シンフォギアの消えた世界で   作:現実の夢想者

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怒涛の過去話二本立て。もし本編と食い違う部分があったら申し訳ないです(汗
それと、可能でしたらこの二本をご覧いただいてからの方がいいかと思います。

ティガのファイナルオデッセイは……残念ながらカット(泣


番外編 ウルトラマン編(メビウス&ウルトラ兄弟・ティガ&ダイナ)

 遂にこの時がきたか。みんなと一緒にヒーロー物を、それもウルトラマンを見る時が。

 

 暁さんはワクワクしてるし響も同様だ。残りのみんなは大なり小なり興味薄。いや、エルだけは高そう。

 

「さて、カラオケで響が歌ってくれたウルトラマンメビウスが主役の映画だが、タイトルにある通りこれはそれ以外のウルトラマン、通称ウルトラ兄弟も出てくる」

「兄弟って事は家族なんですか?」

「えっと、厳密には違う。彼らは血縁じゃない。ただ、みんなそれぞれ地球へやってきて多くの侵略者や怪獣と戦い平和を守った事があるんだ。ウルトラ兄弟ってのは地球の人々が付けた愛称みたいなもの」

 

 その説明にみんなが理解したとばかりに頷いた。さて、なら後はメビウス自身の事を軽く説明して映画を流そう。

 

「主役のメビウスはウルトラマン達の故郷、M78星雲にある光の国の新人宇宙警備隊員だ。いわばルーキー。彼はそのウルトラ兄弟に憧れて彼らが守った星である地球への赴任を希望し、地球へとやってきた」

「新人、デスか?」

「そう。翼がいるって事でリディアンへ入学してきた響みたいな感じかな?」

「凄く分かり易いです!」

「響……」

「お前なぁ……」

 

 呆れる小日向さんとクリス。ただ、翼はどこか苦笑していた。

 

「憧れられる側としては悪くない気分だな」

「だろうね」

「この映画では、メビウスが一体どうしてウルトラ兄弟へ憧れたのか。何故地球への赴任を希望したのか。そしてウルトラ兄弟は今どうしているのかが描かれる。言うなればかつてのヒーロー達と新しい時代のヒーローの交流だ。そこで見えてくる事でウルトラマンの本質を感じ取ってくれると嬉しい」

 

 前置きはここまでにして映画を流そう。さぁ、俺が劇場で見て購入を決意した最初からクライマックスな展開に震えてくれ!

 

「……おおっ! いきなりデスか!」

「これが、ウルトラマン……」

「光の巨人とも呼ばれてるよ」

「銀色の体や赤い体。でも、カッコイイデス」

 

 冒頭からいきなりUキラーザウルスとの決戦だ。そこで描かれる相手の強さとそれを越えるウルトラ4兄弟の強さと絆。

 

 知らないだろうみんなへ簡単に四人の説明をする。

 ゾフィーよりも長男的な描かれ方が多いウルトラマンと兄弟の中でも一二を争う切れ者的存在のセブン。本来であればしっかり者である新マンことジャックにこの面子では末っ子として未熟な部分を見せるエース。

 

 彼らそれぞれに短い時間ながらも見せ場を与えられ、四人が歴戦の勇士である事を初見でも伝えさせる内容になっている。

 

「なっ!? ず、ズルいデス!」

「地球を背にして攻撃を封じるなんて!」

 

 Uキラーザウルスが4兄弟の光線技を封じるべく地球を背にすると暁さんとエルが怒りを露わにした。

 声には出さないがみんな多かれ少なかれ怒ってるようだ。怒気が漂ってくるのが分かる。

 

 しかも何も出来ないのを良い事にUキラーザウルスが四人へ攻撃を仕掛けたのだ。

 このままでは全滅してしまう。が、ならばと状況を打破してみせるのが歴戦の勇士。

 ジャックとエースが協力してUキラーザウルスの注意を惹きつけ、その間に体勢を立て直したウルトラマンとセブンが二人を救出すると同時にUキラーザウルスへ痛手を負わせていく。

 それに怯んだ隙を逃さずジャックとエースの合体光線がUキラーザウルスを直撃、地球へと落下させた!

 

「「「おおっ!」」」

「見事なもんだ」

「全滅を避けるために時間稼ぎに徹した二人も見事だが、それを理解した上で挟撃の形を取る残りの二人も見事だ」

「まさしく信頼していればこその行動ね」

 

 どうやらイヴさん達にも少しではあるが刺さり出したらしい。

 だが、ここからなんだ。ウルトラマンの心の在り方と願いや想い。それが如実に示されるシーンだ。

 

 未だ衰える事のないヤプールの怨念。そのマイナスパワーを封じるため、4兄弟はそのエネルギーのほとんどを使ってファイナルクロスシールドを使用する。

 その時の四人のやり取りにみんなが黙った。それもそうだろう。何せ自分達がいなくても地球人は自分達だけで立派に戦い抜くと言い切ったのだ。

 

「愛する地球のために……デスか」

「そんな、自分達の星じゃないのに……」

「詳しい事は省くけど、実はウルトラマン達もかつては地球人と同じ姿だったんだ。それもあって、彼らは地球を第二の故郷のように思っているんだ」

 

 そう告げると同時にミライの独白が重なる。みんなが抱いてるだろう疑問をミライが代弁しているように俺には聞こえた。

 

 そして場面は現在の神戸に移った。そこで描かれる日常。その中に現れるかつてのウルトラ兄弟達に気付いてみんなが息を呑んだ。

 そう、彼らは人間として地球人の中で生きている。それにきっと驚いたんだろう。

 

「た、只野さん、あれってウルトラマンデスか?」

「そう。彼らは地球での仮の姿を持っているんだ。そうやって人々の中で生きているんだよ」

「みんなおじさんなんですね……」

「最初に出たようにウルトラシリーズが始まって四十年だ。つまり、最初は仮の姿も若かったんだよ。それがそれだけの歳月を経て今の姿になった。つまり演じた役者さん達の実年齢だ」

 

 でもそれが良い意味で重みを与えてくれるんだ。旧作を知っていれば勿論、知らなくても本当にウルトラマン達が人間のように暮らしていたんだなと思えるから。

 

 そしてミライが遂にこの映画の一つの要である二人と出会う。この関係がミライを、メビウスを成長させる事に繋がるんだよな。

 

「何か、防衛組織なのに緩い感じだね」

「GUYSはさっきミライが言ったようにライセンスが必要なんだけど、取ったからと言って絶対にGUYSになる訳じゃないんだ。いわば数あるうちの資格の一つ。で、メビウス一話で二十五年ぶりに出現した怪獣によって正規のGUYSクルーはほとんど失われてしまったんだ」

「マジかよ……」

「じゃ、じゃあさっきの人達は?」

「隊長とミライへ話しかけてた男性以外は元々別の仕事をしてた。それをミライとさっきの男性、リュウの二人でスカウトしてGUYSクルーになってもらってる」

「元一般人、か……」

「そう考えると立花や小日向に近いかもしれないな」

 

 軽くメビウスの説明をしている内に場面は三か月前の回想へ。そこで描かれるタカト君の過去の内容にみんな黙り込んだ。

 それはきっとみんなにも思い当たる事かあるいは想像出来る事だからだろう。自分達が解決した事件。その裏に記されなかった犠牲や傷があったとしたら、と。

 

 だがエルだけは違った。彼女はミライではなくタカト君の方へ感情移入しているようだった。

 多分だけど守られる側だからだろう。何も出来ない。その気持ちはエルがこれまで一番感じてきたものだ。

 

