなくなったポンコツを探しに行くのはいつものこと、しかしいつもとは違うこともあり…

 

「京ちゃん、いつもごめんね…」

「このお菓子美味しい、咲も食べる?」

 

 ポンコツが増量中という事である。

 

 世界ジュニア麻雀大会。世界中から若き雀士が集まり凌ぎを削るこの大会では、参加する者たちが落ち着いて臨めるように数人の付き添いが認められている。そんな大会に我が幼馴染であるちんちくりんが呼ばれ、本人も強い人と麻雀をうてるなら…と昔とは比べものにならない積極性を見せ参加を決めたまでは良かったのだが、ここで問題が発生したのだ。

 

「すまん、今会社でやっているプロジェクトの都合上、俺が会社を離れることはできないんだ。」

 

 咲の父親である界さんが参加できないという事で咲の付き添い人がいなくなってしまったのだ。もちろん俺に話がいくまでには他の麻雀部のメンバーにも声がかけられたのだが

 

「期間が1ヶ月で学校を休まなくてはならないので父が許してくれませんでした…」

「学生会長の仕事の引き継ぎや今まで疎かにしてた受験対策をしなくちゃいけないから無理ね」

「全国優勝の影響か店が大反響でのぅ、今一月も店を閉めるわけにはいかんのじゃ」

「咲ちゃんの付き添いでなんて恥ずかしくて行けないじぇ!来年こそ自分の力で呼ばれてみせるじょ!」

 

 と、全員からお断りの言葉をいただいてしまう。優希は行けそうなもんだが譲れない部分らしい、めんどくさいやっちゃ。ならばと一人で行けばいいのでは?と言ってみたが参加者の中で自分だけ付き添いがいないこと、そしてなにより初めての海外で知り合いがほぼいないなんて不安で仕方がないということで却下されたのである。そんなこんなで呼ぶ宛がいなくなってしまった哀れな次期魔王こと宮永咲が最後に頼ったのが俺だったわけだ。

 

「つっても大丈夫なのか?周りは全員女子なんだろ、付き添いとはいえ同年代の男子が混じるのは…」

「前例はないけど問題はないみたい、学校も大会で休んでいる間は公休扱いになるんだって。大会参加者が全力を出せるためにいてもらうみたいだから…やっぱり迷惑かな?」

 

 こんなふうに若干涙目になりながら上目遣いに頼まれたら断れないわけで。身体つきこそチンチクリンだが容姿は整っているので威力抜群なのだ、ずりぃ。

 

「ま、海外旅行なんて普段行けないしお前の世話なら慣れてるからついていってやるよ」

「むぅ、もう高校生なんだから迷惑なんてかけないもん。でもありがとう、京ちゃんが一緒にいてくれたら安心するよ」

 

 えへへっと笑うこいつにドキッとしてしまう。無自覚にこういうことするんだよなぁ、心臓に悪いからやめてほしいもんだ。

 

「それで何日の何時頃に何処に行きゃいいんだ?」

「えっと、一月後に東京の成田空港に集合だって。場所はこの地図に書いてある」

「なるほどな、当日の朝に咲を迎えに行くからそれまでに準備しとけよ?」

「わ、わざわざ家まで迎えに来なくても大丈夫だよ!それに待ち合わせしてから一緒行ったほうがなんだかデートっぽいし…」

 

 後半は声が小さく聞こえなかったがその自信はどこからくるのだろうか?このポンコツが無事に最寄り駅まで到達出来るとは思えない。この前だって電車で少し遠くのデパートに一年組で買い物に行こうとしたら迷った挙句三人で探す羽目になり、結局見つけてデパートに着いたのは予定時刻の2時間後になったのだ。

 

「お前そう言って前に失敗してるだろうが…途中で逸れることが無いように当日は手を引っ張って連れてくからな」

「ふぇ!?う、うん。京ちゃんがいいならいいけど」

 

 そうでもしなきゃふらふらっと何処に行くか分かったもんじゃない。こいつと歩く時は外で遊ぶの大好きな5歳児の男の子並にしっかりと見ておかなければ途端に逸れてしまうのだ。

 

「楽しい旅行になるといいね、京ちゃん!」

「お前日本代表として麻雀しに行くの忘れてないよな?」

 

 すこぶる不安ではあるがこうして俺と咲、そして日本を代表する雀士たちとの麻雀バトルが幕をあけたのだった。


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