「僕は、彼の気持ちが分かります」

「エル……」

「きっと、僕も同じ状況なら立ちすくみます。動きたくても動けない」

「……そんな事はないよ」

「え?」

 

 俺は、この中で俺だけが知っている。見ているんだ。

 

「君は、友里あおいさんを必死で庇った。危険を顧みず、その小さな体で」

「兄様……」

「だけど、誰もがエルみたいに出来る訳じゃない。タカト君のような方が普通なんだ。だからと言って彼が酷い訳じゃない。弱い訳じゃない。本当の弱さは、恐怖におびえ竦む事を非難する事だ。誰もが持つ弱さを認めないのは、また別の意味で弱さだと俺は思うから」

 

 そう言ってる間にも物語は進む。テンペラ―星人の襲来。そこで見せられるメビウスの戦い。最初こそ街中での戦闘だったが、途中からメビウスが飛行して戦場を海上へと移動させた。

 

「街への被害を抑えるために……」

「冷静だな」

「ああ。これでルーキーか……」

「さすがは地球を守るために来ただけはあるわね」

 

 年長者達が感心したような声を出す中で年少組は……

 

「凄いデス! あそこで必殺技を撃つかと思いました!」

「でも冷静にバリアを張って相手の隙を待った」

「そこをすかさず必殺技ですね!」

「お見事です! とても冷静な戦い方です!」

 

 と、メビウスの戦いに笑顔だ。うん、実に和むなぁ。

 

「タダノ、本当にこれで新人なのか?」

「とは言ってもメビウスは光の国で訓練を積んだ存在だ。その戦術の師はウルトラ兄弟最強のウルトラマンタロウだし」

「「「「「ウルトラ兄弟最強?」」」」」

「それはまた別の機会に話そう。まずは映画を見てて」

 

 いよいよこの映画の見所の一つ、ウルトラ兄弟とメビウスの邂逅だ。

 そこでのやり取りに暁さんが瞳をキラキラさせていた。エルもどこか同じような顔をしてる。

 そしてそこでの会話で告げられるウルトラマンの、ハヤタの台詞で誰かが息を呑んだ。

 

――ミライ、我々ウルトラマンは、決して神ではない。どんなに頑張ろうと、救えない命もあれば、届かない想いもある。

 

 そこから続くセブンの、ダンの言葉にもみんなは押し黙った。おそらくみんなはこの言葉の意味と重さを知っている。

 ノイズやアルカ・ノイズ、それらと戦いながら何度となく味わった事だろう。届かない想い。間に合わなかった手。目の前で失われる、命。

 だからこそ、この言葉が刺さるんだ。ウルトラマンであってもそうなんだと。そして、神ではないと言う表現にも。

 

「……ウルトラマンって、もっと凄いヒーローだと思ってました。何でも出来て、全て助けられて」

「セレナちゃん……」

「でも、違うんですね。ウルトラマンだって、悔しくて、苦しくて、辛い時もあったんですね?」

「ああ、そうだよ。時には自分達が原因で死なせてしまった人達だっている」

「自分達が原因で……」

「ほ、本当デスか?」

「ウルトラマン達を邪魔だと思う侵略者は、彼らではなくその周囲の人間を狙うんだ。時には人質として、時には殺す事で彼らの精神をかき乱して」

「最低だね……」

「そうね。でも、だからこそ効果がある……」

 

 噛み締める声に俺は何も言えない。俺と違って彼女達はヒーローのような生き方と時間を過ごしてきたんだ。

 そこで感じた事や思った事を俺は知ってるだけだ。分かる訳じゃない。なら、安易な共感はむしろ彼女達をバカにするのと同じだ。

 

 物語はここから大きく動き始める。メビウスのデータを得た事で変身能力を持つザラブ星人が暗躍を始め、その罠にかかりミライは体の自由を失ってしまう。

 いや、何て言うか年長者組のミライへの言葉が辛辣だった。やれ先輩達に注意されたばかりだろだの、見た目が一緒でも雰囲気が違うの分かるでしょだのと。

 

 俺がミライなら凹んですみませんと言ってるレベルだ。でも、弁護するなら相手は知り合って間もない女性で、まだミライは人間に対しての理解が深くなかった。そんな状態で相手の変身を見破れってのも無理な話だ。

 

 あの悪意に操られた暁さんや月読さんぐらい分かり易ければなぁ。

 

「偽物デス! それは偽物なんデスよぉ!」

「タカト君、よく見て! 本物と違って黒い線が入ってるから!」

「本物のメビウスは街を攻撃なんてしませんっ!」

「ちゃんと見てください! タカト君!」

 

 年少組の言葉はまるでヒーローショーを見てる子供達のようだ。だから俺は何も言わず偽ウルトラマンメビウスを眺める。

 

「タダノ、あれはどういう事だ?」

「ザラブ星人は見ての通り変身能力を持ってるんだけど、完全に変身する事は出来ない。ただ、それは俺達から見ればだ。例えば、もしこの場に若干目付きが怖い翼が出て来たとして、それだけで偽物だって言える?」

「……無理だな」

「それと似たようなものだと思うよ。だって、まさかメビウスが二人いるとか誰かが偽物に化けてるとかすぐに思わないって」

 

 そういう意味でサコミズ隊長が凄いって描写でもあるんだよなぁ。まぁ、何せ彼の正体は……。

 

「ちょっとちょっと、まさかあいつ電車を攻撃しようって言うんじゃないだろうね?」

「不味いわ。この感じだとブレーキが間に合わない」

「間に合ったとしても殴られて終わりだろ!」

「いや、この感じは……」

「はい、多分そうです。ね、響?」

「うん、間に合うよ! だって、メビウスはウルトラマンだからっ!」

 

 何だかんだで響達も楽しんでくれているようだ。で、画面では間一髪メビウスが間に合い偽物と対決開始。

 ところがこれが壮大な罠だった。メビウスの攻撃で変身が解けて正体を現したザラブ星人。それを相手にメビウスは騙された事や自分の姿で悪事を働かれた事などで冷静さを欠いていた。

 

 それを見てクリスや翼、天羽さんもか。彼女達が苦い顔をしてたのが印象的だ。きっと似たような経験が……うん、あったね。

 

「落ち着いてメビウス! 光線技に頼っちゃダメ!」

「回避をしっかりするんデスよ!」

「ああ……空振りも多いです……」

「何としても倒したいという気持ちだけが前に出ています。これじゃあ……」

「胸の部分が点滅を始めたぞ」

「あれはカラータイマー。青から赤へ変わるとエネルギーが少ない事を示す。あれが消えるとウルトラマン達は死んでしまうんだ」

「「「「「っ?!」」」」」

 

 うわぁ、年少組とヴェイグが揃って息を呑んだ。そして拳を握って画面へ声援を送り始める。これが噂の応援上映ですか? もう可愛いんですけど、この五人。

 

「倒した、か……」

「何とかって感じだね」

 

 苦い声のイヴさんと天羽さん。うん、さすが年長者。物語の作りをよく分かってらっしゃる。これで終わったと微塵も思ってないって顔してる。

 

「そもそもさらわれた女はどこにいるんだよ?」

「そうだよね。それも分かってないし……」

「まだ侵略者は二人いるはずだよ。それは一体いつ襲ってくるのかな?」

 

 クリス達三人の会話を聞きながら俺はエル達を見つめていた。おっ、エルが嬉しそうに画面を見ている。メビウスがタカト君へピースサインをやろうとして……

 

「ああっ!?」

 

 横からの攻撃で大きく吹き飛ばされた。やったのは暗殺宇宙人ガッツ星人。

 

「不意打ちとはひきょーデス! 最低デスっ!」

「メビウスが消耗するのを待ってたんだ……」

「そのために仲間を犠牲にしたんですか?」

「そういう事だろう。嫌な奴らだ」

「メビウス……タカト君……」

 

 何気にエルが誰かを君呼びしてるのってレアだな。もしかしてエルも明確に自分より年下が出来ればお姉ちゃんするのかな?

 

 なんて俺がくだらない事を考えてる間に場面は4兄弟のシーンへ。静かに熱い場面だ。

 

「見てるだけは出来ない、ね……」

「気持ち分かるや。私も、きっと同じ事言ってる」

「エネルギーは残り少ない。変身すれば死ぬかもしれない。それなのにか……」

 

 エースの、北斗星司の言葉にガングニール三人が……

 

「勝てばいい、か。いいな、この言い方」

「ああ、まったくだ。絶望の中でも希望を捨てないとはこういう事だ」

 

 ジャックの、郷秀樹の言葉にクリスと翼が……

 

「これが最後の戦い……」

「そうしたいんですね、ウルトラ兄弟は」

「きっとそう」

 

 セブンの、モロボシ・ダンの言葉に小日向さん、セレナちゃん、月読さんが……

 

「行こう、デスか。この一言がとっても重いデス」

「はい、全ての想いがこもってます」

「負けは許されない。しかもその場合は死んでしまうのに、だからな」

 

 マンの、ハヤタ・シンの言葉に暁さん、エル、ヴェイグが……

 

 だから俺はこう告げる。

 

「彼らは何度も死地を切り抜けてきた。だからメビウスに見せるんだ。彼がタカト君に見せようとしていたように、その彼へ信じる強さと諦めない心を」

 

 そして画面の中では四人が同時変身。並び立つウルトラ4兄弟に画面の中と外で声が上がった。

 

 そこから始まるガッツ・ナックルコンビ対ウルトラ4兄弟戦。開始早々に光線技を撃つ四人。

 それをあっさりと避けられ、まずエースがナックルによって被弾。すかさずジャックがナックルの追撃をカットするように場所を移動させた。

 マンとセブンはガッツを相手にするも、分身攻撃でいきなりピンチ。カラータイマーも即座に点滅を開始。

 

「ああっ……もう四人のカラータイマーが……」

「やっぱりもう戦えるだけのエネルギーがないんだ……」

「だとしても、それでも諦めないよ。それがウルトラマンであり、ヒーローだ」

 

 俺がそう言うと暁さんが大きく頷いた。

 

「デスね。アタシ達だって何度も諦めそうな時がありました。それでも、自分を信じて頑張った結果ここにいます!」

「うん、そうだね。私達でもそうだったならウルトラマン達がそうじゃない訳ない」

「応援しましょう。きっと、きっと想いは届くはずですっ! ね、エル!」

「はいっ!」

「「「「がんばれ~っ!」」」」

 

 ……ここまでピュアだと心が痛い。それとさり気無くヴェイグも拳を握ってる。気持ちは送ってるんだろうな、これ。

 

 そして状況はその声援が届いたかのように四人が反撃を開始。それに暁さんやエルは大興奮。セレナちゃんと月読さんは大喜び。で、密かにヴェイグが「よしっ」と言っているのが聞こえた。

 

 年少組にヴェイグと響が固唾を飲んで見守る中、遂に四人の光線が星人に命中。それによりズズンと音を立てて倒れるガッツ星人とナックル星人。

 それを確かめ四人は空へと飛び上がる。囚われたメビウスを助け出して、即座にジャックとエースが彼を支えるように降下していき、セブンとマンはそれを誘導するように降下していく。

 

「優しくも厳しいお兄ちゃん達デス」

「でも、だからこそ頼もしい」

「立てって言うところがメビウスを信じてる感じがします」

「そうですね。立てると信じているんです、きっと」

 

 もうすっかり夢中な年少組。ピュアな心故の反応だろうな。

 

 ……しかし、残念ながらここから急展開なんだよなぁ。

 

「「「「「「あっ!?」」」」」」

 

 生きていたガッツ星人とナックル星人により4兄弟が捕えられ、さっきまでのメビウスと同じ状態となる。

 そう、侵略者の目的は最初からメビウスではなく4兄弟。そのエネルギーをマイナスへ変換してシールドを破る事だった。

 

「なんて奴らだ……っ!」

「卑劣な……っ!」

「新人を見捨てられない心を利用しやがるたぁ、こいつら、本気で腹が立つぜっ!」

「優しさを利用し、踏み躙り、嘲笑う。この上ない外道ね!」

 

 年長者組が怒り心頭である。何せ彼女達は立場で言ったら4兄弟だ。そりゃ怒りもするだろう。

 

「メビウスが……」

「やられちゃった……」

 

 響と小日向さんの言葉で年少組が落胆する。何せメビウスもエネルギーは残ってないに等しかったんだ。

 絶望が画面の内外で漂う。それでもエルが真っ先に顔を上げた。そう、ここからはタカト君のターン。諦めずに立ち向かった4兄弟の姿に勇気をもらい、少年が動き出したんだ。

 

「タカト君……」

「エル、覚えておいて。例え戦う力はなくても、心の中に希望を持ち続ける事や勇気を持ち続ける事でヒーローを助けたり、あるいはヒーローになれる時があるって」

「……はい!」

 

 間違いなく今のタカト君はヒーローだ。その心は誰にも負けない強さを持ってる。

 怯えて怖がっていたタカト君はもういない。勇気を、怖さに負けないって気持ちを、今の彼は持ったから。

 

「凄いです……。こんな近くに侵略者がいるのに……」

「分かるかい? これはあの三か月前のオマージュなんだ」

「「「「「……あっ!」」」」」

「あの時は震えて隠れるしか出来なかった。それを今回は助けるために一歩を踏み出せる。それがヒーローの復活に繋がるんだ。無力な存在なんていないんだよ」

 

 年少組に響の声が聞こえた。それに構わず俺はエルの頭をそっと撫でて言葉を続ける。君の事でもあるんだよって、そう伝えるように。

 

 それが伝わったのかエルは嬉しそうに頷いてくれた。

 

 丁度その瞬間ミライが再び立ち上がった。タカト君へ何故こんな危ない事をと尋ね、そこでミライは教える側から教わる側へ変わる。

 

「ウルトラ兄弟の姿が……タカト君に勇気を、諦めない気持ちを教えたんデスね……」

「メビウスが教えたかった事。知って欲しかった事。それを逆にメビウスが教えてもらってる……」

「遠くの星から来た男が地球人に愛と勇気を教えてくれたのとは逆に、ミライは地球で少年から愛と勇気を教えてもらうんだ。それがウルトラマンメビウスをまた一歩ヒーローへ近付ける」

「愛と勇気……」

 

 今度は自分が約束を果たす。そう言ってミライはタカト君と別れる。そのすぐ後、メビウスがガッツ星人へ攻撃しながら大地へ降り立つ。その胸に青い輝きを宿して。

 

「「「「「カラータイマーが青い(デス)っ!」」」」」

 

 もうカラータイマーという単語を覚えた年少組と響である。ここからは主役のターンだ。

 新人で未熟なところがあるメビウスだけど、その成長をこうして描ける事で感情移入がし易い。

 人間ウルトラマンとは異なるけれど、それにどこか近いメビウスはある意味で最高のヒーロー像かもしれない。

 

「凄い……凄いデスっ!」

「二人相手に負けてない……」

「当然です! 今のメビウスはタカト君の勇気をもらったんですから! 一人でも二人分ですっ!」

 

 セレナちゃんの表現に心がぐっときた。そうか、そういう考え方もありか。

 

「頑張れっ! メビウス~っ!」

 

 そして、きっとエルの声援も力になってるんだろうな。そう思えるぐらい、エルはタカト君と気持ちを同じくしてる。

 

「カラータイマーも、もしかしたら胸の歌なのかもしれない」

 

 そんな中で聞こえた響の呟きは俺には納得出来る部分もあるものだった。

 実際、ティガ達はカラータイマーの制限時間があるようでない。まぁそもそも正確にはカラータイマーって名称じゃないガイアみたいな場合もある。

 だから胸の歌のようにその気になったら無限となってもおかしくない。ティガのグリッター化がそれだと思うし。

 

「う、ウルトラ兄弟の若い時が……」

「凄い古そうだね……」

「俺から一言言わせてもらえるなら、それでも話の内容は十分現代でも通じてしまうレベルだよ」

「内容?」

「特にマン、セブン、帰りマンことジャックはね」

「か、かえりまん? た、只野さん? たしか最初は新マンと言っていませんでしたか?」

「ん? ウルトラマン二世ことジャックの事?」

「んだよさっきから。名前がいくつもあるのか、ジャックって」

「まぁね」

 

 いかんいかん。ちょっと面白くてオタク的なからかいをしてしまった。反省しよう。

 

 さて気付けばメビウスがガッツ星人を倒しナックル星人さえもダウンさせ、拘束されていた4兄弟を助け出してそろそろ物語は終盤へ。

 シールドによる封印は既に解かれてしまい、Uキラーザウルスが復活を遂げた。だが、そこで自慢げに喋っていたナックル星人はあろう事かUキラーザウルスに殺されてしまう。

 

「仲間を……」

「メビウスと同じ事を言ってたよ、響」

「捨て駒ってここまではっきり言うとはね」

「エースの言葉がしっくりくるわ。本物の悪魔よ」

 

 ヤプールの残虐非道っぷりにみんなの怒りゲージが上昇する。

 これは、エース本編の最終回を見たらもっと怒るだろうな。ただ、その後の名言で感動する事も読めるけど。

 

「悪意もきっとこんな感じデス!」

「うん、ベアトリーチェを歪めた原因」

「みんなの不幸を、滅びを望むなんて許せませんっ!」

「ウルトラマン達は光の存在だからこそ、ヤプールのような闇が付け狙うんですね」

「闇はいつでも光を狙う。それでも、決して負けないからヒーローなんだろうな」

 

 すっかりヴェイグもヒーロー好きになってくれたらしい。うんうん、嬉しい事だ。

 

 だが、残念ながらメビウス達の苦戦は続く。数の差をものともしないUキラーザウルスの能力に五人のウルトラマンはダメージを重ね、敗北間際まで追い込まれてしまう。

 それでも諦める事無く応援を続けるタカト君の願いが天に届いたかのように二筋の光が戦場へと降り注ぐ。

 

「「「「「ウルトラマンが増えた(デス)っ!」」」」」

「あれがタロウとゾフィーか」

「そう。ウルトラマンに似たのが長兄扱いをされるゾフィー。立派な角が二本ある方が兄弟最強と言われているタロウだ」

「エネルギーを分け与えるって……今更?」

「天羽さん、二人は人間として暮らそうと決めた兄弟達の意思を尊重したんだと思うよ。だから今までウルトラマンとしての生き方をさせなかったんだ。エネルギーを与えたら、それはまた再び戦士として宇宙のあちこちで戦う事になる」

「……だが、ヤプールが復活した今、彼らがまた戦士として戦っている。だからこそエネルギーを……か」

「やりきれないわね。ある意味で戦いから身を引いて平和に暮らしていたはずなのに」

 

 イヴさんの噛み締めるような言葉が胸に刺さる。今、彼女達はある意味でその状態だからだ。

 無理かもしれない。だけど願わずにはいられない。彼女達が戦士なんてせず、一人の女性として生きていける世界になってくれる事を。

 ノイズも錬金術師も現れる事無く、人間同士が多少いがみ合い揉めるぐらいな、装者が必要ない世界になってくれる事を、切に願う。

 

 タロウとゾフィーが五人へエネルギーを分け与え、遂に完全復活を遂げたウルトラマン達。七人の戦士がUキラーザウルスへ立ち向かい始めると、エル達が目に見えてテンションを上げた。

 動きが違うもんなぁ。それにエネルギーが回復したおかげかそれぞれの能力や技も使っての大反撃だ。

 

「い、一体何をやってるデスか? 光線を飛ばしてるデスかね?」

「ジャックはウルトラブレスレッドって道具がある。それを使ってるんだ」

「ウルトラマンは光線を光輪に出来るんですね?」

「そう。八つ裂き光輪。別名ウルトラスラッシュ」

「エースはそれを複数撃てるんだ……」

「ウルトラギロチン。エースはウルトラ戦士で一番数多く技を持ってるんだ」

「タロウ、凄いな。地面を滑りながら光線を撃ったぞ」

「ストリウム光線だ。体内のエネルギーを集束して撃ち出す必殺技だよ」

「地味ではあるがゾフィーの攻撃は的確だな。さすがは長兄的存在といったところか」

「後、セブンも結構アクティブだよなぁ。頭のあれを手に持ってズバズバ切ってたぞ」

「ちなみに体色が赤いウルトラマンはレッド族って言ってパワー型な傾向。銀色はシルバー族って言って光線技などに優れる傾向があるんだ」

「成程ねぇ。だからセブンとタロウは動きが力強いんだ」

「あっ! メビウスが決めるみたいだよっ!」

 

 響が言った通り、メビウスがUキラーザウルスへメビュームシュートを放とうとする。だが、そこで終わるヤプールじゃない。その頭部にさらった女性を配していたんだ。

 

「「「「「「「「「「「っ?!」」」」」」」」」」」

 

 見事に劇中のウルトラマン達とみんなの反応が重なった。

 

「くそっ! まさかの人質かよっ!」

「このタイミングで見せてくるなんて……何て悪質なの!」

「最初から見せない辺りにヤプールって奴のいやらしさが見えるよ……」

 

 もう年長組さえ気分はウルトラマン達だ。そう考えるときっとクリスはゼロだろうな。イヴさんはヒカリで天羽さんはセブンとか? で、響がレオで翼がマンか。小日向さんは……いっそアストラ?

 暁さんはダイナで月読さんはティガ、かね。セレナちゃんはコスモスで決まりだ。俺は……その面子なら80辺りがいいかなぁ。あるいはエースでもいい。

 

 そして物語はクライマックスへ。勝利目前からの危機的状況へ陥るメビウス。それを見てウルトラ6兄弟が自分達の光エネルギーをメビウスへと注ぐ。

 これは完全にウルトラマン物語のオマージュだよなぁ。だってタロウの教え子のメビウスにそれをやるんだもの。

 

「ウルトラマン達が……」

「消えていく……?」

「ウルトラマン達は一種光の化身だ。自分達の肉体までエネルギー化してメビウスと一体化しているんだよ」

「す、凄い……」

「そんな事が出来るんですね……」

「ただどのウルトラマンでもとはいかない。こういう事が出来るのには理由や条件もあるからね」

 

 コスモスとジャスティスは宇宙の秩序と正義を守る存在故にレジェンドへなれたし、ゼロとダイナとコスモスはゼロが持ってるだろうノアの力が作用したと思われるし、タロウはウルトラホーンで、メビウスは父から託されたメビウムブレスの力だ。

 

 だがその一体化が完了する前にメビウスへUキラーザウルスが凄まじい攻撃を放つ。それによりメビウスの体も消えたように見えた。

 

「「「「「「ああっ!?」」」」」」

 

 年少組とヴェイグに響の声が聞こえる。大丈夫だよ、どんな時も諦めない心が今のメビウスにはあるんだ。

 

「っ! 上か!」

「光が……集まってる……」

 

 小日向さんの言う通り、上空に光が集束していき一つの形を作り出す。それがウルトラマンメビウスインフィニティ―だ。

 

「「「「「「変わった……」」」」」」

「今のメビウスはウルトラ6兄弟のエネルギーも得ている。その名前のメビウスの輪。それになぞらえて無限大を意味するインフィニティ―の名を与えられてる」

「メビウスインフィニティ―、か。強そうじゃん」

「無限大に始まりと終わりが無い現象。ふふっ、同じような意味を掛け合わせるとか、単純だけど凄いわね」

 

 さぁ、もう物語も終わりが近い。あれだけの強さを誇ったUキラーザウルス相手にメビウスインフィニティ―はその身一つで向かっていく。

 光線どころか攻撃一つせず、ただ捕まっている女性を助けるために手を伸ばして。それに響が息を呑んだのが分かった。彼女は分かったんだろう。今、メビウスがしたいのはUキラーザウルスを倒す事じゃなく女性を助けたいだけだって。

 

「体当たり?」

「違うぜ先輩。あれはそんなんじゃねぇ」

「うん、捕まってるアヤさんを助けたい。それだけです」

 

 そしてそのままメビウスインフィニティ―はUキラーザウルスの体を貫くように姿を見せて、その手にバリアで守るようにした女性を弟であるタカト君の近くへと優しく移動させた。

 

「良かったデス」

「うん、良かった」

「あっ、見てください! メビウスがピースしましたっ!」

「タカト君、驚き方が可愛いです」

 

 そして並び立つメビウスとウルトラ6兄弟。そこへGUYSのメンバーもやっと合流。

 

「あっ、リュウさんが笑った!」

「んだよ、こいつもウルトラマン好きか?」

「女の人の気持ち、分かるかも。私もこんなの本当に見たら感動しそう……」

「この男性は外国人なのか? グラシアスとは……スペイン語だったはずだ」

「彼はGUYSに入る前はサッカー選手だったんだ。それが関係してるんだよ」

「そうなんですね」

 

 こうして最後は目標や夢を取り戻したタカト君と姉のアヤに見送られ、ミライは帰路へと就く。この時点でこの姉弟にはメビウス=ミライが露見してるんだよなぁ。

 

「何だかいいデスね。み~んな笑顔デス」

「でも、ヤプールは完全に倒せなかったんだ……」

「大丈夫です。みんなが最後まで希望を捨てなければ、いつだって光は闇に打ち勝ちます」

「ウルトラマン達も僕ら人間を信じてくれました。だからきっと負けません!」

 

 すっかりウルトラファンのセレナちゃんとエルである。やっぱりこれを最初に見せて良かったな。女の子でもウルトラマンなら怖くないし、何より分かり易く希望を描いてくれてるもの。

 ライダーだと人ならざる悲しみとかが描かれる場合もあるし、ヒーロー物の導入としてはウルトラマンの方がいいかもしれないな、こうなると。

 

「只野さんっ! ウルトラマンの映画ってこれだけデスか?」

「いや、沢山あるよ。何せ日本を代表するヒーローだからね」

「兄様、もう少し詳しい話を聞かせてください。ウルトラマンの事やその生まれ故郷の話を」

「いいよ。じゃ、俺が知ってる限りで話すな」

 

 暁さんとエルがキラキラした目でこっちを見てくるのを嬉しく思いながら俺は話し始める。偶然地球へやってきた銀色の宇宙人から始まる、ヒーローサーガを……。

 

 

 

 その日、切歌達はワクワクしながら居間に座っていた。何せ今日は待ちに待った映画鑑賞会。まず上映するはウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ~光の星の戦士達~だ。

 

「あー、楽しみデスよ。初めて見るウルトラマン達の映画デス」

「ティガとダイナはどんなウルトラマンなんですか?」

「そうだなぁ。簡単に言えば、人間が変身するウルトラマン。そしてその本質は光ってとこ」

「宇宙人じゃないんだ……」

「本質は光……どういう意味でしょう?」

 

 仁志の薫陶の賜物か、すっかり特撮好きになり始めている年少組。やはり最初に見せられたゴジラが大きいのだろう。

 切歌や調にとってはそれが実際見た存在の映画だった。故にウルトラマンも実在するのだと思う事が出来たのだ。

 同じ事が響達にも言える。彼女達はグリッドマンを見た。光の存在である彼を知ったからこそ、それに似ているウルトラマン達も存在するはずだと思えたために。

 

「ダイナの世界はティガの世界の未来だ。と言ってもメビウスの時みたいに何十年も経過した訳じゃない。だからこの映画の人達はティガというウルトラマンがいて、闇から世界を守った事を知ってる。そして、そのティガは最後の最後で地球に居る多くの子供達と一体化して恐ろしい邪神を、闇を倒してるんだ」

「子供達と?」

「一体化、デスか?」

「そう。これを覚えていて。ティガのいた時代に幼い子供だった少年少女が七年後のダイナでは成長してるんだ」

 

 仁志の説明で一部の者達は気付いた。それがこの映画を見る上で重要な要素となるのだろうと。

 

「じゃあ再生するよ。生まれながらのウルトラマンとはまた違う、人間ウルトラマンの戦いを」

 

 物語は地球ではなく宇宙で始まる。ウルトラマンダイナと戦う怪獣は手強く、必殺のはずのソルジェント光線さえ通じない。どうすればと、そうなった時宇宙怪獣を貫くように巨大な光線が宇宙空間を走る。

 それはTPCが極秘開発した戦艦“プロメテウス”によるものだった。スーパーGUTSだけでなくダイナもどこか危険視する程にプロメテウスは恐ろしい攻撃力を有していた。

 

「ま、まさかウルトラマンの光線よりも強いなんて……」

「こんな物を作って大丈夫なんでしょうか?」

「エル、どういう事?」

「その、人は残念ながら強大な力を持つと道を踏み外してしまう事があります。現に聖遺物を巡って争う事さえしました」

「この戦艦を持った事で人間が過ちを犯す、か。ない話じゃないぞ」

「ヴェイグさん……」

 

 後日地球にあるクリオモス島でプロメテウスの説明を聞くスーパーGUTSの隊員達。その中にはウルトラマンダイナことアスカの姿もあった。

 人間の思考を読み取りその動きを忠実に再現するために無人であるプロメテウス。だが、その完全な運用のためにはデータが不足しているため、豊富な戦闘経験を持つスーパーGUTSの隊員にデータ収集に協力して欲しいと言うのが説明会の狙いだった。

 

 その最中、プロメテウスの開発者であるキサラギ博士は暗にダイナよりもプロメテウスの方が強いと発言。

 それを聞いたアスカが腹を立て、自分がプロメテウスの事を否定してやるとばかりにデータ収集をやってやると意気込んでしまう。

 

「な、何かこの博士怪しいデス!」

「これ、もしかしてダイナのデータを取られちゃうんじゃ……」

「月読さん、正解。相手の目的は最初からウルトラマンダイナだ」

「じゃ、この博士はもしかして……」

「「「「侵略者っ!?」」」」

 

 その言葉を肯定するようにアスカへウルトラマンダイナと呟くキサラギ博士。そしてアスカはダイナとして戦った記憶を思い出していく。その最後にはプロメテウスの砲撃でダイナとなった自分が消滅する映像を見せられて、アスカは意識を手放す事となってしまうのだ。

 

「……完全に相手にしてやられたわね」

「だね。動きや能力を知られた上で恐怖心まで植え付けやがった」

「これまでにない程用意周到な侵略者だ。ダイナは、これで勝てるのだろうか?」

 

 目覚めたアスカだったが、それと時を同じくして謎の円盤がクリオモス島を襲撃する。迎撃に出たスーパーGUTSの隊員達だったが、配備されていたガッツイーグルはマシントラブルで海面へ不時着する羽目になってしまう。

 同僚であるマイと共に地上戦を行おうとするアスカだったが、データ収集が原因で苛立っていた彼は彼女を足手まといだとして突き放し、単身ダイナとなろうとする。

 

「何で一緒に戦えないの? マイさんの気持ちも考えてあげなきゃ……」

「未来……」

「やべぇな。こんな精神状態じゃ、勝てる相手も勝てねーぞ」

 

 ダイナとなって円盤へ挑もうとするアスカの前に、何故かプロメテウスが出現。そのプロメテウスへ謎の円盤が光線を浴びせると変形が開始される。

 現れたのはデスフェイサーと呼ばれる電脳魔神。収拾したダイナのデータを利用し、デスフェイサーはダイナを完封に近い形で攻め立てた。

 

「だ、ダメデス。ダイナの動きが全部読まれてるデスよ……」

「攻撃も通じない……」

 

 ならばと必殺技を放とうとするダイナへデスフェイサーはネオマキシマ砲で対抗。その光景に植え付けられた恐怖心が甦ったダイナは、撃ち合う事を避けて逃げ出してしまう。

 結果、ネオマキシマ砲は島を直撃。甚大な被害を生んでしまったのだ。当然、その被害者の中にはマイの姿もあった。

 

「……ダイナ」

「逃げちゃった……」

「兄様、これが人間ウルトラマンって事ですか?」

「そうだ。ダイナはアスカって人間が得た力でしかない。メビウス達は生まれながらのウルトラマンだった。正義を、平和を守るためにその力を磨いていた存在だ。それとは違ってティガやダイナはあくまで力であり、それを使うのは人間であるダイゴやアスカなんだ。怯える事もあれば調子に乗る事もある。それらを含めて、ティガ・ダイナ・ガイアは平成三部作と呼ばれて人気が高いんだ」

 

 キサラギ博士を操っていたのはモネラ星人だった。彼らは人類へ滅べと迫る。交渉も何もなく、ダイナの逃走を見た事で絶望している地球人類へ死ねと告げたのだ。

 更にモネラ星人は攻撃予定日時まで発表。防げるものなら防いでみろと人類を挑発したのである。それは人類の守護者たるウルトラマンダイナを恐れていないという事でもあった。

 

「くそっ、腹が立つねこいつ」

「人類に自分達と対等に会話する資格はないですって。何様のつもりよ」

「ダイナと正面切って戦えば自分達の危険度が上がると思って策を弄した癖に……」

「響、こういう相手でも手を繋ごうって思える?」

「さ、さすがにこれは無理かなぁ。それに、手を繋ごうって思えるのは、相手にも何か理由があって手を繋げないって言う時だよ。こういう、最初から手を繋ぐどころかこっちを命って認識してないような相手とは、私も最初から拳を握る、かなぁ……」

「でも、改心して考え直すってなれば繋ごうと出来る。そこが君の強さだと俺は思うよ」

 

 デスフェイサーとの戦いで心理的に敗北感を味わっていたアスカは、隊長であるヒビキや街で出会ったススム少年との触れ合いで自分の中の弱さと向き合っていく。

 そしてススム少年の持っていたティガという名のウルトラマンを知り、彼はその関係者と思われるGUTSの隊長であり今もTPCに残っているイルマという女性と面会する。

 

――ティガはもういないの。

 

 ティガと会いたいというアスカへイルマは告げる。強大な闇と戦い、ティガはそれを払って消えてしまった事を。

 その会話の中でアスカは大事な事に気付く。ウルトラマンとは、光とは何か。そして自分が何をし、どうしたいかを。

 

「光……」

「ティガは、ウルトラマンティガは光、なんだ……」

「ここはティガ本編を見てた人達へのサービスでもある。ティガの最終回は、それまでのウルトラマン達とは一線を画したものだったから」

「最初に言っていた事ですね。子供達と一体化したって」

「そこからこの映画では、ティガは人の心の光の象徴だったんじゃないかってところまでいってる。そして、多分この世界ではウルトラマンとは本当に光の化身なんだと思うよ」

「人の心の光が、希望が力となって形を持った。それが、ウルトラマンティガ……」

 

 そしていよいよモネラ星人が告げていた攻撃予定時刻となる。誰もが緊張する中、それは地下から現れた。

 電脳魔神デスフェイサーが地面を突き破るように出現。警戒していたTPCの戦力を攻撃し始めたのだ。その圧倒的な力の前に為す術無く散っていく防衛兵器達。

 その中でスーパーGUTSは必死に応戦するが、やはりデスフェイサーへ大きなダメージを与える事は出来ない。

 

「強すぎるデス……」

「一方的……」

「だ、大丈夫です。まだ、まだダイナがいます」

 

 自分の中の怯えや不安。それらを全て受け入れ、飲み込み、アスカは意を決してリーフラッシャーを掲げてダイナへと変身。仲間や街を、地球を守るために自分の出来る事をするべくデスフェイサーへ挑んだ。

 これまでと違い、ダイナは逃げるような動きは見せない。むしろダメージを恐れる事無く向かっていくようにも見える。その戦いに誰もが奮起し諦めるものかとダイナを援護する。

 ストロングタイプへ変わり、ダイナはそのパワーを活かして正面からデスフェイサーへ挑み続ける。そんな中、遂にその時が来た。

 

「あ、あれはっ!?」

「ネオマキシマ砲……っ!」

「だ、ダイナっ!」

「タダノっ、どうなるんだ!?」

「ヴェイグ、目を逸らさず見るんだ。見てる事しか出来ないからこそ、最後まで見届けるんだ」

 

 デスフェイサーがネオマキシマ砲を発射しようとするのを見て、ダイナは何と逃げるのではなくむしろ自分から飛び込んでいったのだ。

 そしてその拳がデスフェイサーの胸をネオマキシマ砲ごと貫く。まさしく恐怖心への勝利。ダイナは、アスカは自分の中に植え付けられた恐怖を乗り越えてみせたのである。

 

「「「「「やったぁ!」」」」」

「見事だ。死への恐怖を正面から受け止めた拳の一撃とは」

「ああ、痺れるぜ」

「光線も何もなく、自分の体一つであの強敵を倒してみせる、かぁ。カッコ良くて心が震えるよ」

「初戦での逃走がここへ繋がるのね。そうか。人間だから過去の経験を糧に成長していく……」

 

 デスフェイサーを打ち倒したダイナの勝利に誰もが沸く中、モネラ星人の恐ろしい企みが発動する。

 何とその場から去ろうとしたダイナをモネラ星人の円盤が触手で捕えてしまったのだ。更に円盤は形を変えて巨大な化物、クイーンモネラへと変貌する。

 

「そんなっ!?」

「ズルいっ! ダイナが帰ろうとしたところを狙うなんてっ!」

「ひきょーデス! 最低デスっ!」

 

 そのままダイナはクイーンモネラの下部にある場所へ閉じ込められてしまう。そこでダイナを電撃が襲い、そのエネルギーを枯渇させようとした。

 

「ああっ……ま、不味いデス……」

「ダイナが、ダイナが死んじゃう……」

「か、カラータイマーの点滅が早くなっていきますっ!」

「た、タダノっ!?」

「……目を逸らしちゃダメだ。最後まで、見届けるんだよ、何があっても」

 

 トドメとばかりに強烈な電撃が流れた瞬間、ダイナが大きく震え、点滅が止まり、その目から光が失われていく。

 

「そ、そんな……嘘デス……」

「ま、まだ大丈夫ですよね? ダイナが、ウルトラマンが死ぬはずないですよね? ね、お兄ちゃん。メビウスだってタカト君の勇気で元気になったもん」

「いや、この時のダイナは死んだのと同じだよ。メビウスが映画でやられた時とは違う」

「「「「「っ?!」」」」」

「これが、これがモネラ星人の狙いかっ」

「ダイナを人類が見ている前で敗北させ、心をへし折る。何て効率的で最高の侵略方法かしら。反吐が出る程有効だわ……っ!」

「デスフェイサーさえ捨て駒か。いや、違うね。あれを強い敵だって、自分達の最大戦力だって思わせたのがそもそもの作戦か。ホントいい性格してるよっ!」

「狙いは、最初からウルトラマンダイナの抹殺とそれを人類に見せての無気力化……かよ」

「酷い……酷過ぎるよ……」

「響……」

 

 映像で見ていた避難者達も口々に絶望を呟いていく。ダイナが負けた。この意味する事は重い。

 それでも諦める事無く抗い続ける者がいた。イルマである。彼女は昔取った杵柄とばかりにガッツウイングゼロを駆ってクイーンモネラへ攻撃し続けていた。

 彼女は信じていたのだ。ティガと同じくウルトラマンであるダイナの事を。光の化身であるダイナへ届けと、イルマは必死に抵抗を続ける。

 

 そして、諦めていなかった者は避難者達の中にも。

 かつて兄がティガと一体化した話を聞いていたススム少年が叫んだのだ。諦めなければ人は光になれると。

 それを馬鹿馬鹿しいと取り合わない周囲の人々の中で、モネラ星人から解放されていたキラサキ博士だけがススム少年へ問いかける。

 

――私もなれるかな? 私も、光になれるかな?

――きっとなれるよ。

 

 その問いかけにススム少年が笑顔で答え、それに感化されてキサラギ博士がその場の人々へ叫ぶのだ。こんな小さな子供でさえもまだ勝利を信じているのに、自分達が諦めてどうするのだと。

 

「ぐすっ……博士……」

「熱い人なんだ……本当の博士は」

「何もせず終わっていいはずがない。うん、そうです。人間は無意味なんかじゃない」

 

 すると博士の言葉に鼓舞されたように避難者達の中から声が上がり始める。

 それは若者達だった。かつてティガと一体化した子供達やそうじゃない者達も一緒になって立ち上がり、強い心で想いを述べ始めたのだ。

 

 その声がススム少年の持っているティガの人形へ宿るように光を放ち、満を持してススム少年が告げる。

 

――もう一度立って! ウルトラマン!

 

 それを切っ掛けにススム少年から光が生まれ、その場の避難者達からも光が生まれていく。それらがどんどん伝播していき、やがてその場全体が光に包まれていった。

 

「これが……人の心の光……」

「ティガと小さい頃一緒に戦った子達が本当にいるんだ……」

「すごい……綺麗……」

「タダノの言った事はここに繋がっていたのか……」

 

 その願いを受け、遂に人の光が姿を持った。ダイナを助けたい。諦めたくない。そんな強い想いが形を成して再び光の巨人を復活させたのだ。

 

「「「「「「ウルトラマン……」」」」」」

「「「「「ティガ(デス)っ!」」」」」

 

 イルマがティガの登場を見て噛み締めるように名前を呼ぶ。ティガはまずダイナを助け出すべくその体を覆っている部分を攻撃し崩していく。

 そして自分の光をダイナへと分け与えたのだ。その人々の心の光がダイナの目に光を灯し、胸に希望の青を戻した。

 

「「「「やったぁ!」」」」

「奇跡だ……」

「でも、それを起こしたのは一人の少年の想いなのよね」

「あー、何だろ? あたし、何か泣きそう……」

「へっ、意外と涙脆いな、片翼の先輩は」

「クリスちゃんがそれ言う……?」

「黙っててあげよ? それに、響だって潤んでるし」

「……俺は、いつの間にか人間の闇ばかり見てたのかもしれない」

「ヴェイグ……」

「そうだ。人間にだって良い奴はいた。優しい匂いをさせる奴だっていっぱいいた。俺は、光になれる人間を見てきたはずなのに、知っていたはずなのに……」

 

 ティガとダイナは力を合わせクイーンモネラと戦う。終始優勢に戦いを運ぶ二人のウルトラマン。だが、そんな二人を触手が襲い、身動きを封じる。

 

「ああっ!?」

「大丈夫だよ切ちゃん。ほら!」

 

 それを助けるべくスーパーGUTSが動いた。全てのメカを失っても諦める事無く自らの足で戦い続けていた彼らの行動がウルトラマンを助ける。

 

――ビームをクロスさせろぉぉぉぉっ!

――ラジャァァァァッ!

 

 射撃を交差させる事で威力を増させて触手を貫くファインプレーに助けられ、ティガとダイナは再度クイーンモネラへ攻撃を仕掛ける。

 その時、クイーンモネラの最大の攻撃が放たれようとした。それこそが最大の好機。ヒビキ隊長が叫ぶ中、二人のウルトラマンはその必殺の輝きを放つために光を集束させていく。

 

「「「「「「「「「「「「今だっ!」」」」」」」」」」」」

 

 放たれるゼぺリオン光線とソルジェント光線。それをクロスさせてクイーンモネラへ直撃させたのだ。

 その強力な威力でクイーンモネラが消滅していく。跡形もなく消え、二人のウルトラマンと人類が勝利を掴んだのである。

 

「さ、さっきみんなで声を出してたデスっ!」

「う、うん。ちょっとビックリした」

「何だか楽しかったです!」

「うん、ヴェイグさんやお兄ちゃんも出してたもんね」

「いや、その……」

「いやぁ、完全にここだって感じだったからな?」

「いやいやっ! 只野さんは知ってますよね!?」

「そうだぞ。あんたは知ってるんだから感じも何もねーだろ」

「き、気が付いたら夢中になっていた……」

「な、何だか恥ずかしいわね……」

「あたしはむしろ嬉しいけどね。何も言わないでも心が繋がったって感じしたじゃん」

「それはそうなんですけど……やっぱり恥ずかしいですよ」

 

 エピローグが流れる間、仁志達はそれぞれに笑い、恥じらい、喜びを見せる。それはさながら映画と同じだった。

 そう、彼女達は映画を見ながらいつしかそこと同調していたのだ。故に最後の場面でウルトラマン達に合図を出してしまったのだから。

 

 この映画を見て、切歌は仁志から人間ウルトラマンの事を詳しく聞く事となり、続いて見たTHE FINAL ODYSSEYでは色々と大人向けな部分もあって大小の赤い花が少女達の顔に咲く事となる。

 

 そして仁志は後から思うのだ。この頃に見ておいてある意味良かった、と……。

 

 

 

 二本の映画を見終えた後、仁志は少々自分の選択と時期を誤ったと思っていた。

 

(そうだった。すっかりグリッターティガやティガが闇から光へ戻るとかで忘れてたけど、あれって若干大人向けだった……)

 

 どうしても視点や考え方が特撮オタクである仁志にとって、ダイゴとレナにカミーラの話はそこまで強く印象に残っていなかったのだ。

 いや、正確には恋愛描写関連だろうか。嫌いではないが、彼にとって重要なのはそこではない。仁志が一番重要視しているのはヒーローの在り方であり生き方なのだから。

 

「兄様、少しいいですか?」

「ん?」

 

 声に振り向いた仁志が見たのは何か不思議そうに小首を傾げるエルフナインだった。

 

「何かあったかい?」

「あの、カミーラは何故ダイゴさんにティガとなって欲しかったんでしょう? ダイゴさんはティガになれますがカミーラが好きだったティガではありません」

「ああ、そういう事か。えっと、これは難しいとこだけど、例え中身が別人だとしても見た目が愛する相手と同じって事がカミーラには重要だったんだと思うよ」

「見た目が同じ事が……」

「要はカミーラはティガダークの人格じゃなく強さや見た目に惚れ込んでたんだろうね。だからダイゴが中身でも構わなかったんじゃないかな?」

 

 その仁志の意見にエルが納得するように頷く中、平行世界というもので見た目が同じでも中身が違うを経験している者達は一様に微妙な表情を浮かべていた。

 

 いや、それは厳密には中身が違うと言うよりは成長方向が異なると言えるのかもしれない。例えば立花響が内包していた可能性の一つがあのやさぐれてしまった響であり、風鳴翼の内包していた可能性の一つがあのオレを自称する翼なのだから。

 

 そんな事はお構いなしに仁志はエルの質問へ答えていた。最初の質問から派生したそれは、ある意味で思わぬ回答を仁志から引き出す事となる。

 

「では、兄様が女性に求める事は何ですか?」

「……どうしてこんな質問になったんだっけ?」

 

 スタートが異性愛に関する事だったからとしか言いようがないのだが、仁志は事ここに至って自分がとても恥ずかしい事を答えなければならなくなっている事に気付いた。

 

「どうかしましたか?」

「あー、いや、女性に求める事、ねぇ」

「はい。マリア姉様の参考にもなります」

「え、エルっ!?」

 

 まさかの巻き込みにマリアが狼狽えるも、無邪気なエルは不思議そうに小首を傾げた。

 

「何かいけませんでしたか? 姉様は初めてここへ来た時も兄様へそういう事を尋ねていましたから」

「そ、それは……」

「何だ何だ? マリア、あんた結婚したいの?」

「っ……そうよ。何か悪い?」

「悪くないよ。ただ、色々難しいだろ?」

「それもあるから只野に意見を聞いたのよ。ほら、私達の周囲で一般人目線の男性っていないでしょ?」

 

 その質問に奏だけではなく響達まで考え込む。そして結論は同じだった。

 

「そう言われると……まぁ」

「そもそも私達の知り合いと言う時点で大抵が一般人離れした状況にいるからな」

 

 翼の言葉に響達が無言で頷く。悲しいかなそれが現実と言うものだった。

 

「大丈夫だよ。みんなだってその気になれば結婚は出来るさ。もし出来なかったとしても」

「何なら俺がもらってやるって?」

 

 仁志の言葉へ割って入るように告げられる、軽く冗談めかした奏の言葉。それに仁志は一瞬絶句するや俯いて、どこか力ない声でこう返した。

 

「俺は一人しかいないから全員は物理的に無理だよ……」

 

 その情けない声に響達が苦笑する中、一人ヴェイグだけが見えていたのだ。

 

(タダノが……辛そうな顔をしてる……)

 

 俯いたままで目を閉じて、仁志は何かを耐えるように表情を歪めていた。出会った頃から分かっていた事である“響達はこの世界の住人ではない”という事実。

 それ故に仁志は自分の想いを押し殺した。出来るものなら妻として迎え、出来る限り幸せにしてやりたいと、心の底で強く思いながら。

 

「っと、俺が甲斐性なしな事はどうでもいいとして」

「ちょっと、そんな事言ってないわよ」

「そうそう。先輩、少し自分を卑下し過ぎだって」

「どうせ俺は卑屈だっての。それでエルの質問に答えるよ。えっと、俺が女性に求めるものだろ?」

「はい」

 

 話題や空気を変えようと仁志は顔を上げて明るく、そして軽く茶化すように喋り始める。

 

「そうだなぁ。ま、ありきたりだけど簡単だ。子供が出来るまでは俺の事を一番好きでいてくれる事」

「そ、それだけですか?」

 

 仁志へ想いを寄せる響としては若干拍子抜けな条件である。ただ、それは仁志からすれば難しいものという認識で……

 

「それだけって言うけど、この歳になるまで彼女いた事のない男だよ? まず俺を一番好きだって言ってくれる女性と出会うのが天文学的な数字だって」

「そ、そこまでいかねーとあたしは思うけどな」

 

 自分がいるとは言えないクリスである。

 

「そう、ね。私も出会うだけなら可能性は十分あると思うわ」

 

 ここにいるしと言わないマリアである。

 

「そうデスね。出会うだけならもう会ってますっ!」

 

 笑顔で断言する切歌に全員の視線が色々な意味で集まる。

 

(き、切歌ちゃん一体どういうつもり? も、もしかして私の事……バレてる!?)

(ま、マジか? まさか後輩もあのバカやあたしと一緒だとか言わねーよな?)

(切歌は只野と仲が良いと思っていたけど、まさかそれは好意だけじゃなくて恋愛感情もあったのっ!?)

 

 一部仁志への恋心を自覚している者達はそれはそれは気が気でない。ただ、切歌を見つめて調はやや呆れるように息を吐くとこう言い放った。

 

「切ちゃん、この場合は只野さんのお嫁さんになりたいぐらいって事だよ?」

「およ? そ、そうなんデスか?」

「うん。ですよね?」

「あー、うん」

「そ、そうでしたか。アタシはてっきり只野さんを男の人の中で一番好きならいいのかと思いました」

 

 その瞬間、切歌らしいと感じて笑う者達とどこか安堵するように息を吐く者とに分かれた。

 仁志は笑っていた。響とクリス、マリアは息を吐いていた。そしてそんな三人の様子を見て翼と奏は小さく首を傾げていた。

 

「でも、お嫁さんかぁ。ちょっと憧れます」

「セレナちゃんはウェディングドレス似合そうだね」

「そ、そうですか?」

「うん。イメージカラーが白だから余計かな。もし可能なら新郎横までバージンロードは俺が歩いていきたいぐらいだよ」

「セレナの父親代わりにって事? まぁ私はいいと思うわ」

「姉さんが許可してくれるなら是非そうして欲しいです」

「その前に、俺は自分が花嫁さんを連れてきてもらえるようにならないといけないけどね」

 

 自分がなってもいい。そう言い出せない響達。そんな時……

 

「じゃあ、僕もそういう事があったら兄様にお願いしたいです」

「エルもか。よし分かった。そんな機会があればな」

「はい!」

 

 嬉しそうに返事をするエルフナインの頭を仁志は優しく微笑んで撫でる。それはさながら父と娘に見えなくもない。

 

「お兄ちゃん、エルばかりズルいです。わ、私も撫でてください」

「え? あ、うん。それなら遠慮なく」

「「ふふっ」」

 

 擬似姉妹が揃って撫でられ笑みを零す。そんな光景に誰もが笑顔になった。

 願わくばこんな時間が続くようにと心から願いつつ時は過ぎる。

 

 燃えるような夕日を浴びながら誰もが笑っていた、そんなある日のまだ夏が来る前の一幕だった……。




実は只野の事を一番分かってるのはヴェイグかもしれません。
いえ、只野が自分の本音や本心を見せてもいいのがヴェイグなんでしょう。

男は女の前ではかっこをつけるものですしね。
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